No.00237 英雄ヘラクレス

ポイント4 これまでに見たことのないほどの
高い芸術性と驚異的な彫りを兼ね備えたインタリオ

ヘラクレス

モチーフの面白さ、古代ギリシャの紀元前5世紀という年代的な価値、古代ギリシャのエレクトラムという素材としての価値もさることながら、作りの素晴らしさもこのヘラクレス・リングは群を抜いて傑出した存在です。

ポイントは大胆な構図、彫りの技術、そして芸術性の高さです。

これまでにお取り扱いした、各年代のメタル・インタリオをいくつか見てみましょう。

古代ギリシャのアルカイック時代に作られたゴールドの「王者の指輪」アルカイック 紀元前6世紀
22-24ctゴールド
SOLD
古代ギリシャの鹿モチーフにゴールドリングクラシック 紀元前4世紀
22-24ctゴールド
SOLD
グレコペルシャのゴールドのインタリオ・リンググレコペルシャ 紀元前4世紀
22-24ctゴールド
SOLD
古代ギリシャのエルメスをモチーフにしたシルバーのインタリオ・リングクラシック 紀元前4世紀
シルバー
SOLD
フランスの紋章のアンティーク・リングフランス 18世紀
シルバー&ゴールド
SOLD
ベルリンアイアンのリングドイツ 1815年
ベルリン・アイアン
SOLD

まず、なかなか人物の顔だけがデザインとなっているものは存在しません。特に古代ローマが滅亡して中世の暗黒時代に突入以降、かなりの長い年月ジュエリーは限られた身分の人しか身につけることができない時代が続きました。産業革命によってイギリスの中産階級が勃興し、彼らがジュエリーを積極的に買い始めるヴィクトリアン中期よりも前の時代はごく限られた王侯貴族しかジュエリーは身に着けられませんでした。そのような時代はアーティスティックなものと言うよりは、紋章や持ち主にとって意味のあるモチーフで忠実に作られる場合が多かったのです。

人物の顔の大胆すぎる構図

クレオパトラをモチーフとした古代ローマのゴールド・インタリオリング古代ローマ 紀元前1世紀
22-24ctゴールド
SOLD
古代ローマのシルバー・インタリオリング古代ローマ 4世紀
シルバー
SOLD

ヘラクレス・リングと同じような、人物の横顔をモチーフとしたメタル・インタリオリングはゼロではありません。上の2つはいずれも古代ローマの作品で、どちらもそれぞれに意味のある古代の貴重で優れた宝物です。芸術的観点から見ると、2作品の構図は優等生タイプと言えるでしょう。

ヘラクレス

ヘラクレス・リングで驚くのはリングのフェイスいっぱいに、若干収まっていないと言えるほど大胆に横顔を表現しているのです。

こんな傑出したアーティスティックな表現は他に見たことがありません。

『王者の指輪』を除いて他のどれよりも古い作品において、これだけの芸術性の高さを極めた作品が作られたことは驚くばかりですが、古代ギリシャ紀元前5世紀という時代を考えればむしろ納得なのです。

人物の内面を感じる驚きの表現力

ネメアの獅子退治

このヘラクレスの表現で驚くのは、表現されているのが単なる顔の精悍な美しさだけでなく、ヘラクレスの人間性が滲み出た、内面を深く感じ取れるような表情なのです。

ヘラクレスヘラクレス(制作年不明)
"Heracules Statue" ©遠藤 昂志(2 February 2015)/Adapted/CC BY-SA 4.0

後の時代であれば、有名な豪傑を単に荒々しく力強い表情で表現したかもしれません。

しかし英雄ヘラクレスの真の姿は、生まれてから生涯を通じて理不尽にも思えるような試練の人生。

ファルネーゼのヘラクレス『ファルネーゼのヘラクレス』古代ギリシャ紀元前4世紀の作品を複製(古代ローマ 216年)
ナツィオーレ考古学博物館 "Hercules Farnese 3637104088 9c95d7fe3c b" ©Paul Stevenson(17 June 2009)/Adapted/CC BY 2.0

それを愚痴一つ言わず驚くべき知性と勇気、そして人間離れした怪力で打ち克ち、生涯誰にも負けることなく最後は天空を支配する神として迎え入れられた人物。古代ギリシャ人にとっては、このヘラクレス像は当然の共通認識だったはずです。

ヘラクレス

それを作者はエレクトラムのリングに表現したのでしょうけれど、この表現力と彫りの素晴らしさは尋常ではありません。

当時の名の知れた彫り師で、この時代の第一級の名人だったのに違いありません。

古代世界で最高のインタリオ技術を持っていたギリシャ

古代のリング

古代のインタリオと言うと、古代ギリシャよりも古代ローマを思い浮かべる方が多いでしょうか。

ブルガリアで地下鉄工事中に発見された古代ローマ遺跡の発掘作業 【出典】EUobserver HP/ ©Plamen Stoimenov, Trud(2010)

古代ローマは印鑑代わりに奴隷でもインタリオリングを持っていた上、その歴史も長いので、レベルの低いものであれば発掘でゴロゴロ出てきます。また、美術工芸品については古い物の方が優れている優れている場合が多いと認識している現代人が本当に少なかったり、古代ローマ帝国は歴史的にもメジャーなので、フェイクも古代ローマとして作られることが多い状況にあります。

そういう低レベルのものやフェイクを売りたい店は、古代ローマがいかに優れているかや、古代ローマというだけで価値あるもののように主張するかもしれません。一見プロが尤もらしく説明しているように見えるかもしれませんが、歴史的背景や作品の真の価値を理解して販売している小売店は、正直ヨーロッパを含めてもありません。だからこそGENがヨーロッパのこの領域の権威にも気に入られ、仲良くできているわけですが・・。

古代のリング

古代ローマの方が古代ギリシャより優れているという認識があればそれは誤解で、インタリオの技術も含め、芸術のあらゆる分野で古代ギリシャの方が優れていました。

古代ローマのアウグストゥス

それがよく分かるのが古代ローマのアウグストゥス帝時代に作られた、この古代ローマの傑作、『アポロに扮した人物の肖像』をモチーフとしたアメジスト・インタリオです。

ローマの首都を比類なき都にするため、芸術に心血を注いだローマ皇帝アウグストゥスはギリシャから当代随一とされる宝石彫刻師ディオスクリデスをその弟子たちごと呼び寄せて、カメオやインタリオを制作させました。特に紀元前から紀元後にかけてのアウグストゥス帝時代に傑出した作品が作られているのは、このような背景があったからです。

古代ローマのアラビア産オニキスのカメオGemma Augustea
アラビア産オニキスのカメオ
古代ローマ 20-30年
22,8cm×19,6cm×2.54cm
"Gemma Augustea" ©James Steakley(October 2013)/Adapted/CC BY-SA 3.0

二層のアラビア産オニキスを使ったこの作品も、ディオスクリデスかその弟子の誰かの作だと言われています。

ストーンカメオとしては異例の巨大な作品であることに加えて、細密で完成度の高い彫りは18、19世紀のどんな有名作家の作品も霞んでしまいます。

当時の宝石彫刻師はカメオとインタリオの両方を彫る場合も多く、ディオスクリデスも皇帝アウグストゥスの肖像インタリオを彫っています。

このような素晴らしいカメオを作った時代は、当然ながら18世紀の有名作家など比較にならない素晴らしいインタリオも作っていたということなのです。

アポロに扮した人物の肖像モチーフの古代ローマアウグストゥス帝時代のアメジスト・インタリオリング『アポロに扮した人物の肖像』
古代ローマ(アウグストゥス帝時代) BC.27-AD.14年
シャンクは19世紀
SOLD

その後、その古代ギリシャからの技術が古代ローマにも広がって古代ローマ全体のレベルが上がったはずですが、古代ローマで傑出した作品が出てきやすいのはやはり紀元前1世紀から1世紀にかけてという印象です。

もちろん全てがそうではありませんが、ヨーロッパの権威も左の作品はやはり群を抜いて彫りが良いと言っていたそうで、GENもことあるごとに私にこの作品を自慢してきます(笑)

本当に素晴らしい彫りと表現力のインタリオです。古代ローマの作品ではあるのですが、これが古代ギリシャの実力とも言えるのです。

浅い彫りのインタリオ

ヘラクレスの指輪

このヘラクレス・リングは浅い彫りによる表現も特徴です。

アンティークの紋章ゴールドリング フランス貴族の紋章
コート・オブ・アームズ(紋章)
ゴールド・リング
フランス 19世紀
SOLD

浅い彫りは、このように紋章のような幾何学的な模様などを繊細かつ美しく表現するには向いていると言えるでしょう。

しかしながら人の表情を表現する場合、浅い彫りではどうしても普通は迫力を出すことはできません。

ゼウスのガーネット・インタリオ ゼウス
ガーネット・インタリオガーネット・インタリオ フォブシール
イギリス 19世紀初期
SOLD

これはゼウスもしくはポセイドンとみられる、古代ギリシャの神をモチーフとした19世紀初期のガーネット・インタリオのフォブシールです。

通常の10倍くらいは深い彫りが施された迫力ある見事な表現は、この時代の第一級のインタリオです。

画像は二次元なので伝わりにくいと思いますが、実物をご覧いただくとその深い彫りに驚かれると思います。

深く彫るのも大変難しいことなので、通常はここまで深く彫られたインタリオは見ることがありません。

一方で深いからこそ、これだけの迫力が出せるのです。

エンシェント・ジュエリー

これだけ浅い彫りのインタリオなのに、人物にこれだけ表情を表現できるのはちょっと考えられないことです。

作者が持っていた神のごとき天才的頭脳

マーキーズ・シェイプ プチ ストーンカメオ ペンダント『古代の女神』
プチ・ストーンカメオ ペンダント
イギリス 1880年頃
SOLD

同じ彫り物系の美術品でも、カメオとインタリオでは全く制作する難度が異なります。

カメオの場合は大まかな形を石の塊から削り出し、目で確認しながら不要な部分を少しずつ削って除去しながら完成させていきます。

あらゆる方向から形を確認できるため、頭の中で3D画像を処理する必要はあまりありません。

インタリオ スモーキークォーツ 煙水晶 フォブシール 紋章 イギリス 18世紀 アンティークジュエリー アールクレール 透明な芸術『魔法のクリスタル』
スモーキー・クォーツ フォブシール
イギリス 1780年頃
SOLD

カメオの浮き彫りとは反対にインタリオは沈め彫りなので、目で確認しながら彫ることは不可能です。

透明な石ならば反対側から目視確認することは多少可能かもしれませんが、それでも加工中は見ながらの確認は不可能ですし、不透明であればそれすらも不可能です。

頭の中で3D画像を描き、自由に回転させてあらゆる角度から見ることができる人物にしか制作できないのがインタリオなのです。

カメオと違ってパッと見て分かるものではないため、カメオ・ジュエリーのように身に着け、華やかなオシャレとして人に見せるための物では全くありません。

分かりにくいけれど価値が理解できる持ち主のにとっては、自己満足を叶えてくれる優れたインタリオはたまらない魅力があり、主に印鑑やお守りとして男性が着けるジュエリーに彫られている場合が圧倒的に多いのです。

フランス王ルイ15世の公娼ポンパドゥール婦人フランス王ルイ15世の公娼ポンパドゥール婦人(1721-1764年)

現代でも立体的な処理や数学的な頭脳は女性より男性に分があるとされており、学生時代を見ても社会人のエンジニアの数を見てもやはりそういう傾向は間違いなくあると思います。

たまに男性に劣らない頭脳や趣味嗜好を持つ女性もいて、その一人が18世紀のポンパドゥール婦人です。

わざわざ彫り師を雇って技術を習い、道具も揃えて自らカメオやインタリオを作ったりしていたそうです。

まあそういう女性は例外的な存在で、やはりインタリオは男性のものだったと言えます。

「シレノスのマスク」をモチーフにしたペリドットのカメオ『シレノスのマスク』
ペリドット・カメオ ピン
イタリア? 1890年頃
SOLD

19世紀中期以降にカメオはヨーロッパで大流行していますが、インタリオはカメオよりも彫るのが難しいにも関わらず、その魅力が分かりにくい物だったため、ジュエリーの需要を牽引する中心が中産階級の女性に移っていったこの時代においては、インタリオは逆にその頃から姿を消していったのです。

男性用として作られた『シレノスのマスク』も、ペリドットをカメオに加工するという驚異的な技術が施された当時の王侯貴族のための最高級品には間違いありませんが、見てすぐに良さが分かる作品となっています。

これはこれで私は好きなんですけどね。

古代ギリシャのヘラクレスのエレクトラム・リング

浅い彫りでここまでの描写力がなされたヘラクレス・リングは、少し三次元処理が得意なレベルの頭脳で作れるものではありません。

それこそ神のごとき頭脳がなければ無理です。

ところが必要なのはそれだけではありません。

頭の中で構想することは可能でも、それを具現化する彫り師としての傑出した高い技術がないと不可能なのです。

到底それが実現できるなんて人間としては考えられないことですが、古代人が今で言う現代人にとっての天才達の集まりであったと考えればようやく不可能ではないと思うこともできるのです。

それでも、当時でもただ一人しかいなかったクラスの名人による作品だったと感じます。

エレクトラムを使った理由

古代ギリシャのヘラクレスのエレクトラム・リング

この作品がエレクトラムで作られた理由として、おそらく持ち主だったと考えられる世界最強のスパルタの王族が、激しい戦いでも耐えられる耐久力を必要としたからというのが1つ挙げられます。

このリングは金、銀、銅の合金でできています。

ゴージャスなイメージの金、渋くてカッコ良い印象の銀とも違う、エレクトラム独特のゴールドを帯びたシルバーカラーは見た目の色としても独特の魅力を放ちます。

合金にすることで、それぞれの単体で使うより耐久性も格段に上がります。

古代ギリシャのヘラクレスのエレクトラム・リング

金・銀・銅は素材としては単純ですが、二相系と違って三相系の相図は作成が難しく、しかもこれらが特定の割合の時にどれくらい強度があるかを知ることは困難で、しかも微量元素が強度に効果的に効いてくる場合もあるので、このエレクトラム・リングがどれだけ強度があるかは非破壊では分かりません。

古代ギリシャのヘラクレスのエレクトラム・リング

ただし合金にすることで硬度を圧倒的に高められることは間違いありません。

古代ギリシャのヘラクレスのエレクトラム・リング

ビッカース硬度で比べると、以下になります。

純金:22
純銀:25
純銅:37
18K:120-150

古代人の頭の良さを考えると、もしかすると最も強度が増す割合で配合されているのかなとすら思えてきます。

硬い合金だからこそ可能となった緻密な表現

エドワーディアンのホワイトゴールドを使った最高水準のミルワークのアンティーク・リボン・ブローチ
エドワーディアン リボン ブローチ アンティークジュエリー

『至高のレースワーク』で、プラチナには不可能な表現をホワイトゴールドを使うことによって達成した話をしました。

エドワーディアンの時代はホワイトゴールドよりプラチナの方が高かったため、プラチナの方が100%高級品と素材だけで判断する、教養のない中産階級のような単純なブランド志向でしか判断できない人種には理解不能ですが、細工による芸術性を理解できる教養ある王侯貴族のような方にだけ理解できる作品です。

この宝物は繊細を極めた緻密なミルと透かし細工が特徴の作品ですが、同じような色味でも粘りけがあって柔らかいプラチナではこの細工は不可能で、硬さのあるホワイトゴールドだからこそ実現した作品でした。

『至高のレースワーク』
エドワーディアン リボン ブローチ

イギリス 1910年頃
ローズカット・ダイヤモンド、ホワイトゴールド&イエローゴールド
SOLD
古代ギリシャのヘラクレスのエレクトラム・リング
エレクトラムで作ったこのヘラクレス・リングにも同じことが言えるのです。

ゴールドやシルバーを精製する技術があり、実際にゴールドやシルバーの美術品が存在するこの時代において、なぜこのヘラクレスリングがエレクトラムを使って作られたのか。
エレクトラムを使うことで達成できたのは激しい戦いにも耐えられる耐久力だけでなく、硬度が上がることによる繊細緻密な表現なのです。

古代ギリシャのヘラクレスのエレクトラム・リング

リングのフェイスの小さな領域にこれだけ緻密な表現が施されているなんて驚愕です。

拡大すると普通は粗が目立つものですが、このヘラクレスリングはその繊細さにより一層驚かされるばかりです。

古代ギリシャのヘラクレスのエレクトラム・リング
ヘラクレスの瞳 ここまで拡大して初めて分かることですが、眉毛の表現をここまで繊細に出来ているインタリオは今まで見たことがありません!
古代ギリシャのヘラクレスのエレクトラム・リング


目の周りや耳の穴などの若干窪んで部分に、約2,500年の間に付いたパティナがあります。

それら陰影となることでより立体感が感じられ、美しく素晴らしいインタリオとして完成された姿になっています。

浅い彫りであっても、計算しつくされた素晴らしい彫りだということです。

古代ギリシャのヘラクレスのエレクトラム・リング

硬い合金だからこそ可能となった表現ですが、一方で硬くなるほどに仕上げなどの加工は手間も時間もかかる難しいものとなります。古代の叡智に感服するしかありません。

ヘラクレスの粘土


粘土の型押しも肉眼であれば比較的悪くない感じに見えるのですが、拡大すると繊細すぎる彫りを全く反映できておらず、この程度にしかなりませんでした。

 

エレクトラムリング

裏側を見るとベゼルもシャンクも完全に一体化した作りで、蝋付けの痕跡がありません。

金属の塊から全てを削りだしたのか、謎の技法で作られたのか、『王者の指輪』もそうでしたが、特に古い年代の作品は単なる気合いと根性だけではない、現代人にとって分からない技術で作られていることもあるものです。

古代のエレクトラムリング
古代のエレクトラムリング
古代のエレクトラムリング
古代のエレクトラムリング
この摩耗感が、およそ2,500年もの時を超えてきた証なのです。

 

古代ギリシャのヘラクレスのエレクトラム・リング
古代ギリシャのヘラクレスのエレクトラム・リング

 

古代ギリシャのヘラクレスのエレクトラム・リング

私の指には恐れ多いですし、サイズが違いすぎてトンチンカンなので着用画像はありません。

ただし元々美しい肉体美とマーシャルアーツに憧れ、高校時代から受験勉強そっちのけで毎日欠かさず筋トレし、鏡の前でポーズを取りながら「うおぉぉー、ヘラクレス!!」なんてやっていた私としては、是が非でも身に着けたい宝物でもあります。

GENもこれ僕が着けたいなんて言いつつご紹介するために買い付けた宝物なので、却下しています(笑)

指輪のペンダント

それほどに私たちを魅了する宝物ですが、大きめサイズなので、どうしても欲しいけれどサイズが合わない方も多いかもしれません。

リングとして使う場合はサイズ変更しなくてもサイズ変更リングで調整すれば着けられる場合もございますので、気になる場合はお気軽にご相談下さい。

私のように明らかにサイズ的に無理な場合でも、このデザインであればペンダントとして使っても良いと思います。

多いときはロンドンに年に6回は行っていたというGEN曰く、このような使い方はヨーロッパ人が結構好んでやるそうで、みんなカッコ良く着けこなしていたそうです。

高級メゾンでも使用されている左のようなシルクコードをご希望の場合は、サービスでお付け致します。

 

スパルタの王レオニダスとヘラクレスの指輪"Helmed Hoplite Sparta" ©de:Benutzer:Ticinese(1994)/Adapted/CC BY-SA 3.0,
"Hercules Farnese 3637104088 9c95d7fe3c b" ©Paul Stevenson(17 June 2009)/Adapted/CC BY 2.0

このヘラクレス・リングの背景を探るほどに、持ち主はやはりスパルタの王族、むしろスパルタ王だったと考える方が納得がいきます。王族といえども王をさしおいてこのクラスのリングを着けていたとは考えられない、そういうクラスのものだからです。

GENも"持っている男"ですが、私もそれに関しては自分でも不思議なくらい"持っている"という自信があります。こういう私たちの元に、そのような宝物が来るのは必然だとさえ感じます。

もう1つのGEN自慢の宝物『王者の指輪』の現在の持ち主は今でもアトリエにいらして下さることがありますが、王者の指輪をはめた指を見せながら「すごく良いものですねと言う人もいれば、ハワイの指輪ですか?と言う人もいるんですよ」と笑っていました。資料も全て揃った由緒正しいもの、もしくは高価なものという、一種のブランド的な買い方をしている人だったら「ハワイの指輪ですか?」なんて言われたらいかに良いものかを必死に説明しようとしたことでしょう。

王者の指輪の持ち主は誰が良いものを気づく目があるのかないのか鋭く観察しながら、とても大きな風格を備えた人物で、ずいぶんと相応しい人の元におさまっているものだと興味深く、また非常に面白く感じたものでした。私がアンティークジュエリー・ディーラーになったばかりの頃の話です。

特にこのような古からの傑出した宝物は相応しい人を自ら呼ぶらしく、現代における持ち主に相応しい方の元へ旅立っていきます。紀元前5世紀の激動の時代をスパルタ王とともに駆け抜け、歴代の持ち主を経て時代を超えてヘリテイジの元にやってきたヘラクレス・リング。相応しい方の元に旅立ってもらうため、古代からアンティークジュエリーの時代までの通史を書き、古代美術館を開設し、このカタログへとつなげる私にとっても総力戦でした。すべてはこの素晴らしい宝物の魅力を余すことなくご紹介するためです。それがこれだけの素晴らしい宝物に対する私の責任です。

 

古代ギリシャの哲学者による芸術の定義

 

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