ロスチャイルドのお城(3) 〜貴族のさりげない自慢の仕方〜

イギリス貴族のロスチャイルドの城  ワデズドンマナー イギリスのロスチャイルドのワインボトルを使ったパイナップルのオブジェ
実は、お城の正面に建っていた、パイナップルのような謎の2柱のオブジェがとても気になっていました。

ロスチャイルドのワインボトルのオブジェ

近づいて見てみると・・。

「え、瓶?。????・・・廃品を使った現代アートか何か?」

 

この謎は、お城を散策するとすぐに解けます(ロスチャイルドについて、ある程度知識がある方なら、この時点ですぐにお分かりかもしれませんね)。

 
イギリスのロスチャイルドの城の地下にあるワインセラーのバッカス像
お城の一角にある、とある入り口から地下への階段を降り、薄暗く長い通路を抜けると・・。
巨大なバッカス像が!!ギリシャ神話ではディオニューソスに対応する、ローマ神話のお酒の神様ですね。豊穣と葡萄酒と酩酊の神様、そう、ここはワインセラーなのです。ロスチャイルド家がシャトーをいくつも保有し、優れたワインを世に送り出していることはワイン通の中では有名な話ですよね。

イギリスのロスチャイルドの城の地下にあるワインセラーと試飲室
シャトーを保有できるのは、大金持ちで有力者の証拠です。奥のこのスペースで飲みながら、知的なワイン談義を貴族同士で楽しんでいたのでしょう。あのボトル・オブジェは廃品の寄せ集めではなく、ロスチャイルド家の凄さを自慢するための小洒落たアートの一種なのでした。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ ロスチャイルドのガーネットで作られた宝石のパイナップル
豪勢なワインセラーを羨ましく思いつつ、思い出したのが展示室にあった左のゴブレットです。こういうグラスで飲んでいたのでしょうか、ますます羨ましい〜(笑)良いグラスだと、中身が同じでも一層おいしく感じますよね♪気のせいなんて言われることもありますが、グラスへの口当たりや香りの立ち方、口の中や喉に侵入する角度やスピードなど様々な要素に影響があるはずなので、きちんと研究すれば科学的根拠は証明できると思っています。バカな酔っ払いにはそんなことどうでも良いですけど(笑)

17世紀に作られたこのドイツ製ゴブレットの素材は、実はロッククリスタルです。巨大かつ上質な透明水晶を削り出して作ってあるのです。そこにゴールドや宝石、エナメルで装飾を施してあります。300〜400年も経過しているようにはとても見えません。普通のガラスだとこうはいきません。曇ったり変色してしまい、透明な芸術アールクレールとは全く別物になってしまいます。現代の窓ガラスですら、経年劣化することは常識のように言われていますからね。品質の良くないものだと、たった数年でも劣化してしまうのです。アールクレール、それはロッククリスタルだからこそ成し得る、永遠の透明な芸術なのです。

さて、右にあるオブジェも何だろうと気になった方がいらっしゃると思います。これは18世紀中期にフランスで作製された、宝石のパイナップルです。ガーネットや翡翠で表現されているのですが、当時いかにパイナップルが高価で特別な果物だったかが伝わってきますね。これについては現在販売中のパイナップルのフォブのページに詳細をまとめておりますので、よろしければご参照ください。

ロスチャイルド家の17世紀の金赤ガラスのボウル 金赤ガラスのグラス・コレクション
深い赤が印象的な、17世紀後期もしくは18世紀初期に南ドイツで作られた金赤のガラスボウルもありました。ガラス細工好きな私は、いくつか金赤ガラスを持っています(画像右)。金赤の赤は金コロイドによるもので、古代ローマ時代からガラスに色を付けるために使われてきました。私の持っている物は職人の手作りによる現代物で、皇室や有名人にも卸したりする有力なガラス細工セレクトショップで購入したものです。コロイド粒子の大きさや濃度を制御する技術が難しい金赤は、美しい色を出すのが難しく、現在80代のおじいちゃんが頑張っているけれど後を継げる人がいないと聞きました。これほど濃い色を出せる人は他にいないそうです。この自慢のグラスをGenに見せたところ、色が薄いと笑われてしまったので「???」と思っていたのですが、ロスチャイルドの300年前の金赤を見て得心しました。ジュエリーどころか、何もかもが昔の方が優れているなんて切ない話です。

イギリスのロスチャイルドのワインボトルを使ったパイナップルのオブジェ

そんな感じで、結局これは教養と財力を誇示するためのパイナップル・オブジェだったようです。

黄色くライトアップされる夜は、もっとパイナップルらしくなるようです。

次回につづく

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