No.00356 ウラルに咲く花 |
ウラル産デマントイド・ガーネットの目を惹くネオン・グリーン♪ |
ロシアの職人による超絶技巧の花びら型フレーム!♪ 厚みのあるローズカット・ダイヤモンドのダイナミックな煌めき!♪ |
ダイヤモンド以上のポテンシャルを秘めたデマントイドのファイア |
『ウラルに咲く花』 |
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デマントイド・ガーネットは殆どがせいぜい2〜3mm程度で、原石の状態でも滅多に5mmを超えることはない宝石です。だからこそ、その稀少価値の高い1粒を主役にしたリングやブローチ、ペンダントを作るのが通常でした。リングのメインストーンにできるサイズの、質の揃った上質なデマントイドを2粒揃えてピアスにした、前代未聞の宝物です!!♪ |
この宝物のポイント
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1. デマントイド・ガーネットの定番デザインのピアス
1-1. 珍しいデマントイド・ガーネットのピアス
デマントイド・ガーネットの宝物はたまにご紹介していますが、ピアスは初めてです。 市場でもこれ以外に見たことがないほど珍しいです!! |
小さなデマントイドを脇石にしたピアスはそのうち出てくる可能性がありますが、このようなピアスは前代未聞です。 使いやすい定番デザインで、かつ欧米では憧れの的として人気の高いロシア製、しかもピアス、さらに大きさのあるデマントイド・ガーネットと言うのは、市場に出てきて日本でご紹介できること自体が奇跡です!!♪ |
1-2. 大きさのある石が少ない宝石
1-2-1. アンティークジュエリーの中では新しい宝石デマントイド
『アレキサンダー大王』 古代ギリシャ アメジスト・インタリオ 古代ギリシャ(ヘレニズム) 紀元前2-紀元前1世紀 ¥4,400,000-(税込10%) |
人類史の中で、古代から愛され続けてきた宝石も少なくありません。 アメジスト、エメラルド、オパール、天然真珠など様々な宝石に古代からのエピソードがあります。 |
『Demantoid Flower』 デマントイド・ガーネット&ダイヤモンド バーブローチ イギリス 1880年頃 SOLD |
しかし、デマントイド・ガーネットはアンティークジュエリーの宝石としてはかなり新しい上に、産地はウラルに限定されています。 デマントイド・ガーネットのアンティークジュエリーは制作年代が限られる故に、特定年代のデザインでしか作られていないこと、制作数が限定されているなどの特徴があります。 |
ロシア皇帝ピョートル一世(1672-1725年) | 広大なロシアに存在するウラル山脈の開発は17世紀頃、ロシア皇帝ピョートル1世によって推進されました。 「辺境の田舎くさい国」というイメージしかなかったロシアが大帝国となる礎を作った偉人として知られており、ピョートル大帝とも呼ばれます。 |
ロシアの帝国鉱物学学会のロゴ "Rmslogo" ©Mikaxa(13:36, 22 November 2008)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
ウラル山脈で発見された新種の鉱物として、デマントイド・ガーネットがサンクトペテルブルク鉱物学会(現:ロシア鉱物学会)で報告されたのは1864年2月です。 1868年、パリ、ニューヨークそしてサンクトペテルブルグなど世界中の高級宝飾店のショーウインドウにデマントイド・ガーネットを使ったジュエリーが飾られ、この魅惑の宝石は世界中の宝石愛好家に衝撃を与えました。 |
『A Lilly of valley(鈴蘭)』 デマントイド・ガーネット ブローチ ロシア 1910年頃 SOLD |
瞬く間に大人気となったデマントイド・ガーネットですが、目的物として採掘するには採算が合わない量しか得られず、主に金やプラチナの副産物として得られていました。 しかも、1910年代には枯渇してきていたようです。 さらに1917年にロシア革命が発生し、貴族の贅沢品と見なされたデマントイド・ガーネットの採掘は1920年で終了しました。 |
1868年の鮮烈な世界デビューから、1917年のロシア革命まで。レイト・ヴィクトリアンからエドワーディアンにかけての僅かな期間だけ、社交界を華やかに彩った幻の宝石がデマントイド・ガーネットなのです。 |
1-2-2. 大きさのある石が滅多にないデマントイド・ガーネット
1864年に新種の鉱物として報告されたデマントイド・ガーネットですが、実は1819〜1821年頃という早い時期に、ボブロフカ川で金やプラチナを含む砂利と共に発見された緑色の石に注目が集まっていました。新種として認知されるまでに、なんと40年以上もかかっています! |
緑色の無限のバリエーション
これには理由があって、デマントイド・ガーネットは原石の状態でも5mmを超えるような大きな石は非常に稀です。同じ種類とされる鉱物でも、天然石の色彩には無限の幅があります。磨かれていない原石の状態で、小さな緑色の石を新種と判断するのは困難なのです。 |
緑色の宝石
発見されていたデマントイド・ガーネットは当初は新しい鉱物と認識されず、ペリドットかエメラルド、もしくはクリソライトと思われていました。現代の道具や知識が揃ったプロの宝石鑑別士でも、小さすぎる石は鑑別できないということは普通にあります。 |
ペリドット | エメラルド | クリソライト | デマントイド |
イギリス 1900年頃 ¥1,000,000-(税込10%) |
『エメラルドの深淵』 珠玉のエメラルド&ダイヤモンド リング イギリス 1880年頃 SOLD |
ピンクトパーズ&クリソライト ブローチ イギリス 1800年頃 SOLD |
デマントイド・ガーネット リース・ブローチ イギリス 1880年頃 SOLD |
ハイジュエリーに使用されるこのような最高品質の石だと、案外わかりやすいです。区別がつかないなんて意味が分からないと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、得られる原石の大半は宝石品質ではありません。 |
低品質の石は色味も透明度も美しくなく、違いを見分けるのは特に難しいのです。 |
『Rainbow World』 ネグリジェネックレス イギリス 1890年頃 SOLD |
デマントイド・ガーネットは、小さくても目立つという特殊な性質があります。 それで区別できないのかと感じた方もいらっしゃるかもしれません。 |
上質な極小エメラルドを効果的にデザインした宝物
アメジスト&エメラルド リング フランス 19世紀初期 SOLD |
お花のプチブローチ フランス 1880年頃 SOLD |
天然真珠&エメラルド・リング イギリス 1860年頃 SOLD |
しかし、本当に上質なエメラルドはデマントイド・ガーネットに勝るとも劣らぬほど、小さくても強い存在感を放つことができます。 産出量自体も少なく、大きな石が滅多に得られないデマントイド・ガーネットが新種の鉱物として認識されるまでに40年以上かかったのも、その背景を考えると無理からぬことなのです。 |
1-2-3. 少ないデマントイド・ガーネットの争奪戦
古代から得られてたダイヤモンドと異なり、アンティークの時代のデマントイド・ガーネットは産出量もかなり限定されます。ダイヤモンドの場合は、代々受け継いだジュエリーをリメイクすることも普通でしたが、デビューが1868年だったデマントイドの場合は僅かな期間に産出されたものを新しく購入して生かすことになりました。 1898年のパリでの展示会後、デマントイド・ガーネットの価格は頂点に達しました。ティファニーが一大帝国を築いた際の立役者の1人、宝石学者クンツ博士もデマントイド・ガーネットを手に入れるためにロシアに足を運んだそうです。買えるだけのデマントイド・ガーネットを全てに入れるためだったそうです。あればあるだけ売れるという感じだったのでしょう。 |
万博グランプリ受賞作『アイリス』(ティファニー 1900年) | |
ジョージ・パウルディング・ファーナムのアイリスのデザイン(1900年)ウォルターズ美術館 【引用】THE WALTERS ART MUSEUM / Sketch for the Tiffany Iris Corsage Ornament ©The Walters Art Museum /Adapted. | 『アイリス』(1900年)ウォルターズ美術館 "Tiffany and Company - Iris Corsage Ornament - Walters 57939" ©Walters Art Museum/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
ティファニーに初となる万博グランプリ受賞をもたらしたのが、高さ24.1cmの大作『アイリス』でした。アメリカの宝石モンタナサファイアや、ロシアの宝石デマントイド・ガーネットなどの話題の宝石を使用した作品です。実際とは形が違う気もしますが、アイリスの葉っぱがデマントイド・ガーネットで表現されています。小さくても存在感がありますね。デマントイドの特徴です。 |
『アイリス』(ティファニー 1900-1901年頃) 【引用】Alchetron / Paulding Farnham ©Alchetron/Adapted. |
多様化した現代と異なり、当時はこのような宣伝効果は絶大です。 価格高騰で採算が見合うようになってくると、産出量も増加します。1913年には104kgが産出されました。 1893年から1914年の間に、256kgが産出されたと言われています。その全てが宝石として使用できたわけではありませんが、多いと感じるでしょうか。 ダイヤモンドとの比較によって、もう少しイメージしてみましょう。 |
ブラジルと南アフリカのダイヤモンド産出量の推移 【出典】2017年の鉱山資源局の資料 |
1カラットは0.2gです。ダイヤモンドが稀少価値の高い宝石だったのは、南アフリカでダイヤモンドラッシュが起きる前までの時代です。ブラジルが世界最大の供給地だった時代は、毎年安定して約10万カラットが供給されていました。20kgに相当します。 南アフリカの埋蔵量は莫大なもので、市場を独占して供給量をコントロールしないと、価格が維持できぬほどでした。1870年以降、第二次世界大戦が始まる前の時期の平均値が300万カラットとすると、毎年600kgほどは供給された計算です。この約70年間だけでも、およそ4.2トンのダイヤモンドが市場に供給されたわけです。 ちなみに現代、2022年の産出量は1億1,804万カラットで、23トン608キログラムに相当します。この量が毎年供給されます。品質の悪い60%ほどは工業用となりますが、40%となる9トン以上は宝飾業界に使用されます。世界中で安物にまで大量にダイヤモンドが使用できるのは、現代では既に稀少価値がないからです。 |
ダイヤモンド・ピアス(ティファニー 2023年) ¥2,365,000-(2023.2) →¥2,585,000-(2023.11)→¥2,695,000-(2024.5) 【引用】TIFFANY & CO / ティファニー ハードウェア リンク ピアス©T&CO |
それでも業界に努力による「人々の思い込み」によって、まだ成立しているのでしょう。 左のピアスは、2024年5月時点で「残りわずか」となっていました。一点ものではありません。一体いくつ量産したのでしょうね。 円安もあって、徐々に値上がりしているようです。 |
『ミラー・ダイヤモンド』 ダイヤモンド リング イギリス 1840年頃 ¥3,700,000-(税込10%) |
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1900年にダイヤモンドソウが発明される以前、劈開を利用してカットするしかなかった時代は40%どころか、産出量の6%しか宝石として使用することができませんでした。ブラジル鉱山からの毎年の供給量20kgのうち、1.2kgしか使えません。世界中の王侯貴族の争奪戦となり、至高の宝石として羨望の的になったのは当然ですね。 1870年代以降は600kgほど供給されるようになったとは言え、その6%だと36kgです。王侯貴族のみならず、新興成金もダイヤモンドを買い漁るようになった時代にその量は、まだまだ少ないと言えたでしょう。 |
デマントイド・ガーネットの1893年から1914年、21年間で256kgの産出量です。 年平均で10kgもありません。全てが美しい宝石品質だったことはあり得ず、莫大な資金を元に、クンツ博士を擁するティファニーが買い占めを図ったのはさすがの経営判断と言えるのです。 |
1-2-4. 適材適所のデマントイド・ガーネットの活用
ウラル産デマントイド・ガーネット(ボン鉱物博物館) "Demantoid bobrowa mineralogisches museum bonn" ©Elke Wetzig(Elya)(15 March 2009)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
産出量が極めて少なく、原石の状態でも5mmを超えるような大きさのある石が非常に稀だったからこそ、デマントイド・ガーネットはそれぞれの特徴を生かした様々なジュエリーになりました。まさに適材適所です。 |
極小デマントイド・ガーネット
ライオン ピン アメリカ 1900年頃 SOLD |
デマントイド・ガーネット&天然真珠 エナメル・ネックレス イギリス 1880年代 SOLD |
デマントイドと言うだけで特別視された上に、独特の色彩が放つ魅力もあって、極小石でも効果的にデザインの中で使用されました。極小ダイヤモンドの場合はそのものの見た目と言うよりも、ふいに放たれる閃光が魅力となります。しかし、デマントイドの場合はただいるだけで強い存在感を放ちます。 |
『真珠のアート』 天然真珠(バロック) ペンダント ヨーロッパ 1890〜1900年頃 SOLD |
極小の宝石を留めるのは、高度な技術と手間が必要です。それはコストに直結します。 石の大きさばかりを気にするよう客を育てた現代ジュエリーは、このような石のセンスの良い使い方をしません。 美意識が高い王侯貴族にとっては、デマントイド・ガーネットの小さくても目立つ性質は大歓迎だったことでしょう♪ |
サイズによる使い分け
特別な使い方をする極小石は別枠にしました。ここからは、ある程度の大きさがあるデマントイド・ガーネットのデザインに注目しましょう。以下は実物大の比較になります。 |
今回の宝物 |
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今回のピアスは取り巻きのローズカット・ダイヤモンドが小さいため、全体としては石自体の大きさをあまり感じないかもしません。取り巻きに大きめのオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドを使用したり、全体のデザイン次第ではかなり大きく見せることもできたはずなのです。しかし、敢えて控えめで清楚な雰囲気にしています。 成金とは真逆の思想です。それだけに、高く見せよう凄そうに見せようと思う必要がないほど、莫大な財力を持つ人物がオーダーしたのだろうと思います。他にも様々なデマントイド・ガーネットのジュエリーを持っていたからこそ、ピアスには上質で合わせやすいデザインを所望されたのかもしれませんね。 |
【参考】デマントイド・ガーネット&ダイヤモンド バングル ファベルジェ 1896年頃 |
ちなみにこれはロシア皇帝ニコライ2世と皇后アレクサンドラによって買い上げられた、ファベルジェ商会のバングルです。このサイズで質が揃ったデマントイドを3粒揃えるのは、ロシア皇帝クラスと言えます。 2015年のオークションでは、3万スイスフランで落札されています。1CHF=110円として計算した場合、約330万円です。 |
ちなみに最近再び市場に出てきて、144,000ドルで売れたようです。1$=156円で計算すると、およそ2,246万円になります。爆騰ですね(笑) ウクライナの件があった際、印象が悪化してロシアものは安くなったりしていないかとロンドンのディーラーに尋ねたのですが、「全く関係ない。ロシアものは元々稀少で、欧米のアンティークジュエリー業界では羨望の的である上に、コロナ禍で流入した投資マネーのターゲットにもなっているので、むしろかなり値上がりしている。」とのことでした。 何の変哲もないデザインのバングルに、ロシア皇帝やファベルジェ、デマントイド・ガーネットの威光がつくだけで2千万円以上の価格が付くなんて仰天です!本当に爆騰しているのだなぁと実感しました。 |
ちなみにこの宝物もロシア製です。 コロナ前にチャンスがあって買い付けていました。今なら手を出せないくらいの値段が付いていたかもしれません。 カタログ作成が追いつかずに寝かてしまっていましたが、今となってはラッキーでした♪ |
『春の花々』(ファベルジェ 1899年)ファベルジェ美術館 | 大きさのあるデマントイド・ガーネットを3粒揃えてステータスを象徴する一方で、このイースターエッグはファベルジェらしい作品ですね。 『春の花々』と題された作品で、可憐な白い花の雌しべがデマントイドで表現されています。 大きくても小さくても魅力が強い、不思議な宝石です。当時の王侯貴族を虜にしたのも納得ですね。 |
アンティークジュエリー自体が終焉を迎える第二次世界大戦を待たずして、帝政ロシアの終わりと共に幻となった宝石だからこそ、デマントイド・ガーネットは知られざる存在でした。 Genが最初にデマントイド・ガーネットのジュエリーをお取り扱いしたのは、47年ほど前です。その時、宝石鑑別の専門家に見てもらったところ、「鉱物の見本としての小さな石は見たことがあったけれど、ジュエリーにセット出来るような上質のデマントイド・ガーネットを見るのは初めてだ!」と驚いていたそうです。 アンティークジュエリーというジャンルがヨーロッパでも確立していなかった黎明期から、日本で初めてのアンティークジュエリー・ディーラーとして活躍を始めたGenの仕入ルートは超強力です。だからこれまでの47年間で、厳選してデマントイド・ガーネットの美しい宝物をご紹介できています。本当は、サイズ感のあるデマントイドのアンティークジュエリーを入手するのは極めて難しいことなのです。 |
このデマントイド・ガーネットは、カットされた状態で以下の大きさがあります。 4.9×4.0×3.1mm 滅多に見つからない大きさである上に、色味や質感も揃っています。1つ手に入れるだけでも難しいクラスのデマントイドを、2つ揃えているのです。 ありそうでないピアスなのです!♪ |
1-3. 色彩と透明度でファイアを感じやすい石
この宝物のデマントイド・ガーネットは、美しいファイアを感じやすいのも大きな特徴です。 |
1-3-1. 絶妙な色彩のデマントイド・ガーネット
高い分散率でファイアが発生するイメージ "Prism-rainbow-black-2" ©Suidroot, Sceptre(30 May 2009, 00:23)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
ファイアは、宝石に侵入した光が分散することで生じます。分散率が高いほど生じやすいです。 ファイアが生じやすい宝石として有名なのはダイヤモンドです。分散率が高く、0.044です。清らかな透明感が美しいロッククリスタルやアメジストは0.013、ルビーやサファイアは0.018、ペリドットは0.020です。 |
実はデマントイド・ガーネットはダイヤモンド以上の分散率を持ち、0.057です。それ故に、ダイヤモンド以上にファイアを出せるポテンシャルを持つ宝石とされます。 ただ、無色透明なダイヤモンドと異なり、緑色に隠れてしまって、実際にはファイアを感じにくいと言われます。 一番上のデマントイドの、中央テーブル部分に虹色のファイアが出ているのが何となくお分かりいただけるでしょうか。 |
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今回の宝物はデマントイド・ガーネットの特徴的なネオン・グリーンが感じられますが、色彩が強すぎません。 石に大きさもあるので、揺らめくたびにファイアを感じやすいです。 その表情の変化は、さすがダイヤモンド以上にファイアが出すポテンシャルを秘めた宝石と感じます。 色彩が薄くてもデマントイドならではの魅力が感じられませんから、まさに絶妙のバランスです♪ |
盛夏の青々とした緑色ではなく、長く厳しい冬を終えて、待望の春を迎えた雪国の新緑のような、優しいグリーンです。 |
ネオン・グリーンの中に現れる様々な色彩の驚きと美しさこそが、デマントイド・ガーネットの大きな魅力であることを改めて感じます♪ |
1-3-2. 透明度の高い上質なデマントイド・ガーネット
高い分散率でファイアが発生するイメージ "Prism-rainbow-black-2" ©Suidroot, Sceptre(30 May 2009, 00:23)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
ファイアの出やすさは、透明度と石の大きさも相関します。 インクリュージョンが多いと、光は内部で拡散消失してしまいます。 また光路長が長いほど分散が大きくなるので、石が大きかったり、何度も内部反射して光路長が稼げるような石のフォルムも、ファイアの出やすさに効いてきます。 |
ダイヤモンドの分散度0.044に対して、アメジストは0.013しかなく、ファイアが出るイメージは現代ではありません。 しかし、特大サイズかつインクリュージョンが殆どなかった、この特別なアメジストには虹色のファイアが複数浮かび上がっています。 |
左右のアメジストも同様で、それぞれの石に虹色のファイアが浮かび上がっています。鉱物の種類に依存する分散度も重要ですが、光路長が稼げるサイズやカットのフォルム、光が拡散消失しないためのインクリュージョンの少なさもとても重要なのです。 |
このデマントイド・ガーネットは光学顕微鏡で見ると、ウラル産の特徴であるホーステイルが全体に入っています。多過ぎないため、独特の雰囲気と共に透明感があります。 |
リングのメインストーンにできるほどのサイズ(4.9mm)があり、インクリュージョンが少なく、色も濃過ぎないという絶妙な条件が揃っていることで、デマントイドならではのファイアを感じやすい石となっています。細工物とはまた違う意味で、いつまでも眺めていられる美しい宝物です♪ |
2. 瑞々しいローズカット・ダイヤモンドとの組合せ
2-1. センスを感じるダイヤモンド選び
2-1-1. 定番のダイヤモンド取り巻きリング
現代の高級ブランド・ジュエリー | アンティークジュエリー | |
ティファニー エメラルド・リング(合成や処理についての記載なし) ¥2,695,000-(2024.5現在) 【引用】TIFFANY & CO / Tiffany Soleste Ring ©T&CO |
カルティエ エメラルド・リング(合成や処理についての記載なし) ¥4,593,600-(2024.5現在) 【引用】Cartier / CARTIER DESTINEE ©2024 カルティエ |
『エメラルドの深淵』 珠玉のエメラルド リング イギリス 1880年頃 SOLD |
ダイヤモンドで取り巻いたリングは定番なので、現代でも作られています。ただ、どのブランドも似たり寄ったりの印象です。ブランド名を言わなければ、どこで買ったのかも、高いか安いかも分からない感じです。 その理由は、大量生産のブリリアンカット・ダイヤモンドを使うからです。無個性ですし、輝きが弱く透明感もありません。現代ジュエリーは高くても色石を惹き立てようという石がまるで見えませんが、世界展開してインターネットも駆使していくつも同じものを販売できるという事実から、稀少価値のない合成石の可能性が高いと思います。新品ならば、鑑別しなくても天然石の産地は分かります。記載してPRしないのは奇妙な話です。 |
2-1-2. 組み合わせで雰囲気が変わる取り巻きデザイン
『煌めきの青』 サファイア リング イギリス 1880〜1900年頃 SOLD |
サファイア リング フランス 1920〜1930年 SOLD |
セイロン・サファイア リング フランス 1920〜1930年頃 SOLD |
アンティークジュエリーでは定番と言える取り巻きデザインでも、ダイヤモンドのカットや留め方、使用する金属によって雰囲気がガラリと変わります。 本物の高級ジュエリーに使用される宝石は、天然石だからこそ1粒1粒が唯一無二の個性を持ちます。それを生かすために頭を悩ませ、高度な技術を駆使して、持ち主に愛される価値のある宝物に創り上げます。強い青を持つサファイアならば、惹き立て役のダイヤモンドも力のあるオールドヨーロピアンカットを選択します。優しい青の色彩ならば、透明感のあるローズカット・ダイヤモンドで清楚さを惹き立てます。脇石を全て覆輪留めして、より大きさを出して個性を強調することもあります。 現代ジュエリーの「どこで買っても一緒」と思えるような、ぞんざいな定番ジュエリーなど見る価値がありませんが、アンティークの高級な定番ジュエリーは長く愛用するために、持ち主のセンスが思いのほか込められているものです♪ |
『ウラルの秘宝』 1.71ctデマントイド・ガーネット リング イギリス 1880年頃 SOLD |
今回の宝物 |
今回の宝物も、しっかりと唯一無二の個性があります。 例えば左の宝物のように、大きくて濃い色彩のデマントイド・ガーネットに、同じく大きなオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドをデザインすると、かなりパワフルな印象となります。 今回のデマントイド・ガーネットは厳しい雪国に咲く可憐な花々を想わせるような、優しさの中に芯のある強さも感じる、清らかなネオン・グリーンが印象的です。脇石にはそのようなデマントイドにピッタリの、透明度が高く煌めきの強いローズカット・ダイヤモンドが選ばれています♪ |
2-2. 厚みのある贅沢な極上ローズカットの煌めき
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小さいローズカット・ダイヤモンドですが、透明度が高い上質な石で、カットも極上なのでよく煌めきます。煌めきが華やかなのは、通常のローズカット・ダイヤモンドよりも厚みがあるからです。 |
2-2-1. 厚みのあるローズカット・ダイヤモンドは特別の証
古い時代は、劈開でカットできる高品質のダイヤモンド原石自体が稀少でした。 だからこそ、なるべく無駄なくカットします。 最大の大きさでオールドヨーロピアンカットを取り出し、残りも脇石用のローズカットに利用するのが通常です。 但し、全てのローズカット・ダイヤモンドがそのような得られ方をするわけではありません。 |
『ミラーボール』 魅惑のローズカット・ダイヤモンド ピアス ヨーロッパ 1860〜1870年頃 SOLD |
メインストーンにしたり、最高級品の脇石に使用するためのローズカット・ダイヤモンドの場合、そのような副次的な得られ方ではなく、専用で切り出します。 だから厚みがあって、ファセットが立体的に輝きます。 |
この宝物に使用されたローズカットもかなり厚みがあり、その華やかな煌めきから、オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドかと思うほどです! 透明度も高く、上質なダイヤモンドを専用で特別にカットしたと分かります。 カットが近代化される以前のダイヤモンドなので、形にラフさがあり、個性豊かなのも非常に魅力的です!♪ 実に美しく輝きます♪♪ |
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古い時代は別として、安物のローズカット・ダイヤモンドは横から見ると、びっくりするくらいペラペラで薄かったりします。この宝物はその逆で、驚くほど厚みがあります。それぞれの石に個性があって、1粒1粒が粒だっています。輝きの個性と華やかさにも納得です! |
2-2-2. 磨きの良さ故の強いダイヤモンド光沢
このダイヤモンドは、小さいながらもダイヤモンド光沢が強いです。磨き仕上げが特に良いからです。粗いヤスリから徐々に細かいヤスリに変えて、表面をピカピカになるまで磨いていきます。どこまで細かいヤスリを使うのかで、かかる時間もツルツル具合も変わります。 表面がツルツルなほど、光をよく反射します。ただし、手間がかかる分だけコスト的に高級品となります。ダイヤモンドはラフカットよりも、研磨工程の方が遥かに時間がかかります。磨き仕上げこそメインの作業と言えます。 |
【参考】ヴィクトリアンの安物 | ダイヤモンドでありさえすれば輝くわけではありません。 安物は石の質が悪く、磨き仕上げも良くありません表面だけでもピカピカに磨き上げれば、それなりにダイヤモンド光沢自体は出ます。しかし、磨きが不十分だと、上質な石であっても煌めきません。 「古いダイヤモンドは輝きが弱いけれど、それがアンティークジュエリーの魅力です。」と言う業者がいたら、何も分かっていない安物の専門業者と思ってください(笑) |
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強いダイヤモンド光沢から、相当入念に磨き上げられていることが分かります。ある程度の大きさがある石ならば分かりますが、通常よりも小さなローズカット・ダイヤモンドでこれほどカットの質が良いのは驚くべきことです。 |
3. ロシアの高級品ならではの堅牢で美しい作り
このピアスは、耳の後ろから付けるタイプです。 本体上部の穴に、金具を引っ掛けて留めます。 |
着脱の際は、金具を少したわませます。 丸で囲んだ部分がフックになっているので、金具を下に押しながら後ろに引くと外れます。 |
強い力は必要ないとは言え、他のタイプのピアス金具と違って、着脱時に本体に力がかかりやすいです。 繊細に見える石留めのピアスにも関わらず、このタイプの金具にしていることに驚きました。 しかしながら作られてから140年ほどは経過していますが、石のぐらつきなどもなくコンディションを保っています。これは作りの良さあってこそです!♪ |
3-1. 金属を駆使するロシアの高級ジュエリー
3-1-1. ヨーロッパとはやはり異なるロシアの高級ジュエリー
この宝物は、私がご紹介したロシアン・ジュエリーの記念すべき第1号です。独特の雰囲気を持つムーンストーンに目が行きますが、この道40年を超えるGenが驚いたのが、極小ローズカット・ダイヤモンドの石留めでした。 |
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「石を留めている白い金属は、普通のシルバーではないのでは?」と言う予測の元、金属分析を行ったところ、4.4ctゴールド相当の銀合金(銀:67.5%, 金:18.2%, 銅:14.1%)であることが判明しました。 |
ロシアは1900年前後にロシアン・アヴァンギャルドと言われる、芸術的な最高潮の時代を迎えました。絵画、建築、ジュエリー。あらゆる芸術性の高いものに、然るべき価値が見出された時代背景があったからこそ、アーティスト兼職人たちは手間を惜しむことなく、全ての才能を開花させて創作活動ができました。 ジュエリーに於いては、理想の美を具現化するための金属の使いこなしも群を抜いていたのがロシアです。 |
3-1-2. 14ctゴールドで実現させる高い芸術性
思考停止ツール(笑) | 日本の庶民がジュエリーを買うようになったのは高度経済成長を経験し、衣食住が満ち足りた後の1970年代頃からです。 手っ取り早くボロ儲けするために、宝飾業界は金位が高いほど上質、宝石は大きいほど良いというような、成金嗜好を育てるようなプロモーションで顧客層を洗脳しました。 |
ベルエポックの安物のフレンチ・ジュエリー
日本よりいち早く上流階級が廃止されたフランスは、1880年頃からのベルエポックの時代が日本のバブル期に相当します。この時代のフランスのアンティークジュエリーの大半は、貴族のためのハイジュエリーではなく、当時のバブリーな大衆のための大量生産品です。 |
※フェイクの可能性あり | ||
やたらめったら18ctばかり賞賛されるのは、当時のフランスでも大衆向けに金位が高いから高級品という売り方をしたからです。芸術性や美しさなんて考えていないジュエリーも本当に多いですが、18ctでありさえすれば喜ぶ大衆の方が、市場経済では力を持っていた証です。 シルバーしか買えない人に対して、「これは18金よ!!」とマウンティングしていた様子が目に浮かびます。全員ではなく一部の人たちだけだったと思いますが、成金思考の人はいつの時代もどの民族にも存在するようです(笑) |
14ctのアーティスティックな貴族のジュエリー
オーストリア | ロシア |
『芸術には自由を』 セセッション カボション・サファイア ブローチ オーストリア(ウィーン) 1900年頃 ¥770,000-(税込10%) |
『ロシアン・アヴァンギャルド』 ルビー&サファイア リング ロシア 1910年頃 SOLD |
同様の時代でも、王侯貴族が存在したオーストリアやロシアのハイジュエリーは、14ctが標準で制作されているのが印象的です。100年以上の使用に耐えられる耐久性だけでなく、アーティスティックな造形を実現するための強度を得ると言う意味でも、14ctは有利だからです。金位ばかり気にするのは、芸術や技術や科学が分からない証です。上流階級は芸術や技術、科学などの教養を重視しましたから、ジュエリーの芸術性の高さは必須です。 上の2つの宝物は、共に14ctだからこそ実現できたと言える、アーティスティックな造形です。 |
この宝物も一見しただけでは分かりにくいですが、14ctゴールドと特徴的な造形によって、美しさと強度を両立させています。 |
3-2. 美しさと強度を両立させた驚異の造形
3-2-1. 高さを出しながら強度も付加するドレープ設計
ローズカット・ダイヤモンドをセットしたフラワー型のフレームは、横から見ると放射状のドレープになっていることが分かります。ヒダの折り畳みが深いドレープが、幾重にもなった構造です。これが高い強度の秘密です。 |
筒状の金属に上から力を加える場合、ただの円筒状よりも、星型やフラワー型のような折り畳みが多い形状の方が強いことは、感覚的にもご想像いただけると思います。 数学的には、円筒やフラワー型を伸ばした展開図で考えると良いです。ヒダの数が多く、折り畳むドレープが深いほど支える面積が増えます。 |
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2次元表現である画像だと立体感は伝わりにくいですが、それでもかなりドレープの数が多く、折り畳みも深いことが感じていただけると思います。 14ctゴールドでこの構造ならば、強度的には非常に安心です。 とは言え、ここまで拡大しても、シャープで美しい作りに驚きます。まさにロシアの神技です!!♪ |
3-2-2. 通常のバターカップとは全く異なる作り
今回の宝物 | ダイヤモンド ピアス イギリス 1880年頃 SOLD |
ダイヤモンド ピアス フランス 1920-1930年頃 SOLD |
『ロシアを象徴するような美しい指輪』 ロシア 1910年頃 SOLD |
見事な黄金ドレープを駆使した今回の宝物ですが、一見すると通常の『バターカップ』と呼ばれる技法と同じに見えるかもしれません。宝石の外周フレームのデザインによって、宝石を実物より大きく見えるよう錯覚させたり、フラワー型に見せたりするためのものです。正面からは分かりませんが、実は似て非なるものです。 |
比較1
ダイヤモンド ピアス イギリス 1880年頃 SOLD |
14年前にご紹介したこの宝物は、1輪の花束を表現しています。 一番大きなダイヤモンドの外周フレームが、大輪の花を表現した形状になっています。 |
見えない部分や、角度が急な部分にもローズカット・ダイヤモンドがセットされた、美意識の行き届いた最高級品であることもご留意ください。厚みのあるダイヤモンドの質を見ただけでも分かりますね。 さて、一番大きなダイヤモンドのフレームを横から見ると、ドレープ状にはなっていません。これが一般的なセッティングになります。ゴールドをふんだんに使用した堅牢な作りです。 |
比較2
ダイヤモンド ピアス フランス 1920-1930年頃 SOLD |
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この宝物もドレープは形成していません。通常のバターカップ型です。 |
比較3
『ロシアを象徴するような美しい指輪』 ロシア 1910年頃 SOLD |
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この宝物もドレープ状にはなっていません。花びらは、今回の宝物と比較すると浅く造形されています。宝石の爪にかけて迫り上がっており、それによってダイナミックな立体感が生まれています。 |
目的によって設計が異なる最高級品の立体デザイン
今回の宝物 | |||
今回のピアスのドレープ構造は、極めて特殊であることがお分かりいただけたと思います。どちらが高級というものではなく、目的の違いによるものです。 古い時代、宝石はクローズドセッティングが普通でした。それがオープンセッティングに変わっていったのは、なるべく多くの光を取り込んで鮮やかな色彩に見せたり、透明感や煌めきを出すためです。比較した3つの宝物は、より光を取り込むための構造になっています。 今回の宝物は比較の3点と異なり、着脱時に本体に力がかかる構造です。強度が必要だったため、このドレープ構造を形成しているのです。 |
このドレープ構造は土台からお花が開くような、外側に開いた放射状で造形されています。 |
ただしドレープの折り畳みは、花びらの形通りに追従する形状ではありません。ちょっと分かりにくいですが、花びらの一番膨らんだ部分は、その先端がローズカット・ダイヤモンドを留める爪になっています。その部分をサイドから見ると、ドレープ構造の内側に織り込まれていることが分かります。かなり難解なデザインです。 ロシア人は頭が良いのだなぁと感じました。少なくとも、この宝物をデザインした職人さんはめちゃくちゃ頭も良いと思います(笑) |
3-3. 隅々まで行き渡る美意識の高さ
3-3-1. 爪の多さから分かる宝石の稀少価値
爪の違いから分かる宝石の価値と美意識 | |
カルティエ エメラルド・リング(合成や処理についての記載なし) ¥4,593,600-(2024.5現在) 【引用】Cartier / CARTIER DESTINEE ©2024 カルティエ |
『エメラルドの深淵』 珠玉のエメラルド&ダイヤモンド リング イギリス 1880年頃 SOLD |
職人さん曰く、宝石は爪が3点留まっていれば大丈夫だそうです。ただ、使い続けると爪が摩耗したり、緩んでくることもあります。爪の数を減らすと、手間に相当する部分をコストカットできます。だから現代ジュエリーは、極力爪の数を減らす傾向にあります。ただ、しっかりと留めるために、1つ1つの爪が大きくて無骨なものとなります。これが、「宝石より爪の方が目立つ現代ジュエリー」の正体です。コストカットに基づくケチくささの象徴です。 本当に稀少価値のある宝石を使ったアンティークのハイジュエリーは、爪の数が多く、1つ1つの爪は限界まで気配を消して主役の宝石に意識を没入させてくれます。『エメラルドの深淵』はエメラルドが大きいので、10の爪でセッティングしています。 それにしても、この価格バランスはおかしいです。アンティークジュエリーは実際の価値からすれば、まだまだ評価額が低いのです。高いと感じる人は、感覚的にも知識的にも全く価値が分かっていないです。そういう人に限って、ブランドジュエリーの詐欺的な価格にはなぜか納得するみたいなんですよね(笑) |
今回の宝物 | ダイヤモンド ピアス イギリス 1880年頃 SOLD |
ダイヤモンド ピアス フランス 1920-1930年頃 SOLD |
『ロシアを象徴するような美しい指輪』 ロシア 1910年頃 SOLD |
それはさておき、極端に大きくない宝石だと、アンティークジュエリーの高級宝石では6つの爪が一般的です。3つでも留められますし、現代ジュエリーだと4つで留めますから、かなり安全策をとっていることが分かります。そのような中で、今回の宝物は8つの爪でデマントイド・ガーネットを留めています。 |
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繊細な爪に見えますが、十分な量のゴールドを使って頑丈にセットされています。高度な技術に感動するのと共に、いかにこの宝石が特別であるのかが分かります。 |
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これだけ拡大しても目立たぬ爪なので、宝石だけに意識が行きます。一見しただけでは通常の定番デザインのピアスに見えますが、宝石の特別さのみならず、これだけデザイン的な配慮と神技が込められていることに感激します。ロシアの最高級品ならではです♪♪ |
3-3-2. 高級感のための惜しみない手間
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一番下の土台の輪っかに彫金された溝も、高級品ならではの一手間です。強度の観点からは不要ですが、このデザインがあることで高級感が増します。実際の大きさを考えると、シャープで本当に見事な彫金です。 |
機能的に意味があるわけではないため、高級品ならば必ず彫金されているわけではありません。 土台の溝の彫金は、あくまでも好みの部分になります。 |
『財宝の守り神』 ダイヤモンド ブローチ フランス 1870年頃 SOLD |
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HERITAGE好みのジュエリーをオーダーするような人は、このような一手間に全力を注ぐ傾向にあります。 |
『ダイヤモンドの原石』 クラバットピン(タイピン)&タイタック イギリス 1880年頃 SOLD |
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ダイヤモンドの原石を使用した、この特別なメンズジュエリーも土台に溝が彫金されています。いま考えると、ダイヤモンドがピラミッド型にカットされているので、フリーメイソンに関連する英国貴族がオーダーしたのかもしれませんね。美意識と共に、深淵なる知性も感じる宝物です♪ |
『Bright things』 アールデコ ダイヤモンド 3連ピアス イギリス 1930年頃 SOLD |
1930年頃という、アンティークジュエリーとしてはかなり新しい宝物であっても、よほどの美意識が高い人物がオーダーしたものであれば、最高級品ならではの作りの特徴を見ることができます。 このタイプのジュエリーは、一般の方には現代ジュエリーやアンティークの成金ジュエリーとの違いが分かりにくいと思います。 アールデコの激しいダンスを想定し、どのダイヤモンドも8つずつの爪で固定しているのも大きな特徴です。 通常ならば、アンティークのハイジュエリーでも爪は6つです。 |
そして、やはりフレームの土台に溝が彫金されています。ピアス金具を取り付ける、一番上のフレームの土台だけは溝が彫金されていないことからも、この彫金はデザイン的に意図したものとお分かりいただけるでしょう。この一手間が、見た時に感じる特別な高級感につながるのです。 技術と手間がかかり、それがコストとなり、オーダーした際の値段にも直結します。ここにお金をかける価値を見出せるかどうかが、持ち主の財力と美意識を測る材料となります。 |
一見シンプルに見える定番デザインだからこそ、このような一手間が高級感に大きく効いてきます。 定番デザインは使い勝手が良く、欲しい方も多いと思いますが、誰でもお取り扱いできるような簡単なものはHERITAGEではご紹介しません。 これぞHERITAGE基準の、定番デザインの最高級品です!♪ |
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裏側
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裏側もシャープで美しい作りです。小さなローズカット・ダイヤモンドですが、確実に固定しながらもできるだけ多く光を取り込めるよう、限界まで窓を開けていることが分かります。美しさには必ず理由があります!♪ |
ロシアのゴールドの純度を示す56が刻印されており、約14金に相当します。工房印らしきものもありますが、判別はできませんでした。 金具は緩くなったら調整できますので、お気軽にご相談くださいませ。 適切なメンテナンスをすることで、これからの100年、200年後も愛用し続けることができます。それがアンティークジュエリーです♪ |
デマントイド・ガーネットの宝石鑑別書
現代ではロシア以外からもデマントイド・ガーネットが産出されていますが、ホーステイルがあること、そして何よりもアンティークの時代に作られていることは間違いないので、ウラル産デマントイド・ガーネットと判断できます。 現代も産出量が少なく、再び幻となりつつあるようですが、そもそもデマントイド・ガーネットの魅力である鮮やかな色彩は、Cr(クロム)を多く含むウラル産ならではです。しかも現代は日常的に、色を改善するための加熱処理が行われているそうです。美しい色彩を持つ天然のデマントイド・ガーネット自体が、アンティークジュエリーだけのものと言えます。 |
着用イメージ
着用すると、大きさのあるデマントイド・ガーネットを最も生かすデザインであることが分かります。 ネオン・グリーンの色彩のみならず、動くたびに放たれる煌めきやファイアも美しいです。余計な装飾がないからこそ、宝石そのものの魅力に没頭できます♪ 特別な宝石を手に入れると、あれやこれやと装飾したくなる気がしますが、持ち主はジュエリーの真髄を理解していたのでしょう。 きっと、長く愛せる特別な宝物になると思います♪ |