No.00061 オリーブの枝をくわえた鳩
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『オリーブの枝をくわえた鳩』 イタリア 1850年頃 これほど美しい色彩のローマンモザイクは、僕が43年間で扱って来た19世紀中期のモザイクの中でもトップレベルです。画像では金の輝きが表現しきれていませんが、実際に手にとって見ると、金の輝きとモザイクの華麗な色彩が相まって、まさに「荘厳」という言葉がぴったりです。 |
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フレームの縁の極細な金の縒り線(よりせん)も、実物を見るとよくもこれだけの細い金線を綺麗に縒ったものだと感心させられます。 モザイクの赤、青、白のビビッドな色使いが、幾何学的な十字架の形と完全に調和していています。十字架中央に配置された、初期キリスト教のモチーフも違和感が無く、優れたデザインと仕事の証明だと感じます。 |
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4羽の鳩は構図と表情がそれぞれ違うのが素晴らしいです。鳩が加えたオリーブの枝は、鳩を取り巻くような構図で、優雅な雰囲気と躍動感を与えています。 鳩には微妙な色の陰影をつけた、細かいガラスピースを使っています。また、ガラスピースの色だけでなく形状にも工夫してあり、長細いピースを羽根や尻尾の部分に、曲がったピースを胸部に使って鳩の質感を表現しています。作者の並はずれた感性と、素晴らしい作品を作ろうという情熱を感じます。現代では到底不可能ですし、アンティークでも滅多にない細さです。 鳩はモザイク絵のモチーフとしてよく出てくるのですが、並の鳩よりも数段上の出来映えです!左の写真では10倍以上に拡大されていることをお忘れなく! 実際の鳩の大きさは1cm足らずです。 |
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鳩はキリスト教において、聖霊やキリストの魂とされています。特に東方教会では洗礼を意味しますが、一般的にはオリーブの枝を加えた姿は、旧約聖書に出てくる「ノアの箱舟」がモチーフとなっています。 箱舟で漂流していたノアが鳩を放つと、オリーブの若枝を加えて戻ってきたことで水が引いたことを知ります。この「苦難が終わる」ということが、キリストの受難後に人類が救われることや、戦争の終焉と重なり、鳩は平和の象徴としても扱われるようになりました。 |
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聖書で見るような装飾文字(staurogram)が、金で縁取られたモザイクで描かれており、荘厳な印象を高めています。 金の文字の中には、金太郎飴のような棒状のガラス断面が配置されています。 これらはムッリーネ、もしくはミルフィオッリ(millefiori)と呼ばれる技法です。この部分に使われているパーツは最大で直径1ミリ程しかなく、それが大きさを徐々に変えてあります。一番小さいものは、 小さ過ぎて何マイクロメートルなのか解らないくらいなのですが、よく見るときちんとオレンジの円の中に白い芯が入っている、驚愕の仕事です! |
スタウログラム (staurogram) ギリシア文字のΤ(タウ)とΡ(ロー)を組み合わせて、キリストを表してます。 十字のことをギリシア語でスタウロスといい、それを「タウ、ロー」という音で似せているのですが、実際は十字架上のキリストの姿そのものを表していると言われています。 |
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この時代に多いC型のクラスプ金具ですが、わざわざ溝が彫られており、良い物として作られたことがわかります。 |
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側面から見るとわかるように、モザイク外側に配置された金のフレームは、高さと幅が本体より若干飛び出た構造です。こうすることで、より全体の立体感を演出しています。フレーム内側の撚り線ラインもそうですが、とても洗練されています。 |
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作者の魂が籠もったキリスト教モチーフの十字架は、まさに「荘厳」の一言です! |
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