No.00121 モンタナの大空 |
『モンタナの大空』 スカイブルーの美しいサファイアと、エドワーディアンらしいデザインセンスの良さ、アンティークらしい作りの良さが揃った魅力あふれるリングです♪ |
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ハイスペックの顕微鏡でも内包物が見えない、実にクリアで美しいスカイブルーのサファイアです♪ 上の画像から解る通り、このサファイアはテーブルがフラット、底面は尖った形状です。あまりにも透明度が高いため、見る角度によっては左の画像の通り、底面が透けすぎてどんな形状の石なのか混乱してしまうほどです!! |
人類がサファイアの合成に初めて成功したのは1907年です。いつも宝石はベテラン鑑定士に鑑別してもらうのですが、顕微鏡を覗きながら「あれっ?内包物が全然ない。合成じゃないかなぁ。」と言うので焦りました。さらに光学的な分析をした結果、人工石では出ない蛍光を呈したので、間違いなく天然のサファイアと結果が出ています。 産地は特定できないと言われたのですが、実はアンティークならではの石だからである可能性が高いのです・・。 |
モンタナサファイアについて
19世紀半ばから終わりにかけて、アメリカ北西部のモンタナ州各地で、ゴールドラッシュの砂金探鉱者により次々とサファイアが発見されました。 |
サファイア山脈(モンタナ州) |
東西300kmに及ぶ広大な地域に、大きく分けて4カ所のサファイア産地がありました。当初発見されたサファイアは、透明度は高いものの色が薄かったり、原石の時点で平均5mm程度の平板状結晶でしかなかったため、宝石としての価値が見いだされず注目されるには至りませんでした。 |
ヨーゴ峡谷(1900年頃) |
ヨーゴ峡谷では1879年に本格的に金の採掘が始まり、1895年頃に濃いブルーの結晶が発見されました。当時はサファイアと認識されなかったようです。 |
水門で金・砂利を選別する様子(カリフォルニア) | ジェイク・フーバーという探鉱家がいました。金の夢にかけて、2人のパートナーと共に4万ドルの資金を調達しました。しかしながら、1年間の鉱業で3人が採掘できたのはわずか40オンスの金(700ドル相当)に過ぎませんでした。 他に見つかったのは青い小さな小石くらいでした。水門の箱で見つけた小石を他の鉱夫は捨てましたが、フーバーはただ1人、青い小石をシガーボックス一杯に集めて、ニューヨークのティファニーに送って鑑別を依頼したのです。 |
鉱物/宝石学者ジョージ・フレデリック・クンツ(1856-1932年) | 当時のティファニーには、クンツ博士という鉱物学と宝石学の権威がいました。 少年時代から鉱物への興味が高かった人物で、独学とフィールドワークでその分野のエキスパートとなりました。 1879年、23歳でティファニーに入社し、最終的に副社長にまでなっています。 クンツとティファニー創業者チャールズ・ルイス・ティファニーの出会いも、大変興味深いものです。 クンツは10代にして、4,000点以上の鉱物を蒐集していました。 |
ティファニー創業者チャールズ・ルイス・ティファニー(1812-1902年) | 20歳そこそこのクンツは、自身の住むニュージャージーで集めた美しい宝石を袋に詰め、単身本社に乗り込みティファニーへ面会を求めました。 クンツは机上にトルマリンを広げ、「アメリカにはまだ発見されていない宝石がたくさんある!♪」と魅力的に語りました。 この時のティファニーの行動は、宝飾業界とってに大きなものとなりました。「費用は気にせず、美しいと思う宝石を全て届けなさい。」と言い、クンツに大金を手渡したのです。 これが後に世界的な宝石学者となる、クンツ博士の誕生です。 |
グレーシャー国立公園(アメリカ モンタナ州) モンタナ州は映画『モンタナの風に抱かれて』の舞台にもなった、雄大で美しい自然がある地域です |
クンツ博士は送られてきた原石を鑑別し、地上で最も質の高いサファイアであると評しました。 このモンタナの大空を想像させる、誰もが思わず見とれる魅惑あふれる色合いの石は、1900年のパリ万国博覧会でティファニーの展示品の主役として出品されることになったのです。 美しいモンタナサファイアを使ったこれらのジュエリーコレクションは最高賞を受賞しています。 |
ようやくモンタナのサファイアが世に知られるようになりました。宝石として使うことができるサファイアはヨーゴ峡谷のものだけでしたが、色が淡かった他産地のサファイアも時計や精密機械、金属加工など産業用途として相当量が採掘されました。20世紀前半にはロック渓谷のアナコンダとサファイア渓谷の2ヶ所だけで1906〜1923年の間に38トンのサファイアが産業用として出荷されたとの記録が残っています。 |
リングの年代、内包物がない透明度の高さ、モンタナの空のような美しい色合いと煌めき。これらの特徴から、この指輪の石はヨーゴ峡谷産のモンタナサファイアでほぼ間違いないでしょう。 ヨーゴ峡谷のサファイアは酸化アルミニウムの結晶として優れているため、透明度が高く強い煌めきを持つのです。この特別なサファイアは加熱処理には向かず、加熱すると色が淡くなったり汚い色になってしまうそうです。 |
美しいサファイアの魅力をさらに惹き立たせる、エドワーディアンらしいデザインセンスの良さも魅力です。 正方形にカットしたサファイアを、当時やはり高価だった真円の天然真珠で囲み、四隅にはダイヤモンドをあしらっています。ダイヤモンドの凝ったデザインの台座が、このリング全体の雰囲気をさらに引き上げています♪ |
宝石の台座はプラチナにゴールドバックですが、これはプラチナが初めて使われ始めた頃、プラチナが今の数十倍もしたエドワーディアンに作られたことを示すものです。 |
拡大画像から解るように、プラチナのミルも素晴らしいです。繊細精緻なミルは、一つ一つタガネで打った後にヤスリで頭を丸く仕上げてあるのがはっきり解ります!!!♪ これは高度な技術を持った職人が時間をたっぷりかけて作った証しであり、エドワーディアンでもハイレベルの作りの指輪といえるのです!♪ エドワーディアンの時代は、天然真珠が歴史上最も人気が高く高価でもあった時代だけに、小さな天然真珠をハーフパールではなく丸ごと使っているところが、良い指輪として作られた証しです!!♪ 『参考』 養殖真珠と天然真珠の違い |
コンディションは全体にとても良い状態です。 |
上質なヨーゴ峡谷産モンタナサファイアの特徴である、強い煌めきが最大限楽しめるカットを施してあるため、ご覧の通り少し角度を変えただけでも石の煌めきが変化します♪ 澄みきったスカイブルーの石は見ていて飽きることがありません。濃い青のサファイアや、淡いブルーのアクアマリンも美しいですが、それとはまた違う魅力があります。モンタナの大空を連想させる美しい石は、まさに大自然の恵みですね♪ |