No.00241 Flower |
『Flower』 イギリス 1880年頃 色、照り、艶の美しさが揃った真珠らしい清楚な美しさを持つ極上の天然真珠に、上質なオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドがあしらわれた、ハイクラスのクラスターリングです。 天然真珠もダイヤモンドも大きさが絶妙で、まるでお花のような愛らしさも感じるデザインです。 定番デザインながらも上質でコンディションも良いものはなかなか市場には出てこないので、上質なアンティークリングを1つだけ欲しい方にもオススメです。 |
|||
|
|||
19世紀後期におけるハイジュエリーの証
【参考】南洋養殖真珠14mm珠14Kリング | 時代や地域、文化が変わると常識や価値観も大きく変化します。 現代の常識でアンティークジュエリーを読み解こうとしても頓珍漢な結論に至ってしまうのはこれに依ります。 低品質な養殖真珠がパールジュエリーのスタンダードとなってしまった現代では、真珠のジュエリーに高級で美しいというイメージは持ちにくいかと思います。 |
しかしながらこの天然真珠のリングは間違いなく当時のハイクラスのジュエリーとして作られた、19世紀後期の高級品らしいジュエリーと言えます。その理由は以下の通りです。 特徴1 天然真珠がメインであること |
特徴1 天然真珠がメインであること
フランス皇帝ナポレオン三世の皇后ウジェニー・ド・モンティジョ(1763-1814年)、1853年 | 詳しくは『月の雫』でご説明していますが、人類の歴史においていつの時代も美しい天然真珠は高貴な女性の美しさ、そして富と権力の象徴でした。 |
『財宝の守り神』 ダイヤモンド ブローチ フランス 1870年頃 SOLD |
『財宝の守り神』でご説明した通り、1860年代になるとそれまでダイヤモンドの主要産出地だったブラジル鉱山はすっかり枯渇してしまいました。 ダイヤモンドの流通量が激減した結果、ヨーロッパのダイヤモンド産業は次々と倒産や規模縮小に追い込まれていきました。 1860年代はこのようにしてダイヤモンドの希少性が高くなった結果、相対的にその価値が上昇していきました。 それが落ち着くのは1869年頃からの南アフリカのダイヤモンドラッシュによって、ダイヤモンドが豊富に供給されるようになってからです。 |
新しく発見された、南アフリカの巨大鉱床のダイヤモンド埋蔵量はすさまじいものでした。 |
|
キンバリー鉱山(1881年にNYで刊行の『アフリカのダイヤモンド鉱山の概要』より) |
セシル・ローズ(1853-1902年)1900年、47歳頃 | 供給過剰による価格の暴落を見越したセシル・ローズが、市場を独占することで供給量をコントロールして価格の維持を目指し、鉱山を次々に買収しましたが、巨大資本を以てしてもそれが追いつかないほどでした。 |
アムステルダムのダイヤモンドカットの加工場(19世紀) | 製品の価格に反映されるのは材料費だけではありません。 人件費も価格の中で大きな部分を占めます。 以前は硬い硬いダイヤモンドを、熟練の職人が手作業で技術と手間をかけて1つ1つカットしていました。 |
ヘンリー・モース | 南アフリカのダイヤモンドラッシュが始まったことでダイヤモンド産業が注目され、それによって技術革新が次々と起こりました。 1870年代初め、アメリカのヘンリー・モースとチャールズ・フィールドによって蒸気機関を使った研磨機が発明されました。 |
さらに1900年には電動のダイヤモンド・ソウが発明されました。 それまでのダイヤモンドのカットは、ダイヤモンドの劈開のポイントを見極めることができる優れた職人の勘頼りだったのでした。 それがこのダイヤモンド・ソウの発明によって、劈開性を無視したカットが可能となったのです。 これにより、1900年前後に一気にダイヤモンドジュエリーが市場に出てくるようになったのです。 |
|
ダイヤモンド・ソウ(1903年頃) |
それまでは上質なダイヤモンドはジュエリーにしか使われることはあり得ませんでした。 それが材料費と加工費の低下により、一気にミドルクラスのジュエリーにも豊富に使うことができるようになったのです。 |
ダイヤモンドさえ付いていれば高級品として消費者を納得させて高い値段で売れる。 最悪の堕落ジュエリーです。 販売者側の金儲け主義をひしひしと感じるこのようなジュエリーには、正直気持ち悪さしか感じません。 |
|
【参考】現代のダイヤモンド・ブローチ |
『至高のレースワーク』 エドワーディアン リボン ブローチ イギリス 1910年頃 SOLD |
この『至高のレースワーク』はロンドンでGenが私以上に素早く発見し、「絶対にHERITAGEで紹介したい!」と言った宝物です。 神の技と思える超高度な技術と手間をかけた細工はハイクラスのアンティークジュエリーの中でも滅多に見ないレベルです。 |
ダイヤモンドが豊富に手に入るようになれば、もはやダイヤモンドというだけでは稀少価値は存在し得ません。 高い技術を持つ職人がプライドをかけて作ったハイジュエリーか否かは細工を見れば一目瞭然です。 ダイヤモンドの価値だけで売ろうとするなんて恥ですし、そんな宣伝文句を鵜呑みにするような顧客も優れた教養とセンスを持つとは言えず、このような本物のハイジュエリーにご縁を持つ資格はありません。 |
1900年以降は特にダイヤモンドジュエリーに関して徐々に堕落が始まり、1940年以降はヘリテイジでは扱えるものがないくらい酷くなっていきますが、このリングが作られたのは1880年頃です。 1870年代に南アフリカからの豊富な供給でダイヤモンドの稀少性が低下し始め、特に上流階級から天然真珠の稀少性が注目され、相対的に価値が上昇した時期でした。 |
このリングの天然真珠は5mmほどあり、色は白く美しくほんのりピンクがかった干渉光が感じられ、マット過ぎずツヤツヤもし過ぎず、真珠らしい上品な輝きがまさに『真珠の理想像』のような美しさの天然真珠なのです。 この極上天然真珠がこのリングのメインストーンです。 |
天然真珠の極上品の価値
現代の日本女性が真珠ジュエリーの購入を検討する場合、まずはネックレスであることが多いと思います。 オシャレのために好んで買おうというのではなく、冠婚葬祭に必要だからということで、何となく無条件に1つは持っていなければならない雰囲気があるからだったりします。 |
母貝の貝殻と身の隙間で養殖真珠を作るテクノロジー自体は既に12世紀の中国で発明されていました。 淡水産の貝で半円真珠や仏像真珠を作る技術です。 ただ、ジュエリーに必要とされていた真円(真球)真珠は、この養殖方法による製造が不可能だったのです。 |
||
イギリス王妃アレクサンドラと娘ヴィクトリア王女 |
研究開発にあたっては中国のテクノロジーが参考とされました。 欧米人は淡水産のカワシンジュガイで実現を目指しました。 一方で海水産のアコヤ貝で実現を目指したこと、殖産興業としての大日本帝国の繁栄を目指した執念により、日本が世界に先駆けて真円真珠の養殖を成功させました。1905年にラボレベルで5粒の真円真珠の養殖が成功、1907年に特許取得、1918年に量産技術を確立、1919年にロンドンのジュエリー市場への供給体制が整いました。 |
『初期の養殖真珠ネックレス』 1930年代? 養殖真珠:直径8mm SOLD |
そのインパクトは相当なもので偽物(詐欺)論争も起こりましたが、1927年にフランスの裁判所から天然のものと変わらないというお墨付きを得て、養殖真珠は天然真珠を市場から駆逐することになったのです。 |
しかしながらそれも長くは続きませんでした。 1920年代にココ・シャネルがコスチュームジュエリーを提案し、1930年代にインパクトのある無価値のアクセサリーが大流行すると、養殖真珠すらも駆逐されることになりました。 ちなみにコスチュームジュエリーが無価値であることはシャネル自身が述べています。 ジュエリーには財産的な意味があるが、それらを無理して買わなくても、オシャレのためだけならば安いコスチュームジュエリーをとっかえひっかえして楽しめば良いじゃないという考え方です。 |
|
ココ・シャネル(1883-1971年) |
この考え方は特に間違いではないと思います。 現代において財産性があったはずのジュエリーと、コスチュームジュエリーやアクセサリーがごっちゃになっているからおかしなことになっているのです。 結局は大流行したコスチュームジュエリーすらも飽きられ、最終的には模造真珠(フェイク・パール)すらも時代遅れの流行となり、見向きもされなくなってしまいました。 |
|
コスチュームジュエリーを着けたアールデコの時代のフラッパー |
欧米で養殖真珠が売れなくなり、日本の養殖真珠業者は困りました。しかし閃きました。 国内で売ればよい!! どうしたら国内で売れるか・・。そこで、冠婚葬祭では必須ですよと言うルールを作って国民に押しつけたのです。欧米ならば全員が同じ服装の冠婚葬祭なんて有り得ませんが、日本人にはフィットしました。作られたルールはいつしかスタンダードとなり、業者が作ったわりと新しいルールにも関わらず、一般消費者がルールを守らない消費者を『非常識』と非難するほど確固たるものになりました。 欧米で売れないものを日本市場で安定して販売することにまんまと成功した養殖真珠業界ですが、さらに利益を追求して養殖真珠は堕落していきました。 |
『初期の養殖真珠ネックレス』 1930年代? 養殖真珠:直径8mm SOLD |
初期の養殖真珠は時間も手間もかけ、品質を十分に保っていました。 だからこそ欧米で、天然と変わらないと受け入れられたのです。 |
3〜5年もかけて母貝で育んでいた養殖真珠でしたが、今では数ヶ月で出荷するほど薄巻きになってしまいました。高級品の"越物"(こしもの:1年以上)でも1年ほどで出荷し、真珠層の厚みは0.4-0.6mm程度しかありません。 さらに色を落ち着かせるために昔は十分な期間寝かせてから選別し、出荷していましたが、今では漂白と染色(調色)によって無理矢理均一にしてしまうため個性がありませんし、化学薬品にさらされることで真珠層も劣化した状態です。 養殖真珠業者の中にも昔ながらのやり方で真面目に取り組んでいる所はありますが、価値を分かってもらえず苦しい状況なのだそうです。 |
アールデコ 天然真珠ペンダント&ブローチ イギリス 1920年頃 天然真珠:直径6-7mm SOLD |
真面目な真珠業者が天然真珠を見てみたいとアトリエにやってきたことで、養殖真珠業界の現状を知り、Genは天然真珠の価値をより深く理解しました。 それがきっかけで『知られざる天然真珠の魅力』というページを作ったのです。 |
養殖真珠の業界内からも「良貨は悪貨を駆逐する」と、現状を嘆く声が叫ばれています。 しかしながらデフレを経験した日本人は「価値あるものを適切な値段で」ではなく、「とにかくもっと安く、もっと安く」だけを求める傾向が強くなりました。吸収しきれない値下げ分は、当然品質にきいてきます。 業者だけが悪いとは一概に言えず、消費者の無知が実は一番の害とも言えるのです。 |
『初期の養殖真珠ネックレス』 1930年代? 天然真珠:直径8mm SOLD |
真面目にやっている業者もいます。 品質の良いもの、悪いものがどちらも存在して良いと思います。 それぞれの価値に見合った価格で販売し、納得して買ってもらえば良いのです。 |
しかしながら消費者の理解を助け、より良い方向へ業界を主導できる力を持つはずの大手が最悪なのだそうです。真面目な養殖真珠業者はかなり憤っていたとGenから聞いています。 日本女性がまず買うように言われるこの本真珠(養殖真珠)ネックレスですが、定番サイズと言われるのが7.0-7.5mm、もしくは7.5-8.0mm珠です。しかしながら何ミリの珠であろうが、養殖真珠は核に0.4mm程度の真珠がメッキされただけのもので、結局は入れる核のサイズ次第です。 それなのに、6.5mmだとネックレスとしてはちょっと小さい印象などと言われます。 |
『神秘の光』 アールデコ 大珠天然真珠リング イギリス 1920年頃 天然真珠:10.0mm×10.5mm×9.2mm SOLD |
『神秘の光』でご説明した通り、養殖真珠でよほど大きな珠を作ろうとすると、無理矢理切開して異物(核)を挿入するわけですから、大手術に耐えられずに母貝が死んだり、核を吐き出したり、うまく真珠層が巻けず歩留まりが悪くなります。 しかしながらそこまで大きくなければ、6.5mmでも8mmでも大して生産コストは変わりません。 |
しかしながら大きいと消費者には何となく高そうに見えるため、値段を高く設定して売りやすいのです。だから業者は利益率の高い大きめサイズを奨めたく、それに合わせて宣伝文句を考えるわけです。 国内で花珠真珠を鑑別する機関は1つではなく、実はそれぞれで基準が異なります。認定がゆるい方の機関は真珠層の巻き厚を0.25mm以上としており、ハガキの厚さが基準なのだそうです(※現在の官製ハガキの厚さは0.23mm)。 現代の養殖真珠に価値なんてあるのでしょうかね。それでも、大きくて真球であることが価値と洗脳された人には、天然真珠の魅力が分かりにくいのが残念ながら実情のようです。 |
『マーメイドの涙』 天然真珠&ダイヤモンド ペンダント&ブローチ イギリス 1880年頃 SOLD |
『マーメイドの涙』でご説明した通り、危険な海の底から天然真珠を潜水夫が潜って採ってくるのは非常に大変なことです。 |
貝をたくさん採ってきても、天然真珠が入っている確率はとても低く、さらに貴重な天然真珠の中から理想の大きさ、形、色、照り、艶のものを選びだそうとしたら困難を極めます。 |
|
天然真珠を採取した後の廃棄された真珠貝の貝殻(1914年頃) |
天然真珠は紀元前の時代から採取され、長い年月の間に少しずつ人類が手にする量が増えていった宝石です。 球体の核を入れて確実な生産を図る養殖真珠ですら、取り出した珠すべてが使い物になるわけではありません。 母貝は製品を生産するための機械ではなく、命ある生き物です。人間が理想とする真珠だけでなく、当然ながら汚らしいものもできます。それなのに現代人、特に日本人は異様なまでに完璧を求め過ぎなのです。 色や照り艶にも個性が出ます。無理矢理貝に真珠を作らせる養殖真珠ですら、上質な真珠を得るのは簡単ではありません。あふれる工業生産的な養殖真珠のせいで分かりにくくなっていますが、天然のままで美しい真珠を得るのは想像以上に遙かに困難なことなのです。 |
そんな中で、これだけ色と形、そして質感が揃った天然真珠は、天然真珠の価値を理解されていた時代に於いて非常に高く評価される珠だったのです。5mm珠ということは、1年で0.4mm真珠層が巻かれると単純計算するならば、2.5mm/0.4mm=6.25年という年月をかけて母貝の中で育ったわけです。数ヶ月で出荷してしまうような8mm真球養殖真珠と比べて小さい、価値がないと判断されるのはどうしても違和感があります。 |
この天然真珠がどれだけの確率で得られたのか、そのためにどれだけの人の手がかかったのか、きちんと想像することができれば、いかにこの天然真珠が価値あるものなのかがお分かりいただけるはずです。 |
特徴2 上質なダイヤモンドの脇石
このリングがハイクラスのものとした作られたことを証明する特徴として、脇石の上質なオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドも挙げられます。 メインストーンを脇石で取り巻いたクラスタータイプのリングは、ヴィクトリアン後期からエドワーディアンにかけて流行した定番スタイルですが、1880年頃のこのリングはその中でも流行初期に作られたリングと言えます。 |
1880年頃から1900年代以降のクラスターリングを判断する際、脇石の質だけ見れば良いのかと言うと、そうではないのがとても面白いところです。先述した通り、1900年代に入るとダイヤモンドの供給量の増加、さらにカットが容易にできるようになることから、ミドルクラスのジュエリーでも安易にそこそこのクラスのダイヤモンドが使われるようになるからです。 |
【参考】1910年頃の天然真珠14Kクラスター・リング | 左の天然真珠はかなり質が悪いですが、ダイヤモンドだけ見るとオールドヨーロピアンカットで、そこそこの品質の石が使われているように見えます。 これだけ汚い天然真珠ですら、ある程度のダイヤモンドが使えるようになったという証拠ですね。 ヘリテイジでは扱わないクラスです。 |
【参考】1880年頃の天然真珠18ctクラスター・リング | |
これは1880年頃のリングです。いびつではありますが9.3×9.0mmと大きさがあり、ある程度高級品として作られた天然真珠クラスターリングです。18ctゴールドとシルバーの作りですが、ダイヤモンドがまだ高価でカットも困難な時代だったため、このクラスの天然真珠に使われる石ですら脇石はこの程度です。 |
その点で、同じ年代に作られたこのリングの脇石のダイヤモンドの上質さを見れば、ご紹介のリングの天然真珠は5mmというサイズであっても、9.3mmサイズのもの以上に評価が高かったことは明らかです。 天然真珠の価値は単純な大きさではなく、色や照り、艶などを総合し、人間が感覚的に美しいと感じられるかどうかなのです。 |
とても厚みのあるオールドヨーロピアン・カットなので、ダイナミックなシンチレーションと美しいファイヤー(虹色の輝き)が素晴らしいです。 | ||
アンティークの真珠クラスターリングの多くは、脇石がローズカット・ダイヤモンドだったり、もう少し小さいオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドを使っているものですが、この脇石はとても迫力があります。 対して天然真珠は肌のきめが細かくベルベットのような風合いで、この質感の対比がとても魅力的です♪ |
『煌めきの青』 サファイア リング イギリス 1880〜1900年頃 SOLD |
|
電動のダイヤモンド・ソウが発明される1900年以前で、上質なダイヤモンドが脇石として使われているリングのメインストーンは間違いなく良いものですし、ハイクラスのジュエリーとして作られています。 |
『万華鏡』 オパール リング イギリス 1880年頃 SOLD |
過去にお取り扱いしたハイクラスのジュエリーを見ると、見事にそういう法則があるようです。 |
特徴3 イギリスの18ctゴールドのリング
このリングにはイギリスの刻印があります。 |
メーカーズマークについては詳細不明ですが、18ctゴールドの刻印が認められます。イギリスのアンティークのゴールドには9ct、15ct、18ctゴールドがあり、15ctのものの中にはなぜ18ctで作られていないのか不思議なくらい作りが良くお金をかけて作られたジュエリーも存在しますが、18ctの場合は間違いなくハイクラスのものとして作られています。 |
以上のことから、このリングは間違いなくハイクラスのジュエリーとして作られたと判断できるのです。 |
天然真珠を使っていた時代だからこそのデザインの美しさ
アンティークジュエリーのリングに使われる天然真珠は、いずれも高さが出すぎないようにボタンパールが使われる法則があります。このタイプのリングに比べて、天然真珠がある程度高くセットされている印象があるのですが、サイドから見ても美しい真珠がなるべく多く見えるようにする配慮のように感じます。 |
ダイナミックな煌めき溢れる上質なダイヤモンド以上に目立つよう、高さを出したことも理由の1つに感じます。一見シンプルなことにも思えますが、貴重な極上天然真珠に合わせて相当入念にデザインが計算されたものと推測します。 |
養殖真珠だと全て球形なので、デザインの制約が多すぎてデザイナーも面白くないでしょうね。 どうデザインしても、リングとしてはポッコリとしたヘンテコなバランスになります。 |
|
【参考】ヴィンテージ・リング |
現代ではすっかり人気がなくなり、冠婚葬祭の需要頼みの養殖真珠です。冠婚葬祭向けだと最低ネックレス、追加するならピアスかイヤリングという感じですが、リングはデザイン的にもイケてなくてジュエリーとしてはさらに最悪ですね・・。ボタンパールを養殖で作れば良いと思われるかもしれませんが、球形以外の核を入れると母貝が吐き出したりする割合が増えて歩留まりが悪くなるので商業的には無理なようです。 |
ちなみに44年間アンティークジュエリーを扱ってきた中で、Genは左のように大きな真珠が1粒だけのデザインの天然真珠リングは1つも見たことがないそうです。 もしどこかにあったら、余程の安物か偽物だと思います。 |
|
【参考】養殖真珠リング(現代) |
ロシア皇帝ニコライ2世の皇妃アレクサンドラ・フョードロバナ(1894年の戴冠式の正装) | 大きくてもリングに適した形でなければ無理です。 1度でもネックレスなどに加工された歴史があると、中心に穴が貫通しているため、デザインの制約上リングには加工できなくなってしまいます。 |
『神秘の光』 アールデコ 大珠天然真珠リング イギリス 1920年頃 天然真珠:10.0mm×10.5mm×9.2mm SOLD |
その点では、『神秘の光』は異例中の異例の存在と言えます。 たまたまこの時代にこれだけの色・照り艶を備えた大珠天然真珠が採れたのでしょうね。 でも、真珠の大きさだけで魅せるのではなく、しっかりと全体がデザインされ上質な脇石が使われているのがハイクラスのアンティークジュエリーらしさです。 |
美しいデザインの天然真珠のリングは、アンティークジュエリーでしか手に入らない素晴らしい宝物なのです。 |
銀の爪はとてもしっかりした作りですし、100年以上の使用に耐えてびくともしない丁寧な石留めも見事です。 |
全体のコンディションも素晴らしいです。 |
シンプルなデザインなので、どなたでもお使いいただきやすいと思います。 このような定番デザインのジュエリーこそ上質なものが良く、そのようなものはいくらでも仕入れてご紹介したいのですが、これほどのハイクラスになってくると作られた数が少ない上に、一度手に入れたら手放す方も少ないため意外と仕入れが難しいのです。 コンディションも良いとなるとなおさらです。 |
|
極上品だけあって、撮影していると少し角度を煽っただけでもダイヤモンドがダイナミックに光り輝いていました。 『煌めきの青』では、晴天のロンドンの強い太陽光の元で撮影したので虹色に煌めきまくっていましたが、このリングのダイヤモンドも室内光にも関わらずこれだけ煌めきを放つので驚きました。 |
実はこのリングとセットで使うと楽しそうな、同じクラスタータイプの天然真珠ピアスが入荷しました。バラバラにご紹介しても良かったのですが、ジュエリーはセットで使えるとより楽しいものです。ここまで雰囲気が似たものが同時に揃うことは滅多にないので、一挙にご紹介することにいたしました。 ぜひ天然真珠&ダイヤモンド・クラスターピアス『美意識の極み』のカタログページもご覧ください♪♪ |