No.00245 真実の支持者 |
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『真実の支持者』 ジョージアン ガスリーの紋章 シール イギリス 19世紀初期 ハイキャラット・ゴールド(15〜18K)、コーネリアン 高さ 3cm 台座の部分2cm×1,6cm 14,6g SOLD 貴族の紋章のインタリオとして当時の最高水準の彫りで作られたインタリオと、極上の彫金技術で作られた第一級のフォブシールです。ラテン語で書かれたモットーに加えて紋章のモチーフもカッコ良く、作りに加えてデザインまで全てが揃った宝物です。 |
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とても格調高くエレガント、そして金を贅沢に使い力強い彫金が施された重厚な雰囲気のフォブシールです。 素晴らしいですね〜♪ でも世界一基準が厳しいヘリテイジで扱うにあたり、もう1つ判断基準があります。 |
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それは石とインタリオの質、そしてモチーフの面白さです。 これは「文句なく合格!」と言うよりも、このクラスは滅多に見ないと言えるほど見事な彫りとモチーフが揃ったフォブシールです。 |
用途としてのフォブシールの種類
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一言でフォブシールと言っても、その用途は以下の4つに大別されます。 1. 正式な印鑑として使うオーソドックスな実用品(基本的には男性用) 2. 女性用の実用品 3. 自慢用 4. 遊び用 |
1. 正式な印鑑として使うオーソドックスな実用品
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紋章にはルールに従った記号を使い様々な情報を詰め込むことで、その紋章の人物がどういう家系で、どういう地位にいるのかが示されます。 ルールを把握していれば当時の人たちはそれを見ただけで、正式な文書などにおいて個人を特定することが可能だったのです。 例えば摂政王太子として有名なイギリス王ジョージ4世の紋章について見てみましょう。 |
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![]() "Coat of Arms of George, Prince of Wales and Prince Regent (1762-1820)" ©Sodacan(25 Sptember 2010)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
![]() "Coat of Arms of the United Kingdom (1816-1837)" ©Sodacan(20 July 2010)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
![]() "Coat of Arms of the United Kingdom in Scotland (1816-1837)" ©Sodacan(5 Npvember 2010)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
こういう感じで1人の人物でもその時の爵位によっても紋章は変化しますし、複数の爵位を持つ場合は1人でも複数の紋章があったり、代々共通して使う場合もあるので当時の人にとってはその時代の誰のものなのかすぐに特定できても、後の時代の人にとっては個人の特定までは困難な場合が多いです。 |
![]() "Coat of Arms of the United Kingdom in Scotland (1816-1837)" ©Sodacan(5 Npvember 2010)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
要素を詰め込みまくっているので、かなりゴチャゴチャしています。 こうやって絵に描く分には問題ありませんが、細部に至るまで全てを小さなフォブシールにインタリオで表現するのは現実的ではありません。 |
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ジョージアン ライオン紋章 フォブシール イギリス 1830年頃 SOLD |
印鑑としての役割では個人が特定できれば良いので、このように紋章の一部とイニシャルで表現するタイプも存在します。 |
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フォブシール自体の外観の美しい形状や、左のような深く力強い素晴らしい彫りからも分かるように、安物として手を抜いたというわけではありません。 どういう表現で印鑑としてのインタリオを制作するかは、おそらくは個人の趣味の範囲だと考えられます。 |
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ジョージアン グリフィン紋章 フォブシール イギリス 1820〜1830年頃 シトリン、ハイキャラットゴールド(15-18ctゴールド) SOLD |
これもグリフィンとイニシャルだけのシンプルなものですが、通常より遙かに金を贅沢に使った重厚な作り、色の濃い上質なシトリンを使った作りなど相当なお金をかけて作られています。 |
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インタリオの彫りも抜群に良いです。 ライオンやグリフィン、フェニックスなどモチーフがカッコ良いものであれば、むしろこういうタイプの方が現代日本人には楽しく使いやすいかもしれませんね。 |
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【参考】ヘリテイジでは扱わないレベルの彫りのインタリオ |
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ゴールドを使って一応は高級品として作られた物でも、この程度のインタリオはいくらでも存在します。 ヘリテイジでご紹介している最高クラスのインタリオを見慣れている方だとあまりの稚拙さに驚かれるかもしれませんが、これが普通なのです。 ある程度古い時代のものであっても、アンティークジュエリー=素晴らしい物とは限りません。 GENが「目が腐るから他の店に見に行っても意味がない」とよくお客様に申していたのはこういうことなのです。 でも、そう言われても実際に見てみないと納得できないですよね〜(私は元お客様側だったので・・、笑) |
【参考】ヘリテイジでは扱わないレベルの彫りのインタリオ |
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【参考】ヘリテイジでは扱わないレベルのフォブシール | |
そもそも本気の安物はゴールドすら使いません。良くてシルバー、本当に安いものだと鉄で作られています。「目が腐るから見ない方が良い」というのは間違っていなくて、手抜きで適当に作られた物は見ているだけでエネルギーが吸い取られていく気分です。見ているだけで豊かな気持ちになれる、優れたアンティークジュエリーとは真逆の存在ですね。 普段の買い付けでは長年付き合いのある有力ディーラーが厳選して見せてくれる物の中から、さらにヘリテイジ基準で厳選して選べるので楽で良いのですが、勉強のためもあってロンドンのマーケットを見ると本当にヤバかったです。フィルターを通さないアンティークジュエリーは、古いだけのゴミだらけと言っても過言ではありません。筋の良いものは誰でもアクセスできるような一般市場には出てこず有力ディーラーの間で取引され、その有力なお店の常連のお客様に納められるというのは和骨董の世界も同じで、世界共通だと感じました。 |
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『アンズリー家の伯爵紋章』 ジョージアン レッドジャスパー フォブシール イギリス 19世紀初期 レッドジャスパー、18ctゴールド ¥1,230,000-(税込10%) |
この『アンズリー家の伯爵紋章』も極上品です。 インタリオ上部のクラウンで伯爵家ということが、下の黒人のプリンスによってアンズリー家のものであることが分かります。 イニシャルなどがないのでどの代の当主のものかは特定できず、代々使うものとして作られたのかもしれません。 |
![]() ジョージアン シールフォブ イギリス 1820年頃 SOLD |
こちらは紋章が彫ってあります。 『英国貴族の紋章』の中でも触れた通り子は父母それぞれの紋章を引き継ぐため、子の代、孫の代となるにつれてエスカッシャン(盾)の部分の模様が複雑になっていきます。 |
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ここまで精緻に表現してあれば個人の特定も可能です。 古い時代でもここまでの彫りができる職人は少なかったはずで、第一級の職人による滅多に見ないハイクラスのフォブシールです。 |
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この『真実の支持者』は、紋章のモットーや各種構成要素まで緻密に美しく彫り込まれた、いかにも公式の印鑑らしい格調高く素晴らしいフォブシールなのです。 |
2. 女性用の実用品
![]() ジョージアン 3カラー・ゴールド フォブシール イギリス 1820年頃 SOLD |
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『アンズリー家の伯爵紋章』でご説明した通り、イギリス貴族の爵位は基本的には男系長子の一子相伝なので、女性が爵位を受け継ぐことはほぼありません。このため、女性用のフォブシールはかなり高貴な人の最高級でも、紋章が彫刻されたものは見たことがありません。インタリオが彫刻されている場合でも、ファーストネームかイニシャルくらいです。 |
![]() イギリス 1811〜1820年頃(摂政王太子時代) SOLD |
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エレガントなデザインと小ぶりな大きさから、高貴な女性のものだったと推測されるこちらもインタリオはやはりイニシャルだけです。 |
3. 自慢用
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『ヒッポカンポス(海馬)』 |
これはヘレニズムのインタリオを使って、18世紀にフォブシールにされた作品です。 |
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ただでさえ貴重な古代ギリシャのインタリオですが、ヘレニズムらしいアーティスティックな石の使い方、ヒッポカンポス(海馬)という面白いモチーフは、グランドツアーなどを通して古代世界や古代美術に造詣を持っていた当時のイギリス貴族たちならば、誰もが羨ましがったに違いありません。 私も羨ましい!!(笑) |
![]() 古代ローマ インタリオ フォブシール インタリオ:古代ローマ 1世紀 金具:ヨーロッパ 18世紀 SOLD |
古代ローマのインタリオを使った18世紀のフォブシールもありました。 モチーフは最高神セラピス・ゼウスです。 古代ギリシャから征服後された後、ヘレニズム期のエジプトで誕生した最高神です。 古代ローマで作られたインタリオのモチーフに合わせて、セラピス・ゼウスの化身である白鳥や、属性を示すドングリの葉でデザインされたフォブシールに、18世紀のヨーロッパ貴族の深い教養や抜群のセンスを感じます。 |
![]() 赤銅高肉彫り象嵌ブローチ 日本 19世紀後期 フレームはイギリス? 19世紀後期 SOLD |
日本人にはジュエリー文化がなかったので分かりにくいかもしれませんが、『マーメイドの宝物』でご説明したジャポニズムの分類分けで言う所の、日本の美術工芸品をそのまま使って生かしたスタイルのジュエリーに相当します。 ジャポニズムの場合は『秋の景色』のように、日本の金工で作られた赤銅をブローチに仕立てたものが存在します。 |
4. 遊び用
![]() ジョージアン フォブシール イギリス 1820年頃 コーネリアン、ハイキャラット・ゴールド(15〜18ctゴールド) SOLD |
この『TRUTH』は手紙を書くのが最高に楽しくなるフォブシールです。 |
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手紙をしたためてこのフォブシールで封蝋をすれば、「この手紙に真実をしたためました。」と相手に伝えることができます。現代と違い、手紙で恋人や友人、家族などとやりとりしていた時代。遊び心ある演出は、手紙に書かれた文字以上に相手の心を打つことすらもできるのです。 |
![]() ジョージアン フォブシール イギリス 1820年頃 SOLD |
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これも友情を表すためだけに作ったとみられるフォブシールです。こういう宝物を見ていると、昔のイギリスの本当の王侯貴族はどれだけお金を持っていたのだろうと驚くとともに深い感銘を覚えます。 |
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これだけのフォブシールを作るには腕の良い彫り師にオーダーして、かなりのお金もかかるはずなのです。 ただのお金持ちというだけでなく、お金の粋な使い方がカッコ良いのです。 これが正式な印鑑ではなく遊び心で作られた2つ目、3つ目のフォブシールなのですから、ヘリテイジで扱うクラスの宝物の持ち主だった昔のイギリスの王侯貴族は桁違いの存在です。 |
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本気の印鑑目的用のものですら、この程度のインタリオであることの方が圧倒的に多いのに・・。 |
【参考】ヘリテイジでは扱わないクラスのインタリオ |
![]() イギリス 1820-1830年頃 SOLD |
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さらに特別な身分の女性だと男性同様、実用品だけでなく遊び心あるハイクラスのオーダーのフォブシールを楽しんでいた人も存在しました。 金が史上最も高かった時代にゴールドを贅沢に使った作りはもちろん、金線を編んでバスケットを表現するなど優れた金細工も見事です。さらには美しいルビーやエメラルドまでセットされた相当贅沢なシールです。 |
紋章の正式な実印
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用途別のフォブシールをいくつかご覧いただいて、この『真実の支持者』がどういう目的で作られたのかご想像いただけたと思います。 これだけのクラスのフォブシールをオーダーすることができる、潤沢な財力を持つイギリス貴族が重要な実印として正式な紋章スタイルで作らせた、持ち主にとって特に大事なものだったのです。 |
持ち主に関する情報
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先にもご説明した通り、紋章を見て現代人が完全に持ち主を特定するのはかなり困難なことです。 ただし、場合によってはある程度まで絞ることが可能です。 |
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このフォブシールのインタリオは、これまでにお取り扱いした極上のフォブシールの中でもトップクラスと言える抜群の彫りで作られています。ここまで拡大してもこの美しさ、惚れ惚れしてしまいます。 |
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このインタリオのモチーフを読み解いてみることにしましょう。 まず気になるのがラテン語で書かれたモットーです。 ラテン語のモットー 英訳 日本語に訳してもいまいちしっくり来ませんが「私は真実の支持者です」、「私は真理のために戦う」あたりになるでしょうか。 |
モットー「STO PRO VERITATE」
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「STO PRO VERITATE」をモットーとするのはスコットランドのガスリー氏族です。 ガスリーはスコットランドの氏族の1つで、氏族は中世から近世のスコットランドにおける社会制度です。 同じ氏族の人は祖先を辿ると同じ人物にいきつくと考えられ、今でも同族意識が高く、現在まで続く社会的・文化的伝統でもあります。 |
スコットランド氏族ガスリー
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ガスリー姓はスコットランドのアンガス州フォーファーにある地名ガスリーから来ているとみられています。 スコットランドの中でも最も古い群名の1つです。 |
ガスリーという地名の由来は2つあります。当時空腹だったスコットランド王に、地元の漁師が魚を3匹捌いて提供したことに因んだ名前というのが1つ目です。3匹の魚を捌く、"gud three" fishesが訛ってGuthrie(ガスリー)になったというものです。 もう1つがゲール語で風の強い場所"Gutraidh"に因む語というものです。スコットランド北東地域の特徴にもフィットすることから、こちらの方が可能性が高いのではないかと言われていますが正確には分かっていません。 |
ガスリー氏族と鷹狩り
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ガスリーの名が初めて歴史上の記録に出てきたのは1178年頃、王室鷹匠としてでした。鷹狩りの起源ははっきり分からないほど古く、紀元前の時代から存在しました。ヨーロッパに伝来したのは5世紀頃で、9世紀に入る頃にはイギリスにまで定着しました。 当初は食糧を得るための手段の1つでしたが、次第に娯楽やスポーツとして楽しまれるようになっていきました。上は神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒ2世が書いた鷹狩りの研究書『De arte venandi cum avibus』の一部です。 |
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学問と芸術を好んだフリードリヒ2世は、時代に先駆けた近代的君主としての振る舞いから、19世紀の歴史研究家から『王座上の最初の近代人』と評されたほどの人物でした。 中世で最も進歩的な君主と評価され、当時書かれた年代記では『世界の驚異』と称賛されたほどでした。 鷹狩りにも深い造詣を持ち、中東の鷹狩りの解説書をラテン語に翻訳したり、先の研究書を書いたりもしたのです。左の肖像画も鷹とみられる鳥が一緒に描かれていますね。 時代に対して「早く生まれすぎた」とも言われるフリードリヒ2世は、普段の食事は質素で飲酒も控えるような生活だったものの、開く宴会はとても豪勢なもので、ルネサンス時代を先取りしたとも思える宮廷生活を送っていたそうです。 |
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15-16世紀には鷹狩りは『貴族のスポーツ』として、人気はピークに達しました。イギリスでは鷹狩りは上流階級の特権として規制され、1486年にイングランドで出版された狩り全般の指南書『Boke of Seynt Albans(セント・オルバンズの書)』によると階級によっても所有できる鳥が違い、皇帝は鷲、ハゲタカ、マーリン、王はシロハヤブサ、王子は雌のハヤブサ、公爵は雄のハヤブサ(※雌の方が体格が良く狩猟能力も高い)などです。 神聖ローマ帝国の場合は国家集合体として、トップに皇帝が君臨していました。王が君主の場合、王が鷲などを所有したようです。 |
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イングランドと陸続きのスコットランドでも同様だったようで、この時代の王ジェームズ4世の肖像画には一緒に鳥が描かれています。国王として鷲を所有する姿だと思うのですが、鷲が小さいのとジェームズ4世が素手っぽいのはちょっと気になります。 鷲を大きく描くと相対的にジェームズ4世が小さく見えて、威厳があるように見えなくなるからでしょうかね。国王が画家の前でこのポーズをとって描かせたのではなく、画家に想像で描せたのかもしれません。それならば相対比に違和感があることも、画家が手袋の必要性を知らず描かなかったことも合点がいきます。どうでも良いことですが・・(笑) 銃を使ったスポーツ・ハンティングが主流になると鷹狩りの人気は落ちますが、この時代はいかに鷹狩りが貴族のスポーツとして人気だったかがは伝わってきますね。 |
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イギリス王室一のインテリと言われる同時代のイングランド王ヘンリー8世も鷹狩りを楽しんだようです。 猛禽類は見た目がカッコ良いですし、獰猛な鳥を操り獲物を仕留めるのは高貴な人たちにとって楽しいスポーツだったのでしょう。 但し本能で獲物を仕留める獰猛な鳥を調教するのは大変なことです。 だから王室お抱えの調教師である王室鷹匠も存在したわけです。 当時の鷹狩りは馬に騎乗して行いました。 |
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貴重な猛禽類を手に入れるためのお金に加えて、獰猛な鳥を調教する腕の良い鷹匠と飼育・訓練スペースも必要としたことから、鷹狩りに興じられることは莫大な富と権力を持つ象徴でもありました。 鷹匠は狩りが成功すれば高く賞賛され、王家の鷹匠ともなれば大いに尊敬され、王の側近のように扱われることもありました。 |
ガスリー氏族の子孫は鷹匠の高位の身分に就き、アンガスにある王室鷹匠オフィスの隣に男爵領も所有していました。しかしながら1747年にイングランド政府から発令された禁止法によって、その地位もオフィスも手放すことになりました。 |
伝統文化の衰退に大きな影響を与えた氏族制度の解体
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1747年の禁止法は1688年に起こったイギリスの無血革命、名誉革命に端を発するものです。 イングランド王ジェームズ2世(スコットランド王としてはジェームズ7世)が王位から追放され、ジェームズ2世の娘メアリー2世とその夫でオランダ総督ウィリアム3世が共同統治者としてイングランド王として即位することになったクーデター事件です。 |
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ジェームズ2世は王子時代にスコットランドのハイランド地方の平和を維持するために氏族委員会を作っていました。氏族長らによって構成されるこの委員会が結成されたことにより平和が訪れたため、特にハイランドの人々はジェームズ2世が王位に就いたことを熱烈に支持していました。 このため、名誉革命によってジェームズ2世が追放されたことに氏族たちは激しく反発し、ジェームズ2世の復権を主張しました。ジャコバイトと呼ばれた彼らは盟約を結成し、イングランド議会に公然と叛意を示しました。 |
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ジャコバイトはハイランドで広がりをみせ、ついに1746年にジャコバイト軍とグレートブリテン王国軍との間でカロデンの戦いが起こりました。 この戦いでジャコバイトは惨敗し、参戦した氏族らはその勢力を大きく削がれ、領地を失って国外に逃れる者もいました。さらに翌年の1747年にイングランド政府が再発防止のために制定したのが禁止法だったのです。 |
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この禁止法によりハイランドに軍を駐留させて監視し、武装解除され、軍隊などの例外を除いてキルト、タータン、バグパイプ、ハイランド・ゲーム、ゲール語の使用まで禁止となりました。ハイランド・ゲームはハイランドの氏族たちが一堂に会して競技・祝祭を行うイベントで、この中からハンマー投げなどいくつかのオリンピック種目も生まれています。 伝統復興のために禁止令の撤廃を求める運動が起こり、1782年にこの禁止法は解かれましたが、氏族の影響力は壊滅的打撃を受けました。その後、氏族長や貴族らは地主としてイングランドの上流階級とその社会に取り込まれていきました。イングランド的であることが良いとされ、イングランドの慣習を取り入れようと競いました。完全に文化の破壊となった感じですね。 |
ガスリー城
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歴史上に出てくるガスリー氏族の有力な人物としては、15世紀のスコットランド王ジェームズ2世とその息子ジェームズ3世に使えたデヴィッド・ガスリーという人物が存在します。 若い頃から宮廷で仕えていたのですが、信頼を得てジェームズ2世の従者として国務長官クラスの地位に就くようになりました。 |
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1461年にジェームズ2世が崩御してその息子ジェームズ3世が10歳ほどの若さで王位に就くと、ジェームズ3世の母に要請されて財務長官に就きました。 デヴィッド・ガスリー卿は、1473年にはスコットランドの司法長官に就任しています。 |
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デヴィッド・ガスリー卿はガスリー城建築を許可する国璽を得て、アンガスにガスリー城を建設しました。城の建設は15世紀ですが、現在のガスリー城の大部分は19世紀のものです。ガスリー城に住んでいた最後の氏族長はイヴァン・ガスリー中将でした。 |
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1886年生まれのイヴァン・ガスリー中将はスコットランド王国連隊ブラック・ウォッチを指揮して名誉を上げ、ミリタリー・クロスを授与されています。 中将本人の写真は入手できず上の人物は少しだけ前の世代に将軍ですが、こんな感じだったのでしょうかね。 |
ガスリー城は1984年にアメリカ人の実業家に買収され、ゴルフコースなどが建設されました。その後、城と敷地は結婚式場や企業、団体のイベントのために一般公開され、スコットランドの観光地の1つとなりました。しかしながら2017年に所有者が個人の邸宅とすることにしたため、現在は一般公開されていないようです。 ガスリーの氏族長自体は現在も存続しており、現在は22代目のアレクサンダー・ガスリーが氏族長です。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)に通ってイギリスとイタリアで教育を受け、現在はイギリスとイタリアを行き来する生活を送っているようです。 もはや王侯貴族が昔の貴族らしい生活を送ることができる時代ではありません。城を維持できず手放したり、一般開放して収入を得て維持費の足しにしたり。そんな中で手放されることになった王侯貴族のための貴重なアンティークジュエリーも、私たちの手元にやって来ることができる時代となったのです。実は私たちはそのような稀有な時代に生きているとも言えますね。 |
ガスリー氏族のモットー
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ガスリー氏族のモットー"STO PRO VERITATE"、「私は真実の支持者です」「私は真理(真実)のために戦う」はいつ定められたものかは分かりませんが、ガスリー城を造った15世紀のデヴィッド・ガスリーが務めた司法長官のような役職にピッタリなイメージです。 記録がないためその後のガスリー氏族がどのような役割をスコットランドで担ってきたのか、同じような役職を代々務めてきたのかは判然としませんが、このモットーの元、代々の氏族長はガスリー城に住まい、王の信頼の元に財務長官や司法長官を勤め上げたデヴィッド・ガスリーに誇りを持って生きてきたと思います。 先にご説明した通り、フォブシールに彫る紋章は要素を全て取り入れるのか、一部組み合わせにするのかなど、様々なバリエーションが存在します。同じ人物でも表現法によって変化しますし、時代による役職や継承の仕方などによっても変化します。このため、一口でガスリー氏族の紋章と言ってもかなりのバリエーションが存在します。 |
立ち上がる獅子ランパント
![]() ジョージアン インタリオ リング イギリス 19世紀初期 SOLD |
以前『ランパント』のリングをご紹介した際に、この立ち上がる獅子の姿はランパントと呼ばれるものであることをご説明しました。 立ち上がる獅子の姿はそれだけでカッコ良いので、現代の日本人にはただのファッションリングのようにも見えるかもしれませんが、これも紋章です。 獅子の足下に地面のようなものが彫られていることにご注目ください。 |
![]() 【引用】『From Wikipedia, the free encyclopedia』Heraldry 23 April 2021, at 14:50 UTC |
ランパントは紋章の構成要素クレストです。 左の図で言うと、一番上のスローガンの下に配された要素です。 クレストの下にトルスがあります。 |
![]() "Tortillon" ©Tomaz Steifer, Gdansk(2006)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
トルスはクレストを台座として安定させるための構成要素で、女性や聖職者の紋章には存在しません。 |
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『ランパント』の獅子の足下にもトルスが彫られていることからこれが紋章のリングであることが分かるのですが、そんなこと関係なくカッコ良いですよね。 ランパントは紋章の人気モチーフの1つなのですが、昔の人たちもやっぱりカッコ良い方が良いなと思ったからかもしれません。 ヘリテイジもどこどこの有名な王侯貴族の由来の品だからという割とどうでも良いことよりは、デザインとしてのカッコ良さや美しさ、そして作りを兼ね備えているのかを最重要視しています。 |
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『真実の支持者』のクレストもランパントです。 |
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しかもカッコ良いクロスを持っています。素晴らしい!♪ |
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さて、1905年に出版されたイギリス&アイルランドのクレストと一族を網羅したジェームズ・フェアバーンの書籍によると、左のクレストがガスリー家の紋章として紹介されていました。 モットーと併せて、『真実の支持者』がガスリー氏族由来の宝物とみて間違いないでしょう。 |
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ランパントが持つ十字架はクロス・クロスレット・フィッチーというタイプの十字架です。 十字架自体はかなり古い時代から存在するモチーフで、バリエーションも多いです。 19世紀の紋章官の中には450種のクロスのリストを作成した者もいたとされるほどで、由来や系統を完全に知ることは困難です。 今回、クロスについての深追いは割愛します。 |
紋章のスコットランド様式とイングランド方式
![]() 【引用】『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』紋章学 2020年10月25日(日) 02:22 UTC |
スコットランドとイングランドでは、紋章の構成要素の配置に若干の違いがあります。 イングランド方式だとモットーは一番下に配されますが、スコットランド方式の場合は一番上になります。 |
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![]() "Coat of Arms of the United Kingdom (1816-1837)" ©Sodacan(20 July 2010)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
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イギリス王ジョージ4世の紋章 | |||
先にご紹介したイギリス王ジョージ4世の4種類の紋章で、一番右がスコットランドにおける王の紋章です。一番上に掲げられた『IN DEFENS』がスコットランド王室に伝わるモットーです。 |
![]() "James IV Arms" ©Rab-K at English Wikipedia(17 July 2007)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
『IN DEFENS』は『In My Defens God Me Defend』の略で、このモットーの起源はスコットランド王ジェームズ4世の時代まで遡ります。 |
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ジェームズ4世は、ガスリー城を建てた財務長官、司法長官デヴィッド・ガスリーが仕えたジェームズ3世の息子です。 その時代に作られたモットーということですね。 |
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もしかすると同じくらいの時代に作られたガスリー氏族のモットー"STO PRO VERITATE"は、このフォブシールにはスコットランド方式ではなくイングランド方式で表現されています。 先にご説明した通り、1747年の禁止法によってハイランドの氏族の影響力は壊滅的打撃を受けました。 |
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1782年にスコットランドに対するこの禁止法が解かれた後、氏族長や貴族らは地主としてイングランドの上流階級とその社会に取り込まれていきました。 ガスリー氏族はスコットランドの中でもローランドに属しており、ハイランドの有力者ほど打撃を受けなかったと想像できます。 |
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スコットランドの上流階級はイングランドの上流階級に取り込まれて以降、イングランド的であることが良いとされ、イングランドの慣習を取り入れようと競いました。 ヘリテイジで扱う厳選したフォブシールでも滅多に見ることのない、この第一級のフォブシールは、そのような時代背景の中でスコットランドにルーツを持つ 、おそらくはガスリーの氏族長がオーダーしたものとみるのが妥当です。 |
最高クラスの彫りと作り
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このフォブシールは最高のクラスのインタリオの彫りと、フォブシールの作りで制作されています。 |
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【参考】中の下レベルの紋章インタリオ | ||
鉄や銀で作る最低レベルは割愛するとして、ゴールドやそれなりの石を使って紋章が彫られた正式な実印として使うインタリオでもこのレベルは普通です。 |
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【参考】中レベルの紋章インタリオ | ガスリー氏族の紋章 |
ヘリテイジは高級アンティークジュエリー専門店を標榜していますが、これを見れば一目瞭然にしてご納得いただけるのではないでしょうか。ヘリテイジで扱うハイクラスのものだけを比較すると彫りのレベルの違いが一般の方には分かりにくいかもしれませんが、ここまで違えばすぐにお分かりいただけると思います。 |
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ショボイ彫りのインタリオには、ショボイ金具しか付かないものです。 そうは言っても一応は中級品なのでゴールドですし、アンティークらしい整った作りではあります。 簡素すぎてデザイン的にも魅力を感じませんし、この程度の彫りと作りだと私自身テンションが上がらないので、このレベルは扱いません。 |
【参考】中レベルの紋章インタリオ |
第一級の彫り
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レベルが低いものでも実際は小さいので、実物はそこまで粗は目立たないことでしょう。 ご紹介している『真実の支持者』のクラスになってくると、肉眼では見えないような人間技とは思えない技術で多数の細い線やモノグラムが彫ってあります。 イギリス貴族の紋章の中でも傑作と言える作品です。 |
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ランパントの表現も見事です。表情や立体的で躍動感溢れる筋肉の表現力、クロスを持つ手や雄々しい鬣の繊細緻密な表現、ランパントの大きさはたった3mmほどしかないことを考えると、到底人間技とは思えない驚異的な彫りなのです。 トルスや優雅な植物模様のような表現で描かれたマントの部分も、繊細ながらも力強さや躍動感を感じる見事な彫りです。 |
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粘土に押すと、全体がいかに立体的な表現になってるのかが分かります。 インタリオはカメオのように立体感を目で確認しながら彫るものではないため、これだけの表現は天才的頭脳と器用さを併せ持つ当時のトップクラスの彫り師だからこそできたものと言えます。 普通の職人だと、平面的にのっぺりした模様を彫るだけで精一杯です。
エスカッッシャン中央に彫られたモノグラムの曲線も何と美しいことでしょう♪ このような飾り文字は正確な判断が難しいのですが、一番右はガスリー姓のGとみられます。 |
![]() ジョージアン レッドジャスパー フォブシール イギリス 19世紀初期 ¥1,230,000-(税込10%) |
このように伯爵家で代々使用することが可能なインタリオと違い、イニシャルが彫ってあるインタリオは当人しか使うことができない、ある意味かなりの贅沢品とも言えますね。 |
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『真実の支持者』も役目を終えてヘリテイジにやってきたわけですが、イニシャルも美しいデザインの一部ととらえ、手紙や何かをプレゼントする時にシーリングワックスを使って、リボンを固定するなどして楽しむのも良いと思います♪ |
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格調高い貴族の紋章に相応しい彫りのインタリオです。大切なモットーが彫られたリボンの部分はマットに仕上げられています。キメが細かい、見事なマット仕上げです。 石は色鮮やかで透明感のある極上のコーネリアンが使われています。インタリオ表面は磨き上げられており、光沢感ある艶やかな美しさと透明感を感じることができます。この質感と、彫られた箇所のマットな質感との対比が実に格調高い美しさを放つのです。細部まで徹底した完成度の高いインタリオには感服するばかりです。 |
見事な彫金
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このフォブシールが作られた19世紀初期は『ジョージアンの女王』でもご説明した通り、イギリスで金が歴史上最も高かった時代に相当します。それだけに少ない金で見栄えするジュエリーを作る技術が発達し、見た目よりも金が少ないジュエリーが多いです。 金が富と権力の象徴となっていた時代に於いて、これだけ贅沢な金の使い方をしているのは如何にハイクラスのシールであるかの証なのです。まさに第一級のインタリオをセットするに相応しい作りのフォブシールです。 |
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『紳士と淑女』1778年 | 『ダブル・ウォッチのジェントルマン』1781年 |
『魔法のクリスタル』でも触れたとおり、懐中時計が並の貴族では買えないくらい非常に高価でステータスの象徴だった古い時代、ウォッチチェーンに下げて使うフォブシールは男性にとって超重要アイテムでした。 超高価な懐中時計をブラブラとぶら下げる危険極まりない真似をするわけにはいかないので、普段懐中時計はポケットや懐に入れておきます。人目につくのはウォッチチェーンに下げたフォブシールになります。フォブシールのグレードでどの程度の懐中時計を持っているのか当時の王侯貴族ならば容易に推測できますから、フォブシールはかなり重要なのです。男性は女性よりもジュエリーのアイテム数が少ないですからなおさらです。 |
![]() イギリス 1790年頃 SOLD |
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『真実の支持者』のフォブシールも、このクラスの極上の懐中時計に下げて使われていたに違いありません。 |
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使われてるのは18ctぐらいのゴールドですが、普通のジュエリー用の割金とは異なる素材を使って、通常の18ctゴールドよりも硬度を高めたと推測される作りになっています。 繊細さと大胆さが組み合わさった見事な彫金は、これを作った金細工師が如何に優れた技術を持っていたかが良く現れています。 |
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ご説明した通りフォブシールは懐中時計のチェーンに下げて使う物なので、普通のペンダントと違って360度完全に立体的な作りになっているのが特徴です。 つまりどこから見ても美しいのです! |
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でもそれだけに、作るには四倍以上の手間が掛かるということです。 物の金額に反映されるのは材料費だけではありません。人件費も大きな構成要素となります。 高度な技術を持つ職人は相応の人件費がかかりますから、手間が四倍以上かかるというのは相当高くつくということです。 自身でオーダーした経験があり、職人の高度な技術や手間をかけた仕事の価値を理解する当時の王侯貴族にとっては細工を見れるだけでそれがいかにお金をかけて作られたものなのか手に取るように分かったことでしょう。 GENもそれを見る目があるからこそ従来から作りを最も重要視し、そのように啓蒙活動をしてきたのです。 |
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量産の既製品しか買ったことのない中産階級が経済活動の中心を占めるようになり、古き良き時代の宝物やモノづくりの存在すらも知らなくなった大半の現代人にとっては、モノを見る価値基準は素材にしか頼れないのかもしれません。 19世紀初期以前はまだ懐中時計の量産が始まっておらず非常に高価だったこそ、フォブシールもそれに見合う、お金と時間を掛けて作られた高級な物が多いです。 |
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フォブシールはアンティークジュエリーの人気アイテムですが、19世紀後期になると懐中時計も量産品の低価格の物が作られるようになり、それと共にフォブシールもそれに見合う低価格で簡単な作りの物ばかりになっていきました。 20世紀初頭に腕時計が作られるようになると最終的には姿を消していったのです。 |
【参考】安物のフォブシール |
グッドコンディション
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200年ほど前の宝物ですが、パーフェクトと言えるほどのグッドコンディションです。 実はこれは当たり前のことではありません。 |
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フォブシールはチェーンに下げて使うという特徴上、摩耗によって金具がすり減っている場合も少なくありません。 左もチェーンに連結する輪っかの上部がすり減っているのがお分かりいただけますでしょうか。 たくさんのジュエリーを所有できる、莫大な富と権力を持つ王侯貴族の高級品の場合は同じものをしょっちゅう使うことが殆どないのでコンディションが良い場合の方が多いのですが、安物ほど中産階級が1つしか持たないジュエリーをヘビーユーズするのでコンディションが悪い場合が多いのです。 |
【参考』金具の摩耗が激しいフォブシール |
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これも9ctで作られているので18ctゴールドより硬くて耐久性があったはずですが、長年の摩耗により明らかに段差になるほど磨り減っています。 ここまで来ると、あとどのくらいで壊れてしまうのだろうと心配になります。 ロンドンでマーケットを視察した際、もっと酷いものもありました。初めてのその業者とちょっと打ち解けた感が出てきたので、これは危険なのではと親切心で教えたところ、豹変し烈火のごとくブチギレられて仰天したことがあります。 クレーマーか何かと勘違いされたようですが、決して安くはない値段にも関わらず平気でこのようなものを売る業者がいることに驚きました。 |
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こういう業者は商いに慣れているので、そういうデザインなんだと主張してくることすらあります。 プロのディーラーである私たちならば強気で「そんなデザインがあるわけない!」と主張できますが、そういう業者はかなり強い剣幕で言ってくるので一般の方だと丸め込まれそうです。 私は長い付き合いのあるディーラーからも目が良いと言われまくるので、細かいことに気づく方なのだと思います。 大抵の客はプロのディーラーも含めて不具合に気づかず、指摘することなく言い値で買っていくので私はブチギレられたのかもしれません。 値引き交渉したわけではないんですけどね(失笑) ジャンクはどんなに安くても仕入れません。アンティークジュエリーも安物買いの銭失いです。 |
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とは言っても、駄目業者も悪意があったら最悪ですが、言い方は悪いですが、悪意はなく見る目や理解する頭がないだけと思われる場合も多いです。 アンティークジュエリーに限っては、人柄の良さそうな業者だからクオリティも安心できるとは言えないのです。 はっきり言ってアンティークジュエリーの安物を買うくらいだったら、製造物責任をとってくれ摩耗もない現代ジュエリーの新品を買う方が絶対マシです。 そしてその現代のハイエンドのジュエリーのさらに上をいくのが、アンティークのハイクラスのジュエリーなのです。 |
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どうしても摩擦が起きる輪っか部分には、ゴールドよりも強度のある素材で内側が補強されています。 だからこそオーダー主の実印として愛用され、さらに200年ほどの年数が経っていても金具部分すらもパーフェクトコンディションと言えるコンディションを保つことができているのです。 アンティークのハイクラスのジュエリーには手間やお金を惜しまない細部に至るまでの気遣いが行き届いていて、見ているだけでも心癒されます。 |
ガスリー・タータン
スコットランド氏族には紋章に並ぶものとして、氏族固有のタータン『クラン・タータン』があります。ガスリー氏族のタータンは旧式、戦闘用、現代の3種類があります。 クランタータンを正式に定める権限は氏族長が持つとされているのですが、ヴィクトリア時代に『タータン熱』が起き、スコットランド紋章院にタータンを登録した氏族長もいました。タータンは紋章に並ぶ権威ある意匠としてスコットランドの人々にはとらえられているのです。 |
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スコットランドの伝統を大切にする心は、胸に響くものがあります。皆誇りを持ってクランタータンで身を包み、命を賭けて戦闘でも戦ったのでしょうね。勇猛なハイランダー兵を恐れたためにイングランドがタータンすらも禁止する法令を出したわけです。 でも、ハイランドも一枚岩だったわけではありません。1688年の名誉革命以降、ハイランドで起きるジャコバイトの蜂起を抑えるためにハイランダー兵が活躍していました。勇猛なハイランダー兵が高く評価されため、ハイランド連隊が結成され、それがガスリー城に住んだ最後の氏族長イヴァン・ガスリーも率いたブラック・ウォッチとなるのです。 |
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禁止令中もこのブラックウォッチの連隊だけはタータンの使用が許されていたのだそうです。 左はスコットランド旅行中にイギリス王ジョージ4世が描かせた肖像画です。 タータンはスコットランドの人々にとって大切なアイデンティティなのでしょうね。 |
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ガスリー城と共にガスリー氏族のタータンが現代に至るまできちんと遺っているのは、文化を遺そうとした代々の人々の努力の成果だと感じます。今回の素晴らしいフォブシールも同じで、それぞれの時代で大切に守ってきた人がいたからこそ今、ヘリテイジの宝物としてご紹介することができるのだと思うと感極まる思いです。 ところでカロデンの戦いやジョージ4世のお召し物を見ると、上着だけでなく靴下までもタータンチェックで埋め尽くされているようなので、現代のみなさんもどうせやるならそこまでやって欲しいですね。現代の靴下なんて量産なのでいくらもかからないと思うのですが・・。余計なお世話ですかね(笑) |
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撮影に使っているような、作りが良いアンティークのゴールドチェーンをご希望の方には別売でお付け致します。いくつかご用意がございますので、ご希望の方には価格等をお知らせ致します(チェーンのみの販売はしておりません)。高級シルクコードをご希望の方にはサービスでお付け致します。 |