No.00299 心の焔(ほむら) |
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『心の焔(ほむら)』 100年以上の時を経てもびくともしない耐久性のある素晴らしい作りで、完璧な仕上げと最高のコンディションがラッキーな魅力あふれるリングです。 |
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この宝物のポイント
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1. ルビーのオーソドックスで上質なリング
この宝物はヘリテイジでは初めてご紹介する、オーソドックスなデザインのルビー&ダイヤモンドリングです。 |
1-1. 特徴的なデザインのルビーリング
1-2. 定番スタイルのルビーリング
アーリー・ヴィクトリアン | レイト・ヴィクトリアン | ベルエポック |
イギリス(チェスター) 1838年 SOLD |
イギリス 1870年頃 SOLD |
フランス 1910年頃 SOLD |
ルビーリングで一番多いのは定番スタイルで、以下の魅力があります。 1. 他のジュエリーと合わせやすい。 |
1-2-1. ハイクラスの定番スタイルのルビーリング
英国王室の女性たち | |
結婚式の正装 | 日常着 |
結婚式に出席するために正装したアレクサンドラ皇太子妃と3人の娘たち(1893年) | 日常のアレクサンドラ皇太子妃と3人の娘たち |
ヘリテイジがお取り扱いするクラスのジュエリーを持っていた、上流階級の人たちが定番スタイルのジュエリーを持つ目的は1の、他のジュエリーと合わせやすいからになります。 |
アールデコ ルビーリング フランス 1930年頃 SOLD |
このような目的のために作られた定番デザインのハイジュエリーは、当然ながら宝石は上質なものが使われていますし、作りもハイジュエリーならではの優れたものです。 使いやすいデザインといえどもヘビーローテーションされることはなく、ジュエリーの正しい使い方を分かっている人が使うため、作られてから長い年月が経過しているにも関わらずコンディションが良いことも結構あります。 |
1-2-2. 安物の定番スタイルのルビーリング
【参考】安物のルビーリング | 定番スタイルのハイジュエリーは滅多に市場には出てきません。 定番スタイルのルビーリング自体は、毎年市場で2、30個は見ています。 でも、その殆どがヘリテイジ基準には満たないミドルクラス以下の安物なのです。 |
【参考】安物のルビーリング | 安物は宝石も質が良くない物が使われていますし、作りも稚拙だったり雑です。 コーディネートしやすい定番スタイルのジュエリーは人気があるため、いくつでもご紹介したいという気持ちはあるのですが、定番のジュエリーこそ上質なものを身に着けるべきという思いがあるので絶対に買い付けることはありません。 |
【参考】安物のルビーリング | デザイン自体は同じであるが故に、感覚が鋭くない方にはハイジュエリーも安物も同じに見えてしまうようです。 でも、分かる人には違いは歴然なのです。 買い付けはスピード勝負なので、肉眼と感覚で瞬間的に判断するのですが、安物は気持ち良くないのですぐに除外します。 |
【参考】安物のルビーリング | そうすると、2、30個見ても1つも買う物がないということも多いのです・・。 こういうものも、一見凝って作ってあるように見えますが安物です。 安物なので小さな石しか使えず、それでも大きく見せるために少しデザインを施しただけの、みみっちく安っぽい成金リングです。 所詮安物なので、少し手間をかけたとは言っても、現代の職人でもできてしまうほど簡単なものです。 |
【参考】安物のルビーリング | 庶民のために数多く作られている安物は、定番デザインが大半です。 それは何故かと言えば、安物しか買えない庶民は上流階級のようにいくつもジュエリーを持てないからです。 上流階級は代々、価値あるジュエリーを受け継いで使うことができるので、数を揃えやすいアドバンテージもありますね。 |
【参考】安物のルビーリング | 王侯貴族のためのハイジュエリーに特化したヘリテイジにとっては安物でも、庶民にとってはそれこそ一生で一度の買い物をするような高価なものです。 いくつもは買えない、それどころか1つしか持てないようなものだからこそ、合わせやすい定番スタイルを選ぶのです。 |
【参考】安物のルビーリング | そして、1つしか持っていないからこそ安物はヘビーローテーションされる運命にあるのです。 持ち主はジュエリーの正しい使い方を分かっていないことも少なくなく、安物ほどバッドコンディションで出てきます。 |
酷い修理が施された安物アンティークジュエリー | 酷い作りな上に、酷い修理がされていたりして見るも無残な姿になっているものもたまに見かけます。 安物は手抜きして作られていたり、適当な修理が施されていたりして、悪意やだらし無さを感じることがよくあります。 気にならない人は安物を身に着ければ良いですし、私は気になるのでプライドにかけて、皆様にご紹介することはありません。 |
1-3. 入手が難しい定番スタイルの上質なジュエリー
いくつもジュエリーをお持ちの方にとってはコーディネートしやすく、1つだけ良いものを持ちたい方にとってもオススメなので、定番スタイルのハイジュエリーはいくつでも買い付けたいところです。 |
でも、上流階級のために作られた定番スタイルのハイジュエリーは、あまり市場には出てきません。 人数が少ないからこそ『上流階級』です。 上流階級のために作られたジュエリー自体、数が少ないのです。 |
さらに定番デザインの上質なジュエリーは世代が関係なく、誰にでも使いやすいため、市場にはあまり出てこないのです。 ヘリテイジがオープンして2年半弱。 定番スタイルのルビー&ダイヤモンドリングをご紹介できるのがなぜ今になったのかというと、それだけヘリテイジ基準に合う上質なものを買い付けるのが難しいからです。 |
2. 上質なルビーの魅力
2-1. 希少な宝石ルビー
『聖ジョージの竜退治』(1550-1575年頃)大英博物館(ロスチャイルド家寄贈品) 【引用】Brirish Museum / Sr George and the Dragon © British Museum/Adapted |
ダイヤモンドのカット技術が確立される以前、ルビーは至高の宝石として珍重されてきました。 ダイヤモンドのカットが確立した後でも、カラーストーンの最高峰として君臨してきました。 |
4大宝石 | |||
ダイヤモンド | ルビー | サファイア | エメラルド |
イギリス 1860年頃 SOLD |
イギリス 1870年頃 SOLD |
イギリス 1870年頃 SOLD |
イギリス又はヨーロッパ 1870年頃 SOLD |
『宝石』の価値を決めるのは『美しさ』だけではありません。4大宝石というものがありますが、業界によって価格をコントロールされているダイヤモンドを除き、価値を決めているのは稀少性の度合いです。4大宝石の中でも特に上質な石を使った、類似デザインのジュエリーをこうして並べてみても、絶対的な美しさに優劣があるかと言えばそうではなく、好みの差だけという感じですよね。 |
枢機卿の宝石 "Cardinal Gems" ©Mario Sarto, Robert M. Lavinsky, Humanfeather, JJ Harrison, GeeJo(11 April 2010, 21:36)/Adapted/CC BY-SA 3.0 | ヨーロッパは古代ローマ帝国滅亡後、長くキリスト教に支配されてきました。 そのヨーロッパ文化には『枢機卿の宝石』と呼ばれるものが存在します。5種類あり、色でカテゴライズされています。 ダイヤモンド(白) 4大宝石に加えて、アメジストがありますね。 |
5種類の司教の宝石は、その稀少性の高さによって、他の石より価値があるとみなされてきました。 アメジストも昔は稀少性の高い、れっきとした高級宝石だったのです。 |
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『真心』 |
ジョージアン アメジスト ペンダント イギリス 1830年頃 SOLD |
だからアンティークジュエリーにはアメジストを使った、作りとデザインの優れた王侯貴族のためのハイジュエリーが存在するのです。 しかしながら19世紀末にブラジルでアメジストの巨大鉱床が発見されると、アメジストは稀少性を失い、4大宝石と並ぶ地位からは脱落しました。 |
【参考】天然アメジストのビーズ | 【参考】アメジストを加熱した「シトリン」ビーズ |
アメジストを約450度で加熱すると黄変する性質を生かし、現代ではシトリンを作るための材料にされたりするほど地位が低下してしまいました。それだけたくさん採れるようになったということです。 昨日まで美しいと感じたアメジストが、今日からアメジストだけ美しく感じなく感じるようになるわけはありません。結局、宝石の価値を決める最大要因は稀少性ということです。 |
現代の人工宝石 | ||
ダイヤモンド | コランダム(ルビー、サファイア) | エメラルド |
CVD法で合成 "Apollo synthetic diamond" ©Steve Jurvetson(27 May 2006)/Adapted/CC BY-SA 2.0 |
【参考】様々な色に調整されたコランダム | 合成エメラルド(京セラ 現代) 【引用】odolly / エメラルドペンダント(オーバル/メレダイヤ3石/5月誕生石/K18ホワイトゴールド) ©京セラジュエリー通販ショップodolly-オードリー |
現代では4大宝石すべて合成技術が確立しているので、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドも稀少性なんて微塵も無くなっています。欲しいだけいくらでも合成できるモノに価値なんてありませんから、ジュエリーにする場合もろくな作りにはなりません。たとえ職人がハンドメイドしたとしても、魂なんて込められません。 現代は宝石の知識をろくに持たぬままジュエリーを購入しようとする人が、本当に多いです。そんな人でも4大宝石の名前くらいは知っていて、「ダイヤモンドやルビー、サファイア、エメラルドは高級なんでしょ。」程度のイメージはあります。 現代宝飾業界は虚飾の世界で、自分たちが売りたいものを売るために虚飾と宣伝は上手、口だけは達者です。ブランドイメージを作ることは大得意ですが、やっていることは詐欺まがいに見えます。有名な高級ブランドの商品ページを見ても、どこにも「天然」、「無処理」、「非加熱」等の表記がないことが大半です。 もし天然、無処理、非加熱の宝石であれば、それだけで高い価値があります。そういう石を使っているのであれば、絶対に記載しないわけがありません。 |
【参考】サファイア リング(現代) | 「高いからきちんとしたものであるはず。」 「有名な高級ブランドの商品だからきちんとしたものであるはず。」 性善説で判断したいのですが、現代ジュエリー業界については性善説で考える人たちは『良いカモ』でしかないようです。 |
【参考】合成サファイア・シルバー・リング(現代) | 【参考】合成サファイア(現代) | |
現代ジュエリー市場には天然非加熱、処理石、合成石と言った、様々な宝石のジュエリーがゴッチャになって溢れかえっています。 「サファイアは高価な宝石のはずなのに、何故シルバージュエリー?」、「なぜ高そうに見えるのにこんなにお安いの?」と、一般顧客は混乱するでしょう。 |
宝石好きの人は多くて、熱心に勉強される方も少なくありません。でも、世の中にある情報の大半は現代宝飾業界が自分たちの売りたいものを売りやすくするために提供した偏ったものです。それぞれ売りたいものが違うので、全て鵜呑みにすると矛盾が生じまくり、かなり混乱します(笑) しかも処理の方法や合成石なんて勉強して何が楽しいのやら、私にはさっぱり分かりません。個人の好みの部分なので否定はしませんが、私は全く興味のない分野です。 |
枢機卿の宝石 "Cardinal Gems" ©Mario Sarto, Robert M. Lavinsky, Humanfeather, JJ Harrison, GeeJo(11 April 2010, 21:36)/Adapted/CC BY-SA 3.0 | 私が興味のあるアンティークの時代について見ていきましょう。 ルビーがなぜ他のカラーストーンより高い評価を得てきたのかと言えば、もうご想像いただける通り、最も稀少性が高かったからです。 |
コランダム(鋼玉) | エメリーは価値ある宝石になれなかったルビーの残骸のようなものですが、ダイヤモンドに次ぐ硬度9という硬さが工業材料として役立っているというわけですね。 産出されるコランダムの大半は宝石品質ではありません。 宝石として使用できるのは産出量の1%程度と言われています。 |
宝石品質のコランダムには様々なカラーバリエーションがあり、ない色はないと言われるほどです。 ルビー以外はサファイアに分類され、ブルーのサファイア以外はファンシー・サファイアと呼ばれたりします。でも、宝石品質のコランダムの大半はブルーのサファイアです。 コランダムに鉄やチタンが混入するとブルーのサファイアになります。 |
美しいルビーとなるためにはクロムの含有量が1%以内で、薄過ぎてもダメという絶妙なバランスが必要です。 |
この絶妙なバランスが自然界にいて非常に稀な状況下でしか起こらないため、ルビーの産出地は本当に限られています。 さらにその産地においても、宝石品質の美しい石が採れる場所は極めて限定されるのです。 サファイアと比べても遥かに稀少性が高いため、ルビーは長年、カラーストーンの中で最も高い評価を得てきたのです。 |
2-2. 人々を魅了してきた鮮やかな赤系の宝石
2-2-1. 枢機卿の宝石
2-2-2. 赤系の宝石
インクリュージョンのある天然ルビー "Ruby gem" ©Humanfeather(6 June 2009)/Adapted/CC BY 3.0 |
ルビーの色を表す言葉に『ピジョン・ブラッド』や『ビーフ・ブラッド』があります。 私は鳩も牛も鮮血を実物で見たことがないのでよく分かりませんが、血のような赤い色が古い時代から生命のエネルギーを彷彿とさせ、生命の力を秘めた宝石として尊ばれてきたようです。 これは古い時代、ルビーに限らず全ての赤い宝石に言えることでした。 |
2-2-3. 大きな石が採れるガーネット
2-2-4. 黒太子のルビーの正体
大英帝国王冠(1919年頃画) | ルビーと言えば大英帝国王冠の正面にセットされた『黒太子のルビー』が有名ですが、実はこれはルビーではありません。 正体は140カラットの巨大なレッド・スピネルです。 |
エドワード黒太子(1330-1376年) | このレッド・スピネルはイギリスの王冠に使われる中でも最も古い宝石の1つで、14世紀半ばにエドワード黒太子が入手したものです。 ルビーとサファイアが同じ成分の石(コランダム系)であり、スピネルが別の成分の石であることが分かったのは1783年のことでした。 かなり最近ですよね。 |
2-2-5. 大きなルビー
スウェーデン王グスタフ3世(1746-1792年) | ロシア皇帝エカチェリーナ2世(1729-1796年) |
ヨーロッパ史上最大のルビーとされるのは、1777年にサンクトペテルブルクを訪れたスウェーデン王グスタフ3世がロシア皇帝エカチェリーナ2世に贈ったルビーで、小型の鶏卵ほどの大きさがあり、完璧に透明だったそうです。この宝石は1917年のロシア革命以前は皇帝の冠に飾られていましたが、革命後は行方が分かっていません。 |
ロシア皇帝エカチェリーナ2世が作らせた皇帝冠のレプリカ "Imperial Crown of Russia (copy by Smolensk Diamonds company, 2012) - photo by Shakko 01 " ©Wikipedia / Shakko(2014)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
"ルビー"は1777年にプレゼントされていますが、コランダムとスピネルの違いが判明したのは1783年です。 ちょっと怪しいなと思いつつ、実際はどうだったのでしょうね。 1917年まではロシア皇室が保有していたので調べていないということはないと思いますが、なかなか知的好奇心をくすぐる感じです。 |
合成技術が確立した今となっては大きさも色味もお金と手間次第という感じですが、世界最大の採掘ルビーは1950年に東アフリカで発見されたルビーです。約8万5,000カラットもの大きさがあったそうです。 1976年に、アメリカ独立の象徴とされる『自由の鐘』の形に彫刻されていますが、2011年に強盗に盗まれて以降、行方不明です。とても美しいとは思えず、芸術的観点から見ても何の面白さも感じないので私は要らないです。ダイヤモンドに次いで硬い石なので、現代の道具を使っても彫刻は難しかったと想像します。 まあでも世界一という称号に魅力を感じ、大金を出せる人にとっては価値あるものなのでしょう。でも、盗んでまで欲しい人がいるとは・・(笑) |
世界最大&最高級とされるルビーリング(左)国立自然博物館 |
一応、宝石品質で世界最大かつ最高級とされているルビーは、アメリカの物理学者にしてレストラン経営者、かつ慈善家であるピーター・バックが国立自然博物館に寄贈したものです。1930年代にビルマから採掘された石で、23.1カラットあります。それでもリングとして収まるサイズですね。さすがに目立つので富と権力を象徴するのには有効ですが、これだけ大きい石をリングにするとデザインの施しようがないので、ジュエリーとしてはつまらないですね。 |
2-3. ルビーならではの色の魅力
『生命の躍動』 ルビー&シードパール ブローチ イギリス 1900年頃 SOLD |
このブローチだってそうです。 ルビーではなくサファイアやエメラルドだったら、これほど印象的な美しさは感じられなかったことでしょう。 ルビーが面白いのは、上質な石であれば小さくても印象的な美しさを放つ性質です。 |
『Tweet Basket』 小鳥たちとバスケットのブローチ イギリス 1880年頃 SOLD |
『Tweet Basket』の小鳥たちのつぶらな瞳も、ルビーだからこそ成立しているのです。 |
クレセント ブローチ イギリス 1870-1880年頃 SOLD |
ジュエリーのデザインに対してこれだけの面積を占めると、迫力があり過ぎではというくらい存在感があります。 |
古の人々が感じていた『ルビーの赤』が正確にはどのような色だったかは分かりませんが、昔の人々は赤い石『ルビー』の中に炎を感じていました。 |
古の人々が感じていた『ルビーの赤』が正確にはどのような色だったかは分かりませんが、昔の人々は赤い石『ルビー』の中に炎を感じていました。 |
ルビーの赤く輝く光は、石の中で燃え尽きることのない、消すことのできない炎を暗示し、それは衣服を通して輝き、お湯を沸かすことさえできると考えられていました。 |
このようなパワフルな力を持つと信じられていたからこそ、上流階級の人たちがこぞって珍重し、身につけていたのです。 |
同じ赤系統の宝石でも、スピネルやガーネットとは異なる独特の強い存在感を放つルビー。 褪せた赤や、色が深すぎる赤、明るい印象の朱色とも異なる、ピンク色を帯びたこの独特の色彩が他の宝石にはない魅力と言えるでしょう。 |
このリングに使われているルビーは透明度が高く、色彩も濃く鮮やかな上質な石です。撮影用のライトが明るいので色が実際より薄く見えますが、実物は濃い赤ピンクです。3石とも同じ見た目の石を使っているのも高級品の証です。合成石や加熱石、鉛ガラス充填などの処理石が当たり前のように出回っている現代では想像しにくいのですが、天然の非加熱・無処理の石で色や質感を揃えるのは非常に大変なことです。 |
【参考】安物 | 高級品 | |||
安物は単品で見ると一般の方には価値の違いがよく分からないかもしれませんが、こうして並べてみると上の4つの安物と比較して、ルビーの質1つとってみても違いは歴然だと思います。 |
【参考】安物のルビーリング.A | 【参考】安物のルビーリング.B |
【参考】安物のルビーリング.C | 【参考】安物のルビーリング.D |
Aは石が小さ過ぎて、デザイン的にバランスが良くありません。BとCは石の色が良くなく、石の質感も揃っていません。Bは色が暗いですし、Cは紫色を強く感じてルビー本来の色の魅力が感じられないのです。Dは透明感は高いものの、色が薄過ぎます。 |
石のカットにもご注目ください。 |
【参考】安物 | 高級品 | |||
カットが良くないと、宝石は魅力的に煌くことができません。本来、ルビーやサファイアなどのコランダム系の石はダイヤモンドとまではいかないまでも、数ある宝石の中では非常に煌めきの強い宝石です。煌めきが魅力なのはダイヤモンドだけではないのです。 |
カットはただその形状に整えれば良いというものではありません。丹念に磨き上げて表面形状を滑らかにし、フラットな鏡面仕上げにしてこそ強い輝きを放つことができるのです。これには高度な技術と手間がかかります。安物は質の良くない石しか使わない上に、カットもろくな仕上げがされません。高級品は石のカットに関しても、高度な技術を持つ職人が手間をかけて施すからこそ石本来のポテンシャルが最大限に引き出され、美しく輝くことができるのです。 |
3. クリアで煌めきの美しい脇石のダイヤモンド
3-1. クリーンかつ無色の上質なダイヤモンド
このリングを見てさすがだなと思ったのは、脇石のダイヤモンドも極めてクリーンで上質な石が使われていることです。黄ばみが感じられず、かなり拡大してもインクリュージョンが殆ど感じられない、非常に上質な石です。 |
さすが、アンティークのハイジュエリーらしく、上質なルビーに合わせて上質なダイヤモンドが脇石に選ばれていると言えます。 |
3-2. 小さくても強く煌めかせるための特別なカット
輝きの弱いダイヤモンドだと上質なルビーの存在感に埋もれ、メインストーンの惹き立て役としての脇石の役目が果たせなかったことでしょう。 しかしながら、このダイヤモンドは見事なまでに力強く煌めきます。 |
実はこのダイヤモンドも、通常とは異なる特別なカットが施されています。 |
安物のルビーリング | |
【参考】安物のルビーリング.B | 【参考】安物のルビーリング.C |
今回の宝物同様、ルビーの間に小さなダイヤモンドを2つずつセットしたリングを見てみましょう。Cは汚過ぎてカットの状況がよく分かりません。ダイヤさえ付いていればOKと言うような、石ころの種類でしか評価できない人たち向けの商品と言えるでしょう。 通常の安物は、Bのようにローズカット・ダイヤモンドが使われます。高級品でもデザイン上の好みなどで、意図的にローズカット・ダイヤモンドが使われることもありますが(その場合は上質な石)、安物は特に小さな脇石にオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドを使うことはありません。 |
左:ダイヤモンドの八面体の原石からオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドとローズカット・ダイヤモンドを取るイメージ | 底が平らなローズカット・ダイヤモンドと比べて、オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドは原石をたくさん使う贅沢なカットです。 贅沢なカットだからこそ高価なものとなるため、アンティークの時代は安物には使われないのです。 |
『Shining White』 エドワーディアン ダイヤモンド ネックレス イギリス又はオーストリア 1910年頃 SOLD |
値段が最重要な『安物』はコストカット最優先なので、とにかく安く上がるかどうかでダイヤモンド(質やカット)を選びます。 一方で、値段ではなく美しいかどうかが重要視されるハイジュエリーはどのカットの石が高いかどうかではなく、純粋にどういうカットの石を使うとデザイン的に美しくなるかで選びます。 オールドヨーロピアンカットはダイナミックなシンチレーションやファイアの出やすさが魅力です。 一方でローズカットは透明感や繊細な輝き、一瞬の鋭い光が魅力です。 『Shining White』も素材的にはシンプルにダイヤモンドだけを使ったジュエリーですが、それぞれの輝き方を見事に計算されたカットの選択になっています。 |
このリングはパワフルなルビーに負けぬよう、脇石にはオールドヨーロピアンカットが選択されていますが、実は『シングルカット』になっています。 |
シングルカットは通常のオールドヨーロピアンカットよりもファセットが少ない、シンプルなカットになります。 このカットには明確な意図があります。 |
『財宝の守り神』 約2ctのダイヤモンド ブローチ フランス 1870年頃 SOLD |
『財宝の守り神』は約2ctの大きなメインストーンと、その下にある5蓮のダイヤモンドがオールドヨーロピアンカットになっています。 同じカットであるにも関わらず、ダイヤモンドの大きさによってかなり雰囲気が異なります。 通常のサイズであれば、オールドヨーロピアンカットは肉眼だと煌めきを最も強く感じるカットです。 |
実際、大きなダイヤモンドはファセットの面積が通常サイズのダイヤモンドより遥かに大きいため、煌めきは迫力満点です。 |
しかしながらその大きさ故に、オールドヨーロピアンカットでは通常感じにくい、上質なダイヤモンドならではの透明感ある美しさも強く感じられるようになります。 |
その逆で、小さなダイヤモンドに通常のオールドヨーロピアンカットを施すと、1つ1つのファセットの面積が小さくなりすぎて煌めきが弱くなってしまいます。 |
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【参考】現代のブリリアンカット・ダイヤモンドだけのジュエリー | 現代ジュエリーは小さなメレダイヤも全て、通常は何も考えずにブリリアンカットにしてしまいます。 現代のブリリアンカットは、実はチラチラとした弱い輝きしか放つことのできないコストダウンのためのカットです。 高さのないクラウンのファセットはあまり輝くことがなく、底面の狭いファセットから分散して放たれるチラチラとした弱い輝きか、広いテーブルから放たれる白っぽい輝きかになります。 |
【参考】サファイアリング(現代) | イエロー・ダイヤモンド・リング(ティファニー 現代) 【引用】TIFFANY & CO / Tiffany Soleste Cushion-cut Yellow Diamond Halo Engagement Ring in Platinum ©T&CO |
ただでさえ輝きが弱いブリリアンカットを、そのまま極小のメレダイヤに施せば印象的な輝きなんて到底放つことはできません。それでもコストカットのため、そしてブリリアンカット信仰を維持するためにも、現代ジュエリーではブリリアンカットにしてしまうのです。 |
そうではなく、小さな石をしっかりと煌めかせるために特別にシングルカットにするのがアンティークのハイジュエリーらしいと言えます。カットから特別オーダーだなんて、古の王侯貴族でもよほど美意識が高く、こだわりが強く、莫大な財力を持っていなければやりません。定番アイテムこそ、細部にまで徹底的にこだわって作る。素晴らしいことですね。 |
通常のオールドヨーロピアンカットよりもファセットの数が少なく、1つ1つのファセットの面積が広いシングルカットだからこそ、これだけ透明感が感じられる上に、肉眼で見たときにパワフルなルビーに負けない力強い煌めきを感じることができるのです。 |
4. 高級品ならではの上質な作り
4-1. 爪が目立たない石留
一文字タイプのリングは、石の留め方でもハイクラスのものか否かが分かります。 |
【参考】ブリリアンカットの鋳造ダイヤモンドリング |
現代ジュエリー業界は美意識が欠如した顧客だけを相手にしているようで、宝石以上に爪が目立って気になってしまうジュエリーを平気で販売します。石が落ちなければいいじゃない程度の意識なのでしょう。 |
しかしながら、アンティークのハイジュエリーは爪の存在感を極限までなくし、宝石だけを目立たせた状態でセッティングした上で100年以上の使用に耐えられる強固な耐久性も備えたセッティングをします。これはアンティークの時代でも高度な技術を持つ職人だけができたことです。 |
安物のルビーリング | |
【参考】安物のルビーリング.A | 【参考】安物のルビーリング.B |
【参考】安物のルビーリング.C | 【参考】安物のルビーリング.D |
故に安物はアンティークの作りであっても、やはり爪が目立ちます。爪が目立たないこと以上に、大切な宝石が落ちないことが大事だからです。稚拙な技術で作られた安物はどれも爪がスッキリせず、ボテっとしていたりヌメっとしていたり、気持ちの良い作りではありません。 |
このリングは爪は目立たないものの、高価な宝石が脱落せぬよう、1つの石に対して数カ所ずつでガッチリと固定してあります。 |
石をしっかりと覆うように爪留したり、1つの爪をブリッジにして2つの石を固定したり、随所に高度な技術を持つ職人にしかできない素晴らしい技が認められます。これならば確かに100年以上の使用に耐えられるでしょうし、不適切な使い方をせぬよう心がければ、これからも安心して楽しむことができるでしょう。 |
4-2. ゴールドをタップリと使った贅沢な作りと彫金
このリングは18ctゴールドを全体にたっぷりと使った贅沢な作りです。 |
だからこそ、100年以上経過してもびくともしない耐久性があるとも言えます。 |
でも、ゴールドを贅沢に使ったメリットは耐久力だけではありません。 高級品として作られた定番スタイルの一文字リングには、このようにサイドに優美な彫金が施されているものですが、ゴールドに厚みがあるが故に、通常よりかなり高級感があるのです。 |
この優美な彫金は透かしになっています。ルビーもダイヤモンドもオープンセッティングなので裏側から光を取り込むことができますが、サイドの透かし細工の部分からも光が取り込めます。 |
ルビーもダイヤモンドも非常にインクリュージョンが少ない透明度の高い石であるため、この取り込んだ光によってより一層透明感が美しく感じられます。 |
透かし細工は厚みが増すほど、指数関数的に難易度と手間が増大します。それでも、厚みがあるからこそ、磨き上げられた彫金模様の黄金の輝きにより重厚感が出て、それが格調高い雰囲気や高級感となるのです。 |
高い技術を持つ職人が心を込め、手間を惜しまず最高のものを生み出そうと、プライドをかけて丁寧に作ったものだけが醸し出せる美しさがあります。大自然が織りなす自然美を除き、人間が心の底から感動できるのはプライドと魂を込めて作り上げたものだけです。 |
リングのショルダー部分にも彫金が施されています。この彫金は、一番端のルビーの爪と調和するようにデザインされています。無くてもあまり違いがなさそうなくらいさりげないものですが、こういう細部に至るまでの徹底したこだわりに、持ち主の美意識の高さが現れるのです。この手間の掛け方こそ、庶民のための安物ではなく美意識の高い王侯貴族のためにハイジュエリーとして作られた証です。 |
4-3. 最高のコンディションのリング
リングは他のアイテムと比較してグッドコンディションで残っている確率が低いジュエリーです。 指に着けて使う性質上、磨耗しやすかったり、どこかにぶつけたりして痛んでいることも少なくないのです。 このリングは歴代の持ち主が丁寧に使ってきたのでしょう、100年以上経過しているとは思えないほどコンディションが良いです。 |
裏側
裏側も非常に美しい作りです。 |
使っているゴールドの量がかなり多いので裏側のゴールドも厚く、相当な手間がかかったことが伺えます。 一見同じようなデザインに見えても、高級品は素材や作りへのお金の掛け方が別次元だと改めて感じる、アンティークのハイジュエリーらしい素晴らしい宝物です♪ |
着用イメージ
指に着けると裏側で透過する光が少なくなるため、上質なルビーの鮮やかな赤ピンクの色彩がより一層濃く、美しく見えます。 手に持って見るとルビーの透明感ある美しさが堪能できますが、指元ではむしろ美しい煌めきが際立ちます。 合わせやすい定番デザインなので他のアイテムとコーディネートしやすいのはもちろん、非常に上質で高級感あるリングなので、シンプルに単品でお楽しみいただいても良さそうです。 単独でも品良く存在感を発揮してくれる、魅力的な宝物です♪ |