No.00177 キューピッドと鷲 |
高い透明感と独特の景色・質感をもつ美しいストーン!
極小のカメオとは思えない素晴らしい彫り!
これは19世紀初期(ジョージアン)のカメオならではの傑作です!!!
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『キューピッドと鷲(ゼウスの使い)』 |
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高い透明感と独特の景色・質感を持つ美しいストーン
全体的に、暖かみのあるオレンジ色を帯びた石です。透明感あるカメオ下地には、まるで粉雪が舞っているかのような独特のインクリュージョンがあります。ぷっくり愛らしいキューピッドの左側には、オレンジ色のカーテンのような縦のラインが入っています。カメオ部分は不透明で、キューピッドの足下にかけてオレンジ色が濃くなるグラデーションになっています。こんな石を使ったカメオは見たことがありません! |
カメオの裏に置いた印刷物が透けて見えるのを見れば、このアゲートが如何に透明感ある珍しい石かがお分かり頂けると思います。二つの色の違う層を持つ石で、これだけ透明な石は普通はあり得ないのです!! | |
バックが白と黒でこれだけカメオが違って見えるのも、如何に透明感のあるアゲートなのかを示すものです。実際に使う際、洋服やストールなどを何色にするかで全く印象が違ってくるということですね。コーディネートを考えるのがより楽しくなりそうです♪ |
ヘリテイジの市ヶ谷のアトリエにて、自然光の下だとこのような雰囲気です。見ているだけでも楽しくて幸せな気分になれますね。こういう光にかざして鑑賞する楽しみも、優れたカメオの魅力の1つです。カメオの高い芸術性、つまりアーティスティックなデザインや彫りの良さがないと面白くありません。 例え手作りのアンティークのカメオであっても、ヴィクトリアン中期以降に大衆用として量産されたつまらないものだと、光にかざしてもちっとも面白くないです。 |
少し前、日本でアンティークジュエリーが流行った時代には多くのカメオがヨーロッパから輸入されました。現地価格が明らかに高騰するほどの日本人によるカメオブームは、ヨーロッパのディーラーからも異様視されたほどです。 優れたカメオは数が存在しません。日本でのブームの際にはもたらされたカメオの多くは、ヴィクトリアン中期以降にヨーロッパで発生した第二次カメオブームで量産された低品質のつまらないものです。
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【参考】ヴィクトリアン後期の低品質なストーンカメオリング |
『禁じられた遊び』ストーンカメオ ルース フランス 18世紀中期 SOLD |
ストーンカメオ リング フランス 18世紀後期 SOLD |
上の2作品は、以前販売した18世紀の透明な石を使ったカメオです。このような面白い石の特性を巧みに活かしたアーティスティックなカメオは、18世紀以前もしくは19世紀初期頃のカメオだけの特徴です。 |
19世紀中期のカメオの大ブームになると、このような均一で一見小綺麗な、誰にでも分かりやすい石を使うようになるのです。 アーティスティックな石は元々貴重ということもありますが、それよりも誰にでも分かりやすい物の方が売りやすいということです。誰もが芸術作品を感性で理解できるわけではないのは今も昔も同じということなのです。 |
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【参考】ヴィクトリアン中後期の低品質なストーンカメオ |
このストーンカメオリングに使われているのは、雰囲気のある実に面白い石ですね。 白い不透明な層と、透明な層の境界ははっきりと分かれておらず、そのことが幻想的な雰囲気へとつながっています。男性の左側に見える3つの円模様がさらに面白いです。自然が偶然に作り出したものですが、まるで池に小石を投げた時にできる波紋のようですね。 |
ご紹介のカメオもまた圧巻の作品です!こんな模様と質感を持った石は今まで見たことがありません。先ほどの透明な石の2作品とも全く異なります。カメオ下地のオレンジ色の粉雪のようなインクリュージョンが、水鉢を持つキューピッドのほのぼのとした雰囲気をさらに高めています。 |
キューピッドの左側のオレンジ色の縦の模様もとても面白いです。 粉雪状のインクリュージョンが均質に分散しているため、ともすればカメオ全体がのっぺり見えがちです。しかしながらこのオレンジ色の縦模様があることで、全体に奥行きが生まれているのです。 間違いなく作者は全てを計算して作っています。実にアーティスティックな作品ですね。 |
キューピッドと鷲のモチーフ
表現されているのは、キューピッドが水鉢を持ち鷲に飲ませている様子です。キューピッド、鷲のどちらもカメオとしてはメジャーなモチーフですが、この組み合わせはありそうで今まで見たことがありません。 |
ゼウスと鷲
『ゼウスと鷲』赤絵式アンフォラの一部(アテナイ 紀元前480-紀元前470年)ルーブル美術館 | 『ゼウスと鷲』プトレマイオス5世の青銅コイン(紀元前204−紀元前180年) "Ptolemy V Bronze 1" ©http://www.ancientcointraders.com(19 February 2017)/Adapted/CC BY-SA 4.0 |
鷲はゼウスの化身だったり、使い鳥とされており、鷲のモチーフはしばしば芸術作品で見ることができます。 |
ガニュメデスと鷲
『ゼウスとガニュメデス』アテナイの赤絵式陶器の一部(紀元前490-紀元前480年頃) "Ganymedes Zeus MET L.1999.10.14" ©David Liam Moran(13 Eylül 2007)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
一番有名なのはギリシャ神話のガニュメデスと鷲のお話でしょうか。 トロイアの王子で美少年だったガニュメデスですが、その美貌からゼウスに気に入られてしまい、神々の給仕係にされてしまいます。「こんな美少年からお酌してもらったら、より酒がうまくなるに違いない」、ゼウスの気持ちはとっても分かりますが、それまで王子という身分だった人間に召し使いを強要するなんてちょっとエグイですね〜、さすが神の中の神!(笑) |
『鷲(ゼウス)に給仕するガニュメデス』(ベルテル・トルヴァルセン 1817年)トルヴァルセン美術館 "Ganymede Waters Zeus as an Eagle by Thorvaldsen" ©CarstenNorgaard, Thorvaldsen Museum(2010-07-21)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
ガニュメデス王子は鷲にさらわれたそうですが、その鷲はゼウスが姿を変えたものである、ゼウスの使い鳥だったなど、諸説存在します。神話なので特定は不可能ですし、断定する必要もないことでしょう。 これはデンマークの彫刻家トラルヴァルセンによる作品です。 |
ベルテル・トルヴァルセン(1770年頃-1844年) | トルヴァルセンの作品にはジロメッティ作『ユリウス・カエサル』でも少し触れているので、ピンと来た方もいらっしゃるでしょうか。 ジロメッティと同時代に活躍した彫刻家で、ジロメッティもトルヴァルセンの彫刻作品を模刻したり、発掘された古代の作品からインスピレーションを受けた作品をいくつも制作しています。 |
ヒービー(ヘベ)と鷲
『ヒービーと鷲』 イギリス 19世紀中後期 SOLD |
『ゼウスとヘベ』 フランス 19世紀後期 SOLD |
ヒービーもアンティークジュエリーのモチーフとして人気があります。鳥の中でも鷲は神々しく迫力満点で、美しい女神との組み合わせは絵になりますからね〜♪アンティークのカメオの題材としては、この組み合わせが一番多く作られている印象です。 |
キューピッドと鷲のモチーフ
今回のキューピッドと鷲という組み合わせは初めてみる珍しいものです。ゼウスは美男美女が大好きなので、この鷲はゼウス本人と言うよりはゼウスの使い鳥としての鷲なのかなと推測しています。可愛らしいキューピッドが、大神ゼウス様の大事な鷲に一生懸命お水をあげている愛らしい光景、そのように見えます♪ モチーフの元となった古代の美術作品らしきものやエピソードは今のところ見つかっていません。才能豊かな作者がインスピレーションを働かせながら、独自の創作をした可能性が十分に考えられます。 |
抜群の彫りと仕上げ
ぜひ、1円玉と比較して大きさを想像しながらご覧ください。キューピッドの足下に注目すると、わざわざ足を組んだポーズを表現していることが分かります。しかもこれだけ小さなカメオにも関わらず、右足の指はちゃんと5本全て彫ってあるのが素晴らしいです!♪ |
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キューピッドの頭部は約4mm弱の大きさしかないのですが、ぷっくりした頬やまん丸い目がとても可愛らしいです。目はきちんと鷲の方を見ています。ここまで表現できるなんてびっくりです! おなかのぷくぷくした柔らかな感じまでも、見事に表現されています。幼児体型は、筋骨隆々な大人や柔らかくしなやかな女性とは違った表現の難しさがあるのですが、これほどまでの表現力は素晴らしいの一語に尽きます。 |
この角度から見ると、キューピッドの下ぶくれのほっぺたが余計に可愛らしく見えます♪ |
ストーンの面取もとても美しいです。 |
鷲の羽の立体感も綺麗ですし、キューピッドの足下の地面が少しオレンジ色が濃くなっているのも面白いですね。石のポテンシャルを最大限まで生かして作られた、驚くべき芸術作品です。 |
もちろん仕上げも完璧で、カメオの部分はキューピッドの幼児らしいモチモチの肌の質感を表現したセミマット仕上げ、カメオ下地は驚くほど照りが良い艶々の仕上げです。 |
ヘリテイジでは低レベルのカメオは一切扱わず、全てがハイクラスなため、カメオの下地は艶々で当然と思われいる方もいらっしゃるかもしれません。 ろくな仕上げをしないカメオはこういう感じです。手抜きしようとする職人の意識が伝わってきて、同調してしまいどうしても気持ちの悪さが押さえられません。 こんな気持ちの悪いものをお客様に安くはない値段で販売して身に着けさせるなんて、私には到底できないのです。モーニングジュエリーを気持ち悪がる方もいらっしゃいますが、こういう低レベルのジュエリーの方がよほど気持ち悪くありませんか?(だから高品質ならばモーニングジュエリーは購入すべきということでは決してありません) |
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【参考】ヴィクトリアン中後期の低品質なストーンカメオ |
光に透かして透明感を見るのも楽しいのですが、実は自然光の元でこの美しい照り艶を見るのもとても楽しいのです♪本当に石で作ったとは思えません。この時代の優れた職人さんは本当にすごいですね。 |
裏を見ても分かるように、コンディションはすべて良好です。 キューピッドの左側にあったオレンジ色の縦のラインはこのように見えます。こうやって石を切り出し、モチーフの構図をどういう位置関係にするか計算し尽くしてから彫刻に取りかかったはずです。 |
古い時代の特別な宝物、愛らしいモチーフは芸術作品として鑑賞するだけでも心豊かになります。さらにどんな服装にも合わせやすい大きさとデザインは、持ち主の人生をさらに豊かにしてくれそうですね。 |