No.00248  目眩ましのダイヤモンド

ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー
このような19世紀のトップレベルのダイヤモンド・リングを見ていると、ダイヤモンドが4Cでコントロールされるようになって如何に魅力の無い物になってしまったかが良く分かります。
ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー
現代のダイヤモンドジュエリーを見ても全く魅力を感じず、「ダイヤ」「ダイヤ」と言う人が一体何を喜んでいるのかさっぱり分からなかったのですが、本来の魅力が引き出されたダイヤモンドにはダイヤモンドにしか出せない衝撃的な魅力があります。それに気づかされました!
ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー

『目眩ましのダイヤモンド』
ダイヤモンド 一文字リング

イギリス 1860年頃
クッションシェイプカット・ダイヤモンド、18ctゴールド、シルバー
サイズ 15,5号
重量3,2g
SOLD

見事なまでにクリーンで煌めきの美しい特別な石、そして19世紀最高水準の彫金と高度な石留という細工の魅力までも揃った、魅力満点の指輪です。

実物大
←↑実物大
ブラウザによって大きさが違いますが、1円玉(直径2cm)を置いてみれば実物との大小の比率が分かります。

ダイヤモンドの価値の基準

メアンダー模様のアールデコのダイヤモンド・ネックレス アンティーク・ジュエリー ギリシャ雷文

「そういえば・・。」と、ふと思ったことがあります。

ヘリテイジをオープンして1年4ヶ月ほど、その間いくつもの素晴らしいアンティークのダイヤモンドジュエリーを揺るぎない自信を持ってご紹介してきました。

『財宝の守り神』ではアンティークのダイヤモンドの歴史を広い範囲で網羅し、『ダイヤモンド・アート』ではカットによって大きく異なる多彩な表情の楽しさについてご説明するなど、アンティークのダイヤモンドの魅力をお伝えするためにかなり情報にも力を入れてきました。

でも、現代のダイヤモンドの価値基準である『4C』については全く語ってこなかったなと思ったのです。

『ETERNITY』
メアンダー模様ダイヤモンド・ネックレス
イギリス 1920年代
¥883,000-(税込8%)

正直言うと、私がダイヤモンドジュエリーに求めるのは見て自分が美しいと思えるか、ただそれだけです。

高いからとか、ブランドだからとか、権威のお墨付きだからとか、そんなことはどうでも良いですし、自分にとって大して興味がない人からの褒め言葉も私には価値がありません。

18世紀のステップカット・ダイヤモンドのクロス・ペンダント アンティークジュエリー

わざわざヘリテイジのカタログをご覧くださっている方は、きっと私と同類の方が殆どだと思っています。

自分の価値基準で判断できる、現代においては稀有な存在の人たち・・。

そんな方々を私は優れたアンティークジュエリー、それをオーダーした古の王侯貴族、作った職人、大切にしてきた歴代の持ち主たち同様、とっても愛おしく思っています。

『古のモダン・クロス』
ステップカット・ダイヤモンド クロス
フランス 18世紀初期(1700年〜1750年頃)
¥486,000-(税込8%)

そんな皆様はおそらく私同様、現代のダイヤモンドの4Cなんてそもそも興味がない方、調べる時間が勿体なく感じる程度の興味しかない方が大半だと思います(笑)

興味がある物についてはもっと知りたいと思えても、こんな"美を感じられないただの工業製品"に労力と人生の大切な時間をかけるのは嫌ですからね〜。

そういうわけで、現代の宝石学を熱心に学ぶ人たちの行動や情熱が全く理解できませんでした。

【現代】ダイヤモンドリング

でも私も一応ジュエリーの専門家ですし、アンティークの時代から歴史は現代まで連続していることには間違いないので、そろそろ少しは把握し、皆さんにもご説明しておこうと思った次第です(笑)

【現代】ダイヤモンドリング

現代の基準4Cとは

現代のダイヤモンドの価値を決める4Cとは米国宝石学会(GIA)が制定した、カットされた宝飾用ダイヤモンドの品質を評価する国際基準です。

色(color)、透明度(clarity)、研磨(cut)、重さ(carat)の4つの基準で評価し、頭文字をとって4Cと呼ばれています。

GIAのダイヤモンドの4C基準

4Cの色(color)

色は特別な色を持つカラーダイヤモンドを除いて無色に近いほど評価が高く、イエローがかっているものほど評価が下がります。

最高は『D』クラスの評価が付きます。

DEF:無色透明

GHIJ:ほぼ無色

KLM:かすかな黄色

NOPQR:非常に薄い黄色

ST:薄い黄色

UVWZ:黄色

有名なティファニーのイエロー・ダイヤモンドを使ったRossete necklace(1961年)

世界的に有名なティファニーのイエローダイヤモンドは黄色ですが、かなり評価が高いです。このネックレスのデザインはイケていませんし、オードリー・ヘプバーンのような気品ある雰囲気の美女が着けていても魅力あるジュエリーにはどうしても感じられませんが、ダイヤモンドは綺麗だと思います。

チャールズ・ルイス・ティファニー

この有名なイエローダイヤモンドはダイヤモンドラッシュに沸く南アフリカで、1877年にキンバリー鉱山で発見された石です(※南アフリカのダイヤモンドラッシュはこちらをご参照ください)。

1878年にティファニーの偉大なる創業者チャールズ・ルイス・ティファニーが購入し、パリで現在のクッションシェイプにカットしました。

チャールズ・ルイス・ティファニー(1812-1902年)
1900年のパリ万博に出品されたティファニーのモンタナサファイアとデマントイドガーネットをつかったアイリス

『天空のオルゴールメリー』でもご紹介したした通り、創業者の作り上げたティファニー最盛期は最高のデザイナーであるジョージ・パウルディング・ファーナム、最高の宝石学者ジョージ・フレデリック・クンツ、最高の職人の全てが揃い、万博でグランプリを受賞した『アイリス』のような素晴らしい作品が生み出せる状態にありました。

1900年のこの『アイリス』が頂点だったかもしれませんね。

その後、カリスマ創業者チャールズは1902年に亡くなり、ティファニーの数度に渡る万博受賞の功労者だった天才デザイナー、ファーナムも1908年にはティファニーを去ります。

1900年パリ万博グランプリ受賞作『アイリス』(1900年頃)ウォルターズ美術館蔵

戦後、それも1961年頃のジュエリーともなると、どんなに良い石で作ってもせいぜいこの程度です。

解像度の良い画像がないので作りは性格には判断できませんが、まずデザインが全くイケてません。

この時代のアメリカ人の成金にはウケたのかもしれませんが・・。

Rossete necklace(1961年)

1995年に作り替えられて話題になりましたが、鳥の造形も作りもヤバいですね。

ガラスなどで作ったファンシーアクセサリーだと言われても、私は100%信じる自信があります。

とてもジュエリーには見えません。

でも、雑誌で取り上げられて権威が褒めることによって、「これが良いと思わないと私はセンスがないのかしら?」と不安になり、「良いと思わなくては!」と自身を洗脳する人もいると思います。

そんな人には「大丈夫、私も全然良いと感じません。」と言ってあげたいです(笑)

Bird on a Rock(1995年)
現在のイエローダイヤモンドの姿(2012年)

着用して宣伝してもらわないと儲けにならないので、全世界に向けて宣伝効果の高いレッドカーペットなどで使ってもらいやすいようネックレスに作り替えたようです。右の画像は2019年、第91回アカデミー賞授賞式でのレディ・ガガです。

ダイヤモンドは黄色いし、昔のカットなのでキューレットもカットされており4C基準で判定すると相当価値が低いダイヤモンドのはずですが、「これは特別なんです」という扱いが笑えます。ルールは民衆を思考停止にし、体制側に都合が良くなる状況を作り出すために設定されるものです。

都合の良い基準を設定し、それに合わないものは都合が悪いので排除。基準に外れながらも自分たちにとっては都合が良くてPRしたいものだけは、「これは例外ですよ」と恥ずかしげもなく特別扱い。どういう基準で選んでいらっしゃるかというと、自分たちにとって都合が良いか否かだけです。『スタイリッシュ・ゴールド』でも物の良し悪しを判断するための物差しについてお話しましたが、『物差し』の正体を知らないと、無価値なものに高いお金を出して裏で馬鹿にされるだけの『喰い物』にされてしまうのです。

何が美しいのか自分では分からない人は高価なジュエリーなんて着けなければ良いのです。

お金の無駄です。自分の大切な時間(命)を使って得るものがお金です。自分が良いとはっきり分かるものに使うべきです。

自分では価値が分からないのにとりあえず高級なもの(ジュエリー)を欲しがる、センスも教養も知識もない中産階級が増え、その階級が市場をコントロールできるほどお金を持つようになったから、次第におかしなことになっていったわけです。

イエロー・ダイヤモンドのアンティーク・リング アンティークジュエリー

4Cなんてなかった時代。どういうダイヤモンドが美しいのか、自分の美的感性で直感的に判断できる人たちがお金をかけてジュエリーをオーダーできた時代に作られたジュエリーは、やはり心から美しいと思えるものです。

左のイエローダイヤモンドも正当に評価され、最高の作りのリングとして仕立てられています。

ティファニーのダイヤモンドは大きい割には黄色が濃くありません。

このリングのイエローダイヤモンドは迫力ある十分な大きさがありますが、あくまでもリングサイズなのであれほど大きくはありません。

『イエロー&ブルー・インパクト』
イエローダイヤモンド・リング
イギリス 1880年頃
SOLD
アンティークのイエロー・ダイヤモンドのリング アンティークジュエリー

それにも関わらず、はっきりとイエローを感じる美しい石です。

昔の王侯貴族はブランド名ではなく自分の美意識でジュエリーや石の価値を判断していたのです。

雫型オパール ネックレス アンティークジュエリー

もう1つ、絶対的な美的感覚を持つ古の王侯貴族が4C以外の基準でダイヤモンドの色を美しいか否か、価値あるか否か判断していたことが分かるジュエリーがあります。

『シャンパーニュ』は360度立体的でしかも美しい遊色を持つ、貴重な雫型オパールで作られた最高級のエドワーディアンのネックレスです。

この美しいオパールばかりに目がつい言ってしまいますが、今回は一番上のシャンパンカラーのダイヤモンドにご注目ください。

他のカラーレス・ダイヤモンドはプラチナのフレームですが、シャンパンカラー・ダイヤモンドだけはこの時代にルビーやサファイアなどの色石に施されるのと同様、鮮やかな色をより惹き立てるためのゴールドのフレームでセッティングされています。

『シャンパーニュ』
雫型オパール ネックレス
イギリス 1910年頃
SOLD
雫型オパール ネックレス 裏

このネックレスの作者の徹底したダイヤモンドの色味への意識の高さは、裏側を見ると如実に表れています。

プラチナがジュエリーの一般市場に出始めたばかりの、プラチナがゴールドに比べてはるかに高かったエドワーディアンの時代に作られたジュエリーなので、小さなダイヤモンドが敷き詰められた傘のようなパーツの裏側はゴールドバックになっています。

しかしながら傘の上、そして傘の下に下がる3つの少し大きなダイヤモンドの裏側はゴールドバックにせずプラチナになっています。

プラチナとゴールドをそれぞれ叩いて鍛えて、2つを貼り合わせて作るゴールドバックはかなり手間と技術が必要な作りです。

普通に考えると人件費や技術料がかかるので高くつくはずです。

それでもこういう作りなのは、それらの費用を考慮してもプラチナ単体で作る方が高くつくくらいプラチナが素材として高かったからです。

雫型オパールとシャンパンカラー・ダイヤモンドのエドワーディアンのネックレス アンティークジュエリー

『シャンパーニュ』のデザイン上のポイントとなる4つのダイヤモンドのセッティングが裏側までプラチナなのは、ゴールドバックにすることでダイヤモンドの輝きに金の色味が反映されることを嫌ったからです。

使っているダイヤモンドが全てクリアな石であれな、金の色を反映すると言って普通に見る分には分からないような差なので、ここまで気を遣う必要はなかったでしょう。

でも、シャンパンカラーのダイヤモンドの美しさを強調するためには、無色のダイヤモンドは徹底して無色であるべきと考えられたからこそ、これだけお金をかけた作りが施されたのです。

雫型オパールとシャンパンカラー・ダイヤモンドのエドワーディアンのネックレス アンティークジュエリー

エドワーディアンの時代に作られたオールプラチナのジュエリーは、普通は年代が特定できないため1点しか存在が確認できていませんが、相当な高級品です。

『シャンパーニュ』は一見オパールだけが見所のジュエリーに見えるかもしれませんが、シャンパンカラー・ダイヤモンドをメインにしたジュエリーと言っても過言ではないほど、このダイヤモンドを惹き立てるためだけに莫大なお金がかけられたジュエリーなのです。

4Cだけで判断する人だと「黄ばんでいる」とコメントしたりするのかなと思うと恐ろしいです。絶対そういう人にはヘリテイジの宝物は託しちゃ駄目ですね。相応しい方の元に旅立てるようにするのもHERITAGEの務めなのです。 おかげさまで、この宝物の現在の持ち主も宝物のような方です♪

王侯貴族でなくとも、現代の日本にはその人たちに匹敵するどころかそれ以上の美的感覚を持つ人たちも存在します。

きっとご本人たちも自覚されている通り稀有な存在ですが、GEN曰く日本人が一番アンティークジュエリーの繊細な美しさや細工が分かるし、世界一そういう人の割合が多いと言っていました。私たちにとってそのような方たちは、稀少なアンティークジュエリー同様、存在してくださってありがとうと感じる宝物のような存在なのです。

4Cのカラーチャート

23段階に分けられている『カラー』の項目ですが、例えば隣り合うクラスの石を単品で見たときに、ご自分の目で確実に判断できる自身はありますか?

鑑別士が鑑別する場合、背景や照明など全ての条件を整えた上で、マスターストーン(基準石)と比較することで判断されます。当然ながらどちらにもとれる場合は人によって差が出ますし、ジュエリーに加工された後だとプロでも違いは分からないそうです。

そんな意味があると思えない重箱の隅をつっつくような時間の無駄をなぜやるのかと言うと、お墨付きを与えてダイヤモンドを高く売ることができるようになるからです。

そんなわけで、透明に見えるだけでありがたがって買う消費者が存在するせいで、そんな人たちを馬鹿にするかの如く、黄ばみのあるダイヤモンド・ルース表面に薄く青色の皮膜をコーティングして販売する業者もいるようです。これはそのうち皮膜が剥がれてきます。さすがに余程の怪しい業者しか取り扱わないような代物のようですが・・。

4Cの透明度(clarity)

4Cのクラリティの判断基準

クラリティの判断基準は上のように定義されています。一見尤もらしい文章で定義されていますが、かなりあやふやに感じませんか?

10倍の拡大で内包物の発見ができるかどうかはその人の『目』自体の性能の良さや、目で見た物を情報処理する『脳機能』の良さに依存します。さらに10倍の拡大で内包物の発見が「非常に困難」「困難」「比較的容易」ってどう判断するんだろうと思ってしまいます。胡散臭さ満載です。内包物の個数に関する言及もなく、内包物がウジャウジャあっても微少であれば、程度の高い石と鑑別されるのでしょうかね。

こういう文章を鵜呑みにできる人は現代の宝石を価値あるものと信じ、高い金額を払って購入できるのでしょう。また、さらに興味のある方はこのような文章を熱心に読み込み、記憶するなどして宝石学を勉強されるのでしょう。瞬間的に胡散臭さを感じてしまう私には、どうしても現代宝飾業界に近づく気になれないんですよね。これは私がアンティークジュエリー・ディーラーだからではなく、学生やサラリーマンだった時代からそうでした。

現代のダイヤモンドリング

現代ではあまりにも無個性で完全無欠のダイヤモンドが求められ、人もモノも不自然なまでに修正されまくった画像でPRが行われるので、ダイヤモンドは完璧なものが当たり前というイメージに洗脳されている方も多い気がします。

ちなみに私も雑誌などで見たまんま、ジュエリーに使われるダイヤモンドにはインクリュージョンなんてないのが当たり前だとこの仕事を始める前はなんとなく思っていました。ダイヤモンド自体に興味がなかったので、あってもなくてもどうでも良いというのが本音でしたが・・(笑)

合成ダイヤモンド
CVD法により合成し、宝石カットを施した無色透明のダイヤモンド(サイズ不明)Wikipediaより

今や合成技術もジュエリーへの実用段階に達したダイヤモンドですが、通常の天然ダイヤモンドは自然から採れる鉱物なので、そもそもが完全に内包物がなく、結晶構造が完璧であること自体がありえないのです。物理化学的に考えて、エントロピー的にあり得ません。(笑)。

科学的な話はどうでも良いのですが、実際のダイヤモンドには様々な種類の内包物が存在します。

ただし実際のダイヤモンドはかなり煌めくので、色の付いた内包物以外は案外見た目にはあまり邪魔ではなかったりします。

全てのタイプの内包物が揃った珍しいダイヤモンドのルース

色付きはさすがに目立ちますね。

でも、これも現代の科学技術をもってすれば目立たなくして売り物にできます。

ルネサンスのHPでもダイヤモンドのページでご説明しているのでご存じの方もいらっしゃると思いますが、レーザー・ドリリングという手法です。

目立つ内包物があるダイヤモンドのルース

ダイヤモンド表面からレーザーで掘削し、内包物まで穴を貫通させます。

目立つ内包物があるダイヤモンドのルース
レーザードリリングによる処理前と後

そこから強力な酸を流し入れ、内包物を溶かしたり漂白して見えなくする方法です。上は内包物部分にピントを合わせて撮影され、しかも拡大した静止画なので目立つように感じますが、肉眼では気にならない程度に見た目が改善できます。ジュエリーとしてセットしてしまえばなおさら目立たなくなります。

それでもできてしまった空隙が目立つようであれば、フラクチャーフィリングと言ってダイヤモンドと屈折率が近い物質を充填することでクラリティを改善する方法もあります。

処理前 処理後

レーザードリリングを行った痕跡は10倍ルーペで確認することが可能で、鑑別書にはレーザードリルホール(LDH)と記載されます。

「えっ?!」と思われた方もいらっしゃると思いますが、肉眼ではLDHは見ることができないほどの小さな穴です。

レーザードリリング実施後のレーザードリルホール
レーザードリリングによる処理前と後

「ダイヤモンドなんてたくさん採れるのだから、何もど真ん中に目立つ内包物があるようなこんな石をわざわざ使わなくても・・」と思ってしまいますが、大きなダイヤモンドになればなるほど稀少性は指数関数的に増大します。たくさん採れると言っても大半は小さな石で、やはり大きなダイヤモンドは現代でも貴重です。

だから石だけが価値の簡素な作りのペンダントでも、汚らしいダイヤモンドであるにも関わらず、2ctというだけで数十万円の価格が提示されるのです。

現代の約2ctの天然ダイヤモンドのペンダント

上は変に画像加工して不自然に光らせてありますが、実際はこんな感じの約2ctルースをペンダントにしてくれるそうです。

購入された方が満足ならば構わないのかもしれませし、幸せならばむしろ幸せを提供する良い店と言えるのかもしれませんが、大きくても価値があると思えない屑石に数十万円の値段を付けて販売するのはどうなんでしょうね。

おそらくはこれもヴェブレン財だと思います。安くし過ぎても安物の印象が強くなり、買いたいテンションとならず買ってもらえないし、手を出せないほど高すぎても駄目。

現代の約2ctの天然ダイヤモンドのルース

左はカラーとカットは最高ランク、クラリティは2番目のランクの4C基準ではかなり上質とされる石です。

クラリティは最高ランクではありませんが、これだけ大きな石なのでこのサイズからすると最高ランクと言っても良いです。

そういう石はルースだけで900万円近くするわけです。

2.06ct D IF Excellent ダイヤモンドのルース(8%税込で約895万円)

数百万円は出せない人たちが、数十万円で一応サイズだけは2ctのお値段以下の価値しかないダイヤモンドを身に着けて喜ぶという・・。

安物買いの銭失いとはこのことです。

こんなみみっちいものを着けるくらいならば何も着けない方がマシだと思ってしまいます。

現代の約2ctの天然ダイヤモンドのルース
【参考】10.213カラットの天然ダイヤモンド(ペンダント加工込、鑑別証代別途、税込600万円)

このルースはこれだけ汚らしくても10カラットオーバーで600万円です。大きなダイヤモンドというのは本当に貴重なのです。600万円でこれを欲しいと思う人がいるのかは疑問ですが・・(笑)

これを見るとやり過ぎじゃないか、処理の手間と費用を考えるとやる必要があるのかとも感じます。

でも、綺麗に見える大きい石であれば十分に高値で買う人たちがいるので、やる価値があるのです。

レーザードリルホール
約2カラットのオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド ブローチ アンティーク・ジュエリー

その観点からすると、ダイヤモンドラッシュが始まった直後で現代のようにダイヤモンドが潤沢にはなかった時代において、これほどまでに美しい約2ctのダイヤモンドというのは奇跡というほど稀有な存在なのです。

だからこそそれに相応しいデザインと細工が施され、トップクラスのジュエリーにされたのです。

『財宝の守り神』
ダイヤモンド ブローチ
フランス 1870年頃
¥5,800,000-(税込8%)

ちなみに2000年に入ると新たにパルスレーザーを使う手法が開発されました。

それまではレーザー掘削によってルーペで確認できる穴が開いていましたが、表面にパルスレーザーを当てることで穴ではなくひび割れを発生させ、そこから酸を浸透させて漂白処理します。

レーザードリリング装置

肉眼でこの処理を確認することは困難ですが、それでもなるべく目立たぬよう、上から見たときには確認できない角度で内包物までの経路が作られます。

ダイヤモンドを横から見れば筋が見えますが上からだと点にしか見えないので、ジュエリーになってしまえば素人ではなおさらルーペを使っても分からないと思います。

レーザードリリング実施後のレーザードリルホール
フェザーインクリュージョンのエンハンスメント処理前と後

色の付いた内包物以外にも、様々なエンハンスメントの方法が存在します。新たな手法の開発と、それを鑑別する手法の開発はいたちごっこです。エンハンスメントの手法は多大なる研究開発費を投入して開発された高度な企業秘密でもあるので、すべてが開示されることもありません。

アンティークのダイヤモンドは汚いと思われている方も少なくないように思いますが、それでは現代のダイヤモンドがすべて綺麗かと言うと実はそうではないのです。

様々な処理については、ルネサンスHPでGENがまとめたページもぜひご参照ください。

エンハンスメント処理前と後のダイヤモンド

4Cの研磨(cut)

これはラウンドブリリアンカットにのみなされる評価です。

理想とされるカットにいかに近いかです。

EXCELLENT、VERY GOOD、GOOD、FAIR、POORの5段階評価です。

4Cのカットの基準

そうは言ってもEXCELLENT、VERY GOOD、GOODまでは目で見ても違いが分からないという感想が巷の声です。

FAIR、POORは意識すれば違うかもねと分かる程度ですが、ジュエリーとして身に着けた場合、適切な方向からライトを当てて真正面から覗き込むなんてことはまずあり得ませんから、真の意味でジュエリーの価値を評価するもの足り得ません。

「石コロの価値=ジュエリーのすべての価値」と見なす現代ジュエリーでは、まあ意味があるんでしょうかね。

あくまでもルースの状態で、五十歩百歩の違いを区別して権威付けして高く売るための物差しです。

カットのランクによる違い

もはや人の感覚で判断できる領域ではないので、専用の機械で判別します。

人間が美しいと思えるかどうかが大事だと思うのですが、機械様が良いと判定なさるかどうかが拠り所な人が多いようです。

美しさの判断まで機械に依存しちゃうなんて、AI時代が到来したら本当に大丈夫なんでしょうかね〜(笑)

カットのランクによる違い

AI時代に生き残れるのは、ブリリアンカットを「価値あるもの」と世の中の意識に擦り込ませて儲けたような、市場をコントロールする側になれるような人たちでしょう。

薄っぺらいブリリアンカットは本当に儲かります。

アンティークのダイヤモンドとブリリアンカット・ダイヤモンドの違い

例えばこの正八面体の原石からカットする場合、大きめのブリリアンカットのルースを2つ得ることができるのです。

アンティークのダイヤモンドのように厚くカットすると、オマケで得られるのは小さなローズカットくらいです。

同じ原石からオールドカットのルースを得る場合と、ブリリアンカットのルースを得る場合とを比較してみましょう。

カラットは厚みのあるオールドカットの方が上なのですが、正面から見ると面積が同じなので同じ大きさだと感じてしまいます。

見た目の単純な大きさで考えた場合は大きめのブリリアンカットが2つ得られる現代のカットの方が得なのです。

消費者から2つ分のお代金を頂戴することが可能になります。

安いことは悪ではありません。品質がより良くなって、しかも安く提供してもらえるのならばテクノロジーの進化であって素晴らしいことです。でも、残念ながら業界によるブリリアンカットの押し付けによってダイヤモンドは、現代では魅力のない宝石になってしまいました。女性の消費意欲を煽ってお金を儲けるための、ただの都合の良いツールです。

アイデアルカットとその他のカットの光学的イメージ

現代のブリリアンカットの原型となっているアイデアルカットは、上部から進入した光が全て内部で全反射して上部から放たれるという条件を満たすために1919年にマルセル・トルコフスキーによって考案されたカットです。

マーセル・トルコフスキー

研磨工場を営むトルコフスキー家の4代目として生まれた、数学者でもあるトルコフスキーらしい取り組みです。

ロンドン大学の博士論文の一環としてダイヤモンドのカットについて系統的に研究しており、解くための『問題』が必要だったため、ダイヤモンドの輝きが最も美しいと感じる条件として底面からの全反射を定義したのです。

高校のお勉強くらいまでは出された問題を確実に解くだけで優秀と見なされますが、大学の研究ともなれば有意義な解くべき問題を自分で見つけられるかが超重要です。

マーセル・トルコフスキー(1899-1991年)
トルコフスキー考案のアイデアルカット

あくまでも内部に侵入した光に対してのアプローチです。クラウンからの表面反射は考慮しませんし、オープンセッティングで下から入ってくる光なども考慮には入れません。実際に考えられる全てのパラメーター(変数)を考慮して計算するのはスパコンでもなければ不可能です。

私が大学で専攻した物理化学も同じことで、熱力学で仮説をたてはするものの、すべてのパラメーターを考慮することは不可能なので、理想条件を定義して変数を固定したり、影響は無視できるほど小さいとみなすなどで対処していました。

あくまでも数学的に楽しく確実に計算するために定義されたカットなので、人間が実物を見て本当に美しいと感じるかどうかはまた別の話です。

そもそも美しいの定義は何なのかという原点に立ち戻ってしまいます。

でも、現代ではこれが美しいとごり押しされています。自分の美意識で"美しい"が判断できない人は信じる他ないでしょうね。

ブリリアントカットは底面から全反射するように計算されたカットなので、底面のファセットが見事に光ります。

ワシャワシャ煌めくというか、ウジョウジョ輝くというか、なんだかモゾモゾして気持ち悪いくらいです。

【現代】サファイアリング

実はこのワシャワシャした輝きには販売者側にはメリットがあります。

インクリュージョンなどが、ワシャワシャに紛れることによって目立ちにくくなる効果があるのです。

【現代】サファイアリング

取り巻きなどに使う微少ダイヤ(メレダイヤ)はかなり汚い石が使われている場合が多いことも、現代ジュエリー業界では有名な話です。

「うちは良いメレを使っています」とPRするメーカーもありますが、どうせ数百円かそれ以下の小さな石ですし、上質と定義される石でも五十歩百歩なのでどうでも良い気もしますが・・。

【現代】イエローダイヤモンド・リング
様々なアンティークのカットが施されたジョージアンのダイヤモンド・ブローチ アンティーク・ジュエリー
『ダイヤモンド・アート』
ジョージアン ダイヤモンド・ブローチ

イギリス 1830年頃
エメラルドカット・ダイヤモンド、ダッチローズカット・ダイヤモンド、変形ローズカットダイヤモンド、ローズカットダイヤモンド、オールドマインカット・ダイヤモンド、シルバー&ゴールド
SOLD
さて、ダイヤモンドはカットによって輝きや透明感が大きく変化することを、多彩なカットで魅せたジョージアンの見事な芸術品『ダイヤモンド・アート』でご説明しました。
アンティークジュエリー エメラルドカット ダイヤモンド ルネサンス ステップカット 絵画 オーストリア公爵夫人 アンナ

宝石の中で最も硬いダイヤモンドは手作業によるカットが非常に困難だったため、初期は現代と違って面数の少ない簡単なカットでした。

15世紀末にかけて、現在の「エメラルドカット」や「スクエアカット」につながる「テーブルカット」の技術が発展したと言われています。

オーストリアの公爵夫人アンナ(1528-1590年)の宝石コレクション
チューダー朝のステップカット・ダイヤモンド・リング ゴルコンダ・ダイヤモンド アンティークジュエリー

長方形にカットするこのカットの魅力は透明感です。

ただし石が内包物のないクリーンな石かどうかは如実に美しさに表れてきます。

ダイヤモンド鉱山の変遷の歴史については『財宝の守り神』でご紹介していますが、古代から18世紀前半まではインドの特にゴルコンダ鉱山、1730年代後半から1860年代まではブラジル鉱山が世界最大の産地でした。

左のチューダー朝のリングはオールオリジナルの状態で残っていた貴重な宝物で、1725年のブラジル鉱山発見以前に作られたものだからこそ確実にインド産ダイヤモンドと言うことができます。

透明感のある美しい石ですよね。

チューダー朝 ステップカット・ダイヤモンド リング
イングランド王国およびアイルランド王国 1485-1603年
SOLD
17世紀フランスのケルトのダイヤモンド・クロス アンティークジュエリー ゴルコンダ・ダイヤモンド

こちらのクロスも同様の理由でインド産ダイヤモンドと特定できるのですが、インド産ダイヤモンドはクリーンなことが特徴で、『ゴルコンダの白い輝き』と称されるほど美しいことで有名です。

だからこそ透明感溢れるステップカットにも向いていたのです。

ブラジル鉱山が発見される頃にはインド鉱山は枯渇してしまい、新たに発見されたブラジル鉱山は全体的にあまり石の質が良くありませんでした。

おそらくはそれもあり、ブラジル鉱山が主流になるのと時を同じくして、ステップカットは一端殆ど忘れ去れた存在となっていったのです。

『ケルトのダイヤモンド・クロス』
フランス 17世紀
SOLD
アールデコの天然真珠&ステップカット・ダイヤモンドのネックレス

透明感を楽しむステップカットが再び脚光を浴びたのは20世紀に入り、アールデコの時代になってからです。

天然真珠&ステップカット・ダイヤモンド ネックレス
オーストリアorドイツ 1920年代
SOLD
アールデコのエメラルドカット・ダイヤモンド&ルビーのリング

南アフリカのダイヤモンドは質が良かった上に、膨大な量を採掘してその中から特に質が良いものを選ぶことができたからこそ再び可能となったカットです。

後期アールデコ・リング
フランス 1930〜1940年頃
SOLD
アールデコのステップカット・ダイヤモンドのリング

この通り、かなり透明感が出るカットなので内包物があるとすぐに目立ってしまいます。

当然ながら天然で無処理、これだけの大きさがありながらも内包物が見えない最高級のダイヤモンドです。

アールデコ ステップカット・ダイヤモンド リング
アメリカ 1930年代
SOLD
現代のダイヤモンドルース

現代の似たタイプのカットのこのダイヤモンド・ルースを見ると、透明感があるカットは内包物がかなり目立つことがお分かりいただけると思います。透明感があるカットほどごまかしがきかないのです。

こんなにワシャワシャと輝かれると、正直結構汚らしい石でも目立たないと思います。

ごまかしが利きやすいカットがブリリアンカットとも言えるのです。

片桐元一と愛犬のトイプードル小元太
WAKAのフォト日記『京都の骨董市の戦利品』より

GENが持ち上げているのはぬいぐるみではなくトイプードルの小元太です。なぜかちょっと比率がおかしい感じの写真になっていますが、後ろの朱塗りの箪笥がGENが昔、父親の経営する米沢箪笥の企画・製造・販売に携わっていた時代に作った米沢箪笥です。

GEN自身は職人ではありませんが、マネジメントする立場として木材を扱う職人、塗師、透かし金具職人など各工程の職人と密に関わった実体験から、昔の職人の手仕事によるモノづくりにはかなり詳しいです。

アンティークジュエリーの世界にも共通することですが、すべての職人が優れているわけではありません。だから「職人の手作り=優れている」とはならないのです。駄目な職人は死んだ魚のような目をしており、手を抜くこととごまかすことしか考えていなかったそうです。

エンハンスメント処理されたダイヤモンドを平気で婚約指輪としてオススメする現代ジュエリー。

手抜きとごまかすこと、駄目なものをさも高級で良いものと印象づけて高く売ろうとする姿勢は気持ちの良いものではありませんし、そういう物を身につけていたいとはとても思えないのです。

現代のエンハンスメント処理された安物ダイヤモンドリング
ノルマンディー号がモチーフのアールデコ・ペンダント

神技的な職人芸による素晴らしい手作りの仕事が一番最初に終わりを迎えたのはジュエリーの世界です。

洋服や日常品に比べて遙かに高価で、しかも遙かに高い技術が必要とされるからです。

1930年代ともなるとHERITAGEで扱えるレベルのジュエリーは激減しますが、それでもこの『ノルマンディー号』のような作品もギリギリ存在します。

豪華客船の進むしぶきを表現した、一番下に下がるダイヤモンドは確実にこの作品を作るために特別にカットされたものです。

『ノルマンディー号』
後期アールデコ ペンダント


フランス 1935年
ボートシェイプカット・ダイヤモンド、マーキーズカット・ダイヤモンド、トライアングルカット・ダイヤモンド、オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド、サンゴ、オニキス、プラチナ
SOLD
宝石で表現されたノルマンディー号

船首を表現したダイヤモンドはステップカットではなくわざわざ特別にデザインされた形でダイヤモンドがカットされています。

内包物が見えないクリーンな石を使って無駄が多くでてしまうこのカットを敢えてするのは、手を抜かずケチることなく、とにかくアーティスティックで美しいものを作ろうとしたオーダー主と職人が存在したからこそなのです。

様々な形のアンティーク・ダイヤモンド

見ているだけで楽しくて心地よい宝物です。

このような素晴らしい宝物を駆逐したのが馬鹿みたいなブリリアンカット信仰や4C信仰でもあるのです。

都合の悪いことは無視、考えてはならない、無条件に信じなさい。妄信具合はもはや宗教と言っても良い気がします。

4Cの重さ(carat)

オルロフ ロシア皇帝 笏 エカチェリーナ2世 クレムリン美術館 ダイヤモンド
ロシア皇帝の笏にセットされたオルロフ、クレムリン美術館に展示
カリナン1 偉大なアフリカの星 ダイヤモンド

大きくなればなるほど稀少性は指数関数的に増大するので重い、つまりカラット数が増えるほど価値が高くなることは異論ありません。

ダイヤモンドとしての価値は、あくまでもクラリティーやカラーとの兼ね合いですが・・。

巨大でも意外とカットしてみるとダメダメで、がっかりされた事例もあるようです。

イギリスの王笏で輝くカリナンT

透明感と煌めき溢れる魅惑のダイヤモンド

4Cについてご理解いただくと、現代ジュエリーには美しさは全く期待できないことがお分かりいただけたかと思います。

ブリリアンカットの鋳造ダイヤモンドリング
ブリリアンカットの鋳造ダイヤモンドリング

4Cは私たちのために美しいジュエリーを作ってくれるために存在するのではなく、業者が楽に高く価値の低いものを販売するために広められたものだからです。

ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー
それに比べて、真に美しいものをお金も手間も惜しまず作ろうとした時代のジュエリーはなんと素晴らしいことでしょう。トップクラスのダイヤモンドリングともなるとこれほどまでにクリーンで美しく、オールドカットならではの厚いクラウンから放たれるダイナミックなシンチレーションやファイアは人の心を捕らえて離しません!

珍しいクッションシェイプカット・ダイヤモンドの一文字リング

ダイヤモンドの一文字リングはシンプルで使いやすく、定番アイテムとして人気というイメージがあります。
ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー
しかしながらこのリングが明らかに特別にオーダーされて作られた、相当なこだわりを持って作られたとしか考えられない他にはない特徴があります。それがダイヤモンドのカットです。
ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー

それぞれの石が長方形型のクッションシェイプでカットされているのです。

ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー

例えばこのリングは、シンプルに5つの円形のオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドが並べてセットされています。

ダイヤモンド 一文字リング
イギリス 1880年頃
オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド、18ctゴールド
SOLD
ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー

もっと高級なものだとこのリングのように、円形のオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドの隙間を埋めるように小さなローズカットダイヤモンドをセットしてあったりします。

ダイヤモンド 一文字リング
イギリス 1890年頃
オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド、ローズカットダイヤモンド、18ctゴールド
SOLD
ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー
ダイヤモンド 一文字リング
イギリス 1880年頃
オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド、ローズカットダイヤモンド、18ctゴールド
SOLD

なぜわざわざ手間をかけてそんなことをするのかと言うと、もはや美意識としか言いようがないですよね。

指を囲むダイヤモンドのラインは、美しいシンプルなダイヤモンドだけのラインであってほしいのです。ダイヤモンドの間に隙間があったら嫌なのです。

ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー
どうやらこのリングをオーダーした人物は隙間を小さなローズカットダイヤモンドで埋めるという方法すら十分には満足できないほど美意識が高かったようで、長方形のクッションシェイプカット・ダイヤモンドならば、並べるだけでより美しく完璧なダイヤモンドのラインが完成するじゃないと、それを実現しちゃったようなのです。
ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー
ダイヤモンドのカットとジュエリーを加工する工程は別です。カットからオーダーするというのは特別なことです。
ダイヤモンド原石を使ったアンティーク・ジュエリー

だからこそ明らかに特別にオーダーしたとしか考えられない特殊なカットが施されたダイヤモンドジュエリーは、アンティークのハイクラスのジュエリーでも滅多に見ることはないのです。

『ダイヤモンドの原石』
クラバットピン(タイピン)&タイタック
イギリス 1880年頃
ダイヤモンド原石(ハーフカット)、15〜18ctゴールド、シルバー
SOLD
セイロンサファイア&ダイヤモンド リング アンティーク・ジュエリー

でも、お金と最高の美意識を持っている人たちは確実に意図してこういうものをわざわざオーダーして作らせるのです。

『Blue Impulse』も傑出した魅力を持つ、二度と出てこないリングでした。

『Blue Impulse』
ビルマ産サファイア&ダイヤモンド リング
イギリス 1880年〜1900年頃
SOLD
非加熱サファイア ビルマ産サファイア&ダイヤモンド リング アンティーク・ジュエリー
『Blue Impulse』の主役は間違いなく美しいコーンフラワーブルーのサファイアですが、脇石のダイヤモンドも圧巻でした。ご覧の通り、このリングのオーダー主もリングの目に見える部分はすべてダイヤモンドで埋め尽くしてしまいたかったらしく、クッションシェイプ・ダイヤモンドでそれを実現しています。
ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー こういうジュエリーをオーダーした人たちは、当時の王侯貴族の中でも美意識、財力ともに桁違いの人たちなのです。
ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー

ダイヤモンドは劈開の方向を無視してカットできる電動のダイヤモンド・ソウはおろか、蒸気機関を使った研磨機すら発明されていない時代の手作業によるカットです。

生きた人間に生命を吹き込まれた、それぞれに個性あるダイヤモンドが生き生きとした光を放ちます。

ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー

中央のクッションシェイプカット・ダイヤモンドは普通よりも四角っぽい珍しいカットで、他の石に比べてテーブルの面積が広いため透明感を楽しむことができます。

時折この広いテーブル面がキラと全反射するのも迫力があります。

その右のダイヤモンドはテーブルが極端に小さくクラウンがとても厚みがあり、それぞれのファセットから放たれる鋭い輝きとダイナミックなシンチレーションが見事です。

ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー

裏側のカットもシャープで美しいです。

裏 キュレットが大きくカットされているのがアンティークのダイヤモンドらしいところです。
ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー

ファイアも至る箇所で見ることができます。ファイア、ダイナミックなシンチレーション、クリアな透明感、ダイヤモンドならではの魅力がすべてが味わえる、最高に楽しいリングです♪

静止画像だとまだ大人しいのですが、実物はキラキラ煌めきすぎて実態がよく分からないほどです。一度太陽光の下に持って行って見てみたのですが、眩くて目を細めながらでないと私には直視できないほどでした。

素晴らしい爪留

ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー

この一文字リングの石の留め方は、滅多に見ない珍しいものです。

ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー まずこのリングを斜め上から見ると、ハイクラスの一文字リングの魅力と言える、透かし彫りの美しい彫金が施されています。
ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー
このようにこの斜めからの画像を拡大して見ると、ベゼル上下の透かし模様の一部を巧みに爪として使って石を留めているのです。
ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー
1つの爪で1つの石を留めているのではなく、橋渡しして1つの爪で隣り合う2つのダイヤモンドを固定しています。透かし細工の延長でこんな高度な留め方をするなんて信じられません!
ダイヤモンドのファイア

さらに完璧に固定するため、内側部分もシルバーの小さな爪でしっかり固定しているようです。点で固定しているこのシルバーの爪も、1つで両側の2つの石を固定しています。このシルバーの爪も、わざわざ磨いて整えられた手の込んだ良い作りです。ここだけシルバーなのは、ダイヤモンドのクリーンな色味を邪魔しないための気遣いです。

ダイヤモンドのシンチレーション

この角度で見ると、一番左端のダイヤモンドもクラウンが極端に厚いことがよく分かります。これだけ1つ1つが個性に富むダイヤモンドをそれぞれの形状に合わせ、150年ほどの使用にも耐えられるほどしっかり固定できているのは驚くべきことです。リングはジュエリーの中で一番過酷な環境で使われるので、コンディションが悪い場合も少なくないからです。

ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー
こういう特別の石留めからも、このダイヤモンド一文字リングが特別にオーダーされて高級な指輪であることが分かりるのです。

美しい彫金

ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー 整えられた美しい彫金も見ていて気持ちのよいものです。
最高級のコロンビア産エメラルドの一文字リング アンティークジュエリー

このような彫金はコロンビア産エメラルドを使った最高級のリングにもありました。

でも、実は気遣いの方向性に違いがあります。

コロンビア産エメラルド 5ストーン リング
イギリス又はヨーロッパ 1870年頃
エメラルド(コロンビア産)、ローズカットダイヤモンド、18ctゴールド
SOLD
最高級のコロンビア産エメラルドの一文字リング アンティークジュエリー アンティークのダイヤモンドの一文字リングの彫金
最高級のエメラルド一文字リング 最高級のダイヤモンド一文字リング
どちらもそれぞれの種類の宝石において、最高級の一文字リングです。ダイヤモンドリングは彫金のが透かしになっており、エメラルドの方は透かしになっていないことにお気づきになられましたでしょうか。それぞれに意味があってのことです。
アンティークの最高級のコロンビア産エメラルドの一文字リング アンティークジュエリー

エメラルドの魅力はその美しい色です。

金の色を反映してより鮮やかで美しく見える効果を期待したいので、横から余計な光を取り込むことになる透かし細工にはしません。

一方でダイヤモンドの魅力は透明感とダイナミックな輝きです。
ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー

裏側はオープンセッティングですが、指にはめてしまうと裏側からは基本的に光は取り込まれません。

高級アンティークジュエリーのリングの彫金

このように大胆に透かしにすれば、横からも光を取り込んでより魅力的な輝きを放つことができるようになるのです。

ここまで計算された作りだからこそ、上質なダイヤモンドがより魅力を増すのです。


ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー
ダイヤモンドに高さの差があるとは言っても、この通りボコボコ違和感があるような高さの差があるわけではありません。
高級アンティークジュエリーのリングの彫金
左右の石の両側にもきちんと彫金が施されており、やはり彫金細工の延長線上で石をしっかり固定しています。
高級アンティークジュエリーのリングの彫金
ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー
彫金も深く彫り、磨いて丁寧な仕上げが施された実に印象的で美しいものです。細部に至るまでの行き届いた美意識と、丁寧な仕事ぶりがアンティークのハイジュエリーでのみ味わえる楽しさです。

18ctのホールマーク

イギリスの18ctの刻印
シャンクの内側に18ctゴールドのマークがあります。

 

ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー GENは石物のジュエリーが好きではなかったのと、何となくダイヤモンド自体が気に入らなくて(笑)ルネサンスではあまり扱ってこなかったようです。
ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー

GENは細工物が大好きで、細工物の良さを分かってもらうために一番尽力していたので、さもありなんです。それでも『知られざるアンティークジュエリーの魅力』の熱心なページからも分かるように、誰よりも勉強して誰よりもきちんと理解した上で宝石のジュエリーについてもご紹介していました。

白大理石を使った珍しいミュージアムピースのイタリアのフローレンスモザイク(ピエトラドュラ)とカンティーユのピアス(アンティークジュエリー) 白大理石を使った珍しいミュージアムピースのイタリアのフローレンスモザイク(ピエトラドュラ)のアンティーク・バングル
ピエトラドュラ ピアス
イタリア 1830年〜1840年
SOLD
ピエトラドュラ バングル
イタリア 1860年頃
SOLD

私が細工物より石物が好きかと言うとそうでもなくて、ふらりとやってきて現代ジュエリーもアンティークジュエリーも買ったことがないのに、いきなり高価な石など1つも付いていない細工物に三桁万円を出したのでGENが相当仰天したほどです(笑)

ダイヤモンド 一文字リング アンティーク・ジュエリー

何だかよく分かりませんが、GENは宝石のジュエリーというだけで毛嫌いしていただけのようです。私はこのような高度な技術を使った宝石ジュエリーも、アンティークならではの細工の魅力と気遣いが溢れる素晴らしい宝物だと思うのです。

GENも「宝石ジュエリー=100%細工物のジュエリーではない」という変な思い込みがようやくなくなったようで、このリングを見ながら「僕、何だかダイヤモンドが好きになってきた。楽しい♪」と言い始めました(笑)

アンティークのダイヤモンド一文字リングの着用イメージ

このリングをオーダーした人物の目論見通り、指につけると見える部分全てがダイヤモンドのラインになります。

ある意味とってもゴージャスですが、クリーンなダイヤモンドなので現代のファッションに違和感なく、色石でもないので様々なファッションにも合わせやすいと思います。

これまで細工物のファンだった方にも、ぜひ楽しんでみて欲しい極上のダイヤモンドリングです♪

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