No.00247 スタイリッシュ・ゴールド |
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『スタイリッシュ・ゴールド』 同時代のフランスのエレガントな雰囲気のチェーンとは一線を画す、イギリスならではのスタイリッシュで極上のロングゴールドチェーンです。 |
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縦長のボックスタイプのパーツが醸し出すスタイリッシュな雰囲気が魅力です。 この時代はフランスでもロングゴールドチェーンが流行しているのですが、雰囲気は共通してどれもエレガントです。 イギリスのチェーンはフランスとは異なる雰囲気と、1つ1つ個性に富んでいるという特徴があります。 少しフランスとイギリスのチェーンの違いについて見てみましょう。 |
フランスのロング・ゴールドチェーン
タイプ1 金線による表現
ゴールド スーパー ロングチェーン |
フランスのゴールドチェーンで思い浮かべるタイプは大別して2種類あります。 1つがこのように金の線を使ったチェーンです。安物だと単純な編み方だったりしますが、高級品だと複雑で硬い金属でできているとは思えない柔らかな表現がなされていたりします。 直線は一切ない柔らかく優しいデザインと、ゴールドという高級素材の印象が相まって格調高くエレガントな雰囲気を醸し出しています。 |
タイプ2 数種のパーツの組み合わせによる表現
『フレンチ・エレガンス』 フランス 1890年頃 SOLD |
もう1つのタイプが、このようにいくつかのパーツを組み合わせたロングチェーンです。 もちろんハンドメイドなので、チェーンごとにそれぞれのパーツのデザインは異なるのでアスが、フランス製のチェーンは一目見て判断できるくらい類似した雰囲気があります。 |
フレンチ・ロングチェーンA |
フレンチ・ロングチェーンB |
フレンチ・ロングチェーンC |
フレンチ・ロングチェーンD |
なんだかルールでもあったんですかと聞きたくなるくらい、パターンは似ていますね。もちろんどれもエレガントな雰囲気を放つ上質なチェーンです。 ところでフランスのチェーンの『上質』とは何だか分かりますか? |
フランスのアンティークジュエリーの品質を見極めるポイント
-品質を見極める物差しとは?-
品質を見極めるには、品質を計測するための物差しが必要です。 絶対的な美的感覚を持つ人ならばそれが物差しとなりますが、絶対的な美的感覚を持つ人は相当な少数派です。幼少期に環境が恵まれていればある程度育てることも可能ですが、それ以上に生まれながら備わった能力的な側面が強いです。 大人になってからいくら経験を積んでも身には付きません。経験で身に付くのは知識であって、それが本来持っていた『見る能力』の助けとなる場合はあります。 人によって単位や測定限界、分解能も違うでしょう。 |
中身は全く変わらないのに、ご印籠があるだけでそれまで無価値と評価されていたものが、超高価な代物のように評価されるおかしな出来事が起こる理由だったりします。 判断基準となるべき物差し自体が間違っていても、一度それが権威付けされてしまうと誤った状態でスタンダードになってしまうこともあります。 |
物差しで測定できる範囲を勘違いしている場合もあったりします。 「アンティークジュエリー」と「刻印」で検索するとまず目にするのがイーグルヘッドで、これがあると安心なのかなと勘違いされる方も少なくないようです。 業者が自分のHPに手間をかけて情報を掲載するのは、自分の商品を販売するためです。 |
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イーグルヘッド |
普通は売りたいものに合わせてPR文句を書くものです。 お金を稼ぐ必要がない、補助金などで運営できる学術機関や公的機関であれば第三者的な意見は可能ですが、業者は売りたいものを売ることができなければ存続不可能なので、そのような宣伝文句を書くことは当然です。 だから業者の言葉を鵜呑みにするのではなく、その物差しは物差しとしての価値が本当にあるのか、使い方などはきちんと理解してから使ってほしいのです。 |
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【参考】88万円の価格が設定された血赤珊瑚の12mm珠 |
エンジェルスキンのサンゴ・ブローチ Hunt&Roskel社(英国王室御用達) イギリス 1870年頃 SOLD |
私は自身がアンティークジュエリーの世界全体を正確に理解するため、そしてそれを同じように知っていただきたいがために情報の第三者性や正確性の高さに務めています。 でも、もっと詳しく知りたい方や疑う方には、ぜひ私の情報を元にしてご自身でも調べてみていただきたいと思っています。 |
-現代のホールマーク-
Common Control Mark(CCM) 【引用】ASSAY OFFICE BiRMINGHAM / INTERNATIONAL CONVENTION MARKS ©ANCHORCERT GROUP |
さて、昔はそれぞれの国で刻印がありました。1972年に輸出入の円滑化を目的として、ヨーロッパの国々で共通の刻印を運用する条約(ホールマーク条約、ウィーン条約)が調印されました。イギリスも参加しているのですが、フランスは参加せずCCMは刻印として認められていません。現代でもアンティークジュエリーの時代から使われていたホールマークを使用しているのです。 |
-ホールマークの目的-
『Nouvelle-France』 オールドカット・ダイヤモンド ピアス ヨーロッパ? 1920年頃 SOLD |
そもそも刻印は何のために行われるか考えたことはありますか? 建前上は消費者や工芸者を保護するためと言われており、偽物が出回らない目的と説明されています。 しかしながら実はもっと大切な役割があります。プラチナの刻印ができた背景を見ながら、そのもう1つの目的について探ることにしましょう。 『至高のレースワーク』でご説明した通り、画期的な新素材プラチナがジュエリーの一般市場に出始めたのは1905年頃からでした。 それまでは刻印がなかったプラチナに、フランスで新たなホールマークが制定されたのが1912年12月5日です。 『Nouvelle-France』に制定されたばかりのプラチナのインポートが刻印されていました。 |
フランスのプラチナのホールマーク | |
フランスのプラチナのマークと聞くと犬をイメージされる方も多いと思いますが、プラチナを表すマークだけでも上のように3種類が存在します。 意味があって3種類あります。 |
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下:マスクのホールマーク |
【乙女の顔】 【犬の頭】 【マスク:男性の顔】 |
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フランスのプラチナのホールマーク |
それぞれの定義を理解するとご想像いただける通り、これは関税を適切に徴収するためのものなのです。このホールマークが作られる前は、必要な際はプラチナジュエリーには、フランスではイーグルヘッドやフクロウのホールマークが打たれていたようです。刻印が存在することで適切に関税を支払った物である証明ともなるのです。抜け漏れなく取れるところからは取れるだけ税金を徴収したい思惑が見えてきますね。 若い方だとご存じないかもしれませんが、日本でも消費税の導入以前、高度経済成長期頃は物品税という贅沢品にかかる間接税が存在しました。低所得者でも購入せざるを得ない生活必需品は非課税ですが、贅沢品とみなされた物品を購入する際にかかる税です。宝石、毛皮、電化製品、乗用車、ゴルフ用品や洋酒などが対象です。 GENによるとジュエリーは15%が課税されていたそうで、それならば今の方が楽ですね。無い袖は振れませんが、支払い能力のある金持ちからは取ろうと画策した場合、富裕層しか買えない高級なジュエリーは格好の課税対象なのです。消費者保護のためだけだと手間や経費をかけて刻印制度を維持するのは割に合うのか疑問が湧きますが、課税目的だと国や領主が制度を作って維持する理由も納得しやすいですよね。 |
フランスのホールマーク "Frabcuskie proby z?ota i srebra" ©Szrek76(2011年5月24日)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
そういうわけで、刻印は現在の物流をコントロールするためのものであって、そもそもがアンティークの真贋を判定する目的で打たれているものではないのです。 しかも100%刻印が信頼できるものかと言うとそうも言えないのです。 Genが2回目にロンドンに行った44年前の時点で既に刻印の偽造はディーラーの中では知られている存在で、アンティークジュエリーを始めたばかりだと言うGENに対して、当時のイギリス人ディーラーから「刻印もあてにならないから気を付けた方が良いよ。」と教えてくれたそうです。 |
思考停止ツール(笑) | イギリスの特に古いアンティークジュエリーは刻印がない場合が多く、イギリスに限らずフランスの物でも特別にオーダーされたハイクラスのアンティークジュエリーには刻印がないことが多々あります。 目利きができないディーラーにとっては刻印があるものを仕入れ、刻印をご印籠のよう使って販売する方が楽に儲けられるのです。 真に価値あるアンティークジュエリーをご紹介したい私たちにとっては、刻印が無価値とは言いませんが優先順位がかなり低い理由です。 |
-イギリスの優れたジュエリーを見極める難しさ-
-フランスの優れたジュエリーを見極める難しさ-
『マーメイドの宝物』 アールヌーヴォー 天然真珠 リング フランス 1890〜1900年頃 SOLD |
しかしながらフランスのアンティークのゴールドジュエリーは基本的に全て18ctで作られています。 『マーメイドの宝物』のように特別なオーダーで作られたハイクラスのジュエリーはもちろんのこと、かなりの安物でさえも18ctゴールドで作られ、ご印籠『イーグルヘッド』が刻印されているのです。 |
これはイーグルヘッドの刻印と、作家名が記載された所謂サインドピースです。 作りを見ると、何度も同じ型で鋳造を繰り返しているのでマリア像がボヤけており、表情もよく分からない感じですし、手や布のドレープもヌメッとした印象です。 透かしの部分も下手な上にろくな仕上げもなされていないのでギザギザです。 ヘリテイジで扱うハイクラスのジュエリーに見られるキリッとした作りとは対照的です。 それでも『フランス製』、『サインドピース』、『18ctの刻印あり』という、ブランドでしか見ない人たちにとっては三拍子揃ったオタカラと言える代物なのでしょう。 |
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【参考}安物の18ctゴールドのペンダント(フランス 1900年頃) |
【参考】1900年頃の安物のフランスの18ctゴールドのリング or フェイク |
これも18ctゴールドのリングですが、南アフリカのダイヤモンドラッシュ後のこの時代にしてはダイヤモンド質が悪すぎますし、作りも雑でアンティークジュエリーと言うには違和感があります。最近はロンドンでもアンティークジュエリー専門店がアンティークジュエリーだけでは立ちゆかなくなり、品揃えにヴィンテージの割合もかなり増えており、世界的に見ても徹底してヴィンテージを扱わない専門店はヘリテイジだけかもしれません。 これもアンティークの低レベルか、ヴィンテージ、もしくは現代のフェイクアンティークジュエリーの可能性があります。それでもフランス製で18ctゴールドであればイーグルヘッドは刻印されています。イーグルヘッドとそれっぽいデザインだけでアンティークジュエリーを選ぶのは、目隠しで選んでいるに等しい危うさがあるのです。 |
-作りで判断するしかないフランスのゴールド・アンティークジュエリー-
【参考】現代の21ctゴールドのゴールドチェーン |
アンティークのゴールドチェーンを知る前は、正直ゴールドチェーンに良いイメージはありませんでした。成金やラッパーなど、変に主張するダサいイメージが強いからです。 現代のゴールドチェーンがなぜ安っぽく見えるのかというと、ペカペカの安い輝きを放っていたり、単純なデザインであったり、作りがチャチだからだです。 |
【参考】ラッパーもしくは成金っぽくなれるゴールドのネックレス(現代) | ゴールドは素材としては高級ですが、品物の価格にはそれを作るための加工賃が含まれます。 アンティークの作りが良いチェーンには丹念な手仕事が施され、素材以上に人件費がかかっているものです。 本来ジュエリーとしてはそういうものが高級品なのですが、アンティークでも安物だったり、量産のヴィンテージや現代のチェーンは価値に見合わない価格で高級品のように販売されている実情があります。 |
『フレンチ・エレガンス』 フランス 1890年頃 SOLD |
『フレンチ・エレガンス』は過去最高クラスのフランスのゴールドチェーンだと、ご紹介時に説明しました。 どういう基準でそう語るのか疑問な方もいらっしゃったかと思いますが、パーツの作りを見れば一目瞭然です。 低級品はもはや論外なので、ヘリテイジでは扱わない中級品クラスから見ていきましょう。 |
【参考】中級品のメインパーツ | |||
ロングチェーンのパーツを1つ1つ手作りで作るのは、アーティスティックな作品を作るのとはまた別の大変さと能力が必要です。正確に同じものを作ること、そして根気の良さです。現代人には到底考えられない時間と忍耐力の要る作業ですし、人件費をまともに乗せるととても普通の人が購入できるような価格にはなりません。昔でもそれは同じことです。 一応は中級品なので細工とデザインは施してありますが、単純すぎるのでヘリテイジでは扱わないクラスです。このクラスだとアンティークならではの美しいゴールドの輝きは出ません。 |
ハイクラスのメインパーツ | |||
ハイクラスのものだと明らかに手間以上にデザインが重視された作りです。手間がかかろうとも手抜きすることなく、美しいものを作ろうという姿勢が伝わってきます。透かしの部分の丁寧なミルワークや、フレーム部分のマット仕上げにそれが見えます。このクラスだと安っぽい輝きではなく、金が本来持っている格調高い輝きを感じることができます。 |
ルネサンスお取り扱いチェーンのメインパーツ | メインパーツはそれぞれ手間がかかるデザインですが、特に作るのが大変なのは『フレンチ・エレガンス』のパーツです。 上のパーツのように曲がり角のないシンプルなラインであれば溝を彫るのも多少は楽ですが、フレンチ・エレガンスのメインパーツはフレームの形状が複雑なので何倍も大変です。 フレーム内部にセットされたミルワークの金の板の形状もより複雑で、作るのが大変なものです。 |
『フレンチ・エレガンス』のメインパーツ |
ルネサンスのトップクラス | ヘリテイジのトップクラス |
2つのチェーンを見比べると分かる通り、『フレンチ・エレガンス』はこの手間のかかるパーツの数がかなり多いのです。だからこそ過去最高の作りのチェーンということでご紹介するに至ったわけです。左のチェーンも手間のかかった面白いデザインで、相当な手間もかかっているのでどちらが上だと議論するのはもはやナンセンスで、どちらがデザイン的に好みかという領域だと思います。 |
『フレンチ・エレガンス』はヘリテイジのオープン前、経験値も知識も殆どない状態で感覚値だけで選びました。 ヨーロッパのディーラーに6種類見せてもらったのですが、重めのものと軽めのもの2種類、それぞれが重さだけが考慮された均一価格でした。 何しろサラリーマン時代の貯蓄をはたく買い付けだったので予算が限られており、選べるのは1つだけです(失笑) 迷いなく十分な長さが楽しめる重めの4種類の中から選ぶことにしたのですが、同じ価格なのに全然デザインも作りもレベルが違うのです。 圧倒的に素晴らしかったこのチェーンを迷いなく選びました。 |
フランスとイギリスのゴールドチェーンの特徴の違い
-フランスのチェーンの特徴-
【参考】中級品のフランスの18ctゴールドチェーン |
ここまでフランスの18ctゴールドのロングチェーンを中級品からトップクラスまでご覧いただきました。同じ規格でも作りのレベルはピンからキリまであることがご理解いただけたと思いますが、デザインのパターンはどれも似た印象がありませんでしたか? |
【参考】低級品もしくはヴィンテージのフランスの18ctゴールドチェーン |
ここまでチャチなものだとアンティークかどうかすら怪しいラインですが、基本的にはフランスの本物のアンティークのロングゴールドチェーンには中級・上級品問わず下記の共通する特徴があります。 |
【参考】中級品のフランスの18ctゴールドチェーン |
特徴3のメインパーツが平たい作りは、横幅を広くして見た目の面積を稼ぐことで、少ない金で大きく見せる効果が期待できます。トップクラスのチェーンの手間のかけ方は別ですが、ある意味中産階級の若い女性が経済の牽引役となったベルエポックのフランス女性向きの特徴と言えます(ベルエポックについてはこちらもご参照ください)。 |
【参考】中級品のフランスの18ctゴールドチェーン |
特徴4の強度は考慮されていない作りというのは、ジュエリーとして構造上弱い箇所ができたとしてもデザイン重視で作られている部分に見られます。平たく薄い形状は耐久性が高くありませんし、そもそも18ctなので金属自体にあまり耐久性がありません。代々使おうと言うよりも、特に安物は流行品として消耗品感覚で使うために作られている感じです。 これなんかは矢印で示した部分を見るとお分かりいただける通り、仕上げの適当具合がよく現れていますね。ハンドメイドではありますが技術の低い職人がさらに仕上げも手抜きして作ったのか、メインパーツの形もいまいち揃っていません。腕の良い職人だとまるで機械で作ったのではと思えるほど正確に作るものです。 ヘリテイジの扱う宝物はここまで画像を拡大しても綺麗なものしか扱いませんが、アンティークの低レベル寄りの中級品はこんなものです。アンティークだから優れているわけでも、ハンドメイドだから優れているわけでもありません。それでも『フランスの18ctゴールド』というブランド名はあるので、結構プレミアム価格になっていたりするのです。何だか細すぎる部分はすぐに壊れてしまいそうなくらい細いです。安物業者は基本的に拡大画像が掲載できないわけです。 |
-イギリスのチェーンの特徴-
イギリスのチェーンはデザインのバリエーションが多いことが1つ特徴です。 また、使うシーンに合わせてデザインと機能性がよくよく考慮されて作られているのも特徴です。 それに合わせて適切な金位の選択もしていたようで、今回ご紹介する15ctチェーンと9ctのチェーンの違いについて少し見ていきましょう。 |
9ctゴールドのロングチェーンの特徴
9ctゴールド スーパー・ロングチェーン |
9ctゴールドの上質なロングチェーンは、シンプルなデザインが特徴です。 |
【参考】長年の使用によってすり減ったゴールド・チェーンのパーツ | これは15ctゴールドのチェーンです。100年以上の使用でかなり磨り減っています。 HERITAGEでは全体が磨り減っている場合は仕入れず、一部の金具のみの場合は補修してご紹介しています。 検品が甘いディーラーからチェーン系のアイテムを購入するのがかなり危険な理由です。 |
15ctゴールドのロングチェーンの特徴
15ctゴールド スーパー・ロングチェーン イギリス 1880年頃 長さ 144cm SOLD |
15ctゴールドのチェーンになると、スイベル付きで何かを下げることも可能な構造になっていますが、単品でも使えるくらい華やかなデザインであることが特徴です。 |
これも1つ1つのメインパーツに丁寧にミルが打たれており、手間のかけ方はやはり半端ありません。 |
正面から見ると繊細過ぎて心許ない作りに見えますが、横から見ると厚みを持たせて強度も出していることが分かります。 それでも18ctだとこの構造には耐えられないので、実用性も考えて15ctで作れたとみられます。 何しろこの手間のかけ方だと金という材料代以上に加工の手間賃の方がかかるのです。 |
ちなみに15ctゴールドのメリットが、1932年以降は基本的にはその金位が使用されていないことです。 1930年代初頭になると、アメリカのスタンダードである14Kが世界中で優勢となり始め、イギリスの15ctや12ctも14ctに統一することになってしまったためです。 強度、外観、加工性などに合わせて金位を使いこなし、強度と美しさを兼ね備えたイギリスのゴールドジュエリーの歴史も途絶える一因となったのです。 14ctと15ctでは金の含有量の違いは僅か4%程度に過ぎませんが、色はかなり違ういう人も少なくありません。 |
14ctは15ctに比べれば割金の量が多いので若干耐久性は向上しますが、15ctでも十分強度があります。わずか4%の金をケチって金の色を犠牲にする意味があるのかと嘆く意見もあります。まあそこまでは何とも言えませんが、強度がなければできないデザインは確実に存在します。 15ctゴールドで作られたジュエリーは金の性質を知り尽くし、それを完全に使いこなしていたアンティークの時代だけの素晴らしい宝物なのです。 |
本作品の特徴
ルーペやロニエットなどを下げるための『スイベル』という回転する金具が付いてるので、実用性があります。それに加えて単品で使ってもとてもスタイリッシュで美しいチェーンです。15ctチェーンだからこその高級感と実用性を両立しています。 |
光をコントロールする面白いパーツ
イギリスの15ctゴールドチェーン |
フランスのトップクラスの18ctチェーン |
先ほどのイギリスの15ctチェーンのデザインは若干フランスを思わせるようなエレガントな雰囲気を感じますが、今回のチェーンはまさにイギリスらしいスタイリッシュなデザインです。 |
『MODERN STYLE』 ダイヤモンド ゴールド ブローチ イギリス 1890年頃 オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド、ローズカット・ダイヤモンド、18ctゴールド SOLD |
『MODERN STYLE』でご説明した通り、19世紀末のベルエポックのフランスではイギリスのアーツ&クラフツ運動の流れを受けてアールヌーヴォーへと進化する時代でした。 曲線的なデザインのイメージが強い時代です。 一方でアーツ&クラフツが起こったイギリスではグラスゴー派が現れ、各国に先駆けて直線的なデザインと曲線的なデザインを使いこなす、アールデコ以上に素晴らしいデザインが生まれた時代でもありました。 |
このチェーンも直線と曲線を使いこなした傑出したデザインで作られているのです。 |
縦長のボックス型のパーツを見てみると、直線と曲線でできていることが分かりますでしょうか。 完全に角張った直方体の形状だと、現在あるような控えめならも香ってくる女性らしさやエレガントさは出てこなかったはずです。 このパーツでさらに優れている特徴は、磨きすぎず良い感じに光沢のある平面で作られていることです。 |
角度によってキラキラとゴールドの面が美しく黄金の光を放つのです。 面積のある平板状の作りだと、着けた際にそこまで角度の変化が期待できないのですが、ボックス型なので着けた人の動きに合わせて角度が変化しやすく、そのたびに光を放つことができるのです。 |
『DECO LUXURY』 天然真珠&プラチナ スーパー・ロングチェーン イギリス 1920年代 長さ 150cm SOLD |
このような面の輝きを利用して美しく見えるように設計されたロングチェーンとしては、プラチナで作られた『DECO LUXURY』がありました。 造形的にオシャレなデザインとなるように設計することは並のデザイナーでも可能ですが、このように光の反射まで考慮してデザインできるような才能ある職人兼アーティスティックなデザイナーはそうそういるものではありません。 だから光までも使いこなすデザインは余程のジュエリーでしか見ることがないのです。 |
光らせるためのプラチナのパーツは平板状ですが、面積が広くないので着用者の動きによって角度はダイナミックに変化できる作りです。静止画像だと光るかどうか分かりにくいですね。設計する側にとっても同じことで、光をコントロールするというのはとても難しいことなのです。 |
『完璧な美の演出』 |
チェーンを光らせるという意味では、『完璧な美の演出』のようにハンドメイドチェーンの途中にダイヤモンドをセットする方法もありました。 メインとなるペンダントのみならず、チェーンの所々からダイヤモンドの鋭い輝きが放たれるこの宝物もとても魅力がありました。 |
このチェーンから放たれるのはセミマットなゴールドの表面から放たれる、柔らかく神々しい輝きです。 ダイヤモンドやプラチナだと華やかすぎて苦手という方でも、地味すぎず主張しすぎずお使いいただけるのではないかと思います♪ |
面白い連結法
立方体以外のパーツも、非常に面白いやり方で連結されています。 |
パーツに金線が絡んだようなハンドメイドだからこそ可能な珍しい作りは、イギリスの19世紀後期のロングチェーンならではの物です。126cmもあるのですから一体どのぐらいの時間をかけて作ったのか、本当に昔の職人には頭が下がります。この部分も独特の構造のお陰で、流れのようなものを感じる複雑で美しい輝きを放つのです。「よくぞやってくれました、ありがとう!」と感謝の念ばかりです。 このコンディションの良さは圧倒的な手間をかけて作られたから達成できた、素晴らしい耐久力があるからこそです。 |
126cmという長さも魅力です。二連はもちろん、コーディネートに合わせて三連でも楽しんでいただけると思います。私同様ゴールドチェーンと聞くと成金のイメージがあった方でも、そうはならず気軽にお使いいただけるのがアンティークのハイクラスのハンドメイドチェーンならではの魅力だと思います。 いろいろなものを下げたり、ブローチと組み合わせてコーディネートしても邪魔にならない、主張しすぎないデザインなので何かと重宝していただけるはずです。 |
ジャラジャラのゴールドブレスレットとしても楽しんでいただけます。 この画像だと、いくつかのパーツが面で光っているのがお分かりいただけますでしょうか。 実物をご覧になったら、ゴールドのバリエーション豊かな輝きにあっと驚かれると思います♪ |