No.00206 DECO LUXURY |
『DECO LUXURY』 当時もっとも高価な金属だったプラチナと、ダイヤモンド以上に高価だった天然真珠という、最高級の素材同士の組み合わせであることに加えて、それらの素材を贅沢に使ったハイエンドのジュエリーです。 |
驚くほどの長さ
単品でも2連、3連にしたりして雰囲気を変えたり、ぐるぐる巻きにしてブレスレットとして使用したり、他のジュエリーと組み合わせても使いやすい、このタイプのソートワールは当時も人気があったようで、これまでにもいくつか扱ってきました。 プラチナと天然真珠、どちらも特に高価だった時代において、このタイプの作品は相当な高級品として作られています。 その中でも本作品は飛び抜けてお金をかけて作られたものです。 それは長さと素材の使い方、そして作りに現れているのですが、まずは長さについて見ていきましょう。 |
例えばこの天然真珠のクロス・ネックレス、エドワーディアンに相当な高級品として作られた作品です。 あくまでもチェーンは主役のクロス・ペンダントを下げるためのものです。 チェーンとしては長めですが、あくまでもペンダントを下げるための61cmの長さです。 |
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天然真珠クロス・ネックレス イギリス? 1910年頃 チェーンの長さ61cm SOLD |
84cmあるとブレスレットとして5連くらいにして使うとかなり華やかですし、ネックレスとして2連にして使うことも可能な長さです。 でも、今回のソートワールの長さは別格です。 ふんだんに使われた贅沢なプラチナのお陰でずっしりと心地良い重量感があり、これだけの長さもあります。 |
3連どころか4連でも十分使える長さです。 1連、2連だとブローチなどとの組み合わせで華やかにして楽しむこともできますが、3連4連ともなるとこのソートワール1つだけで十分華やかで高級感がありますよね。 |
長いと装いのバリエーションも広がって魅力があるのに、なぜこのようなスーパーロング・チェーンがなかなか市場に出てこないのかというと、100年ほどの年月の間でどのタイミングかでカットされてしまうからです。
これほど長いスーパーロングチェーンが元の長さで残っているのはとても珍しいことです。 形見分けなどでカットされることもあるでしょう。それ以外に、ディーラーも半分にカットして、使いやすくて価格も手頃な2本のチェーンにして売った方が儲かります。 みんな食べていくのは大変なのですから、そこは非難してはいけないと思います。でも、私は『ヘリテイジ』の名に恥じぬよう、そんな情けないことはプライドにかけて絶対にしません。 |
贅沢で美しいプラチナのパーツ
プラチナは1905年頃からジュエリーの一般市場に出始めたばかりで超高価だった上、1914-1918年の第一次世界対戦での化学兵器や爆薬への需要の増大で各国政府が薬品合成の触媒となるプラチナの使用を制限し、さらにはプラチナの主要輸出国だったロシアで1917年に革命が起こって一時的に輸出が不安定になるという時代でした。 天然真珠も史上最も価値が高く、ダイヤモンド以上に高額で取引されていた時代において、本作品は驚くほど贅沢な素材使いなのです。 |
プラチナは延性や粘り強さを備えた強靱な素材です。材料費をケチって繊細なチェーンに仕上げることも可能だったはずですが、拡大すると分かる通り、プラチナを驚くほど贅沢に使用したかなり重厚な作りなのです。 いつもご紹介しているエドワーディアンやアールデコのハイレベルのプラチナのミルを見慣れている方だと、フラットな形状のプラチナパーツに少し違和感を感じましたでしょうか。 ハイジュエリーの繊細なミルも美しくて私も好きなのですが、実はこのフラットなパーツも計算されてこの形にされていることが、実際に身に着けてみるとよく分かります。 |
着けた人の動きに合わせてチェーンのそれぞれのパーツの角度が変化します。 プラチナの白く強い輝きはご存じの通りです。 ミルが無いフラットなプラチナパーツは、特定の角度で表面が全反射し、キラキラと強く光り輝きます。 |
最初はなぜここまでフラットでシンプルな形状のパーツなのか不思議に思ったのですが、実際に着けた時の動的な美しさが計算しつくされているからこそのこのデザインだったわけです。 改めて、優れたアンティークジュエリーの奥深さを感じた作品です。 静止画像では分かりにくいのですが、パーツが多いので、実物はいろいろな場所からたくさんの美しい煌めきが放たれます。 |
永遠の組み合わせ
プラチナはほぼ永久に変色しませんし、通常の天然真珠のネックレスと違って糸替えなどの心配がなく使えるのも魅力です。 そして天然真珠も適切に使用すれば、ほぼ永久的な存在です。 真珠層ではなく大半が貝殻などの核でできた養殖真珠なら、10年も経てば内側から変色するか、薄い真珠層が剥げるなどして使えなくなることもあります。現代の安すぎる天然真珠ネックレスの場合、最初から割れている物を平気で売ることすらあります。 販売者側の理屈だと「そもそも安いのだから品質が良くないのは当然」ということのようで、クレームを出しても意味がないようです。 確かに手のかかった上質な物は高くて当然です。それが、本来の品質には見合わない安値で手に入るのがアンティークジュエリーです。現代の庶民が買うにはそれでもまだ高価ですが、同じものを作ろうすれば少なくとも桁が1つ違うはずです。 |
天然真珠とゴールドの耳飾り(古代ローマ 1世紀) メトロポリタン美術館 | 古代ローマの耳飾りを見ても分かるように、天然真珠であれば照り艶さえもほぼ永遠ということですね。 |
人工的に作られた真珠のように無個性で不自然な球体ではなく、ちょっと歪なのも天然の真珠らしさであり、魅力でもあります。 |
これだけの長さのチェーンですが、当然ながらすべてのパーツをハンドメイドで作り、仕上げも完璧なので手触りがとても良いのです。 |
引き輪を開け閉めする時に、爪がかかる突起をゴールドにしているのもお洒落ですし、場所が分かりやすくて使いやすいです。3連4連にする時以外は使いませんが、こういう気遣いもハイクラスのアンティークジュエリーらしさです。 |
単品でも何重にして使うかでイメージが変わりますし、ブローチなど他のアイテムと組み合わせても楽しいのがこういうロングチェーンの魅力です。 あれば重宝するものの、なかなか市場には出てこないアイテムなので、今回もカタログ掲載前にSOLDとなりました。欲しい方は次回ぜひお見逃しなく!♪♪ |