No.00243 パラソルを持つ女


3. アーティストがクリエイティブの主役となった時代の特別な作品

王侯貴族からアーティストへのデザインをする主体の移行

黄金の花畑を舞う蝶

美術工芸品が限られた少数の王侯貴族だけのものだった古い時代ははっきりとした『デザイナー』という職業は存在せず、オーダー主と職人が密に打ち合わせて作品を作るのが普通でした。

身につけるジュエリーや小物は財力だけでなく、オーダー主の教養とセンスが如実に現れる場所でもあり、オーダーメイドはそれを試される機会でもあったのです。

『黄金の花畑を舞う蝶』
色とりどりの宝石と黄金のブローチ
イギリス 1840年頃
¥356,000-(税込10%)
オートクチュールの父シャルル・フレデリック・ウォルト

ヴィクトリアン中期になってくると、産業革命で台頭してきた中産階級もある程度高級な衣服やジュエリーの購買意欲が増してきました。

19世紀後期になってくると、さらにアメリカの富裕層も高級品を積極的に欲しがるようになってきました。

しかしながら新興勢力は従来の王侯貴族のような教養やセンスを持たず、幼い頃からオーダーしたり良いものに触れてセンスを鍛えた体験もなければ、その親もそのような経験はありません。

どうしたら良いのか分からないけれどお金だけは潤沢にある、そのような人たちの受け皿として『デザイナー』という職業が成立できる時代が来たのです。

デザインを売る職業です。その草分け的存在がパリで活躍したイギリス人デザイナーであり、オートクチュールの父と呼ばれるシャルル・フレデリック・ウォルトです。

オートクチュールの父シャルル・フレデリック・ウォルト(1825-1895年)
ウォルトのメゾンのドレスを纏ったオーストリア皇后エリーザベト

フランスのウジェニー皇后を始め、オーストリア皇后エリーザベトやイギリス王妃アレクサンドラもウォルトの顧客でした。

こういう女性たちはウォルトのデザインも喜びながらも、自身の意見もある程度デザインに取り入れさせたはずです。

センスにあふれた人物からのオーダーならば良いのですが、プライドを持って取り組むデザイナーとしては、意見をされるたまにはとカチーンと来たこともあったかもしれませんね。

ウォルトのメゾンのドレスを纏ったオーストリア皇后エリーザベト(1837-1898年)

ウォルトのパリのメゾンには世界各国から王侯貴族や富裕層が訪れましたが、ウォルトが好んだと言われるのがアメリカ人です。

金払いが良かったというのもあるようですが、どうしたら良いのか分からず、デザイナーが提案するものをそのまま受け入れ、喜んで大金を払ってくれたからではないかと推測しています。

ウォルトのメゾンによるドレス(1902年頃)
ティファニーの19世紀の天才デザイナー、ジョージ・パウルディング・ファーナム 1900年のパリ万博に出品されたティファニーのモンタナサファイアとデマントイドガーネットをつかったアイリス
ティファニーのデザイナー ジョージ・パウルディング・ファーナム(1859-1927年)1900年 1900年のパリ万博でグランプリを受賞した作品アイリス(1900年頃)ウォルターズ美術館蔵

時代が下るごとに王侯貴族は力を失い、新興富裕層は力を増やし、デザイナーが必要とされ、美術工芸品の制作は王侯貴族からデザイナーが中心の時代へと移っていきました。『天空のオルゴールメリー』で詳しくご紹介していますが、ティファニーがモンタナサファイアのアイリスでグランプリを受賞した1900年のパリ万博、別名アールヌーヴォーの祭典も、ビッグスリーと言われた3人の巨匠が揃ったことで話題になりました。

1900年のパリ万博に出品されたティファニーのアイリスのピンクトルマリンとデマントイドガーネットのブローチ

 

アメリカのティファニーのファーナム、ロシアのファベルジェ、フランスのラリックです。

この時代は万博を始め、様々な展示会に出展することでデザイナーの実力が切磋琢磨された、デザイナー全盛期の時代です。

これ以降の時代は現代までデザイナーがデザインする時代となってはいます。

しかしながらアールデコ後期あたりからは、純粋に優れたものを作るというよりは手抜きのための量産デザインが求められる傾向が強くなっているので、才能あるデザイナーにとっては既に面白い時代ではなくなっています。

『アイリス』
ティファニー 1900-1901年頃
プリマヴェラ・ギャラリー蔵

少し前に3Dプリンタが話題になりました。

デジタルファブリケーションで何でも自分好みのものをデザインし、世界で1つだけのものを制作できるとの謳い文句でしたが、案の定いざ素人がいきなりやろうとしてもオシャレなものをデザインするのは無理でプロのデザインを買った方がマシ、せいぜい既存の物を自分向けに少しカスタマイズするくらいが現実的です。

3Dプリンタの一例(wikipediaより)
東京大学価値創造デザインラボのオープンラボ展示品
東京大学価値創造デザインラボのオープンラボ展示品(2017年)

これは3Dプリンタを使って制作された、這うことができるクリーチャーたちです。東京大学生産技術研究所では「価値創造デザイン」を推進するため、英国ロイヤルカレッジオブアート(RCA)と組んで東京大学価値創造デザインラボRCA-IIS Tokyo Design Labを設置し、新しい価値創造に取り組んでいます。

技術開発が得意な優れた頭脳があっても優れたデザインもクリエイトできるとは限りませんし、デザインだけ良くても技術が分かっていなければ絵に描いた餅のような、実際には使えないものしかできないものです。

3Dプリンタで作ったバナナの骨格

まだ大企業で研究者として働いていた時代に、東京大学で開催されたオープンラボを見てきました。

バナナの骨格、これはさすがにただのオブジェ感覚で作られたものだと思いますが、面白いというか何だか笑っちゃいますね。

こういう最先端の取り組みも面白いものですし、タダで見られるので(笑)興味がある方はこういうオープンラボに行ってみるのもオススメです。

バナナの骨格標本(2017年)同上
3Dプリンタで作ったリンゴとバナナの骨格

古いものを扱う私がそんなオススメをするのは違和感がありますか?

でも、ヘリテイジで扱うハイクラスのアンティークジュエリーは、当時の最先端の技術とデザインで作られていたのです。

リンゴとバナナの骨格標本(2017年)同上
アールデコ ボヘミアン ガラス 花瓶 アンティーク

特にこの作品は時代の最先端のデザインと、当時最高の技術で作られていますよね。

アーティスト主体の時代のモノづくり

ブルー ギロッシュエナメル ペンダント
『忘れな草』

王侯貴族が主体の時代は、アーティスト兼職人はオーダー主の高い高い要望通りに作品を作ることが使命でした。

才能あるアーティストの場合はオーダー主にいろいろな提案をして、一部取り入れられたり一緒により良いものへとブラッシュアップさせていくなどはあったかもしれませんが、自分が表現したいものを思いっきり作ることは不可能だったでしょう。

その代わり、技術を維持するための経費や必要な人件費には十分に対価を支払ってもらえるので、時間をかけなければできない作業にも手を抜かず十分な時間をかけることができました。

1つの作品に1年かかるならば、人件費だけでも1年分を得られないと成り立ちません。トップクラスの職人の年収が600万円だった場合、税金や諸経費まで考慮するとその3倍はかかると言われています。大作は現代に換算すると最低2000万円近くはしないとペイしない計算になります。

『忘れな草』
ブルー・ギロッシュエナメル ペンダント
フランス? 18世紀後期(1780年〜1800年頃)
¥1,400,000-(税込10%)
アールデコ ボヘミアン ガラス 花瓶 アンティーク

時代が下り、王侯貴族の力が失われていくとそれほどまでのお金を出せる人々が少なくなっていきました。

オーダー主の要望通りのモノづくりではなく、アーティスト兼職人が好きなものを作ることができる時代の到来です。

ただし自由には責任が伴います。

クリエーションの対価として生活を保証してくれるようなパトロン的存在がいなくなったわけです。

生活するための糧は自分で稼がなくてはなりません。

これによって、アーティスト主体の時代は主に3種類の方向性でモノづくりが行われるようになりました。

拡大画像

方向性1
ある程度手をかけずに作る量産品
→稼ぐ手段

方向性2
お金持ちのオーダー品
→稼ぐ手段&金銭的支援が受けられるパトロン獲得を目指す

方向性3
展示会への出品作品
→アーティストとして制約なく思いっきり作りたいものを作る&才能に投資してくれるパトロン獲得を目指す

方向性1 ある程度手をかけずに作る量産品

ルイス・カムフォート・ティファニー

活動を継続していくための日銭を稼ぐのはとても大変なことです。

左のルイス・カムフォート・ティファニーはティファニーの創業者チャールズ・スイス・ティファニーの息子で、自身もアメリカのアールヌーヴォーの第一人者と呼ばれ、1900年のパリ万博に出展したステンドグラス作品『四季』がグランプリを獲得した優れたアーティスト兼デザイナーでした(※大作『四季』はこちらをご参照ください)。

万博等の展示会で確固たる名声を獲得したティファニーですが、それでも量産ジュエリーをたくさん制作しています。

ルイス・カムフォート・ティファニー(1848-1933年)
ティファニーのモンタナサファイア&ムーンストーン・ネックレス

1900年パリ万博、別名アールヌーヴォーの祭典後のいずれも1910年頃のジュエリーです。パリ万博でグランプリを受賞した作品と同じモンタナサファイア、そしてアールヌーヴォーらしいムーンストーン。アールヌーヴォーの第一人者ルイス・カムフォート・ティファニー率いるティファニーでこれを売れば、何の面白みもないこのような量産ジュエリーでもそのブランド価値だけで簡単に売れたのでしょう。

特にお金はあるけど見る目がないアメリカの新興富裕層にとっては、『パリ万博でグランプリをとったティファニーのアールヌーヴォー・ジュエリー』というだけでありがたがられたと思います。逆に、趣向を凝らした分かりにくいけど良いものは、そういう人たちには理解されず作っても売れなかったのだろうと思います。

1900年のパリ万博に出品されたティファニーのモンタナサファイアとデマントイドガーネットをつかったアイリス
1900年のパリ万博でグランプリを受賞した作品アイリス(1900年頃)ウォルターズ美術館蔵

現代のティファニーが酷すぎるので、最初からティファニーは金儲け主義の駄目ものしか作っていなかったと思っていたのですが、グランプリ受賞作『モンタナサファイアのアイリス』を見て実はそうではなかったことがはっきり分かりました。

この神の技とも思える超絶技法の石留め。それができる職人が当時のアメリカにはおり、技術の粋を結集させてこれだけの魂を込めた作品を作る環境があったのです。

日銭を稼げなくては活動は継続できません。アーティストや職人も生きていかなければなりません。モノづくりの堕落は、結局は作る側の問題ではなく求める側、消費者側の問題だったのだとはっきり認識しました。これだけのものが作れるアーティストたちが量産ジュエリーしか作れなくなるなんて、どんなに悲しく無力感を味わったことかと辛い気持ちになります。

方向性2 お金持ちのオーダー品

オレンジピールカット・エメラルド リング

量産品は明らかに安っぽかったり、デザインに傑出した魅力が感じられないのですぐに分かります・

お金持ちのオーダー品と、アーティスト兼職人が思いっきり作った作品ではどう違うか分かりますか?

恐るべき神技で作られた『Sweet Emerald』は前者、お金持ちのオーダー品だと判断できます。

一切の手抜きのない仕事、超絶技法による細工。このクラスの作品ともなると、オーダー品でもそれだけの仕事がしてあります。

『Sweet Emerald』
オレンジピールカット・エメラルド リング
フランス 1920年頃
SOLD
オレンジピールカット・エメラルド リング アンティーク

判断のポイントとなるのは石です。エメラルドという割れやすく加工に高いリスクが伴う石を、こんなに大胆にカットしていることです。職人が腕に自信があったとしても、そもそもこのクラスの石を納める先のあてもなく仕入れるのは不可能ですし、万が一仕入れられたとしても失敗すれば多額の借金だけ抱えて倒産という事態になりかねません。これは失敗のリスクも負ってくれるパトロン的なオーダー主が存在しないと生み出すことができない作品なのです。

オレンジピールカット・エメラルド リング

言われた通りにやらされる仕事は面白くありません。

でも、自分の腕を信じ、財力も含めて自身の力だけではチャレンジできなかった仕事にトライさせてくれるパトロンがいるなんて、なんて幸せなことだろうと思ったことでしょう。

そしてその期待に見事応える。

このような作品は、アーティストとパトロン両方の力によって作られた偉大な芸術と言うことができます。

スエズ運河を作ったフランスの外交官レセップスが愛用したエメラルドのオリエンタルなクラバット・ピン

レセップス一族から入手したフェルディナン・ド・レセップス愛用のクラバットピンも、エメラルドに穴を貫通させてダイヤモンドをセットするという細工が施されていますが、明らかに細工は『Sweet Emerald』の方が数倍も上です。

『レセップスのクラバット・ピン』
フランス 1880年頃
SOLD
スエズ運河を建設したフランスの外交官フェルディナン・ド・レセップス スエズ運河を作ったフランスの外交官レセップスが愛用したエメラルドのオリエンタルなクラバット・ピン
フェルディナン・ド・レセップス(1805-1894年)

『Sweet Emerald』のオーダー主は分かりませんが、ナポレオン三世の皇后ウジェニーの従兄弟で、スエズ運河を建設したことで有名なフランスの外交官、実業家レセップス以上の財力やパトロンとしての能力を持っていたのでしょうね。

方向性3 展示会への出品作品

<例1 ティファニーのアイリス>

1900年のパリ万博に出品されたティファニーのモンタナサファイアとデマントイドガーネットをつかったアイリス

採算度外視、アーティストとしてのプライドをかけて魂を込めて作った作品は見ればすぐに分かります。

作者が楽しんで作っていることが伝わってくるものです。

採算度外視と言っても、アーティストの場合は高価な宝石にお金をかけるのではなく、自身の人件費や技術料に相当する部分です。

展示会に出品して多くの人に見てもらい認められるためのものですから、「現在の自分史上で最高の作品はこれだ!」という観点で作られます。

持てる技術すべてを注ぎ込み、これ以上のものは自分でも作れないし、他の人たちは絶対にここまで作れないだろうというものを作ります。

アイリス(1900年頃)ウォルターズ美術館蔵
1900年のパリ万博に出品されたティファニーのモンタナサファイアとデマントイドガーネットをつかったアイリス

グランプリ受賞の『アイリス』もモンタナサファイア、ダイヤモンド、デマントイドガーネット、トパーズなど様々な宝石を使っていますが、石の価値で評価されるのはカッコ悪いことです。当時アメリカは教養や品がなく、物の作りも粗いという見方がヨーロッパの王侯貴族にはありました。成金ジュエリーを自信満々で出展したら、「やっぱりね」と笑いものになって終わりです。

面白い石を使いながらも「どうやって留めたのだろう?」、「そこまでやるのか!」と思う超絶技法で魅せています。金属にも拘り、当時まだジュエリーの一般市場には出てきていなかった新素材プラチナ、そしてゴールド、さらには目玉となるモンタナサファイアを惹き立てるためのブルースチールも使っています。ブルースチールは通常ハイジュエリーには使わない素材ですが、芸術作品としての完成度を高めるために使っているのです。高い金属だから素晴らしいでしょうという考え方はこの作品には微塵も存在しません。

<例2 情愛の鳥>

鳥の巣と卵と親鳥をモチーフにした、天然真珠とプラチナとスリーカラーゴールドによるアンティークジュエリー
天然真珠と金細工によるアンティークの鳥の巣と卵

『情愛の鳥』もコンテストに出品するための作られたアーティストによる特別な作品だと推測します。

本物の卵のようなあっと驚く天然真珠と黄金の鳥の巣。

当時としては最先端のプラチナ箔を使ったカラーゴールド細工と、ここまでやるのかというほど徹底した彫金細工。

情愛に満ちた親鳥と、咲き乱れる優しく美しい花々という表現。

素晴らしい立体感。

デザインと細工で魅せる、アーティストの閃きと冴えを感じる驚きの作品です。

『情愛の鳥』
卵形天然真珠 ブローチ
イギリス 1870年頃
SOLD

<例3 スパイダー>

1ctオーバーのダイヤモンドとルビー&エメラルドを使ったスパイダーのアンティークジュエリー

『スパイダー』
オーストリア? 1900年頃

オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド、ローズカットダイヤモンド、エメラルド、ルビー、プラチナ、シルバー、18ctゴールド
SOLD

『スパイダー』もコンテスト出品作と思える特徴が揃った作品です。

1900年頃の作品ですが、一見するとアールデコかと思えるような非常にモダンなデザインです。展示会で発表される最先端の作品が次の時代の流行を作っていくものなので、時代の一歩先を行くデザインとなるのです。

見事なダイヤモンドが胴体に使われており、ルビーやエメラルドも色鮮やかで美しい上質なものですが、一番注目すべきは躍動感あふれる見事な造形のクモの足です。

1ctオーバーのダイヤモンドとルビー&エメラルドを使ったスパイダーのアンティークジュエリー

1900年のパリ万博に出品された『アヤメ』同様、まだプラチナがジュエリーの一般市場に出てくる前の時期にも関わらずプラチナが使われています。外周のフレームはゴールド、クモの胴体はシルバーで、プラチナで作られた足が最大の見所です。

そうは言っても1ctオーバーのダイヤモンドは驚くほどクリーンな石ですし、キューレットのカットが小さく、現代のトルコフスキーのアイデアルカットに近い当時最先端のカットのものです。

デザインの素晴らしさや高度な技術力と共に、時代の最先端のテクノロジーが使われたまさにアーティストが魂を込めて作った作品と言えます。

パラソルを持つ女

アールデコ ボヘミアン ガラス 花瓶 アンティーク
←実物大
ブラウザによって大きさが違いますが、1円玉(直径2cm)を置いてみれば実物との大小の比率が分かります。
アールデコ ボヘミアン ガラス 花瓶 アンティーク

当時最先端のファッションを取り入れ、日本美術も取り入れた見事なデザイン、神技としか思えない金赤による見事なルビーレッド、単なる昔の偉人の模倣ではない画期的なエングレーヴィング技術による新たなグラヴィール彫刻の表現。

『パラソルを持つ女』はコンテスト出展品に相応しい、作者の魂のこもった見事な作品です。

同じ作家のものと推測される量産品

同じ作家のものと推測される量産品

『パラソルを持つ女』と同じ作者のものと推測されるアールデコの花瓶はいくつか存在します。量産するためのものなので、デザインはシンプルです。手間のかかってコストに合わない、人物などを描いたグラヴィール彫刻は施してありません。

試作品もしくはオーダー品

『踊る女』

唯一『パラソルを持つ女』の他にグラヴィール彫刻が施された作品がこの『踊る女』です。『パラソルを持つ女』に比べればデザインも劣ります。この『踊る女性』の場合はこういう色味の方がデザインに合っている気もするので、銅赤の選択がコスト削減のためかどうかは分かりませんが、被せガラスも金赤のルビーレッドではなく銅赤と思われる暗くくすんだ赤です。もちろん落款のようなものも含めて作家のサインはありません。

『パラソルを持つ女』を見てオーダーした人物のために作られたか、『パラソルを持つ女』を制作するための試作品だったのではないかと考えています。

落款の意味

アールデコ ボヘミアン ガラス 花瓶 アンティーク サイン

誰にも真似ができない最高傑作にチャレンジし、それが実現した。

作者はこれが自分の真の実力なのだと、誇りをもってこの作品に落款のようなサインを残したのだと感じます。

人生において、アーティストが全身全霊を以て情熱を燃やし、魂を込めて作ることができる作品はそう多くはありません。

人生最高傑作と言える、この作品だけ落款を残したのかもしれません。

他の資料と比較できないため落款を読み解くことはできませんが、それだけ誇りを持った作品であることは間違いないのです。

初期のグラヴィール彫刻
カスパル・レーマン作 1605年 ヤロスラフ・ホレイック作 1925年頃

レーマンという始祖の偉人が存在した。『パラソルを持つ女』が制作される少し前、1925年のアールデコ万博で高い評価を得たホレイックもいた。

過去の模倣なんて才能あるアーティストがやりたいと思うことではありませんし、人々に驚きと感動を与えることができる新しい芸術を生み出してこそ真のアーティストです。

古代ギリシャの哲学者による芸術の定義

『英雄ヘラクレス』でもお話した通り、結局『芸術』とはこういうことなのだと思います。たとえ言葉で定義せずとも、真のアーティストはこのことを感覚的に理解しているのではないでしょうか。

 

アールデコ ボヘミアン ガラス 花瓶 アンティーク

制作する側は大変なのだと思いますが、円筒形だからこその360度見所というスタイルも、見る者をハッとさせます。

まさに素晴らしい感動を与えてくれる芸術作品です。

どの角度で飾るか、本当に迷いそうです。

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カラーを飾ったアールデコの花瓶

実際に花瓶としてお花を飾っても楽しめます。

アールデコのスタイリッシュな雰囲気に合うよう、撮影ではホワイトとグリーンのカラーを生けてみました。

無造作に活けるだけでも様になると思います♪

自宅でプライベートコレクションとしてこのクラスの芸術作品を楽しむのは、最高の贅沢であり楽しいことですね♪

アールデコ ボヘミアン ガラス 花瓶 アンティーク

心を魅了する芸術品・・。

じつはこの宝物は去年の5月、ロンドンの初買い付けで手に入れてきたものです。
例のロスチャイルドの邸宅に連れて行ってくれたディーラーからのものですが、商談の場に訪れてGENがジュエリーよりも真っ先に「これ!」と反応したのがこの花瓶でした。

この作品に魅了されていたそのディーラーも実はあまり売りたくなかったらしく、奥に引っ込めておいて、それでも聞かれた場合は高い値段を提示して買って行かれないようにしていたそうです。気持ちは分かります(笑)

やっぱりGENは反応した、GENだからしょうがないということでしぶしぶ譲っていただきました(笑)

難病を患って貧血のGENに重いものを持たせるわけにもいかないので、ちから係石田が頑張ってロンドンから運んで参りました!

どうせご紹介するならば本格的に夏を迎える前の初夏頃が良いかなと思って、すぐにはカタログに載せずタイミングを計っていましたが、ようやく満を持してのご紹介です。

仲良くしているディーラーも「ジュエリーであれば何でも扱う」というタイプではなく、芸術的に優れたものであればジュエリー以外のこういう小物でも扱うタイプだからこそ手に入ったものです。

私たちも自信と誇りを持って扱います。私たちの次に魅了されるのはどなたなのか・・。
類は友を呼ぶ。感性が近い者同士は自然と惹かれあう。出逢いを楽しみにお待ちしております♪

 

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