No.00225 白い花のバスケット

エドワーディアンのギロッシュエナメル&天然真珠&ラティスワークのフラワー・バスケット・ブローチ

 

天然真珠&ダイヤモンド&ブルー・ギロシュエナメルのエドワーディアンのフラワーバスケット型のアンティークのペンダント&ブローチ

『白い花のバスケット』
フラワーバスケット型 ペンダント&ブローチ

イギリス 1910年頃
天然真珠、オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド、ローズカット・ダイヤモンド、ギロッシュエナメル、プラチナ&ゴールド
2,6cm×2,6cm
重量5,3g
SOLD

オーソドックスな印象の作品が多いフラワーバスケット・モチーフのジュエリーにおいて、エドワーディアンの洗練された雰囲気と優れたデザイン、エドワーディアンらしい細工の魅力がが詰まった珍しいペンダント&ブローチです。

←↑実物大
ブラウザによって大きさが違いますが、1円玉(直径2cm)を置いてみれば実物との大小比が分かります

 

花籠のモチーフ

天然真珠&ダイヤモンド&ブルー・ギロシュエナメルのエドワーディアンのフラワーバスケット型のアンティークのペンダント&ブローチ

美しいお花をたくさんバスケットに詰め込んだ花籠は、どの時代の女性からも愛される普遍のモチーフですね♪

プラチナにゴールドバックのエドワーディアンのアンティーク・ペンダント&ブローチの裏側

この作品はエドワーディアンの素晴らしい細工が詰まったハイクラスの花籠ペンダント&ブローチで、エドワーディアンらしい特徴が魅力なのです。

そのことを理解するために、少し時代ごとの花籠モチーフのジュエリーを見てみることにしましょう。

細工物と宝石主体の作品

インド産ゴルコンダ・ダイヤモンドのクッションシェイプ・ダイヤモンドが見事なジャルディネッティのアンティーク・ブローチジャルディネッティ・ダイヤモンド・ブローチ
フランスorイギリス 1780年〜1820年頃
SOLD

左は花籠と言うより花瓶ですが、花籠モチーフのジュエリーには細工物と石主体の物の2種類に大別することができます。

どの時代にもこの2種類は存在しますが、今回ご紹介しているエドワーディアンの花籠ブローチは細工物なので、今回は細工物に絞って見て参りましょう。

ジョージアンの細工物の花籠モチーフ・ジュエリー

マイクロパール&金の撚り線細工&ペーストのフラワーバスケット・モチーフの18世紀のモーニング・リングミクロパール ペンダント&ブローチ
イギリス 1800年頃
SOLD

細工物が特に評価され、技術が頂点に達したと言える異例の年代(1770-1800年頃)ならではの、ミクロパールと超極細の撚り線細工による花籠モチーフのペンダント&ブローチです。

この時代の作品でしか見られない、神技レベルの細工が魅力です。

マイクロパール&金の撚り線細工&ペーストのフラワーバスケット・モチーフの18世紀のモーニング・リングの細工の拡大
マイクロパール&金の撚り線細工&ペーストのフラワーバスケット・モチーフの18世紀のモーニング・リング

マイクロパールももちろん凄いですが、この作品はゴールド・ワークの技術とデザイン上のセンスの良い活かし方が素晴らしいです。

ただの1本の線、2本の線を撚った撚り線の他に面白いのがこのバスケット部分の平面的な撚り線です。

普通の撚り線を何らかの方法でうまく潰して作ったのかなとも思いますが、はっきりと手法は分かりません。肉眼では認識できないほど細いのに、これだけ太さが揃っているのも脅威的ですし、立体を意識して作られているのがこの時代のハイクラスの作品らしい作りです。

極上の細工物は、もはやジュエリーと言うより1つの芸術作品と言えますね。

←↑
等倍
ブリストル・ブルーグラス&ダイヤモンドのジャルディネッティのロケット・ペンダントブリストル・ブルーグラス ロケット・ペンダント
フランス又はイギリス 1800年頃
SOLD

同じくらいの年代に作られたこのペンダントは、当時の画期的な新素材ブリストル・ブルーグラスが特徴です。

高価なブルーグラスにダイヤモンドをセットした高貴な青のジュエリーは、当時のイギリス王室も魅了しました。

王侯貴族の庭園にコンサバトリー(温室のような建物)が流行した時代らしい、ジャルディネッティ様式のフラワーバスケットと相まって、この時代らしい花籠モチーフの作品となっています。

シャンルベ・エナメルのフラワーバスケット・モチーフのジョージアンのピンキーリング『花籠』
不思議な細工のエナメル ピンキーリング
ヨーロッパ 19世紀初期
SOLD

この作品はシャンルベ・エナメルだけの非常に珍しいリングでした。

エナメルだからこそのカラフルな色彩も魅力ですが、ジョージアンならではの金細工も見事なもので、一体どうやって作ったのか分からない彫金細工もありました。

金線を編んだフラワーバスケットのジョージアンのシール&ペンダントフラワーバスケット シール&ペンダント
イギリス 1820年〜1830年頃
SOLD

少し時代が下り、ジョージアンではこのような花籠モチーフの作品もあります。

ゴールドが史上最も高かったと言えるイギリスのこの時代は、少ないゴールドで見栄えするように作られた繊細な金細工が特徴ですが、この作品には全体的にふんだんにゴールドが使われています。

技術的には繊細なゴールドワークも可能だったはずですが、金線で編まれたバスケットも頑丈そうな作りですね。

金線を編んだフラワーバスケットのジョージアンのシール&ペンダントの底面のブラッドストーンのインタリオ

それには訳があって底面を見るとこれがフォブシールでもあることが分かります。

ジュエリーとしてだけでなく、それなりに力が加わる実用品でもあったからこその重厚な作りなのですが、これだけゴールドをたくさん使うなんて贅沢なジュエリーですね。

さすがに金線で編まれたバスケットも360度、本物のバスケットらしい形です。

ヴィクトリアンの細工物の花籠モチーフ・ジュエリー

ジョージアン後期もしくはヴィクトリアン初期のマイクロパールを使ったフラワーバスケットのアンティーク・ブローチミクロパール(極小天然真珠) ブローチ
イギリス 1830年〜1840年頃
SOLD

ジョージアン後期〜ヴィクトリアン初期頃のミクロパールの作品もありました。

マザーオブパールの雰囲気あるバスケットや、ポイントになる箇所に配置されたローズカット・ダイヤモンドの控えめな輝きも特徴的な作品です。

それにしても、極小ながらも天然真珠の照り艶を生かした白い花は、独特の可憐な魅力がありますね。

デマントイドガーネット&ルビー&ダイヤモンド&天然真珠のフラワーバスケット・モチーフのフランスのアンティーク・ゴールド・ネックレスフラワーバスケット ゴールド・ネックレス
フランス 1880年頃
SOLD

GENの頃から、上質なだけでなくセンスの良さや面白さ的な魅力も感じることが買付の条件なので、普通の定番の作品はほとんど扱っていないのですが、この花籠ジュエリーも変わっていますね。

デマントイドガーネットやルビー、ダイヤモンド、天然真珠を使ったジュエリーでありながら、全体のデザインに気の利いた丁寧な作りの作品です。

花籠はゴールドによる表現がとても立体的で、単独で揺れる構造なのも素敵ですね。

カリブレカット・ルビー&天然真珠を使った、金線を編んだフラワーバスケットが見事なフランスのアンティーク・ペンダント&ブローチフラワーバスケット ペンダント&ブローチ
フランス 19世紀後期
SOLD

細工物の極上のフラワーバスケット・ブローチと言えばこの作品です。

総合判断から20世紀に近い頃の作品と推測されますが、極細の金線を編んだバスケットは息をのむ美しさです。

グリーンゴールドの葉の彫金も美しいですし、葉も花も立体的な造形が見事です。

バスケットがたわわな花の重みで、少ししなったデザインなのが作者の抜群のセンスの良さも感じます。

エドワーディアンの細工物の花籠モチーフ・ジュエリー

金線を編んだフラワーバスケット収穫された葡萄が詰め込まれた、シャトーを持つ貴族のためのフランスのアンティーク・ブローチ収穫した葡萄のペンダント&ブローチ
フランス 1910年頃
SOLD

少し時代が進んで、プラチナが登場時代の作品です。

正確にはフラワーバスケットではなく収穫した葡萄が入っていますが、この作品も細い金の糸で360度立体的に編まれたバスケットとが見事です。

シャトーを持つ人物が特別にオーダーしたのでしょうかね。

マイクロダイヤモンドを使ったブルー・ギロッシュエナメルのフラワーバスケット・モチーフのベルエポックのフランス・アンティーク・ブローチマイクロダイヤモンド ブルーエナメル ブローチ
フランス 1900-1910年頃
SOLD

プラチナが出てきた時代だからこそ可能となった、極小のダイヤモンドを爪留めしたこの作品も、この時代らしい作品と言えます。

ファベルジェによってギロッシュエナメルも再注目された時代ならではの作品です。

マイクロパール&天然真珠を使ったパープル・ギロッシュエナメルのフラワーバスケット・モチーフのプラチナのアンティーク・ブローチマイクロパール ブローチ
イギリス 1910年頃
SOLD

このブローチに関しては例外的な作品と言えます。

オールプラチナで作られた、作りも素材も相当にお金をかけられた作品です。

天然真珠が史上最も評価され、高かった時代において、私たち同様に1800年前後のマイクロパールに魅了された知性と感性豊かな王侯貴族がお金に糸目を付けずに特別にオーダーしたのだと感じます。

それにしてもやはり白い真珠で表現されるお花には、清楚で独特の魅力がありますね。

ヴィンテージ以降の花籠モチーフ・ジュエリー

アンティークジュエリーのクラシカルで優れたモチーフはヴィンテージでも人気があったため、ジュエリーに限らずアクセサリー(コスチュームジュエリー)でも割と花籠モチーフのものが存在します。

左は18ctゴールドと、天然なのか合成なのか、加熱品なのかは不明ですが一応ルビー&サファイアが使用された『ジュエリー』です。

ツッコミどころは色々ありますが、バスケットのちゃちさは酷いですね。

バスケットの取っ手はただゴールドの棒をねじっただけの粗末な作りです。

バスケットも太い金線をそれっぽく何となく編んだだけです。

【参考】ヴィンテージのフラワーバスケット・ブローチ
ルビー&サファイア(天然かどうかは不明)、18ctゴールド

もちろん裏側に細工の手間をかけるわけもありません。

「見えないんだから良いじゃない。」

「見えなくても、自分満足のために裏側から細部に至るまで意識を行き渡らせたい。」

台頭してきた教養や感性の低い小金持ちと、昔の伝統的な王侯貴族の美意識の違いがよく現れているではありませんか。

【参考】フラワーバスケット・ブローチ(ビンテージ)
金線で編んだゴールドのフラワーバスケットアンティークのハイクラス
【参考】ヴィンテージ

先ほどの極上の作品と比較すれば、そのレベルと品格の違いは一目瞭然です。ヴィンテージは優れたアンティークを真似るかインスピレーションを得て作ったはずですが、この雑さはちょっと酷すぎますね。でも、18ctゴールドと宝石を使ったジュエリーとして販売されているので結構高いのが驚きです。

カリブレカット・ルビー&天然真珠を使った、金線を編んだフラワーバスケットが見事なフランスのアンティーク・ペンダント&ブローチの裏側
カリブレカット・ルビー&天然真珠を使った、金線を編んだフラワーバスケットが見事なフランスのアンティーク・ペンダント&ブローチの底面アンティークのハイクラス
【参考】ヴィンテージ

まあこの手のかけ方の違いこそが、予算に上限を設けないオーダーの一点物と、安く雑に量産して庶民でも買える値段でたくさん売ろうとする量産品の違いと言えます。職人のプライドと技術、想いが籠もった優れたジュエリーは見ているだけでも豊かな気持ちになれますが、雑に作って価値のない物でボロ儲けしようとする悪意すら感じるジュエリーは、感性がある人ならば気持ちが悪くて着けたいとは思えないのではないでしょうか・・。

チャールズ皇太子の出産記念に両親から贈られたフラワーバスケット・ブローチを着用した
エリザベス女王(1948年) 【引用】MailOnline / Published by Associated Newspapers Ltd © Royal Collection Trust / Her Majesty Queen Elizabeth II 2020

エリザベス女王も花籠のブローチを着用しています。王室ジュエリーとは言え、私はちょっとピンと来なかったのですが、1948年の物と知って納得しました。

そうは言ってもチャールズ皇太子の誕生記念にご両親からいただいた物とのことで、愛する人たちからの真心や想い出は何にも代えられませんね。さすがにまだ1940年代ですし、王室御用達ジュエラーによる作りなので、同じ年代のジュエリーと比べればそこまで悪くはなさそうです。

ただ、現代のこのアクセサリーは止めた方が良い気がします。

イギリス王室の公式ギフト・ショップで販売されている、エリザベス女王のブローチの模造品ですが、宝石ではなくクリスタルガラスとメッキによるお土産品レベルのオモチャです。

王室も真剣に稼がなくてはならない時代となってしまったので、やむを得ないのかもしれませんが・・。

【現代アクセサリー:英国王室の公式店舗の販売品】
エリザベス2世のフラワーバスケット・ブローチの模造品
クリスタルガラス、ホワイトゴールド・メッキ
【引用】Royal Collection Trust / BROOCHES ©Royal Collection Enterprises Limited

エドワーディアンらしい洗練されたデザイン

フラワーバスケット型 ブローチ アンティーク

細工物の各年代の優れた花籠モチーフのジュエリーをご紹介しました。

それぞれ当時の最先端だったり非常に高価だったりした技術や材料が詰め込まれており、時代を反映した作品が多かったですね。

この作品の特徴は、オーソドックスなモチーフながらもエドワーディアンならではの洗練された雰囲気のデザインです。

マイクロパールの花籠モチーフのアンティーク・リング ブリストル・ブルーグラス&ダイヤモンドのジャルディネッティ・ロケット・ペンダント シャンルベ・エナメルの花籠モチーフのアンティーク・リング
ジョージアンの花籠モチーフのアンティーク・シール&ペンダント マイクロパールの花籠モチーフのアンティーク・ブローチ フランスの花籠モチーフのアンティーク・ゴールド・ネックレス
フランスの花籠モチーフのアンティーク・ブローチ マイクロパール&天然真珠の花籠モチーフのアンティーク・ブローチ エドワーディアンのフラワーバスケット型ペンダント&ブローチ
エドワーディアンの葡萄を収穫したバスケットのペンダント&ブローチ エドワーディアンのブルー・ギロッシュエナメルのフラワーバスケット型ブローチ

およそ年代順に並べてみました。ご紹介している作品以外の花籠ジュエリーは比較的クラシックな雰囲気を醸し出すのと違って、今回の作品は抜群に洗練された印象があることにお気づきいただけましたでしょうか。デザインには好みがあるのでどれも甲乙は付けられませんが、ご紹介の作品の他にはない魅力の1つがエドワーディアンらしいこの洗練された雰囲気と言えます。

作りの特徴1. ラティスワークにセットされたダイヤモンド

フラワーバスケット型 ブローチ アンティーク

金線を編んでバスケットを表現するゴールド・ワークもありましたが、この作品はプラチナの時代ならではのラティスワーク(格子状の透かし)でバスケットの編み目を表現しています。さらにラティスのクロスポイントには極小のローズカット・ダイヤモンドが留められており、それぞれがキラキラと繊細に輝く姿はとても美しいです。

フラワーバスケット型 ブローチ アンティーク
フラワーバスケット型 ブローチ アンティーク
この角度で見ると、プラチナにゴールドバックのエドワーディアンならではの作りであることが分かります。プラチナが一般のジュエリー市場に出始めたばかりで、非常に高価だった頃に制作された証です。このゴールドバックの作りは、エドワーディアンという短い時代を特定できるのも魅力の1つですね。
フラワーバスケット型 ブローチ アンティーク

ラティスワークの部分は、プラチナの板から糸鋸で透かしを作り、鑢で丁寧に仕上げる加工をするためにゴールドバックではなくオールプラチナです。

この格子状の透かしは、手間のかかるハンドメイドならではの素晴らしい作りです。

【参考】アメジストと9ctゴールドの花籠ブローチ

ハンドメイドであっても適当に作られた安物は、このように雑に交差させて蝋付けするだけだったりします。

【参考】ロジウムメッキの花籠ブローチ(ヴィンテージ 1955年)

一見編んでそうに見えるかもしれませんが、先ほどの9ctブローチのように手作業で編んですらありません。聞いたこともないどこかのブランド品ですが、鋳造の量産品なのは裏側を見れば明らかです。1955年でもうこんな感じです。

編んであるように見せかける手間すら惜しいこの量産アクセサリーのバスケットは、鋳造で作った簡素なラティスワークになっています。

ダイヤモンドすら使っていない見た目も安っぽい代物ですが、ブライダルにオススメなのだそうです。独身の私としては、それは勘弁して欲しいです(笑)

それはさておき、ラティスのクロスポイントにダイヤモンドがあるかどうかで全く印象が異なることが分かります。

【参考:現代アクセサリー】花籠のブローチ
キュービックジルコニア、シェル、シルバーにホワイトゴールドメッキ

作りの特徴2. ラティスの隙間から見えるギロッシュ・エナメル

フラワーバスケット型 ブローチ アンティーク

この素晴らしいラティスワークの隙間から、美しいブルー・ギロッシュエナメルが見えるのがこの作品ならではの魅力です。

ファベルジェのサーモンピンクのギロッシュ・エナメルが美しいロシア皇后アレクサンドラのブローチ『ロマノフ王朝最後の皇后アレキサンドラ』
-永遠に美しいファベルジェのエナメルによるクラウンジュエリー-
ロシア 1900年頃(ファベルジェ作:マークはありません)
SOLD

1917年にロシア革命で全てが終わってしまう前、19世紀後期からエドワーディアンにかけてはロシアの天才プロデューサー、ファベルジェが活躍しました。

18世紀の優れたギロッシュエナメルの研究を重ねることで、王族からも人気の高いファベルジェのエナメルを完成させました。

そのような時代だったため、ファベルジェ以外からも優れたギロッシュエナメルのジュエリーが生み出されました。

フランス製でムーブメントはスイスのブルー・ギロッシュエナメルが美しいアンティークのラペル・ウォッチ(懐中時計)ラペル・ウォッチ
フランス 1910年代後半(ムーブメントはスイス製)
SOLD

このような当時の最高級のラペルウォッチにも美しいギロッシュ・エナメルが施されています。

竜頭がサファイアだったり、ダイヤモンドも贅沢に鏤められていますが、この作品は細工物と言って良い空前絶後のプラチナのミルワークが施されていました。

いずれのジュエリーもギロッシュエナメルは名脇役的な使い方ですが、その美しい色彩によって全体の雰囲気が決まり、その地模様によって主役となるモチーフや宝石が惹き立つ重要な役割を果たしています。

フラワーバスケット型 ブローチ アンティーク

天然真珠とダイヤモンドの白い花々を、エナメルのブルーの色彩がさらに清楚なイメージに惹き立てています。ある程度厚みがあるギロッシュ・エナメルの地模様が、ダイヤモンドが輝く格子の隙間から湧き出てくるのも、実に美しいです。

作りの特徴3. 小さなダイヤモンドをふんだんに使った繊細な輝き

フラワーバスケット型 ブローチ アンティーク

上の画像はかなり拡大していますが、実際は小型のブローチです。

ダイヤモンドが全ての葉と花びら1枚1枚、そしてリボンにもセットされています。実物は『ダイヤモンド』というイメージは受けないくらい小さな石なのですが、それぞれの石が小さくてもダイヤモンド特有の強い煌めきを放ちます。

全体から無数の繊細な輝きが放たれる姿は、清楚でとても美しいのです。ダイヤモンドの主張の強い輝きが苦手な方でも、この清楚な輝きはきっと虜になると思います。

←↑
等倍

デザインのポイント:プラチナの細工の使い分け

エドワーディアンの天然真珠(ボタンパール)&ダイヤモンドのスタイリッシュなアンティークネックレス
『Quadrangle』-四角形-
エドワーディアン 天然真珠 ネックレス

オーストリア? 1910年頃
天然真珠、オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド、ローズカットダイヤモンド、プラチナ&ゴールド(14ctゴールド)
SOLD

ハイクラスのエドワーディアン・ジュエリーは、繊細緻密なプラチナのミルワークも魅力の1つです。

優れたエドワーディアンジュエリーには必ずと言って良いほど美しいミルが打たれているものですが、『ストライプ』でもご紹介した通り、技術がなかったり手間を惜しんだわけではなく、全体のデザインを計算した上で意図的にミルを打たない箇所を作る場合があります。

フラワーバスケット型 ブローチ アンティーク

この作品において、それに該当するのがバスケットのダイヤモンドのフレーム以外の箇所です。ラティスにミルを打っていないのは、クロスポイントごとにセットされたダイヤモンドの輝きを目立たせる意図があります。プラチナの繊細なミルは、ダイヤモンドまではいかなくても強く輝きます。あえてラティスにはミルを打たないことで、その奥から湧き出てくるギロッシュエナメルの美しさや、クロスポイントのダイヤモンドの輝きを邪魔せず惹きたたせることができています。

さらにバスケットの下の土台と上の縁は、少し幅の広いプラチナの滑らかな表面になっています。土台部分については、バスケットの土台に相応しいどっしりとした安定感のある印象を与えます。上の縁については土台以上に幅があります。お花部分とバスケット部分の境界線を示す良いポイントになっていますが、それ以上に、当時ゴールドより遙かに高価だったプラチナを贅沢に使っている印象を与える効果も狙ったのだと考えられます。実際、この作品自体かなりお金をかけた作品だと感じます。


フラワーバスケット型 ブローチ アンティーク

この時代は史上最も天然真珠が評価され、高価だった時代でした。すべては中央にあしらわれた天然真珠の白く清楚なお花を惹き立たせるためなのだと思います。ダイヤモンドのお花、一番上のセンスの良い形状のリボンも実に美しいですが、色石は一切使わず、色彩はブルーのギロッシュエナメルだけです。ありそうでない、エドワーディアンならではの洗練された雰囲気と、この時代らしい細工の魅力が詰まった、センスの良いペンダント&ブローチです。

裏側

フラワーバスケット型 ブローチ アンティーク
フラワーバスケット型 ブローチ アンティーク
ゴールドバックの仕上げは見ていて気持ちが良いほどの丁寧なものです。

 

エドワーディアンの花籠ブローチをペンダントして下げた様子
←↑実物大
ブラウザによって大きさが違いますが、1円玉(直径2cm)を置いてみれば実物との大小比が分かります

ブローチだけでなく、ペンダントとしてもお使いいただけます。ブローチが苦手な方でも楽しんでいただけますし、ぜひブローチとしてもトライしてみて欲しいです♪

現在、アンティークのプラチナチェーンは在庫にございませんが、現代のプラチナやホワイトゴールドのチェーンは実費でご用意することも可能です。長さや種類によっても変わるので、別途お問い合わせください。ご希望の場合はシルクコードをサービスでお付けいたします。