No.00283 摩天楼

3. 見事な造形

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

この宝物のポイント

1. ロッククリスタルを使った異例のデザイン
 1-1. 稀少性が高い大型で美しい天然水晶
 1-2. ロッククリスタルを使った宝物
 1-3. ロッククリスタル産業とジュエリーの関係
 1-4. ロッククリスタルのハイエンドのアールデコ・ジュエリー

2. 摩天楼フィーバーに生まれた特別な作品
 2-1. 19世紀後期に発生した超高層建設フィーバー
 2-2. 美しき鉄とガラスの建築
 2-3. 摩天楼とバウハウスの融合
 2-4. 建築とジュエリーのデザインの関係

3. 見事な造形
 3-1. センス抜群のロッククリスタルのカット
 3-2. 驚異的な立体交差デザイン
 3-3. ロッククリスタルのための特殊なセッティング
 3-4. ファイアと煌めきの魅力抜群のダイヤモンド
 3-5. ダイヤモンドの特殊なセッティング

4. アンティークジュエリーの最終形

 

3-1. センス抜群のロッククリスタルのカット

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

ここからは作りについて見ていきましょう。

まず驚くのが、ロッククリスタルのセンス抜群のカットです。

かなり大きなロッククリスタルを贅沢にくり抜いて造形しています。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

裏側まで完璧に正面と同じように造形されており、フラットな箇所は全くなく、円柱をつなぎ合わせたような形状にカットされています。硬いロッククリスタルは、カットするのが難しい宝石です。

水晶髑髏『パリ・スカル』

オーパーツとして一時期、水晶髑髏が有名になりました。

マヤ文明やアステカ文明、インカ帝国といった中南米の考古遺物とされ、当時の技術水準から考えると不可能と思える、非常に精巧な作りによってオーパーツとされていました。

最近の研究によって、大半は近代に作られた偽物と判定されています。

本物の考古学品を扱うのと並行して、偽物を作って本物に混ぜて販売したりしていた19世紀後期のパリのアンティーク・ディーラー、ウジェーヌ・ボバンが高度な技術を持つことで有名なドイツの職人に作らせたようです。

水晶髑髏『パリ・スカル』(ドイツ 19世紀後半)高さ11cm
水晶ドクロの仕掛け人である古物商ウジェーヌ・ボバン

ボバンは1860年から1890年頃にかけてはこの分野の主たるアンティーク・ディーラーとして活躍しており、ボバンが扱った水晶髑髏は大英博物館(ブリティッシュ・スカル)、そしてフランスのケ・ブランリ美術館(パリ・スカル)が所有しています。

ボバンはアステカの遺跡で出土したと主張したものですが、どちらも2008年に偽物と判明しています。

美術館を過度に信頼してはいけません(笑)

それが大英博物館クラスであっても・・。

美術館のお墨付きや、権威や有名人のお墨付きなんて、想像以上に適当な場合も少なくないのです。

それはさておき、硬い宝石であるロッククリスタルの加工は、このように実はかなり難しいです。

古物商ウジェーヌ・ボバン(1834-1908年)

1930年代には水晶振動子を作れるほどの加工技術が確立されていますが、なるべく早く安く正確に量産する工業製品と、芸術性の高いただ1つの作品を作るのとでは方向性も難易度も全く異なります。

ただ長方形の透明なフレームを作るというだけならば、左のようにフラットで単純な形状の方が間違いなく楽です。

フラットな透明アクリル・フレーム

面取りでも施せば、まあまあオシャレっぽく見せることだって一応できたはずです。

フラットな透明アクリル・フレーム
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

しかし、わざわざ高度な技術と多大な手間をかけて丸く整えてあるのです。

さらに4つの角を見ると、実際に円柱を正確な45度カットしてつなぎ合わせたかのような視覚効果を演出するための溝まで彫ってあります。

【参考】ビニール・チューブ アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ【参考】ガラス棒

柔らかなビニールのチューブのように、ガラス棒をグニャグニャと曲げて長方形にしただけのような単純な形状ではないのです。

木を直角にカットして組み合わせたフレーム(wikipediaより) 長い木の板をカットして長方形のフレームを作る場合、どうやってカットするのか、どう組み合わせるかはやり方がいくつかあります。
【参考】木を直角にカットして組み合わせたフレーム 【参考】木を45度にカットして組み合わせたフレーム

今回のロッククリスタルは、右の木のフレームのように1本の長い材料を45度にカットし、組み合わせて作ったかのようなデザインになっているのです。何も考えずに取り掛かると、単純に垂直にカットし、単純につなぎ合わせて作ろうとしてしまいそうです。しかしながら見た目に美しく、強度があるのは45度にカットしてつなぐ方法です。より正確な技術や、頭を必要とする45度にカットするやり方。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

それを1つの大きなロッククリスタルをカットして表現するなんて、至極、建築的なデザインだと感じませんか?

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

ロッククリスタルとして異例の大きさがあること、つなぎ合わせたかのような視覚効果があったこともあり、本当にどうにかしてつなぎ合わせてあるのではと思った程です。思わず境目をじっくり見てしまいましたが、やっぱり1つのロッククリスタルから造形しています。
大変驚くべきことですが、作られてからおそよ90年経過したジュエリーにも関わらず、まるで今作られたばかりかのような美しさを保てているのも、ロッククリスタルのみで作られているからこそです。

【参考】傷ついて曇ったガラス モース硬度(wikipedia参照)

透明で同じように見えても、ガラスとロッククリスタルは全く異なります。ガラスはモース硬度が低く、ロッククリスタルよりも簡単に傷つきます。ジュエリーは室内に置いておくだけの飾りではありません。人が身に着けて使うものですから、時には傷つくような衝撃が加わることもあります。モース硬度が5しかないガラスは傷つきやすく、宝石ではありません。経年劣化もしますから、100年以上持つことを前提で作られる古のアンティークジュエリーのように財産性も持つことは不可能です。

また、溶融石英(溶錬水晶)も結晶構造を持たないガラス質なので、修正モース硬度できちんと見ると、ロッククリスタルより柔らかいのです。

【参考】UV照射による耐久試験で黄変した樹脂サンプル

樹脂はもっと最悪です。

柔らかく簡単に傷つくだけでなく、すぐに劣化します。

黄変したり、白濁したり、練りこまれた添加剤がブリードアウトして粉をふいたりします。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ【参考】タンポポの綿毛を樹脂で固めたペーパーウェイト(現代)

パッと見、オシャレなこういうアイテムは街でご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。

本物のタンポポの綿毛を樹脂で固めて作られたもので、綿毛が飛び立つ前の一瞬の美を永遠に閉じ込めたかのようなインパクトがありますよね。

【参考】黄変した樹脂のペーパーウェイト
でも、やがてこうなります。ダイヤモンドにタンポポの綿毛が閉じ込められた様子を表現したそうですが、こうなるともはや汚らしいゴミです。販売されている商品ですが、「黄変するのはこのタイプの樹脂では当たり前のことなので、変色によるクレームや返品は一切受け付けません。」だそうです(笑)
【参考】黄変した樹脂のペーパーウェイト

私もサラリーマン時代は大企業で大量生産・大量消費のための製品の研究開発に携わっており、樹脂に関しての様々な耐久試験についてある程度、経験と知識があります。

もちろん製品によって違いはありますが、現代の量産品なんて5年持てば良いのです。

長くても20年持てば十分で、それ以上の期間を保証するような量産品なんて例外的なものでしょう。

消耗品ではなく、美を永遠に閉じ込めたかのようなアート製品であってもこの有様です。

「汚くなったら捨てて、また新しいものを買って!」
という、カネしか考えていない気持ちの悪い製品にこの世は溢れています。

可愛いパンジーのエセックス・クリスタルのペンダント ケース

永遠の美となれるのは価値ある材料を使い、高度な技術を持つ職人が心を込めて丁寧に作り出したものだけです。

『ガーデン・パンジー』
エドワーディアン エセックス・クリスタル ペンダント
イギリス 1900年〜1910年頃
SOLD
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

永遠に美しいアール・クレール(透明な芸術)。それはロッククリスタルを使った作品ならではの美しさです。これまでのおよそ90年間、人々を楽しませてくれたこの宝物は、これからもずっとずっと見る者を楽しませ続けてくれることでしょう・・。

3-2. 驚異的な立体交差デザイン

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

ロッククリスタルの造形もさることながら、幾重にも重なるダイヤモンドの帯の造形デザインも傑出しています。

デザインだけでも凄いですが、具現化してしまった職人の神技的な技術の素晴らしさにも驚かされます!

首都高速の箱崎ジャンクション
首都高速の箱崎ジャンクション(wikipediaより)

東京の首都高速道路はビルの谷間を何層にも重なって、縫うように走っています。海外の専門家は、私たちには絶対に作ることは不可能だと言っているそうです。設計だけでも困難ですが、具現化する技術力は驚異的ということです。

【参考】中国貴州省の貴陽市にある高速道路のインターチェンジ(完成2017年)

中国でもこういう凄い構造の高速道路が2017年に完成したようですが・・。

行き先は8方向存在し、最大37mほどあるため、方向と高さ全ての辻褄を合わせるためにグニャングニャンです(笑)

【参考】中国貴州省の貴陽市にある高速道路のインターチェンジ(完成2017年)

過密の激しい東京のようにビルの谷間を縫ったり地下を利用したりする必要があるわけでもない、土地の広そうな田舎なのにこんなことする必要はあったのでしょうかね。

地震のリスクが高い東京は耐震設計も必要となるので、高速道路の設計も相当難しいそうです。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ
このブローチも、ロッククリスタルにダイヤモンドをセットした帯が幾重にも重なり、巻き付くように立体に造形されています。ロッククリスタルという宝石を縫うようにデザインされた設計力も見事ですし、一体どうやって作ったんだろうと不思議に思えてなりません。
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ
ただ立体交差しているだけでなく、ダイナミックに捻りまで表現されています。右のほうでは、捻られながら帯がロッククリスタルにシュルシュルッと巻き付いたようなデザインになっています。硬いプラチナとダイヤモンドで造形されたとは俄かには信じがたい、圧倒的な躍動感です!!!
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

クロスポイントは極限までギリギリに作られています!

何という完璧な仕事でしょう!!

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

どの角度から見ても、本物の柔らかな帯が捻られているような造形です。

驚異の技術とセンスです!

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ
また、帯のクロスポイントや捻り部分のみならず、この部分もかなり気を遣った立体デザインが施されています。肉眼だと立体感が認識できますが、この正面からの二次元画像では分からないと思います。実は二重円の内周は、外周に比べて一段高い作りになっています。
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

裏側からこの角度で見るとお分かりいただけると思います。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ 二重の円は、2つ並んだ細長いタワーのようなパーツの間から螺旋を描くように隙間を縫うように帯が出てきたようなデザインになっています。
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

ダイヤモンドの煌めきが凄すぎて目が眩み、そのようなデザインになっているのが分かりにくいほどです。

それにしても、摩天楼や電波塔などの細長いタワーを思わせるこのパーツの前衛的な造形も見事です。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

タワーの一番細長い先端は、グレインワークとはまた一味異なる独特の彫金が施されています。普通の後期アールデコだと高級品として作られたものでも、こういう部分は何も施さないイメージが強いです。一切の手抜きが感じられない、センス抜群の作者のこの細工のお陰で先端までプラチナがよく輝いています。タワーの先端に近くなるほどサイズがグラデーションになった、煌めきの美しいダイヤモンドからの流れが途切れず、尻切れトンボ的な違和感を感じることなくただただ美しいと感じます。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

タワー型のパーツには、わざわざ鋭角三角形の透かしを施しているのも素晴らしいです。

この透かしのお陰で後期アールデコのダイヤモンドジュエリーにありがちなボッテリ感がなく、軽やかさを感じさせてくれる結果になっています。

さらに2つのタワーの一番下の部分は、直線ではなく若干内側に弧を描くような曲線に仕上げてあります。


アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

このパーツは全体の形状が円錐を縦に割ったような形状で作られており、平面ではなく立体的に見てもタワーのような造形で作られています。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

かなり複雑な造形ですよね。古い時代からハイレベルのジュエリーになるほど、非常に気を遣って優れた立体デザインが施されているものでした。パッと見ただけでは分かりにくくても、印象に大きな影響を与えるからこそです。高度な技術と手間、さらにかなりお金もかかってくるため、その価値を理解していないとできなことです。

立体デザインは優れたジュエリーの証ですが、これまでに見たこともない素晴らしい立体デザインは後期アールデコのトップクラスというだけにとどまらず、長い歴史を持つアンティークジュエリーの集大成であり最高峰と言っても過言ではありません!

3-3. ロッククリスタルのための特殊なセッティング

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ
この見事な造形の帯に対して、一体どうやってロッククリスタルをセットしているのか不思議に思われたのではないでしょうか。
ドロップ型カルセドニーのピアス アンティーク

柔軟性のない硬い宝石を割れないように、しかも価値ある貴重な宝石が100年以上の使用でも落ちてしまわぬようにセットするには、非常に高度な技術が必要です。

しかも美意識の高い王侯貴族を満足させるためには、ただ頑丈に留めることができていれば十分というわけではなく、見た目は美しくなければなりません。

このピアスの場合、上のカルセドニーは覆輪で押さえて固定していますが、下のドロップ型の石はどうやって留まっているのか不思議に見えます。

現代のような樹脂の接着剤だとすぐに劣化してしまい、とても100年は持ちません。

ドロップ型のカルセドニーを固定した傘のサイドにある、丸い点にご注目ください。

『朝霧』
カルセドニー ドロップ型ピアス
イギリス 19世紀後期
SOLD

ちょっと分かりにくいのですが、カルセドニーに穴を貫通させ、金属の棒を通し、傘の丸い点に見える箇所で鑞付けして傘の両側で固定して留めています。

通した金属の棒よりも、若干カルセドニーに開けた穴の直径は大きくなっています。

ドロップ型カルセドニーのピアス アンティーク ドロップ型カルセドニーのピアス アンティーク

このため、ゴールドでできた傘とカルセドニーの間に若干遊びがあります。

異素材であるゴールドとカルセドニーは、温度変化による膨張率にも違いがあります。

隙間なくギチギチに作ってしまうと、温度変化など何らかのきっかけで割れてしまう可能性があります。

だからわざわざこのように遊びを作った留め方をしています。

石に穴を開けたり、鑞付けしたり、かなりの高度な技術です。

でも、このように丁寧に石に穴を開けて美しく、耐久力も兼ね備えたセットをするのがアンティークの通常のハイクラスのジュエリーです。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

しかし驚いたことに、このロッククリスタルは穴を開けずにセットされています。

44年間で初めて見る、ボルトとナットで締めて留めるという、ジュエリーとは思えない前代未聞の方法です。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

裏側から見ると、左と上部分、4箇所にボルトとナットで締めて固定されていることが分かります。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

この角度から見ると、ワッシャーまで使っているように見えます。

ボルトを使わない小ネジが精密機器に使用される代表格とするならば、ボルトとナットによる固定は建設や大型機器に使用されるネジの代表格と言えます。

このようなジュエリーとしては超異例の留め方からも、この作品の設計デザインに建築家が関わっていた可能性が十分に考えられるのです。

【参考】ボルト&ナット&ワッシャー
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

ナットの部品代が余計にかかる、ボルトとナットを使った固定方は機能性重視で使用されるのが通常で、必ず何らかの意図があります。

この作品ではロッククリスタルをプラチナのフレームに固定していますが、異素材のためそれぞれ熱膨張率が異なります。

ロッククリスタルの形状に沿って完璧に固定してしまうと、何らかの拍子に貴重な上に苦労してカットしたこの宝石が破損してしまう可能性があります。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

だから鑞付けでガチガチに固定してしまうのではなく、ボルトとナットで締めるという手法を選択したのです。

そのために、フラットではなく円柱状にカットされたロッククリスタルに合わせて、プラチナでピッタリ合うフレームを作ったことは驚異的です。

ロッククリスタルに穴を開けて刺して固定するのではなく、数カ所で少しずつ遊びを持たせつつも90年経ってもビクともしないよう固定させるには、全てにおいて精密に完璧な仕事をする必要があります。

一番手前の帯が二重に巻いたように見える箇所は、裏側でロッククリスタルをプラチナの板が優しく包むように支えています。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ
プラチナの板をロッククリスタルの形状に合わせて緩やかにカーブさせ、絶妙な匙加減で固定しています。帯も含めて全てのプラチナの造形が絶妙です。硬いプラチナで、よくここまで美しいカーブを造形したものだと感じます。
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ
逆サイドはロッククリスタルの曲面に沿って、裏側から2箇所に橋を渡して支えています。正面から見ると一体どうやって留めているのか不思議に感じるほど、それぞれの固定した箇所に存在感がないのですが、複数のポイントで確実に固定しているからこそ作られてからおよそ90年は経過しているにも関わらず、取れてしまうどころかグラつき1つないのです。
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

あっと驚く不思議な構造デザイン。しかも"奇をてらっただけのただの変わったデザイン"止まりではなく、非常にスタイリッシュ。そしてしっかりと耐久性も兼ね備えた作り。実にアーキテクチャ的です。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

この極めて複雑で完璧な形状を完成させるには、相当な試行錯誤があったはずです。

モノづくりをされたことがある方ならばご説明するまでもないと思いますが、これだけ複雑な造形を作り上げるには何度も試作を重ね、改良を重ねて作り上げていく必要があります。

天才でも、一回でミスもなく完璧に作り上げるのは無理です。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

ロッククリスタルとダイヤモンド、プラチナという扱いにくい素材で、試行錯誤の末に全てを完璧に完成させることができたのは、天才だからこそなし得た奇跡です。普通の職人ならば何度やってもうまくいかず、完璧な状態で完成させるなんて不可能です。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ
この作品は前代未聞の、作ることは絶対に不可能だったはずのジュエリーです。それが現実に存在しているということは、奇跡的に特別な条件が揃い、職人がコンテストなどのために意地とプライドをかけ魂を込めてただ1回、生み出すことができたということです。人類史上の宝物だと思っています。

3-4. ファイアと煌めきの魅力抜群のダイヤモンド

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

この作品に使われているダイヤモンドは、通常のハイジュエリーよりさらに質が良いらしく、驚くほど煌めきファイアも出てきます。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ
ダイヤモンドはある程度の大きさがあり、数も多く様々な角度でセットされているため、ファイアの色も様々です。この美しさには思わず魅了されてしまいます。
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ
この作品に使われているダイヤモンドのカットはオールドヨーロピアンカットです。しかしながら古い時代のオールドヨーロピアンカットに比べると現代のラウンド・ブリリアンカットに近い、過渡期の"トランジションカット"と言えます。
【参考】現代のハイブランドのダイヤモンド・ジュエリー

現代のブリリアンカット・ダイヤモンドは、煌めきが底面の無数の小さなファセットに分散するため、チラチラと弱い輝きしか放つことができません。

単品で見ても煌めきにパワーがない上に、規格通りに大量生産されているので個性もありません。

そんなダイヤモンドを寄せ集めて作った現代ジュエリーはどんなにダイヤモンドの数が多くても、どんなに高級ブランドのものでも魅力ある輝きを放つことはできません。

【参考】現代のハイブランドのダイヤモンド・ジュエリー
【参考】4C基準に基づくカットのランクによる、見た目の違い

"4Cのカット"は、ジュエリーになった状態では誰も肉眼では違いが認識できない、意味のない違いを区別するものです。

専門家が特殊な条件を整えた環境下で鑑別することでようやく区別できるもので、人によっても微妙な違いの場合は誤差が出るほどです。

もはや人間が見て美しいかどうかを判別するためのものではなく、「精密工業製品の検査かいっ!」と思わずツッコミたくなる4C基準が米国宝石学会(GIA)によって作られたのは1940年のことです。

1940年、GIAはダイヤモンドに対する女性たちの関心を高める目的で、広告デザインを作成するためにデビアスとの提携を始めました。

以後、宝飾業界による積極プロモーションの成果により、現代では4Cは広く知られる基準となり、この4C基準に合わせてジュエリーが製作されています。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

しかしながら1940年以前、つまり1930年代まではダイヤモンドの品質を定義する統一された用語や項目は存在しませんでした。

ジュエリーに必要なのは、美しいと感じられるかどうかです。

だから美意識があり、絶対感覚を持ち自身の感覚で判断できる人にとっては他者の基準なんてどうでも良く、はっきり言って無意味です。

約2カラットのオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド ブローチ アンティーク・ジュエリー

長い間、ハイクラスのジュエリーはヨーロッパの王侯貴族のためのものでした。

ジュエリーについての知識があり、センスと美意識を持つヨーロッパの王侯貴族にとっては4Cのような他者の基準は不要でした。

自分が美しいと思えばOKですし、それを身に着けて出かける社交の場にいる人々も同じように教養と美意識を持ち、自身の感覚で美しさを判断できるので権威やブランドのお墨付きなんて不要なのです。

『財宝の守り神』
約2ctのダイヤモンド・ブローチ
フランス 1870年頃
¥5,900,000-(税込10%)
現代のラウンド・ブリリアンカット・ダイヤモンド
しかしながら第一次世界大戦を契機に、世界を主導するのが旧来のヨーロッパの王侯貴族からアメリカを中心とする新興勢力に移っていくと、ハイジュエリーの購買層も新興成金や女優たちなどの庶民に移っていきました。教養や美的センスを持たない新しい購買層は自分の絶対的な感覚でジュエリーを選ぶことができず、何を基準にして選んで良いか分からず困ってしまいました。そこで4Cという基準が作られ、広く受け入れられたのです。
トルコフスキー考案のアイデアルカット

内容の良し悪し関係なく、とにかく思考停止で基準を守ることが是とされる日本に於いては、4Cの有効性は精査されることなく遵守されることが殆どです。現代でも"意味不明な校則"が時々話題になったりしますが、学生時代から意味のないルールを守らされる教育がまかり通り、根深く洗脳されるので無理からぬことです。

欧米は自ら基準を作り、自分たちにとって都合の良い方へ誘導したり、他者の作った基準ではなく自身の価値観で判断してきた記憶がしっかりあるので、自分にとってよく分からないルールを遵守する意識は低いです。日本人の、ルール遵守は一生懸命、しかし自らルールや基準を作る意識の低さが、様々な分野の国際競争で弱さを見せる一因でもあります。

アメリカで作られた基準である4Cはアメリカと日本では持て囃されますが、アメリカはヨーロッパにとって歴史的に見ると文化面では下にあり、真似する対象ではないのでヨーロッパでは4Cは日本ほど持て囃されてはいません。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

いずれにせよ、4Cによってジュエリーはさらにつまらないものになっていきますが、この宝物が作られた1930年代はまだ4C基準がありませんでした。。

ダイヤモンドはカットする職人の価値観ごとにある程度自由にカットされていましたし、作者も自身の美意識に頼り、自身が心から美しいと思えるダイヤモンドを選んで使っていました。

ヘリテイジでは戦後に作られたヴィンテージ以降のジュエリーは扱いませんし、まだお取り扱いはしていませんが、1940年代のジュエリーは扱うとしても例外的なものとなるでしょう。

扱うとすればせいぜい1930年代くらいまでですが、この年代まではカットの近代化によって精密さが増したとは言っても、ダイヤモンド1つ1つに個性があるのです。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

あまりにも煌めくのでダイヤモンドそのものの形状がちょっと分かりにくいのですが、例えば右下の右から2つ目に見えるダイヤモンドはオールドヨーロピアンカットらしい、ダイヤモンドの一番下のキューレットがカットされている特徴がお分かりいただけると思います。現代のブリリアンカットはキューレットはカットしません。

マーセル・トルコフスキーマーセル・トルコフスキー(1899-1991年) 【参考】アイデアル・カット
研磨工場を営むトルコフスキー家の4代目として生まれ、ロンドン大学の博士論文の一環でダイヤモンドのカットについて研究していた数学者マーセル・トルコフスキーが1919年に考案したのがアイデアル・カットです。
トランジションカット・ダイヤモンドのアールデコ・リングアールデコ ダイヤモンド リング
イギリス 1930年代
SOLD

ダイヤモンドの内部に侵入した光を底面で全て反射するよう計算されたカットです。

表面反射については考慮していないので、本当に煌めきが一番美しいカットかについては議論の余地が多々ありますが、数学的な面白さはあります。

最先端の知的で面白いカットとして、1930年代頃からハイジュエリーでも使われるようになってきました。

オールドヨーロピアンカットからブリリアンカットに移行していく、この過渡期のカットはトランジションカットと呼ばれています。

トランジションカット・ダイヤモンドのアールデコ・リング1930年代のトランジションカット・ダイヤモンド 厚みのあるオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド1920年代の特に贅沢なカットのオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド
トランジションカットはキューレットがカットされておらず、クラウン(ダイヤモンドの上部)に厚みがなくテーブルが広い等の、ブリリアンカットにつながっていく特徴が出ています。
1930年代のトランジションカット・ダイヤモンド1930年代のトランジションカット・ダイヤモンド

ダイヤモンドの内部に侵入した光を、底面で全て反射するように設計されているため、クラウンのファセットで反射してしまうのではなく、なるべく内部に取り込みたいという思想です。

だからテーブルの面積は広く設計されており、底面のファセットからの無数の煌めきが楽しめるようになっています。

現代ではブリリアンカットの輝きに慣れているので目新しさはあまり感じられないかもしれません。

しかしながら当時は最先端のカットであり、教養がある人の琴線に響く、数学的に面白さのある知的なカットでした。

1935年のノルマンディー号がモチーフのアールデコ・ペンダント『ノルマンディー号』
アールデコ ペンダント
フランス 1935年
SOLD
1935年のノルマンディー号がモチーフのアールデコ・ペンダント 

だからヨーロッパの教養ある上流階級が使っていたような、ヘリテイジ好みの宝物の場合、1930年代のジュエリーのダイヤモンドはトランジションカットが使われている場合が多いです。

【参考】ブリリアンカット・ダイヤモンドの煌めき

ブリリアンカットの輝きは大別すると2種類です。

1. 下部の無数のファセットからの反射

2. テーブル面の全反射

1は分散したチラチラとした1つ1つは弱い輝き、2はダイヤモンド全体が白っぽい印象になる輝きです。

【参考】パヴェ・リング(現代)

だからこのようなカットのダイヤモンドは、様々な角度でたくさん寄せ集めて見ても、どの瞬間もいまいちダイヤモンドならではのダイナミックな煌めきの魅力は感じられません。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

その点で、1930年代のトップクラスの作品であるにも関わらず、これだけダイナミックにダイヤモンドが煌めくことに驚き感動しました。この年代の、ヨーロッパの上流階級のための通常のハイジュエリーとは異なる特徴と言えます。その点でも、普通のジュエリー専門の職人が作ったブローチではないと感じます。明らかにジュエリー畑以外からの、何か斬新で心地よい風を感じるのです。

オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドの虹色のファイアとダイナミックなシンチレーション 1930年代の高級品らしからぬ、厚みがあってテーブルの面積が狭い贅沢なカットのオールドヨーロピアンカットが選択されているからこそ、ダイナミックなシンチレーションの虹色のファイアを放つことができます。
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ
トランジションカットが最先端だから、知的で面白いからなどの、ジュエリー業界の人らしい選択ではなく、純粋に美しいと感じるダイヤモンドを選択できたのは、きっとジュエリーが専門ではない人物がデザインしたからなのでしょう。当時はただ感覚的に良いと思ってそうしただけなのかもしれませんが、結果的にはこの時代としては異例の作品となりました。90年の時を経て、それがより明確になったのです。今この魅力に気づいても、どれだけ頑張っても同じようなジュエリーを作ることはできませんから・・。
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ 透明なロックリスタルのフレームに絡まる、色とりどりのファイアとシンチレーションが放たれるダイヤモンドの帯、そしてその帯のダイナミックな捻りによる美しさはまさに前衛芸術です!!
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

圧巻なのが、普通だったらハイジュエリーであってもそんな所にまではダイヤモンドをしないのではと思えるような部分にまで、徹底的にダイヤモンドがセットされていることです。加工が難しそうな奥の部分、捻りの角度がキツすぎて正面からは見えない部分にまでセットされています。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

HPの画像で特定の角度からご覧いただくのと違い、買付ではコンディションチェックもあるので手元で様々な角度から確認するのですが、かなり深い角度から見てもダイヤモンドの輝きを感じることができるのです。

正面からは見えない角度から帯を覗き込み、「うわ、こんな所までダイヤモンドがセットされてる!!」とビックリしました。

かなりの高級品でも、普通はそこまではやらないというレベルです。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

ロッククリスタルの右の柱に巻き付いた2本の帯にもご注目ください。普通はこの角度から見たらダイヤモンドがセットされていない部分が見えるはずなのですが、この作品では正面側の180度以上、裏側にあたる部分までダイヤモンドがセットされているので、この斜めからの角度で見てもダイヤモンドの帯が本当に巻き付いているように見えるのです。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

ここまで徹底して隙がない作品が1930年代にも作られていたなんて、本当に信じがたいです。

ただ1つ、魂を込め、才能の全てを込めて徹底して素晴らしい作品を作り上げようとした心意気が感じられます。

そのためにはダイヤモンドの材料費なんてケチる余地はありませんし、手間だって惜しむわけがありません。

360度隙がない、細部に到るまでの徹底した美意識の高さは、古の王侯貴族とはまた異なる、アーティスティックな職人が強い意思を持って"作りたいものを作った"からこその、強いパワーを感じるのです。

同じハイジュエリーであっても、オーダー品とコンテスト・ジュエリーとでは、作品が持つパワーとして違いが現れてくるものです。

3-5. ダイヤモンドの特殊なセッティング

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ
この作品はダイヤモンドの留め方にも、同時代の他のジュエリーには見られない特徴があります。プラチナによるセッティングなのですが、19世紀以前のシルバーの時代のような留め方と装飾があるのです。
覆輪を使った留め方

プラチナを使った一般的なダイヤモンドの留め方としては、覆輪を使う方法があります。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ覆輪を使った留め方 爪を使った留め方
もしくは各種の爪を使った留め方が一般的です。
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ
しかしながらこの作品ではシルバーのように、プラチナのフレームの縁を倒して留めてあります。これは少し斜めから見たときや、正面からでも角度のついた部分から見える、プラチナの輝きを計算してのものです。
ジョージアンのダッチローズカット・ダイヤモンド・ブローチ

縁を倒してセッティングし、放射状の装飾を施すやり方はアンティークジュエリーでも比較的古い時代のダイヤモンドのハイジュエリーの印象があります。

ダッチローズカット・ダイヤモンド ブローチ
イギリス 1820年頃
SOLD
18世紀のステップカット・ダイヤモンドのクロス・ペンダント アンティークジュエリー

18世紀初期のジュエリーにも見られるようなクラシックな印象のセティングがプラチナの時代、しかもアンティークジュエリーにとっての最後の時代とも言える後期アールデコの作品で見られるなんて、本当に驚きです。

『古のモダン・クロス』
ステップカット・ダイヤモンド クロス
フランス 18世紀初期(1700年〜1750年頃)
¥495,000-(税込10%)
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

初めて見た時はあまりにも例外的な作りだったので、少し混乱しました。

「まさかシルバー?19世紀??いや、絶対にプラチナのアールデコのはず。でもダイヤモンドのカットは古いタイプだし・・。」と、例外的な要素が多すぎです(笑)

プラチナだからこそ、温もりのあるシルバーとは異なる硬質な白い輝きがあり、スタイリッシュな印象をさらに強調しています。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

ダイヤモンドのみならず、プラチナの細工も徹底して磨き上げられているのでかなり輝きます。

このため画像ではちょっと分かりにくいのですが、ダイヤモンドはフレームの縁で押さえるだけでなく、隣接するダイヤモンドを2つずつの爪でも固定しています。

これならば絶対に落ちるわけがないというくらい、頑丈に固定されています。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

だから角度のついた帯の部分も、およそ90年経過した今でもダイヤモンドが1つも脱落することなくしっかりと固定されたままなのです。

ただ美しいだけではなく、耐久性も驚くほど考えられて徹底した仕事がなされており、建築物との共通点を見いだすことができます。

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ
裏側の窓の開けかたも、エドワーディアンの最高水準のものと同じクラスの出来栄えです。アールデコも1930年代の後期となると、高級品であってもデザインだけに頼ったつまらない作りのものが多くなります。そういうものは窓の開け方もかなり雑だったり、技術レベルの低い作りだったりするので、1930年代でもこれだけの仕事ができる職人がいたことに嬉しくなります♪
アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

今見ても未来的と感じる、前衛的でスーパーモダンなデザイン。

ロッククリスタルという、透明感が魅力の唯一無二の大型で美しいカットの、当時の最先端のテクノロジーの象徴だった宝石。

ダイナミックなシンチレーションと虹色のファイアを放つ、アンティークジュエリーらしいダイヤモンド。

そしてジョージアン初期をも彷彿とさせる、クラシックな雰囲気のダイヤモンドのセッティング。

それでいて、20世紀に入ってからしかジュエリーの一般市場では使われていない、画期的な新素材プラチナの硬質で強い輝きの魅力。

4. アンティークジュエリーの最終形

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

時代が下るに連れ、美しいジュエリーの文化を形成してきたヨーロッパの王侯貴族は力を落としていきました。20世紀に入るとそれはさらに加速され、第二次世界大戦後はついに素晴らしいジュエリーの文化は終わってしまいました。しかしながら、それまでには時代ごとの最先端のテクノロジーを取り入れ、様々なジャンルの文化や流行の最先端を取り入れ、進化を重ねながらの長い長い歴史がありました。

この宝物はそんなアンティークジュエリーの歴史の集大成だと感じます。それまでのアンティークジュエリーの歴史の全てがあったからこそ生み出された、ジュエリーの至高にして最終形。それは普遍の美としていつまでも色褪せることはなく、いつまでも時代の最先端をいくジュエリーとして存在し続けることでしょう・・・。

裏側の作り

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

裏側もロッククリスタルのカットに到るまで完璧な作りです。

ブローチの金具にはセーフティが付いています。

ケース

アールデコ クリスタル&ダイヤモンド ブローチ

内貼りのミントグリーンが涼やかなケース付きです。

完璧にピッタリと納まるフィッティングですが、ケース全体の作行から、オリジナル・ケースと判定するには至りませんでした。

 

摩天楼とアールデコのロッククリスタルのブローチ

モダンアートのような、アーキテクチャ的な作品。

摩天楼フィーバーに湧く、この作品が生み出された時代、バウハウスによってモダンデザインやインターナショナル・デザインが生み出され、現代と変わらない前衛的なデザインが既に存在しました。しかしながらガラス・カーテンウォールによるインターナショナル・デザインの摩天楼が生み出されたのは、この宝物よりももっと後の時代です。

コンテストジュエリーのように芸術的に傑出したアンティークジュエリーは、常に時代の先を行きます。それらが時代を主導し、新しい時代を作り出すと言っても過言ではありません。使っていた人やその周りの人々も、世界を主導できる力を持つクラスの人々だったからです。

未来の摩天楼を見越したような、突如創り出され、唯一無二のアートとして存在する孤高の作品。使いこなせるのは知性と教養、そして財力を備えた女性だけです。歴代、どんな方を彩ってきたのでしょうね・・。

 

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