No.00193 WILDLIFES |
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『WILDLIFES』 |
「きゃ〜、食べないで〜」
野生の営みを表現した、とってもイギリスらしい作品です♪ |
自然をこよなく愛し楽しむイギリス人
フォト日記『ロンドンでピクニック』より | これは私の初のロンドン買い付けの時に行ってきた、5月のハムステッドヒースの画像です。 GENとの付き合いが一番長いロンドンのディーラーも「こんなに晴天が続くのは初めて」というくらい天気に恵まれたのですが、平日の昼間にも関わらず、たくさんの人たちが自然を楽しみに来ていました。 観光客ではなく地元ロンドンの人たちばかりで、犬と思いっきり遊んだり、ピクニックをしたり、ただ草むらに寝っ転がるだけだったり、過ごし方は人それぞれ、皆が自然を楽しんでいました。 |
フォト日記『ロンドンのハイ・ストリートを視察』より |
ロンドン市内のハイドパークもたくさんの人でした。でも、公園自体が驚くほど広大なので、日本と違ってどれだけ人がたくさんいてもゆったりと過ごすことができます。 |
イングリッシュガーデン |
イギリスと言えばイギリス式庭園が有名で、世界中から見に来る人がいるほど人気があります。ありのままの自然を愛し、それを生かして作るのがイギリス流です。 |
Genとアローのフォト日記『フレンチシンメトリー』 | これは2003年末頃、GENがフランスで撮影してフォト日記『フレンチシンメトリー』に掲載した立木の画像です。 ありのままの自然を好むイギリス人に対して、フランス人はこのような人造的な美を好むようです。 |
フォト日記『ロンドン高級住宅街のお庭で感じる和』より | フォト日記『始まりの地』より |
ロンドンには世界中の人が訪れますが、現地のディーラー曰く、人工的なものが多いフランスからイギリスに来ると何故かほっとすると言う人が国籍関係なく多いそうです。 ロンドンは市街地でも公園が多いだけでなく、ちょっとした所にもお花が植えられていますし、植物と一体化した素敵な建物もたくさん見ることができます。決して放置された無造作なものではなく、必要最低限な手入れがなされており、そこにイギリス人の自然を愛する気持ちが伝わってきて心地よいのです♪ |
野生の生き物が身近なイギリス
Genとアローのフォト日記 2005年秋『可愛い侵略者』より |
動物愛護の精神も高いイギリスでは野生動物であっても人なつっこく、上のロンドンの公園のリスはGENからもらったパンを食べています。日本だと姿すら見せないはずなのに、手から食べ物を渡せるだなんて、いかに昔から動物愛護の精神が息づいているのかが伝わってきますね。 |
Genとアローのフォト日記 2005年初夏『水鳥の楽園』より |
野鳥もズームなしでこれだけ近寄って撮影することができると、Genが感動していました。 |
『水鳥の楽園』Genとアローのフォト日記より(2005年冬) |
そんなわけで、思い立った当時58歳のGenは食パン1斤を持ってケンジントンパークにでかけたのでした。 |
『ぞろぞろぞろ』Genとアローのフォト日記より(2005年冬) |
ぞろぞろぞろ。これがその成果です(笑) |
Genとアローのフォト日記 2005年冬『これな〜に?』より |
これはその時にパン屑だらけにした白鳥の羽です。今でこそ高性能デジカメでズームしたらこれくらいの画像は近寄らなくても撮れるでしょうけど、2005年のカメラだと考えると、いかに近くで白鳥が撮らせてくれたかが分かります。イギリスって本当に野生動物が身近なのですね。 それにしても、私のフォト日記でもお分かりいただける通り、初買い付けであってもしょっぱなからハムステッドヒースや公園に遊びに行ったり、地元スーパーで食材を買って料理するなど、観光客とは全く違う行動をしているわけですが、観光客と同じような買い付け方しかできないようではプロのディーラーとして存在価値がありませんし、こうやって普通の観光客はやらないような、地元の文化を体験することもできないようでは宝物の真の価値もお伝えできませんからね〜。こういう何気ない体験でも、より良い仕事のために後から生きてくるのです♪ |
イギリスの蛇
さて、野生の動植物がとっても身近なイギリスですが、蛇はあまり身近ではありません。 |
蛇の生息域 |
日本人にとっては比較的身近な蛇ですが、イギリスでもアイルランド島には蛇がいません。 |
聖パトリック(387?-461年) | アイルランドには『愛のシャムロック』でもご紹介した有名な聖人、聖パトリックがいます。 言い伝えでは、この方がアイルランドに進入しようとする蛇を聖なる力ですべてドボンドボンと海に追いやるので存在しないそうです。 |
デフォルメされた蛇と親鳥
この作品のモチーフは蛇が親鳥から卵を奪ってしまう様子なのに、なんだか可愛らしくて、ほのぼのした光景にさえ見えてきてしまいます。 |
卵を食べる蛇 "Dasypeltis atra2" ©Dawson(29 January 2006)/Adapted/CC BY-SA 2.5 | でも、リアルだとこういう迫力ある光景になるはずです(笑) 「かぷーっ!!」 蛇さんも必死(笑)
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『蛇と戦う親鳥』 カーブドアイボリー ブローチ ドイツ又はフランス 1860年頃 SOLD |
でも、命を賭けて産んだ大切な卵を守る親鳥も当然必死です。 |
このようなモチーフをリアルに表現するのは、カッコ良さを求める男性用ジュエリーとしてあアリですが、女性用のジュエリーとしては微妙でしょう。 蛇が鳥の卵を奪ってしまうのも自然の営みの一部であり、どちらが悪で善かはありません。 ありのままの自然をこよなく愛するイギリス人が、なかなか見ることのできないこの大自然の営みを目にしてジュエリーにしたのだと思います。 でも、あえて意識してデフォルメして、おどろおどろしくなく可愛らしいジュエリーに昇華させたのです。 |
素晴らしいデザインセンス
作者が技術がなくてリアルに作れなかったのではなく、意図してデフォルメしたのは細部にまでこだわったデザインや作りを見ても分かります。 |
上部のバチカンは、わざわざ2重の美しいデザインにしてあります。 本体も2重の円で表現されています。 その本体に直接バチカンを付けるのではなく、わざわざ金の板を縦に使い、これまた正面から見ると線に見えるパーツで揺れる構造にして連結してあります。 |
その2重の金の輪にとぐろを巻きつけた蛇が、母鳥から卵を奪った様子がユーモラスに感じる、何とも面白いデザインなのです。 |
鳥のモチーフ
デフォルメもされているのでモチーフについての考察は蛇足な気もしますが、せっかくなのでヨーロッパの鳥についても少し見てみましょう。 みなさんはこの鳥は何だと感じましたか? 丸っこくて可愛らしいのでヒヨコにも見えますが、卵を奪われているので成鳥です。感覚的にはウズラに似ていますが、ウズラの卵と言えば独特の斑模様が特徴です。 |
通常のウズラの卵と白色のウズラの卵 "Quail's egg2015082" ©メルビル(19 August 2015)/Adapted/CC BY-SA 4.0 | でも、せっかくの白くてシミなどもない天然真珠を使って斑点だらけのウズラの卵を表現するのもナンセンスですよね。 |
ヨーロッパヤマウズラの切手(ソビエト連邦 1957年) | そう思いながらも調べてみたところ、ヨーロッパヤマウズラという種類を見つけました。 プックリと丸い感じが、鶏などと違って可愛らしい雰囲気です。 |
ヨーロッパヤマウズラの卵 "Perdix perix MWNE 2036" ©Klaus Rasssinger und Gerhard Cammerer, Museum Wiesbaden(2012)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
ヨーロッパヤマウズラの卵は、日本のスーパーマーケットでも馴染み深いあのウズラの卵とは違って柄がありません。 |
ヨーロッパにおけるヨーロッパヤマウズラの生息域 "Verbreitungskarte Rebhunhn" ©Maximilian Dörrbecker (Chumwa)(20:21, 25 October 2013)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
ヨーロッパヤマウズラの生息域ですが、ブリテン島にも生息しており、蛇の生息する地域とも合致しています。 |
もちろん特定は不可能ですが、イギリス人が 身近な自然の中で、たまたま蛇がヤマウズラの卵を奪う様子をジュエリーにしたのかもしれませんね。 デフォルメされてとっても可愛らしい雰囲気なのですが、可愛らしいだけではない所がセンスの良さを感じます。 蛇と言えば毒々しくなりがちですが、毒々しいだけでは物足りない人にもピッタリですね♪ |
鳥は完全に立体的なつくりで、もちろん背中にも彫金が施されています。 なにげなく巻き付いているように見える蛇の造形もセンスの良さを感じます。 |
蛇の裏に9ctの刻印があります。 母鳥は裏側も足にまで彫金された丁寧な作りですし、全体の仕上げもハンドメイドらしい丁寧な仕事が感じられます。 |
普通よりも細くて軽い、繊細で美しいチェーンにも375(9金)の刻印があります。実体顕微鏡で見ると、蝋付けの跡からもハンドメイドで丁寧に作られたチェーンであることが分かります。これだけ細くても切れない耐久力があるのは、マシンメイドの量産ではないからなのです。 |