No.00174 至高のレースワーク

エドワーディアンのホワイトゴールドを使った最高水準のミルワークのアンティーク・リボン・ブローチ
エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー 『至高のレースワーク』
エドワーディアン リボン ブローチ

イギリス 1910年頃
ローズカット・ダイヤモンド、ホワイトゴールド&イエローゴールド
2cm×4,7cm
重量 7,2g
SOLD

リボンは人気の定番モチーフなのでアンティークジュエリーにも多々存在しますが、その分デザインや細工がいまいちなものも多いため、なかなかご紹介できる機会がありません。でも、今回は第一級のエドワーディアンの作品でも見られないような見事な細工と、デザインの美しさを両立した非常に珍しいリボンブローチを買い付けることができました。控えめながらも醸し出す品の良さは抜群で、いろいろなファッションにあわせて頂けるオススメの逸品です♪
←↑実物大
ブラウザによって大きさが違いますが、1円玉(直径2cm)を置いてみれば実物との大小の比率が分かります。

 

エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー
『ホワイトゴールドにゴールドバック』
裏 エドワーディアン・スタイルのジュエリーの場合、ほとんどの場合がプラチナにゴールドバックです。しかしながらこのリボンブローチは、ホワイトゴールドにイエローゴールドバックの作りです。42年間で一度も見た記憶がないくらい珍しいものです。

ホワイトゴールドについて

このページをご覧になって下さる方ならば少なくともジュエリーには興味を持たれているはずで、白い金属と言えばプラチナやホワイトゴールドが存在することまではきっとご存じだろうと思います。

でも、結局何がどう違うのかは分からない方の方が多いのではないでしょうか。色々と調査してみたのですが、私が欲しい情報が書籍やネットに都合良く纏めてあるということはありませんでした(TT)

古い情報や常識のままだったり、内容が偏っていたり、情報が狭すぎて統合的な話になっていなかったりで、アンティークジュエリーを理解したい場合に限っては、どれもいまいちな内容なのです。

せっかくなので、ここに纏めてみました。

プラチナとホワイトゴールドの歴史

テーベの小箱 世界最古のプラチナ製品

プラチナもホワイトゴールドも一般的なジュエリー市場に出てきたのは大体同じ時期です。

どちらもエドワーディアン以降の新しい金属というイメージが強いと思いますが、プラチナは天然に存在する金属です。このため、実は紀元前の時代から、極稀にではありますが使用されています。

左は、現存する世界最古のプラチナを使った製品です。古代エジプトのテーベ王国、第25王朝のテーベ王の娘であった女性神官シェヌペットの墓から出土した、『テーベの小箱』と呼ばれる化粧ケースです。

オールプラチナ製というわけではなく、金銀で制作した箱にプラチナの象嵌細工を施した物です。

テーベの小箱(紀元前700年頃)ルーブル美術館所蔵

ゴールドと違ってプラチナが使用されてこなかったのは、一重に加工のしにくさが原因です。

 

『パイナップル』でも少しコロンブスの話をご紹介しましたが、15世紀から17世紀にかけてスペインの新大陸の探索と征服活動が繰り広げられました。

黄金の国ジパングに発見に燃えていた訳ですが、この時代は特に貴重だった金や銀が求められていたのです。

プラチナの原石
16世紀にスペイン軍が中南米を侵略した際、たくさんの白い金属を発見し喜んで持ち帰りました。銀と間違えて持ち帰ったのですが、融点の高いプラチナはどうやっても扱うことができず、廃棄処分になってしまったそうです。『貴金属』なんて言っても、所詮扱えなければタダの邪魔なゴミなのです(笑)

商業利用の普及

技術的・産出量的な問題がクリアされ、プラチナが本格的に使われ始めたのは1905年頃からです。

一方、金とパラジウムの合金によるホワイトゴールドは19世紀に発明されました。こちらも商業的な利用が可能になったのは、1912年にドイツで技術開発がなされてからです。

ホワイトゴールド塊

<世界情勢とプラチナ>

第一次世界大戦

プリカジュール・エナメル ペンダント PROPATRIA 祖国のために 第一次世界大戦 フランス

『PROPATRIA』でもご紹介した通り、1914年から1918年にかけての第一次世界大戦は、近代的な化学兵器が登場して大量に使用された「世界最悪」とも言える戦争でした。

『PRO PATRIA(祖国のために)』
プリカジュール・エナメル ペンダント
フランス 1914年〜1915年
SOLD
ノーベル化学賞 ヴィルヘルム・オストヴァルト 触媒 アンモニア酸化法 硝酸

左は理系の方ならば高校化学で聞き覚えがあるはず、オストワルト法(アンモニア酸化法)を考案したヴィルヘルム・オストヴァルトです。
硝酸を合成する際にプラチナを触媒として使用する方法を発明しました。

もう1つ軍事用でメジャーな酸として硫酸があります。現代でも、硫酸を工業的に生産する際の収率の良いメジャーな方法は接触法です。1915年に五酸化バナジウム触媒が発見される以前は、接触法ではプラチナが触媒でした。

化学兵器や爆薬の材料になる硝酸や硫酸の触媒として、第一次世界大戦でプラチナの需要は一気に伸びました。

【ノーベル化学賞受賞者】
ヴィルヘルム・オストヴァルト(1853-1932年)
ロシア革命 赤の広場 行進 ボリシェヴィキ軍

当時、世界有数のプラチナ供給国はロシアでした。

しかしながらご存じの通り1917年にロシア革命が起こり、一時プラチナの供給が制限されてしまいます。各国政府の統制下、プラチナはさらに貴重な存在となります。

赤の広場を行進するボリシェヴィキ軍(1917年)

第一次世界大戦後

ダイヤモンド ペンダント アンティークジュエリー アールデコ ダイヤモンド 透かしの美 カリブレカット・エメラルド

第一次世界大戦が終わるとプラチナの統制も解かれることになります。1920年代は宝飾品市場が活況を呈し、それまで以上にプラチナが使われるようになりました。

アールデコ期は先進的なプラチナジュエリー全盛というイメージです。

その牽引役が、世界経済の中心が移りつつあったアメリカです。所謂The Roaring Twenties、狂騒の20年代ですね。

『透かしの美の極地』
アールデコ ダイヤモンド エメラルド 天然真珠ネックレス
イギリス 1910年〜1920年頃
SOLD

1930年代の世界恐慌

世界恐慌 アメリカ連合銀行 ニューヨーク 取り付け騒ぎ
世界恐慌初期の取り付け騒ぎ時にNYのアメリカ連合銀行に集まった群衆(銀行は1931年に閉鎖)

第一次世界大戦後1920年代のアメリカは、大戦への輸出によって発展した重工業の投資、帰還兵による消費の拡張、モータリゼーションのスタートによる自動車工業の躍進で内需も大きく拡大しました。さらに消耗戦の戦地となったヨーロッパの疲弊に伴う対外競争力の相対的上昇、同地域への輸出の増加などによって「永遠の繁栄」と呼ばれる経済的好況を手に入れた訳です。

しかしながら1929年のBlack Thursday、暗黒の木曜日とも言われるウォール街大暴落による世界恐慌はご存じの通りです。1930年代に入ると世界的な大不況により宝飾品需要は伸びず、そのまま第二次世界大戦を迎えることになります。HERITAGEで扱うジュエリーはせいぜい1930年代が限界で、1930年代は扱うに値する優れた物が殆ど存在しないくらいなのですが、これはこういう歴史的背景が原因にあるのです。1930年代以降が生理的に嫌いという訳ではなく、HERITAGEとして扱えるレベルの優れたジュエリーが作られなくなってしまっただけです。

第二次世界大戦

これはかつて大阪の四天王寺にあった世界最大の釣鐘です。聖徳太子没後1300年の記念事業として明治30(1897)年に鋳造が計画され、明治36年に完成したものです。

当時世界最大の釣鐘したが、昭和17(1942)年に第二次世界大戦の金属回収例で供出したことで失われてしまいました。

江戸期に既に日本人の使節団もロシアでプラチナを見ていますし、プラチナジュエリーも国内に入ってきていましたが、釣鐘に限らず大戦期はプラチナ宝飾品も政府によって買い上げられ、工業用の材料に回されました。

世界最大の釣鐘『頌徳鐘』(1903年完成)
マッカーサー GHQ

終戦後も1953年までプラチナの取り扱いは厳重に管理され、経済復興、つまり工業用とへの投入が最優先とされました。

やがて高度経済成長期を迎えると個人所得も伸び、宝飾品への需要も拡大していくこととなります。

<日本人のプラチナ好き>

みなさんはプラチナはお好きですか?お好きな方は、それはなぜですか?

日本人はプラチナが大好きです。1990年代半ば頃までは、プラチナの世界需要の約半分が日本だったというくらい好きです。

日本人には似合うからというのも少し違うでしょう。同じアジア圏でも中国人はゴールドをより好みます。

理由1.金の民間輸入制限

1973年4月まで、日本では民間の金の輸入が禁止されていました。このため金は使いたくても入手困難な状況にあり、宝飾品の材料としてはプラチナの方が使いやすい状況にありました。

金塊の保管庫

理由2.ミッチーブーム

上皇陛下と上皇后陛下のご成婚の儀(1959年)

今の若い方どころか、GENと同じ現在71歳(2018年現在)だったとしても当時12歳なのでピンと来る方は少なそうですが、初めて民間から皇室に嫁ぐことになった美智子上皇后陛下と明仁上皇陛下のご成婚は当時「ミッチーブーム」という社会現象を起こすくらいインパクトがありました。

日本でいち早くプラチナを愛好したのは皇室で、公式行事で身につけるジュエリーは常にプラチナにダイヤモンドや真珠があしらわれた上品なものでした。これによりプラチナは「清楚」で「上品」で「高級」なイメージが国民についたのですが、美智子上皇后陛下がご成婚の儀でプラチナとダイヤモンドを使ったティアラを着用したことから一気にブームとなったのです。

民間ご出身とは言え、日清製粉の社長のご令嬢でもあり、上皇陛下と知り合ったのも軽井沢のテニストーナメントと言うことで、庶民の女性にとっては同じ立場というよりも憧れの存在という感じでした。さらにこれだけの美人なので、当然当時のファッションリーダーとしてメディアからも多く取り上げられています。ファッション1つ1つに注目が集まるのも、現代のイギリス王室のキャサリン妃やメーガン妃と変わりませんね。

理由3.ブライダル・プロモーション

素敵な王子様との結婚、美しいウエディングドレス姿は当然ながら若い女性達の夢であり憧れです。現代は日本全体で高齢化して若い女性時代少ないですし、「将来の夢はお嫁さん」なんて時代でもないですが、当時は若い女性をターゲットとしたプロモーションが経済活動にとってキーポイントだったことは想像に難くありません。

当時は離婚なんて考えられない時代ですし、結婚式は一生で一度の親戚一同も巻き込む超重要イベントです。みすぼらしい式で恥をかかぬよう、新郎もお金の工面を頑張りますし、両家の親もいくらでもお金を出します。

左の雑誌を見ると、「ウエーデイングドレッスは自分でも作れます」だそうですね。新婚旅行も沖縄ではなく昔は宮崎が主流だったりしました。1972年5月までは沖縄はアメリカのものでしたからね。現代は海外で挙式する人もいますが、とにかく多くの人の財布の紐が緩むタイミングが結婚式なのです。

バブル期には、婚約指輪の予算目安はお給料の3ヶ月分なんて言われたりもします。

もともとジュエリー文化がなかった日本人は年長者に教えを請うこともできませんし、とにかく新しい物を売りたいジュエリー店側は自分たちの都合の良く言いたい放題です。

婚約指輪のみならず、結婚指輪も準備しなければなりません。素材はどれが良いのかな、そんなこと通常の男性は知りようがありません。高度経済成長期を経て、真に良い物も見たことがない世代、芸術性が感覚的によく分からない人はジュエリー店に言われるがままに成らざるを得ません。プラチナは材料として一番高価らしい、酸の腐食に強く変色もしないらしい、とりあえず予算内で一番高価な物だったら良いだろう、それが一番失敗しない方法です。もらう女性もよく分かっていないですし、とりあえず高いものがもらえればそれでOKという人の方が多い、残念な状況なのです。

本来は金属の色みだけでなく、加工特性も異なるため、それぞれデザインによって使うべき素材が異なってくるのですが、上のような単純な細工だとどの金属で作っても変わらないんですよね。だから素材自体が高いこと、それだけが評価基準になってしまうのです。

高度経済成長期に作られたプラチナ=最高級というイメージが、明確な根拠はないにも関わらず現代まで引きずられることで、世界的に見ても突出した「日本人のプラチナ好き」が形成されたのです。

プラチナ相場の変化

投資家やエンジニアの方ならご存じの方も多いと思いますが、プラチナは工業用途の需要がかなりの割合を占めます。

その中でもディーゼル車の排ガス触媒向けの需要が大半を占めます。工業用途の触媒としてプラチナを含めたレアメタルは重要で、金より高価なのは有名な話です。しかしながら生産国が限られていること、政治利用されぬようなるべく少ない量で済んだり、代替品で済むよう日本のメーカーも研究開発に必死の分野です。

エンジニアの研究開発の成果に加え、2015年にヨーロッパの大手自動車メーカーによる排ガス不正問題が発覚して以降、不信感の広がりから主力の欧州市場で消費者のディーゼル車離れ(ガソリン車へのシフト)が起こりました。

煙を吐くディーゼル車

2018年現在でもゴールドよりプラチナの方が高いから高級と謳う人がいるなら、その情報は古いです。

現在はプラチナはゴールドの半分くらいの価値しかありませんね。かっこ笑いと書きたいですが、笑えない人もいそうです。まあ、相場なんてこんなものです。情報を先読みできるか、公開される前の情報を入手できるか、情報操作ができる側でないとそうそうプラスにはできません。

ピンクトルマリン カンティーユ ブローチ アンティークジュエリー ジョージアン

左の素晴らしいカンティーユの作品もそうですが、ジュエリーが王侯貴族のためだけの物だった時代においては希少な素材には当然の如く最上の細工を施したので、必然的に良い物になります。

しかし細工の良さや芸術性を理解できる人が少なく、誰にでも分かりやすい材料価値だけでしか評価しない時代においては、高価な材料であっても極上の細工は施しませんし、材料相場が下がれば一気に無価値と化します。

現代ジュエリーも投資意識で購入しているわけではない人が大半だと思いますが、知らず知らずに洗脳・先導されていないか気をつけて欲しいところです。

ジョージアン ピンクトパーズ カンティーユ ブローチ
イギリス 1820年頃
SOLD

最近ではプラチナの値段が下がったことを受けて、ホワイトゴールドを提案するお店も増えてきたようです。アメリカやヨーロッパではホワイトゴールドが主流だからなどとも言われるようです。欧米に憧れる日本人の心をくすぐる戦略のようですが、他人が使っているならば自分もという思考停止な国民性を利用されているようで、こういう営業文句はちょっと嫌だなぁと思ってしまいます。

 

エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー
時代によっても相場や評価は驚くほど変化するものですが、プラチナイコール最高級と安易に直結するのは誤りだということはお分かりいただけたでしょうか。とは言え、エドワーディアンやアールデコ期はプラチナは高級素材で、当時はそれに見合う細工が施されていた場合が多いとの認識も正しいです。
エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー

ゴールドバックの作りと、エドワーディアンの中でも見たことがないレベルの透かしとミルワークは、間違いなくエドワーディアンのジュエリーであることを示しています。商業的にホワイトゴールドが使われるようになったのは1912年からで、このブローチを作るにあたって職人にはプラチナとホワイトゴールドの両方の選択肢がありましたし、どちらも超高級素材でした。

ホワイトゴールドとホワイトゴールドを蝋付けして張り合わせてから使っているのは、プラチナ同様、開発したてのホワイトゴールドも今より相当に高かったからに違いありません。貼り合わせる手間とコスト以上に材料自体が高価だったということです。そして、ホワイトゴールドを選んだのには芸術的観点からの明確な理由があります。

ホワイトゴールドにより実現するプラチナ以上の繊細なミルワーク

ホワイトゴールド ブレスレット カボションカット・サファイア アンティークジュエリー ダイヤモンド アールデコ
アールデコ ブレスレット 拡大画像

ダイヤモンド&サファイヤ ブレスレット
イギリス 1920年代
オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド、カボッションカット・サファイヤ、18ctホワイトゴールド
SOLD

以前、ホワイトゴールドの極上のブレスレットを扱ったことがあります。ホワイトゴールド=プラチナ以下の安物というイメージを持っていると到底理解できない逸品です。

このブレスレットに施されていたのが、ご覧の通りの驚くほど繊細緻密なミルワークなのです。驚くようなカボッションカット・サファイアの使い方、贅沢なダイヤモンド使いを見れば、宝石だけでも物凄くお金をかけて作られたジュエリーであることは理解頂けることでしょう。

 

エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー

このリボンブローチも、金属の特性を最大限生かして作られた、驚異的なミルと透かし細工が施されています。

どうか、実際のサイズをイメージしながら拡大画像をご覧になって下さい。

エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー
←実物大
ブラウザによって大きさが違いますが、1円玉(直径2cm)を置いてみれば実物との大小の比率が分かります。
エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー

画像だとなかなかお伝えしにくいのですが、まず特筆すべきはこのリボンのデザインです。

リボン自体かなり立体的に作られており、結び方の形もエレガントな印象です。さらに面白いのが、通常は完全に空間として開けられてしまうはずの部分に透かしが施されていることです。

エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー

この縦の細かい透かしの部分も含めて、全てゴールドバックになっています。

リボンの形状が平面ならば分かるのですが、リボンの表面とこの透かしの空間の部分とで、山型にかなり角度を付けた構造になっています。二重に貼り合わせた金属を、剥がれないようこの形に加工するだけでも相当難しいことだったはずです。

さらに、このホワイトゴールドとゴールドの板をわざわざ蝋付けした板を、糸鋸で挽いてヤスリで湛然に仕上げているということになります。

裏
エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー
斜めから見た時にゴールドの輝きが見えるのがエドワーディアンならではですし、それが時代を特定出来るともに、魅力でもあります。
エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー
ミルは繊細至極で、今まで見たどのエドワーディアンのプラチナに打たれたミルよりも細かくシャープです。単に鏨を細かく打つだけでなく、1つ1つが丁寧に半球状に磨き上げられています。想像を絶する、気が遠くなる作業です。
エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー
アールデコ以上に繊細な細工が施されているのがエドワーディアンジュエリーですが、このブローチには第一級のエドワーディアンでも見られないような見事な細工が見られます。見事な透かし細工とミル打ちに加えて、もう一つ一般的なエドワーディアンとは異なるのが、多数の粒金のような半球状の装飾が彫りだされていることです。もっと少ない数なら、プラチナのハイクラスのジュエリーにも見られる細工ですが、これほど多数の物は今まで見たことがありません。
エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー

プラチナもホワイトゴールドも、単一の素材では使用しません。どちらも主成分となるプラチナやゴールドに割金を混ぜて使います。プラチナの場合は加工しやすくするためです。ホワイトゴールドの場合も、白い色を出すだけでなく加工のしやすさをコントロールするために様々な配合を施します。

プラチナの特徴は柔らかさとしなやかさです。硬度を表すにしても、押し込みの硬さのビッカース硬度と摩耗への強さを表すモース硬度があります。合金の配合によって物性は著しく変化するので、一重にプラチナの方がゴールドより硬い、柔らかいと断言することはできません。正確な組成を言及せずに、自分たちの都合の良いようにプラチナの方が硬い、ゴールドの方が硬いと述べているお店が多々あります。そのことを知らずに真面目に情報を読むと、混乱してしまいます。使用するのが2つの金属だけならば単純なのですが、3種類、4種類と増えるとそれこそ無限にレシピがあり、それぞれ性質が変わります。現代の工業製品であっても、原材料の調達先の鉱山が変わったり、精錬方法を一カ所変えるだけでも物性が変わります(サラリーマン時代の大量生産のモノづくり現場で経験済みです)。

と言うことで、合金の物性を調節するのは現代でもそうですし、この当時も職人の勘に頼っていたはずです(立派な機械生産品に見えても、意外と今でも職人の勘に頼ってモノづくりされているのが現実です。科学技術が進んだ今でも数値化できないことが多々あるのです)。

エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー

一般的には、ホワイトゴールドの方がプラチナよりも硬く、硬さを生かした繊細なジュエリーが存在すると言われています。

プラチナは柔らかく曲がる性質、所謂粘りけがある性質なので宝石のセッティングには適しており、ダイヤモンドジュエリーと共に発展しやすかった理由がここにあります。一方で粘りけのせいで繊細な彫金には向きません。

エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー

以上を踏まえると、このブローチの作者がホワイトゴールドを使わなければ実現できない、この繊細至極な細工を施すためにホワイトゴールドを選択したのは明らかです。加えて、柔らかな雰囲気のリボンを表現するのに、硬質な色味のプラチナよりも暖かみがあるホワイトゴールドを好んだということもあるかもしれません。

ホワイトゴールドバー 白い金塊

このブローチに使用されたのがホワイトゴールドなのは、決してコストダウンを考えての選択ではないのです。
但し1920年代以降の物で、ホワイトゴールドを使った物の中には、単にコストダウンを考えて作ったレベルの低い物も存在します。そういう物とは分けて考える必要があります。

修復をお願いしている名人X師は、一億円超クラスの現代オーダージュエリーを制作していた人物ですが、彼も「僕は白い金属を使う場合は、プラチナではなくホワイトゴールドを使う。」と言っていました。ホワイトゴールドは限界まで繊細な細工ができる、プライドの高い職人好みの金属でもあるということですね。

センスの良いダイヤモンド使い

エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー

さて、このブローチがハイ・ジュエリーとして作られたことはお分かりいただけたと思います。ここでもう一度このブローチの全体をよ〜くご覧下さい。アンティークジュエリーが好きな方なら、何か気がつかれませんでしたか?
そうです。これだけの素晴らしいデザインと細工なのに、ダイヤモンドはすべて小さなローズカット・ダイヤモンドだけなのです。普通の職人ならば、ちょっと大きめのオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドを使って高級なイメージを出そうとする所ですが、そんなことは微塵も感じられません。作者はこのブローチが"ダイヤモンドが付いているから高級なジュエリー"だと評価されるのではなく、純粋に自分の技術とデザイン力で評価される作品を作りたかったに違いないのです。ダイヤモンドだけがギラついて全体の調和を乱すことなく、少し控えめなローズカットダイヤモンドの輝きが柔らかい雰囲気のリボンを惹き立てています。

ブローチの左端のホワイトゴールドが僅かに欠落していますが、実物では全く気がつかないレベルのごく小さな欠点です。実物をご覧になって頂ければ分かると思います。

エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー
ローズカット・ダイヤモンドは低品質なジュエリーの脇石に使われるような汚いものとは一線を画す、無色で透明度の高い上質な石が使われています。
エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー
キラリと光るローズカット・ダイヤモンド以上に目を見張るホワイトゴールドの繊細な細工です。ブローチを作った職人のプライドと確かな技術とセンスの良さが伝わってきますね。

 

裏

透かし細工やダイヤモンドの裏側の窓の開け方も美しいです。

ブローチの金具にはセーフティーが付いています。

エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー

今まで見たことのない稀少なエドワーディアンで、しかもこれだけのデザインと細工の良さを兼ね備えた見事な作品ですが、ダイヤモンドが派手に見えないおかげでリーズナブルにご紹介できるのも細工物の良さなのです♪


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