No.00192 愛しきひと |
『愛しきひと』
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一円玉よりも小さいベゼルに、きれいな女性が描かれています♪ 約1mmほどの非常に細い枠に溝が彫られていますが、こういう難しい細工が18世紀の指輪の特徴です。 欧米の方は旅先にも写真を持ち歩いてフォトスタンドを部屋に飾りますが、19世紀初期にも愛する人の顔をミニアチュール彫らせて持ち歩いたのですね♪。 このリングのサイズは14-15号と大きいので、男性が所有していたのでしょう。サイズは変更できます。 |
ミニアチュール(細密画)は元々は聖書などの本の頁を朱書で装飾したのが始まりで、15世紀頃から印刷による写本が広まると、ミニチュア—リスト(細密画家)は裕福な人に勧めて個人の肖像画の注文を受けるようになります。 ミニアチュールは初期の頃は「なめし革」に描かれていましたが、1700年頃に象牙の板の上にミニアチュールを描くことが始まり、小型化が可能になりました。 1840年代からヨーロッパに写真が普及し始めると、肖像画としての需要はより安価な写真に取って代わられ、若い芸術家で肖像画家として修行する人はいなくなってしまいました。 |
肖像画に書かれた人物は、優しげな表情をしています。全体のリングのレベルから言って、肖像画も腕の良いミニアチューリストに描かせたものでしょう。 |
指の形に沿うように作られたベゼルは、シンプルですがしっかりした良いものです。 |
ベゼルは厚みがある良い作りです。 やや時代を経て黒くなっていますが、金磨き用の布で擦ればすぐに取れます。ピカピカに磨き上げるのも味気ないものなので、ほんの少しだけ磨いて古い味わいを楽しむのも良いですし、必ずしも磨く必要もないと思います。 |
18世紀のリング自体とても稀少なものなのです。 この時代は同じジョージアンの分類でも、19世紀初期と比較して格段にジュエリーを持てる身分の人たちは少なく、数が作られていないのです。 ポートレートを作らせることができたこと自体、とてもお金持ちの貴族だった証拠であり、このリングは当時とても身分の高かった人のものです。 ポートレートの女性が誰なのか分からなくても、当時の女性とこの女性を愛し、リングを肌身離さず身につけていた男性に思いをはせながら、古く稀少価値があるものを身につけるのも、とてもおしゃれで楽しいことだと思います。 |
【参考】エナメル・ミニアチュールのポートレート
『ヴィクトリア女王』 エナメル・ミニアチュール ポートレート・ブローチ イギリス 1876年頃 SOLD |
このように、贈り物として数多くオーダーする支配者も存在しましたが、これは富と権力が集中するヨーロッパ貴族階級でも、最上位に位置する人だからこそ可能なことです。 |