『人間国宝のショコラ』
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フランスから帰国したばかりのお客様から、『イルサンジェー』のショコラを頂きました。一時期だけ銀座にお店があったので、高級チョコレートに詳しい方ならご存知でしょうか。パリにすらお店はなく、今はジュラ地方のアルボワのブティックまで足を運ばないと手に入りません。 春のスペシャリティ全種盛りで、2段以上に詰め込まれた贅沢ボックスです。ショコラティエのエドアール・イルサンジェーさんは、フランスの人間国宝に当たるM.O.F.(国家最優秀職人章)を史上最年少で受章した天才職人です。創業1900年の老舗で、エドアールさんで4代目です。
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世界最高峰の技術と才能を持つとされるエドアールさんのショコラは、世界各国のVIPから愛されているにも関わらず、地方の本店1店舗のみというのが印象的です。歴代当主が一子相伝でレシピを受け継ぎ、手作業で真心を込めて作り続けているそうです。ネームバリューがあっても大量生産しないならお金儲けは無理ですが、これこそが本当に良いものを作るやり方です。「自分の手で、愛する人々の笑顔を作りたい。」という、創業者の夢までも継承されたようです。 全国の百貨店で買える、誰が作ったかも分からぬ大量生産の有名高級チョコレートと比較したら無礼ですね。美味しくてもそれなりで、このような最高級品と比較する次元にはありません。期間限定ならまだしも、百貨店に常設で出店したら必ず味が落ちるというのは、知る人は知っている業界の常識ですね。
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類い稀なるセンスと才能から「苦味とテクスチャーの天才」と呼ばれるエドアールさんのショコラは、1週間で食べるのが理想と仰るほど繊細です。 いっ時でも不適切な温度帯になると台無しになります。そんな『ショコラの芸術』を、鮮度を保って遠くアルボアから運ぶだなんて、どれだけ大変なことでしょう。 それを実現させるお客様の工夫に驚くと共に、貴重なショコラをこんなにたくさん経験させて下さるお心遣いに大感激しました!♪ |
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フランス語のカタログに、1粒1粒が解説されています。調べて勉強しながら戴くのも楽しいです♪ ちなみに、ルネサンスの頃から使用しているボロボロのデスクは気にしないでください(笑) む。小元太Jr.が2足で立ち上がり、何かを強く要求してきました。犬はショコラは食べられないんだよ〜。ごめんね(><) |
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「Wakaちゃん、なに見てるの〜?」 都会の方がウケそうなのに、なぜパリでやらないのか不思議に感じましたが、春限定ショコラを味わって納得しました。たとえばドーム状のショコラは、森で採れたルバーブを甘草とコンポートにし、ガナシェに乗せてコーティングしています。つまり何と土地のもの、山野草を使ったショコラです!♪
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ルバーブはジャムが有名です。 スイバやギシギシ、イタドリなどもルバーブと同じタデ科ということで、日本でもジャムを作って比較してみたり、楽しんだりする方も多いようです。 「スイバでもこんな味が出せるのかしら?」、「日本のスイバでも挑戦してみて欲しいなぁ♪」と想像するのも楽しいです。 薬草ショコラだなんて、身体にも良さそうです。カカオも元は薬が目的ですよね。良薬口に苦しと言いますが、甘酸っぱく芳醇で、ただひたすら美味しかったです♪ |
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これは『タンジー』のショコラです。和名は蓬菊(ヨモギギク)で、名前から想像できる強い芳香が特徴です。ゼリーに封じられたスケルトンの葉が、見た目にも美しいです♪ ギリシャ神話では、ゼウスがさらってきたガニュメデス王子にタンジーを飲ませ、永遠の命を得させたそうです。古い時代は『アナタシア』と呼ばれ、『不死』を意味しました。古くから魔除けや厄除けなど不思議な力を持つとされ、お菓子の香り付けにも用いられてきました。 このような教養を元に、古の料理人やパティシエも王侯貴族を満足させていたのでしょうね。フランスの人間国宝という称号を納得させる、エドアールさんの技術だけではない深い教養も伝わってきます。教養があるほど楽しめるショコラです♪
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右2つは田んぼの鳥よけの『目玉風船』に見えますが、フランボワーズとマンゴーを組み合わせた春限定ショコラです。登山やピクニックに出かけた際、この時期はフランボワーズ(キイチゴ)を摘むのも楽しいですよね。 アルボワにのみお店を構える理由は簡単で、エドアールさんがその土地をこよなく愛し、大切に想っているからでしょう。四季の移ろいを自分自身の感覚で感じ、触れていたい強い想いも伝わってきます。季節限定のショコラには特にそれが反映されています。 同じ種類の植物でも、違う土地で採れたら別物です。Genの定宿で私も大好きな薬研荘は春の山菜も絶品です。茶会席料理がベースなので、素材頼りの粗野な田舎料理でなく見た目も風味も上品です。女将さんが大好きと仰るアザミのお味噌汁は、アザミそのものが他で採れるものとは種類も違うそうです。「全部が同じ出汁の味」とならぬよう、お出汁を使わないのも特徴です。頭デッカチではできない発想で、素材への尊敬の現れであります。薬研壮の最高のお料理も、薬研の地でしか出せません。だから私たちも遠方でも足を運ぶわけです。知識豊富、感覚的なあらゆる才能と発想力にも恵まれた女将さんと、エドアールさんはとっても似ているかもしれません♪
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ショコラのために、国内どころか日本から足を運んで下さる。本当に価値を理解していなければ出来ないことで、お店にとっても誇りでしょう♪ 都心より田舎の方が特徴があって面白いのは、どの国も同じでしょうか。それにしても、これだけの職人さんがいて、しっかり評価されているのは素敵なことですね♪ |
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