No.00169 朝霧 |
『朝霧』 カルセドニー ドロップ型ピアス イギリス 19世紀後期 カルセドニー、18ctゴールド 長さ3,8cm(本体のみ) 重量 7,7g SOLD 同じホワイト系の素材でも、マザーオブパールやムーンストーンのような素材から出てくる光が魅力のジュエリーとは異なる、石の中の世界に吸い込まれそうな独特の魅力を放つホワイトカルセドニーのドロップ型のピアスです♪ |
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色彩がない半透明のホワイトカルセドニーには、石の中の深淵を覗いているような気分にさせる、何とも不思議な魅力があります。 その知的かつ高貴な雰囲気は、特に19世紀初期(ジョージアン)に於いて貴族階級の人たちにとても好まれた宝石です。 |
ホワイトカルセドニーの魅力
Genの若かりし頃(ロンドンにて) | Genがカルセドニーの美しさを最初に知ったのは、今から四十年近く前のロンドンで、凛とした気品を感じるジョージアンの美しいペンに出会った時だそうです。 |
さて、何故か熱が入ってペンのカタログページみたいになってしまいましたが、話を戻しましょう。 ジョージアンの見事なカルセドニーに出会ったことがきっかけで、カルセドニーを使ったアンティークの小物やジュエリーの魅力を知ったがGENで、長年この仕事をやってきました。しかし、ジュエリーでカルセドニーをメインの素材として作られた物はとても少なく、滅多に見ない珍しい物なのだそうです。 |
深い霧の中に吸い込まるかのような、深淵が見えない独特の魅力を放つカルセドニーは、教養高いジョージアンの貴族に好まれたことが一因だと思います。 派手さはないので、ゴテゴテした成金的なジュエリーが好まれたヴィクトリアンでは人気がなかったのかもしれません。 18世紀に起こった産業革命の結果、ヴィクトリアンになるとジュエリーの大衆化が進みますが、ジョージアンではまだジュエリーはごく一部の王侯貴族のためだけの物でしかなく、作られた数自体も格段に少ないのです。 |
『ジョージアンの究極の美』 マルチーズクロス ブローチ&ペンダント イギリス 1820年頃 SOLD |
左はマルタ騎士団に由来するジョージアンのマルチーズクロスです。19世紀初期のイギリスでとても人気があったようで、19世紀のカルセドニーを使ったジュエリーとしては代表的な作品です。 『ジョージアンの究極の美』には、ジョージアンの第一級の彫金が施されています。このようなハイクラスのジュエリーの素材にカルセドニーが使われているのを見ても、カルセドニーの持つ質感が如何に当時の高貴な人たちに愛されたかが分かります。 |
【参考】ミッドヴィクトリアンの成金趣味のジュエリー | |||
ヴィクトリア時代の特に後期に好まれた、悪趣味系のいかにもな成金ジュエリーはこのような感じです。「あたし高そうでしょ!!」、みたいな雰囲気が私には逆に安っぽく見えます。左のフリンジも流行しているのですが、Genはイカの足かタコの足みたいで気持ち悪いと言っていました。私は古いSFに出てくる火星人に見えます(笑) |
イギリス女王、初代インド皇帝ヴィクトリア(1819-1901年) | |
テレビもなく、芸能人やファッションモデルが存在しない時代において、王侯貴族が国民のファッションリーダーでした。ヴィクトリア女王もそれを十分に理解していました。このため、何も考えずに好きなものを身につけるのではなく、自国の経済発展につながる着こなしを戦略的にやっていたようです。真面目なのは良いことですし、実際に圧倒的な大英帝国を作り上げた実績も作っていますが、センスの良さを発揮して芸術文化の発展をもたらすのはやはり歴代の遊び人なのです。 |
そのようなわけで、ヴィクトリアン後期に制作されたこのシンプルでカルセドニーの質感を生かした、時代を超えたセンスの良さを感じるピアスは、かなり珍しい存在なのです。 悪趣味が流行したヴィクトリアン後期とは言っても、あくまでも流行しただけで全員がセンスが悪かったわけではありません。確率的には低いですが、こういう物も存在するということです♪ |
日本はパワーストーン業界が盛況なので、カルセドニーのビーズも出回っており、珍しいイメージはないかもしれません。 しかし、やはり現代では脱色や着色が一般的に行われているようです。カルセドニー(玉髄)は非常に細かい石英の結晶が凝集した石で、無数の隙間が存在し着色しやすいため、脱色・染色した物が無数に流通しています。原料は天然のカルセドニーなので「天然石」として販売できてしまうわけです。 |
安物の素材を使ったジュエリーは、当然安価な作りの細工しかされません。私の観点からすると、天然じゃないからダメというよりはむしろ安物の材料を使ったジュエリーはそれなりのものでしかないよねということです。でも、そんなつまらない物に法外な値段がついていたり、さも価値があると錯覚させるような宣伝文句が付いていることに違和感があるのです。こんなことをしたら、ジュエリー業界全体が暴利をむさぼる胡散臭い業界に見えます。自分で自分の首を絞めているに等しいです。 本来ジュエリーとはとても美しい物で、身につけた女性を外見のみならず内面から美しく輝かせることができるものなのです。心の豊かさをも与えてくれる、それがHERITAGEで扱う優れたアンティークジュエリーです。 |
ドロップ型のピアスは360度どこから見ても美しいのがの魅力です。 ドロップ型ピアスに使われる素材としては、ピケやゴールド、珊瑚やジェットがたまにあります。熱可塑性のピケや、潰して再度形を作り直せるゴールドと違い、石は形状を作る際に1度でも失敗したら修正ができません。 ある側面から見たときにだけ対称形にするのはそう難しくありませんが、このように360度どこから見ても美しい対称形に整えるのは、実はとても難しいことです。 |
さらに石を留めるために、穴を貫通させます。どうやってゴールドの笠の部分に固定させているか不思議に思った方もいらっしゃると思います。もちろん接着剤などではありません。 傘の部分に丸い穴のようなものがあります。石に貫通させた穴に金属の棒を通し、金属棒を傘の穴の部分に蝋付けして留めているのです。 |
上の石はオープンセッティングです。シンプルなデザインですが、金も18金で、アンティークらしいしっかりした丁寧な作りです。シンプルなものほど上質な作りの物が欲しいのは、今も昔も同じだと思います。 |
右の『ジューシー・ドロップ』もそうでしたが、光に透けた時の雰囲気が素敵です。美味しそうなジューシードロップとは違って、朝霧のような幻想的な雰囲気を放ちます。ショートカットの方や、アップヘアにして付ける時は、日中はこのような雰囲気になると思います。同じようなデザインでも使う石次第でこれだけ雰囲気が変わるのが楽しいですね♪ |