No.00131 愛の花 |
『愛の花』 通常のクラスターリングでは有り得ない、大きくて美しいルビーと、それを惹き立てる白く照りが良い天然真珠、そして素晴らしい作り。古い年代だからこその、クラスターリングの中でも特に贅沢で上質なリングです♪ |
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このリングには、1838年という年号が刻まれています。若き女王ヴィクトリア女王が1837年に即位した翌年、戴冠式の年に作られたことが分かる、とても貴重な指輪なのです。 |
時代背景
1838年のヴィクトリア女王の戴冠式 |
1838年のヴィクトリア女王の戴冠式 |
1837年6月20日にウィンザー城でウィリアム4世が崩御した結果、5月24日に成人したばかりのヴィクトリアが18歳で女王に即位することになりました。戴冠式は即位1年後の1838年6月28日、ロンドンのウェストミンスター寺院にて挙行されました。 |
これから大英帝国黄金時代を築いていく、若き女王19歳。ウエストミンスター寺院への途次、「女王陛下万歳」と叫ぶ群衆の中を黄金馬車で通過しました。 ジョージ4世以降、イギリス王室の戴冠式で代々使用されている黄金馬車は8頭の馬で牽く壮麗なものでした。民衆の沸き立つ気持ちも分かりますね。 ヴィクトリアはその日の日記に、「このような国民たちの女王となることをいかに誇りに思うことか。」と記しています。 このリングはこのような時代の転換期、新しい女王に沸き立つ時代に作られたのです。 |
クラスターリングについて
この指輪のデザインは19世紀の代表的なデザインである、クラスターリングと言われているタイプです。 クラスターリングは通常、ベゼル中央に小さな宝石をセットし、周囲を小さなスプリット・ハーフパールで囲んで花のような形状を表現します。 |
【参考】ジャンク品の石留の拡大 | 当店は日本一基準が厳しいので、ジャンク品はご覧になったことがない方も多いと思います(ヘリテイジはルネサンス以上に厳しく、世界一厳しい自信がありますが、ここは謙虚に笑)。 左はヴィクトリアンのクラスターリングですが、拡大して見てみると、明らかに覆輪とハーフパールのサイズが合っていないことがお解りいただけると思います。脱落したハーフパールが見つからなかったため、サイズが合わないハーフパールを使って修理したのです。サイズが合わず技術もないため、覆輪で留めることができず、接着剤で体裁だけ整えてあります。接着剤は白い物や透明な物、数種類が見えますね。下手な修理はまたすぐに壊れます。脱落しては下手な修復を繰り返す、残念な歴史が見えます。 |
【参考】ジャンクのヴィクトリアン・ルビー・クラスターリング | 左のクラスターリングは天然真珠が黒ずんでいます。爪留めや覆輪留めの技術も知識もない職人に、低品質な接着剤で安易に修理されてしまったハーフパールは、例え無核の天然真珠であっても汚く変色してしまうのです。 こういうものでも結構な値段で販売されており、売る方も買う方もおかしいと感じるのですが、悪気があるのではなく、気づかないかおおらかなだけなのだとは思います。アンティークジュエリーの真の魅力は、こういう物には存在しません。大変残念なことです。 |
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きちんとした物かどうかは、ジュエリーの裏側や細部を見なければプロでも判断はできません。だからインターネットに特化しているヘリテイジでは、これだけ詳細な画像を掲載し、皆様にご覧頂いているのです。 |
いくつかのクラスターリングをご覧いただいた通り、通常は4〜6個のハーフパールで花びらを表現し、全体としては円形のお花を表現します。 しかし、このクラスターリングはクラスター部分が長方形です。このリングのメインストーンのルビーは、鮮やかで明るい実に美しいルビーです。ある程度大きさがあって、しかも美しいルビーは貴重です。まずこの石を手に入れ、それに合わせてクラスターリングを作ったから、石に形状に合わせた長方形なのだと考えられます。 |
養殖真珠は脱色・調色・染色が当たり前の世界ですが、普通はクリーム色がかったりしている物なのです。それなのに、このリングの真珠はかなり白い印象で、180年も経っているとは思えないほど照りも良くて驚きます。天然真珠が白く美しいからこそ、よりルビーの濃く明るいピンク色が際立って綺麗に見えるのです♪ |
この天然真珠は半分にカットされたスプリット・ハーフパールですが、その留め方は通常の小さな爪で留めるパヴェ留ではなく、一つ一つ覆輪で覆うような非常に丁寧な留め方です!!!ミルも美しく、これを見ても、この指輪が如何に素晴らしい作りの指輪かが分かるというものです!!! 作りが良い上に、歴代の持ち主が180年もの間、大切に扱ってきたからこその素晴らしいコンディションなのです。 |
程よく丸みを帯びた奇麗な形のシャンク(腕)です。素晴らしい彫金も、この指輪の見所です。プラチナを使ったエドワーディアンやアールデコの指輪にない、アンティークの指輪らしい細工の魅力を感じるのです!!!♪ |
Henry Doris Hepburnという名前が彫刻されています。ヘプバーンはスコットランドに由来する姓です。ヘプバーン家はスコットランドの爵位ボスウェル伯を叙爵され、王配も輩出している由緒ある貴族です。スコットランド王国自体は、1707年の合同法でイングランド王国と合併してグレートブリテン王国になった時になくなっていおり、今回の調査では19世紀のスコットランド系貴族の詳細までは分かりませんでした。しかし、これだけの高価な作りからすると、当時のかなり裕福な貴族がメモリアルに合わせて特別に作ったに違いないのです。 文字が彫られたジュエリーは、時代背景や人物を色々調べてみたり、想像したりできるのも楽しみの1つです。西洋人と違ってモーニングジュエリーには抵抗がある方が多い日本人でも、ラブジュエリーや誕生日のお祝いなどの愛と喜びに包まれたメモリアルジュエリーだと身に着けやすいですよね。美しい手彫りの文字がまたカッコ良いんです♪ |
同じコランダム系の石でも、ルビーはサファイア以上に稀少です。美しいルビーのジュエリーは、要望が多くてたくさん作りたかったとしても、材料が無いから数も作れないのです。 |