No.00244  エトルリアに想いを馳せて

エトラスカン・スタイルのアンティークおアクアマリン・ブレスレットとエトルリア美術のイメージビジュアル

 

エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク
エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク
←↑実物大
ブラウザによって大きさが違いますが、1円玉(直径2cm)を置いてみれば実物との大小の比率が分かります。
エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク

『エトルリアに想いを馳せて』
エトラスカン・スタイル ブレスレット

イギリス 1870年頃
アクアマリン、15ctゴールド
長さ 18cm
幅 1cm〜0,5cm
重量 7,8g
SOLD


エトラスカン・スタイルのジュエリーは大半がゴールドで、粒金と縒り線だけで作られています。宝石はあっても小さな天然真珠を使った物ですが、このブレスレットはアクアマリンを使っているのと、ジョージアンの時代に人気があったカンティーユの金細工が施された、とても珍しいタイプのエトラスカン・スタイルのジュエリーです。

極上の石は使われていますが石に頼ることなく、素晴らしい技術と細部に至るまでに徹底した仕事で金細工が施されてあり、第一級のエトラスカンスタイルのジュエリーと言えます。

このような高度な技術と、現代人には理解不能とも言えるような手間を掛かた金細工のジュエリーは、20世紀に入りプラチナが登場すると作られなくなり、姿を消してしまいます。

技術が失われる残念な時代の前の、貴重で美しい極上のゴールドジュエリーです。

 

エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク

このブレスレットをロンドンのディーラーに見せてもらった時、私は歓喜しました。

極上の作り、そして極上のデザイン・・。

何よりも最高なのは、ヘリテイジにあった同タイプのネックレスと組み合わせて楽しめることです!♪

エトラスカンスタイルのアクアマリンを使ったアンティーク・ネックレス

同じ人物のオーダーで作られたわけではないはずなのですが、どちらもエトラスカン・スタイルのトップクラスの仕事をしてある上に、アクアマリンを使った珍しいタイプなのです。

『エトルリアの知性』
エトラスカンスタイル アクアマリン ネックレス
オーストリア? 1870年代
SOLD
エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク
単品でも迷いなく買い付けるクラスの宝物ですが、揃いで組み合わせて使えるジュエリーは、オシャレを楽しむ女性にとって最高に楽しいものなのです!♪♪
アンティークの天然真珠クラスターリングとピアスのセット

ヘリテイジのお客様によりオシャレを楽しんで喜んでいただけるよう、いつでもそういうチャンスを狙っています。以前ご紹介した天然真珠とダイヤモンドのクラスターピアス『美意識の極み』とリング『Flower』もそうでした。

ヘリテイジはデザインだけでなくクオリティもかなり厳しく選ぶので、デザイン的にはオーソドックスなこのタイプのジュエリーでも揃いでご用意するのが難しいのです。

エトラスカン・スタイル アクアマリンのブレスレット&ネックレス

43年間でアクアマリンを使ったエトラスカンスタイルのジュエリーはGENも初めて見るという、単品でも珍しいタイプのジュエリーがセット使いできるなんて大興奮でした♪♪

白大理石を使った珍しいミュージアムピースのイタリアのフローレンスモザイク(ピエトラドュラ)とカンティーユのピアス(アンティークジュエリー)

白大理石を使った珍しいミュージアムピースのイタリアのフローレンスモザイク(ピエトラドュラ)のアンティーク・バングル

ピエトラドュラ ピアス
イタリア 1830年〜1840年
SOLD
ピエトラドュラ バングル
イタリア 1860年頃
SOLD

私がサラリーマン時代にルネサンスでGENから初めて購入した2つの宝物もそうです。当時バングルはカタログに載っていて、白大理石を使ったピエトラデュラはやはりGENもこれまでに見たことがないというくらい珍しいものだったそうですが、偶然タイミング良く同系統のピアスも入荷したそうです。

オーダーした人物も時代も違うのに、奇跡のような巡り会いですよね。当時アンティークジュエリーについては全く知識がありませんでしたが、運命を感じてピアスは「メルマガでご紹介する前にSOLD」にしてしまいました。今回、同じことが起きてしまいました(笑)いろいろと人や宝物との運命やご縁を感じます。

19世紀のエトラスカンスタイルのジュエリーの始まり

ピオ・カステラーニ エトラスカン イタリアの有名作家 宝飾家 宝石商

エトラスカンスタイル・ジュエリーが作られるようになったいきさつは『エトルリアの知性』で詳細をご説明しましたが、1836年に発見された古代エトルリアの墳墓の発掘に参加した宝石商カステラーニが、エトルリアの優れた金細工に触発されたのがきっかけです。

Fortunato Pio Castellani(1794-1865年)
シレヌスの顔のついたネックレス 古代エトルリア ゴールドジュエリー 紀元前 ナポリの国立博物館 粒金 縒り線
『シレヌスの顔のついたネックレス』エトルリア(紀元前6〜5世紀) ナポリの国立博物館蔵
シレヌスの顔のついたネックレス 古代エトルリア ゴールドジュエリー 紀元前 ナポリの国立博物館 粒金 縒り線
触発されたのは到底人の手で作られたとは思えない、驚くべき技で作られた細工です。
カステラーニ 考古学風 アンティークジュエリー エトラスカン 珊瑚 牛 フクロウ 人面

現代でもエトルリア人がどうやってこの金細工を作ったのかはっきり分かっておらず、結局カステラーニも古代エトルリアクラスの作品は作ることができませんでした。

それでも19世紀としては優れた金細工の作品を遺しています。

古代エトルリアの技術を再現するため、この時代の他の芸術家同様、最初は模倣から入っています。

それもあってか、デザインの印象としては古代美術にインスピレーションを受けたとみられる古代らしい雰囲気が多いです。

『イタリア考古学風ジュエリー』
Castellani カステラーニ
イタリア 1860年頃
Sold

19世紀のエトラスカンスタイル・ジュエリーの方向性

ラムズヘッドのゴールドブレスレット(紀元前4世紀頃)

その後エトラスカンスタイルのジュエリーが流行し、カステラーニ以外の作家もエトラスカンスタイルのジュエリーを作るようになりました。デザインについて、その方向性は以下の2つに大別されます。

1.いかにも古代らしい雰囲気を楽しむスタイル

2.19世紀当時の流行とのコラボレーションによる新しいスタイル

1.いかにも古代らしい雰囲気を楽しむスタイル

イタリア考古学風ジュエリー 古代エジプトのアメン神の化身「雄羊」を表現したエトラスカンスタイルのラムズヘッドのアンティークのゴールド・プチ・ペンダント エトラスカンスタイル ゴールドジュエリー アンティークジュエリー 金細工 ブドウ 縒り線 竜金 ネックレス エトラスカんスタイル ゴールドジュエリー アンティークジュエリー 金細工 スカラベ 縒り線 竜金 ブローチ
『黄金のスカラベ』
エトラスカンスタイル ブローチ
イギリス 1870年頃
Sold

デザインの1つ目の方向性が、古代らしい雰囲気を出すスタイルです。

太陽神アメンを象徴する雄羊の頭(詳細は『RAMS HEAD』をご参照ください)、豊穣や子孫繁栄の葡萄、聖なる甲虫スカラベなど古代らしいモチーフで、金細工技術を駆使して作られた作品です。

『RAMS HEAD』
ラムズヘッド プチ・ペンダント
イギリス 1870年頃
SOLD
エトラスカンスタイル ネックレス
イギリス 1870年頃
SOLD
エトラスカン・スタイルのラムズヘッドのラピスラズリのブローチ エトラスカン・スタイルのコーネリアンのスカラベを使ったスカーフリング
ラムズヘッド ブローチ
イギリス 1870年頃
SOLD
スカラベ スカーフリング
イギリス 1870年頃
SOLD

基本的にはゴールドだけを使い、細工を極めた作品が多いですが石を使った作品も存在します。左のラムズヘッドはエトルリアらしいモチーフですし、ラピスはエジプトのツタンカーメンにも使われるような古代の雰囲気たっぷりの石です。右のスカーフリングのスカラベは、19世紀中期にわざわざコーネリアンを彫って作られています。

古代エトルリアの巨人を彫ったコーネリアンのスカラベ 古代エトルリアのコーネリアンのスカラベのリング
『巨人伝説』
スカラベ シール リング

スカラベ:古代エトルリア 紀元前450年頃
シャンク:イギリス 1780-1800年頃
SOLD

HERITAGEの古代美術館に、GENの頃よりこれまでの44年間で過去にお取り扱いした古代の美術品のごく一部を掲載しています。

古代エトルリアは古代ローマと同化し、体制側に意図的に存在を消されてしまったため資料が極めて少なく、学術的な研究が進んでいません。

古代美術館には古代エトルリアの2つの宝物を掲載していますが、どちらもコーネリアンのスカラベです。

古代エトルリアのジャグラー(曲芸師)を彫ったスカラベ

『ジャグラー』
スカラベ インタリオ

古代エトルリア 紀元前4世紀
レッド・コーネリアン
SOLD

スカラベと聞くと古代エジプトのイメージが強いかもしれませんが、古代エトルリアは古代ギリシャ同様、世界4大文明の1つの発祥の地であり当時の最先端だった古代エジプトの影響を強く受けています。

このため、古代エトルリアや古代ギリシャからもスカラベモチーフの作品が出てくるのです。

私たちが古代美術をお取り扱いをするにあたり、本物であることは当然であって、古代美術についても通常のアンティークジュエリー同等、古ければ何でも良いとは考えていません。

デザイン的な素晴らしさや面白さがなければ価値はありません。その点で、私たちがお取り扱いできる数はさらに減ってしまうのですが、古代エトルリアの巨人や曲芸師がモチーフのインタリオは最高に面白いですよね。

19世紀のコーネリアンのスカラベ エトラスカン・スタイルのコーネリアンのスカラベを使ったスカーフリング
スカラベ スカーフリング
イギリス 1870年頃
SOLD

古代エトルリアの作品自体、私たちが扱いたいと思う魅力を持つか否かは別にしても、極めて現存数が少ない貴重なものです。

だからこそこの作品も19世紀中期頃に古代エトルリアのスカラベに触発されて、わざわざ新しくコーネリアンを彫ってスカラベを作り、エトラスカンスタイルの優れた金細工によってお金をかけてスカーフリングに仕立てられたのです。

知識階層の王侯貴族がオーダーして作られたメンズアイテムなので、かなりこだわってお金と手間、技術がかけられた作品となっています。

2.19世紀当時の流行とのコラボレーションによる新しいスタイル

<ヴィクトリアン中期の流行デザイン>

ハーフパール&ゴールドのサーベル型ジャボットピン クロークピン

『エレガント・サーベル』でご説明した通りヴィクトリア時代は64年弱あるので、その時代の中でも流行は様々に変化しています。

『エレガント・サーベル』
王室御用達EDWARD&SONS社製クロークピン(ジャボットピン)
イギリス  1880年頃
¥380,000-(税込8%)
バンデッドアゲートとゴールドで格調高い太陽を表現した、大英帝国を象徴するアンティーク・ブローチ

エトラスカンスタイルのジュエリーはヴィクトリアン中後期くらいに流行しますが、ヴィクトリアン中期と言えば大英帝国最盛期パクス・ブリタニカの時代に相当します。

大英帝国が世界の中心として君臨していた時代はもっと長いですが、パクス・ブリタニカの最も短い定義では、世界で最初に産業革命が起こった国として世界の工場として栄えていた1850-1870年頃までを言います。

『太陽の沈まぬ帝国』
バンデッドアゲート ブローチ
イギリス 1860年頃
¥380,000-(税込8%)
1861年のヴィクトリア女王とアルバート王配

アルバート王配が1861年に亡くなりますが、その前後10年くらいの期間ですね。

この頃はまだヴィクトリア女王夫妻がファッションリーダーでした。

リージェンシースタイルが生まれたジョージ4世のように、遊び人はセンスが良いのが通例ですが、真面目過ぎるほど超真面目だったこの夫妻の場合は正直センスは良くありません。

しかもヴィクトリア女王は極端に慎重が低かった上に太めの体型だったようです。

左の画像だとそう夫婦のバランス的にヴィクトリア女王も身長が低そうには見えないかもしれませんが、アルバート王配もドイツ人なのに167cmしかなかったそうです。

ヴィクトリア女王とアルバート王配(1861年)共に42歳頃

実際の女王のドレスを見ると、その体型を伺い知ることができますね。

ヴィクトリア女王は145cmに満たない身長ながら、結婚前に既に56kgあり、1880年代には76kgまで増加していたそうです。

ヴィクトリア女王の喪服
ウェディングドレス姿のヴィクトリア女王

若い頃はこの肥満体質をかなり気にしており、首相だったメルバーン子爵に相談したこともあったそうです。

ヴィクトリア女王(1819-1901年)20歳
メルバーン子爵ウィリアム・ラム

メルバーン子爵はヴィクトリア女王即位時の首相で、女王の寵愛を受けた人物ですが、1842年に政界の第一線を退いています。

ヴィクトリア女王は23歳以前に60代の子爵に相談した計算になりますね。

女王陛下にこう言ってはなんですが、何だかそんなことを気にする乙女心がめちゃくちゃ可愛いです。

守ってあげたくなっちゃいますね。こういう人間性もあって、アルバート王配も必死にヴィクトリア女王を生涯陰で支え続けたのかもしれませんね。

メルバーン子爵は「ハノーファー家はもともと太りやすい体質なのです」と若き女王を慰めたそうです。

メルバーン子爵ウィリアム・ラム(1779-1848年)65歳頃
摂政皇太子として有名なイギリス王ジョージ4世の若い頃 59歳頃のイギリス王ジョージ4世
イギリス国王ジョージ4世(1762-1830年) 左:18-20歳頃、右:59歳頃

先々代のイギリス王で叔父ジョージ4世は、大宴会で大酒飲みと放蕩の限りを尽くした不摂生ぷりっから、晩年の肥満体や身体を壊すのも納得です。1797年には体重が約111kg、1824年に作られたコルセットではウエスト約130cmに達し、1830年の亡くなる直前の67歳頃には体重は約130kgになっていたそうです。

ヴィクトリア女王

放蕩どころか宮廷内を禁煙にしたりするほど真面目なヴィクトリア女王が、そんな不摂生な生活をしていたとは思えません。

体質だったのでしょうけれど、何だか気の毒な話ですね。

イギリス女王ヴィクトリア(1819-1901年)
ヴィクトリア女王の父ケント公エドワード・オーガスタス

女王の父ケント公エドワードに関しては身長185cmのたくましい体つきで、ジョージ4世ら他の兄弟同様ゲスな人物ではあったものの、陸軍軍人としては同階級の間では人気者だった人物でした。

娘は父に似る傾向がある気がするのですが、ヨーロッパ人でありながらヴィクトリア女王が145cmにも満たなかったなんて不思議ですね。

ケント公エドワード・オーガスタス(1767-1820年)51歳頃
ヴィクトリアン中期のデミ・パリュール ヴィクトリアン中期のピアス

1861年にアルバート王配が亡くなって以降はヴィクトリア女王は長い喪に服し、華やかなファッションに身を包むことはもうありませんでした。しかしながらそれまではヴィクトリア女王がファッションリーダーでした。ヴィクトリア女王は国のトップですから自分を惹き立てることができる、自分に似合うものを身に着けます。

ふくよかで背が低い女性となると、必然的に体型に負けないゴージャスかつ可愛らしいアイテムになってきますよね。だからヴィクトリアン中期はこのようなスタイルのジュエリーが多いのです。

日本でも高度経済成長期やバブル期の頃はこのような着け映えする成金ジュエリーがアンティークジュエリーでも好まれて、一部の雑誌やメディアでは「アンティークジュエリー=ヴィクトリアンが最高!」と取り上げられたようです。

ヴィクトリアン中期のペンダント

しかしながらこのようなジュエリーを使いこなすには、今の日本人女性にはちょっと難しいのではないかと思います。

ふくよかな方だったとしても、西欧人の濃い顔立ちと日本人の顔立ちでは似合うものは異なりますしね。

ヴィクトリアン中期のリング

リボンモチーフでもヴィクトリアン後期以降に現れるような洗練された雰囲気のでざいんならば良いのですが、中期はコテコテで可愛らしすぎます。

身長が低い方や、かなり若い世代の方ならばまだしも、大体の大人の女性には使いこなすのが難しいのです。

ヴィクトリアン中期のブローチ

正直言うと、GENも私もかなり苦手なデザインが圧倒的に多いのがヴィクトリアン中期のジュエリーなのです。

もしかすると、ルネサンスもヘリテイジも何故か1850年代と1860年代のジュエリーが殆どないことに気づいておられる方がいらっしゃるかもしれません。

この時代に関しては、特に作りが悪くて駄目だとか、戦争など経済活動的に原因があったとかの理由はありませんが、二人ともデザイン的に受け付けないものが多いので扱っていないというわけです。

ヴィクトリアン中期のブローチ

<ヴィクトリアン中期の流行とコラボしたエトラスカンスタイル>

-ガーネットと金細工のコラボレーション-

ガーネットを使ったエトラスカンスタイルのジュエリー

詳細は『ハニー&シナモン』でご説明していますが、ヴィクトリア時代はガーネットが流行しました。そのガーネットと古代エトルリアに触発されて発達した金細工とのコラボレーションによって作られたエトラスカンスタイルのジュエリーが存在します。撚り線や粒金細工の存在が特徴です。ヴィクトリア時代に流行したイカの足タコの足(フリンジ)がデザインのポイントになっており、この時代らしさが現れています。

これはさらに当時流行のハエがカボション・ガーネットの表面にあしらわれています。

『美しき魂の化身』でご説明した通り、ハエは謙虚さの象徴として人気モチーフの1つでした。

撚り線細工はもはやオマケで、見事にヴィクトリア時代らしいヴィクトリアンジュエリーとして昇華していますね。

ただし日本女性に似合う雰囲気ではありませんし、私の好きなデザインでもないので絶対に買い付けないタイプです。

ヴィクトリアンのハエのピアス

-ペルジャン・ターコイズと金細工のコラボレーション-

ペルジャンターコイズを使ったものもあります。

ガーネット同様大きなターコイズは高いからなのか、このような小さいものを寄せ集めて大きく見せようとするスタイルが流行したようです。

ヴィクトリアンのターコイズのピアス
旅のお守りとしての天然トルコ石(ペルジャンターコイズ)を使ったヴィクトリアンのアンティーク・ゴールド・ブレスレット

無理に大きくて高そうに見せようとするのではなく、このように小さいことがむしろ魅力と言えるようなスタイリッシュで洒落たデザイン&優れた細工という方向性で作れば良いのにと思ってしまいます。

その方がむしろ高級感も出ると思うのですが、成金ジュエリーはお金をかけずに高そうに見せようとする心構えが伝わってきて、金銭云々以上に人間としての安っぽさが見え隠れする気がします。

そのあたりは私の好みを押しつける無粋な真似は必要なく、それぞれの個人の好みで良いのですが・・

『旅のお守り』
ターコイズ・ボール・ブレスレット
イギリス 1880年頃
SOLD
ヴィクトリアンのブローチ

同じものに見えますが、デザインが少し違うので別物です。大流行して似たタイプがたくさん作られたのでしょうね。

左のものは最悪で、作りが悪くてトルコ石が落ちてしまったらしく接着剤で固定されています。しかもそれが変色しています・・。

ヴィクトリアンのブローチ
ヴィクトリアンのターコイズとエトラスカンスタイルがコラボしたジュエリー

左2つも似ていますがよく見ると別物です。先ほどのブローチよりもイカの足が付いている分『高級品』として扱われたのでしょうか。気持ち悪くてこんな物が流行した理由が計りかねますが、流行とはそんな物とも言えますね。日本でもなぜガングロやヤマンバが流行したのか謎ですしね。

フクシアのヴィクトリアン中期のダイヤモンド・ブローチ

これはブラジル鉱山が枯渇し、ダイヤモンドの稀少価値がかなり高まっていた1860年頃の作品なので、想像を絶するお金をかけて作れているはずです。

流行に踊らされるような中産階級ではなく、間違いなく王侯貴族の特別なオーダー品です。

ヴィクトリアン中期のものですが、傑出したデザインは時代を超越し、現代人の感覚から見ても素晴らしいものです。

『フクシア』
ダイヤモンド ブローチ
イギリス 1860年頃
SOLD
フクシアのヴィクトリアン中期のダイヤモンド・ブローチ

優れた美的感覚を持つ人物は流行に左右されず、独自の美意識でジュエリーをオーダーします。

だからこそその優れたデザインが時代を超越し、時代も文化も異なる私たちを魅了することができるのです。

そういう時代を超越できるジュエリーこそ真に後世に残す価値があり、そういうものだけをヘリテイジでは扱っていくのです。

まあ、ヴィクトリアン中期に流行した駄目なジュエリーでも好きな方にとっては楽しむ価値はあると思うので、消耗品として楽しめば良いと思います。

ヘリテイジとして私が扱う価値がないだけです。

このあたりは作りは悪くないのですが、何しろデザインが悪すぎです。

ヴィクトリアンのターコイズのブローチ

ヴィクトリアンにこれほど悪趣味なデザインが流行しなければ、作りが良くてご紹介したいと思えるジュエリーがもっとたくさん存在したはずなのにと考えてしまいます。

とても残念です・・。

ヴィクトリアンのターコイズのブローチ
アンフォラ型 ターコイズ&ゴールド ピアス アンティークジュエリー

台頭してきた中産階級用の安物成金ジュエリーと比べて、このピアスは作りだけでなくいかにデザイン的に優れているかも感じていただけるのではないでしょうか。

古代世界で穀物などを入れるために用いられたアンフォラがモチーフとなっていますが、そのような考古学的なものに興味を抱くことができるのは教養や知識のある階層だけです。

考古学的なモチーフやジャポニズムなど、王侯貴族で知識階層の人たちが好むモチーフで作られたジュエリーは、教養のない中産階級ウケするものではありません。

だからこそ王侯貴族が特別オーダーで作る場合が多く、特に優れた作りとデザインのジュエリーであることが多いのです。

『古代アンフォラ』
ターコイズ&ゴールド ピアス
イギリス 1860-1870年頃
SOLD

-アメジストと金細工のコラボレーション-

これもエトラスカンスタイルのネックレスです。

これを愛用した方には本当に大変に申し訳ないのですが、一瞬見たとき「ダッサーッ」と驚いてしまいました。

巨大なビーズを通しただけのちゃちな作りのアクセサリーに見えて、アンティークジュエリーだとは思いませんでした。

ヴィクトリアンのアメジストとエトラスカンスタイルのコラボ・ネックレス

スーパーに併設されてあるアクセサリー売り場とかで似たようなものを見たことがあるなぁと思ってしまいました。

こんな感じのネックレスです。

色がゴテゴテしていない分、こちらの中古アクセサリーの方がデザイン的にはまだマシなくらいです。

中古のガラスアクセサリー

よく見るとゴールドの珠には1つ1つに撚り線細工が施してあります。

さほどレベルは高くありませんが、一応はそこそこ手間をかけて作られたことが分かります。

ヴィクトリアンジュエリーのパーツの拡大
ヴィクトリアンのアメジストとエトラスカンスタイルのコラボ・デミパリュール

これは同系統のハイクラス品です。アメジストのカットや撚り線細工など、作りには十分に手間や技術がかけられています。そのような観点からすれば、なかなか面白い作品です。でも、何でこうゴテゴテしたセンスのないデザインで作っちゃったのでしょうね。もしかすると欧米人にはこういうものはウケが良いのかもしれませんが、一般的な日本人に合うデザインだとは思えないので残念ながら扱いません。

先ほどの簡素なネックレスと比較すると格段に手間も技術もかかっているハイジュエリーですが、デザイン一つで手間と技術の壮大な無駄遣いになってしまうものですね。

本当にこの時代のジュエリーは見ていて勿体ない、残念な気分になってしまいます。

ヴィクトリアンジュエリーのパーツの拡大

デザインも作りも優れた宝石を使ったエトラスカンスタイル・ジュエリー

エトラスカン・スタイルのアメジストのブローチ

GENが扱った透明な宝石を使ったエトラスカンスタイルのセンスの良いジュエリーはないのか丹念に探してみたところ、7年ほど前に扱った2点だけ見つかりました。

1つがこのアメジストのブローチです。

拡大してるので迫力がありますが、実物は直径3.5cmのとても繊細な作品です。

大きさを想像すると驚異的な細工であることが分かりますし、これだけ拡大して粗が見えないのが見事です。

繊細な撚り先や粒金細工とは対照的な、外周の花びらのようなパーツのシンプルながらも上質な作りが面白く、独特の雰囲気を放つ素晴らしいデザインのポイントとなっています。

エトルスカン・スタイル アメジスト・ブローチ(ロケット付き)
イギリス 1870年頃
直径3.5cm
SOLD
エトラスカン・スタイルのアメジストのブローチ

立体的な作りで、裏側にはロケットも付いた上質な作りです。

だからこそアメジストも上質なものが使われています。

直径たった3.5cmの上質で小さな宝物は、通常のヴィクトリアンの安物成金ジュエリーとは真逆の存在です。

こういうものこそ私たちが最も好む宝物なのですが、いかんせん作られた数が少ないので滅多に出てこないですね。

エトラスカン・スタイルのダイヤモンドのブローチ

これも7年前の宝物です。出てくる時は続いて出てくるのに、ある時を境にピタっと出てこなくなるものなのだそうですが、過去を見ると確かにそのようです。

とは言ってもエトラスカンスタイルの透明な宝石が付いた新しいスタイルの優れたジュエリー自体、7年間でこの2点だけのようです。

エトルスカン・スタイル ダイヤモンド・ブローチ
イギリス 1880年頃
大きさ:1.8×4.5cm
SOLD
エトラスカン・スタイルのダイヤモンドのブローチ

GENも「モダンなエトラスカンと言いたくなる」と評していますが、ダイヤモンドのクリーンで強い煌めきはモダンな印象が強いです。

エトラスカンスタイルのアクアマリンを使ったアンティーク・ネックレス

そんな中で、かつて見たことのないアクアマリンを使ったエトラスカンスタイルのジュエリーが出てきたのです。

しかもアメジストとダイヤモンドのブローチは2点とも宝石がメインと言うよりは優れた金細工への『あしらい』や『引き立て役』という印象でした。

デザインの中で、宝石が主体と言える作品は初めてだったのです。

そうは言っても髪の毛より細い、これまででトップクラスと言える撚り先細工が施してあるので、金細工の観点からも凄い宝物なのですが・・。

『エトルリアの知性』
エトラスカンスタイル アクアマリン ネックレス
オーストリア? 1870年代
SOLD

アクアマリンを使ったエトラスカンスタイルのジュエリー

エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク
そこにこのブレスレットがタイミング良く出てきたからビックリなのです。『エトルリアの知性』を見ながら、あらゆる宝石の中でなぜアクアマリンを使ったのかは不思議に思っていました。
エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク
ヴィクトリア時代に流行したガーネットやアメジストのような色の濃い宝石だと宝石ばかりが目立ち、せっかくの金細工に目が行きにくくなるかもしれません。一方で完全に無色のロッククリスタルではちょっと物足りないですし、ダイヤモンドは煌めきが強すぎてやはり金細工が目立たなくなってしまいそうです。
エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク
ピンク系だと愛らしい雰囲気になりますし、イエロー系だとゴールドに同化してしまって宝石が目立たなすぎです。考古学風ジュエリーという知性的なジュエリーには、洗練されて落ち着いた印象の淡いブルー系の色が一番しっくりきます。
エトラスカンスタイル アクアマリン ネックレス アンティークジュエリー

現代の加熱アクアマリンと異なり、古い時代の非加熱の上質なアクアマリンは違和感のあるどぎつい水色ではありません。

また上質な石は非常によく煌めき、とても美しいのです。

『エトルリアの知性』
エトラスカンスタイル アクアマリン ネックレス
オーストリア? 1870年代
SOLD
エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク

同じくらいの時代に同じ考え方の人がいて、それぞれのジュエリーを作ったということなのでしょう。

エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク
ブレスレットのアクアマリンも輝き見事な美しい石が使用されています。

優れた金細工

エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク
美しいアクアマリンをセットした部分の金細工は特に圧巻です。見所がいくつもあります。
エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク

左の花びらのような細工は、ジョージアンのゴールドジュエリーによく見られるカンティーユと言われる金細工です。

粒金や撚り線と同じで、古代エトルリア(紀元前500年頃)ですでに優れた物が作られているのです。

さらに左の古代エトルリアの耳飾りでは、滑らかな表面の粒金とマットな表面を持つ粒金が使い分けられていることにご注目ください。

《参考》金細工の耳飾り
古代エトルリア 紀元前530〜480年
大英博物館蔵
エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク
実はこの作品にも同じように艶やかな粒金とマットな粒金がデザイン上で使い分けられています。
エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク

この画像では、中央に配された粒金だけマットな表面になっています。

全体の構造やバランスではなく雰囲気にだけ影響を与える、デザイン上のちょっとした気遣いはもちろん、これを実現できる技術にも驚かされます。

1粒1粒作って蝋付けされた粒金もサイズがグラデーションになっているのが良いですね。

現代ジュエリーではこの手間がかけられないので、全て同じ大きさのパーツを使ったゴツくてダサい印象のジュエリーしか作ることができないのです。

エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク

外周の丁寧で美しいミルも圧巻ですね。繊細なミルがあることで、ゴールドの素材が金ぴかで安っぽい輝きではなく格調高い雰囲気を放つことができるのです。

日本人がゴールドよりもプラチナを好む傾向がある理由の1つが、ゴールドには金ぴか成金的なイメージがあるからです。ゴールドも表面にきちんとマット仕上げをすれば上質で格調高い雰囲気が出せるのですが、磨いてツルツルにしただけだと安っぽい輝きになりがちなのです。

エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク

全体のこの透かしの雰囲気も実に美しいものです。金が史上最高に高かったジョージアンのカンティーユだと、どうしても金を使う分量が少なく、見た目は繊細で美しいながらもブレスレットに使うには強度の観点から気を遣わなければならなかったりします。このブレスレットのように、ゴールドラッシュ以降にトップクラスの技術で作られた作品はゴールドも十分に使われており、超絶技法の細工もあってジュエリーとしても楽しいのです♪

※ゴールドラッシュについてはこちらもご参照ください

エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク

アクアマリンがセットされたパーツ以外は、長方形のフレームに渦巻き模様のパーツがセットされた、透かしが美しい格調高い雰囲気のデザインになっています。それらが 2つずつのゴールドのリングで連結されています。とても珍しいデザインです。ブレスレットとして着けたとき、シャラシャラと気持ちよく手首に馴染みます。

クラスプも同じデザインと細工にしてあるのが最高です。ブレスレットは360度が人目につくので、メインのパーツがどれだけ素晴らしくても、クラスプがいまいちだとテンションが下がってしまいます。こういう工夫がしてあると腕に付けた時に一段と見栄えがするものですし、着けていて楽しいのです♪

 

粒金のグラデーションと大小のカンティーユそれにミルが打たれた渦巻き状の透かしは、とても魅力的でエトラスカン・スタイルのジュエリーの中でもトップレベルの作品だなと感じさせられます。

裏

これだけのハイクラスのジュエリーともなれば、裏側も完璧です。

すべてのパーツが、持ち主以外は見ることのない裏側まで丁寧にミルが打たれています。素晴らしい技術で作られた優れた金細工、どこにも手を抜く気持ちが見られない良いものを作ろうとする徹底した仕事ぶり、その全てがとても魅力的で、エトラスカン・スタイルのジュエリーの中でもトップレベルの作品だと感じます。

 

エトラスカン・スタイル ブレスレット&ネックレス

ありがたいことに、ヘリテイジで奇跡的に巡り会ったこの2つの宝物は一緒に次の持ち主の元に旅立つことになりました。

古代エトルリアのテラコッタの女性像

温厚で宴会と音楽を好み、贅沢を愛し、裕福で文化的にも豊かな生活を送っていたと言われる古代エトルリア人。

他の民族と違って女性の地位も高く、男女平等の社会だったと考えられています。

『英雄ヘラクレス』などでもご説明している通り、古代人は現代人より遙かに知能が高く賢かったようです。

エトルリアは高度な文字文化も持っており、左の女性のような知性ある美女がたくさんいたのかな、なんて想像してしまいます。

テラコッタの女性像
古代エトルリア 紀元前4世紀後期-紀元前3世紀初期
メトロポリタン美術館蔵(wikipediaより)
エトラスカン・スタイル ブレスレット アンティーク

そのようなエトルリア世界の知的で美しい女性たちに想いを巡らせて、このアクアマリンのエトラスカンスタイルのブレスレットもネックレスも作られたはずです。

知的なものを好む19世紀の美しい王侯貴族の女性たちによってオーダーされ、身に着けて楽しまれてきたであろう2つのそれぞれの宝物。

それがヘリテイジで巡り会い、現代に生きる古代エトルリアの貴族や19世紀の知的階層の貴族の女性たちに通ずる知性や美しさを備えた女性の元へと一緒に旅立っていく・・。

同じような感性を持つ人々は生きる時代が違い、直接会うことは叶わなかったとしても宝物を通じてつながっていく。

現代、このようなジュエリーを自分自身でオーダーして楽しむことは叶いませんが、異なる時代の同じ感性を持つ人たちとのご縁を楽しめるのは、今の時代だからこそできるアンティークジュエリーの楽しみ方なのかもしれませんね。

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