No.00360 硬い愛の心 |
この道40年以上のGenが認めるシードパール・ジュエリーの最高峰!!♪
最愛の人に捧げる、ダイヤモンドのように硬い愛
ダイヤモンドのカットが近代化される以前の、極めて貴重なハートシェイプ・ダイヤモンドです!♪ 存在感ある大きさに加え、クリーンでカットの仕上げも抜群なので、透明感とシンチレーションの美しさが際立ちます♪♪ |
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『硬い愛の心』 |
ダイヤモンド・ソウの発明以前にカットされた、ハートシェイプ・ダイヤモンドをメインストーンにした異例中の異例の宝物です!! |
この宝物のポイント
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1. ダイヤモンド・ラッシュが可能としたハート型のダイヤモンド
1-1. 無駄が多く出るカット
【参考】様々なダイヤモンド原石 | 通常、ハート型の原石は出てきません。 |
カリナンに第一刀を振り下ろすアイザック・ジョセフ・アッシャー(1908年) | |
1900年にダイヤモンド・ソウが発明される以前は、熟練の勘と技術を持つ専門の職人がそれぞれの原石の正解の"一点"を見極め、精確に突くことでラフカットしていました。結晶が不定形だと、そもそもカットすることができません。カットできるのは、得られた原石のたった6%程度でした。 |
最も大きな9つのラフカットされたカリナン |
これはラフカットされたダイヤモンドです。ハート型は複雑なので、都合よく自然にハート型に割れることはありません。 |
ハート型にするには、ラフカットされた石を磨きまくって形を整える必要があります。 貴重な原石から、なるべく大きく取りたいのが人間心理です。 磨けば磨くほど小さくなってしまいます。無駄が多く出るハートシェイプカットは、特にダイヤモンド自体が貴重な時代にはトライしようとは思えないカットなのです。 |
世界最大のダイヤモンド供給地 | |
ブラジル鉱山 1730年代後半〜1860年代 |
南アフリカ 1870年頃〜(現在は5位でロシアが1位) |
ミナスの鉱山の奴隷労働(1770年代) | 一攫千金を夢見る男たちが集まったキンバリー鉱山(1870年) |
1870年頃から南アフリカでダイヤモンド・ラッシュが起きる以前、1730年代後半から1860年代にかけてはブラジル鉱山が世界最大のダイヤモンド供給地でした。主に奴隷労働で、地表を人海戦術で探す採掘方法でした。産出量は年平均10万カラット程度でした。 南アフリカのダイヤモンド・ラッシュでは巨大資本が投入され、一攫千金を夢見た男たちが世界各地から集まりました。すぐに枯渇しそうな規模で採掘されましたが、埋蔵量が想像以上に莫大で、価格維持のために供給統制を行う必要があるほどでした。 |
ブラジルと南アフリカのダイヤモンド産出量の推移 【出典】2017年の鉱山資源局の資料 |
グラフ化するとこのようになります。ブラジル鉱山の年平均10万カラットの時代はオレンジ色で示していますが、供給量の桁がまるで違うことがお分かりいただけると思います。 ブラジル鉱山の時代はダイヤモンド自体の稀少性が高すぎて、王侯貴族といえども無駄の多く出るカットは難しかったのです。ダイヤモンド・ラッシュが始まると、南アフリカから上質なダイヤモンドがたくさん供給されるようになりました。 |
デビアス社会長に就任したドイツ系ユダヤ人アーネスト・オッペンハイマー(1880-1957年) | 戦後の時代でも、少し前までは、ダイヤモンドは今より遥かに高価なイメージがありました。 デビアス社が全世界のダイヤモンドの約9割を、採掘/加工/流通/卸売りに至るまで独占していた時代の話です。 近年のデビアス社のシェアは4割程度に落ち込んでおり、デビアス社の支配下にないロシアやオーストラリア産の良質なダイヤモンドの供給によって価格が大幅に下落し、庶民でも買える宝石となったのです。 平均的な中産階級の男性の給料の3ヶ月分など、もはや必要ありません(笑) |
しかしながらこの宝物が作られた時代は、ダイヤモンドは庶民には手が出ない憧れの存在でした。上流階級にとっても非常に高価な宝石でした。 そうは言っても、上流階級は相応のお金を出せば手に入る宝石となっていきました。 このような絶妙な供給量により、より贅沢なカットを施して財力や美意識を示すという方法が選択肢として選べるようになったわけです。 |
1-2. モーターの研磨機の発明
1-2-1. ラフカットされたダイヤモンドの研磨
劈開でラフカットしたダイヤモンドは、研磨して形を整え、さらに表面を滑らかに整える必要があります。 ダイヤモンド粒子を使った回転盤に均等な力と角度で押し付けて、徐々に削るという方法で行います。 昔は2人で行う作業でした。回転盤にルースを押し付ける人と、回転盤を回す人です。回転盤の動力として家畜を使用することもありましたが、均一な速さで回し続ける必要があることから、基本的には人力でした。 これだけで2人分の人件費が必要となります。 |
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ダイヤモンドの切削加工場(1710年頃) |
最も大きな9つのラフカットされたカリナン | 宝石として仕上げられた9つのカリナン |
しかし、莫大な財力を持つ王侯貴族にとって、それは大した問題ではありません。 英国王エドワード7世に献上されたカリナンが1908年にカットされた事例を見ると、ラフカット後の9石をルースの状態に整えるのに3人で1日14時間、8ヶ月かかったそうです。これは当時のトップクラスのカット工房が、最新鋭の電動研磨機を使っての時間です。 モーターがなかった時代、人力で回転盤を回すやり方では、かかる時間の観点から不可能な所業です。 |
1-2-2. 技術革新によって生み出される新しいジュエリー
劈開を無視した魅力的な形状のダイヤモンド・ジュエリー | ||
マーキーズ・ローズカット | プリンセスカット | ブリオレットカット |
マーキーズシェイプ・ローズカットダイヤモンド ロケットペンダント フランス 1905年頃 SOLD |
『The Beginning』 エドワーディアン ダイヤモンド&エメラルド リング イギリス 1910年頃 SOLD |
『雫の芸術』 ダイヤモンド&天然真珠 ブローチ フランス 1920年頃 SOLD |
アイデアはあっても、技術的に不可能というものは幾つもあります。 技術革新があった時、それらが一気に花開くことがあります。劈開を無視した、これらのカットも1900年のダイヤモンド・ソウの発明が生み出したものです。 |
1-2-3. 動力を使った研磨機の発明
アムステルダムのダイヤモンドカットの加工場(19世紀) | ダイヤモンドラッシュ以前は流通量が限られていたため、世界中の王侯貴族相手といえども業界の規模としては細々としていました。 1860年代に急激にブラジル鉱山が枯渇した結果、ダイヤモンド関連の事業者は廃業や規模縮小に追い込まれる事態となりました。 |
ブラジルと南アフリカのダイヤモンド産出量の推移 【出典】2017年の鉱山資源局の資料 |
今のアンティークジュエリー業界がそうであるように、市場規模が小さいと巨大資本は入ってきません。通常、小さな市場だと優秀な人材は集まりませんし、研究開発投資なども行われません。投資回収は不可能で、赤字にしかならないからです。だからこそダイヤモンド産業は細々とした業界でした。 しかしながら南アフリカのダイヤモンド・ラッシュによってダイヤモンドの供給量が桁違いに増えると、加工する業界の規模も桁違いに大きくなりました。そうなると大手資本も目をつけますし、研究開発のための投資も積極的に行われるようになります。 |
ヘンリー・モース | 野心あふれる世界中の発明家がこぞってダイヤモンド産業に情熱を注ぎ、1870年代初めにヘンリー・モースとチャールズ・フィールドが蒸気機関を使った研磨機を発明しました。 1891年には電動の研磨機が発明され、ついに商用のラウンドブリリアンカット・ダイヤモンドの時代が到来したとされます。 つまり、それまではラウンドブリリアンカット・ダイヤモンドは商用とみなされなかったということです。それほど研磨は大変な作業であり、産業として儲けるには現実的でなかった証なのです。 |
モースによる研究のメモ | モースはゼロから自身の才能だけで始めたわけではなく、会社の立ち上げ時に、高度なカット技術を持つことで知られるベルギーのアントワープからカット職人を招聘していました。 その技術をアメリカ人従業員に習得させ、南アフリカからの膨大なダイヤモンドを加工して腕を鍛えさせました。こうしてアメリカにも、ダイヤモンドの加工産業が誕生したのです。 |
鉄道王ヴァンダービルト家の仮装舞踏会で電気照明を持ち自由の女神に扮したアリス・ヴァンダービルト(1845-1934年)1883年、38歳頃 | 当時のアメリカは、『金めっき時代』と呼ばれる拝金・成金主義の時代を謳歌していました。 鉄道王ヴァンダービルト家のアリス・ヴァンダービルトもそうであったように、莫大な富と権力を手中にしたアメリカの新興富裕層は、こぞってヨーロッパで買い物していました。 まだアメリカでは、このような大富豪が満足する産業が確立していなかったからです。 いくらでもお金を落としてくれる顧客の存在は、単なる経済の循環のみならず、技術や文化を発展させる効果もあります。 アメリカ人富裕層の爆買いが国内のダイヤモンド産業を生み出し、技術革新を起こし、新しいダイヤモンド・ジュエリーを生み出す動力となったのです。 |
硬い愛を示すことができる、ハート型のダイヤモンドは誰もが夢見たことでしょう。 しかし、技術的なことから現実化できませんでした。 それがモーターを使った研磨機の発明によって、トライできるようになったのです。まさに夢が詰まったダイヤモンドでもあるのです♪ |
2. 大きさのある上質なダイヤモンド
2-1. 厚みのある贅沢で美しいカット
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このダイヤモンドは、カットした状態で約0.75ctあります。0.5ctでも存在感がありますが、0.75ctほどもあると、ダイヤモンドとしてかなり存在感を感じます。 |
厚みがしっかりあるのも特徴です。 透明度の高い上質な石だからこそ、透明感と煌めきの美しさをより感じることができます。 |
【参考】1ctオーバーのダイヤモンド・リング(ハリーウィンストン 現代) | 【参考】ダイヤモンド・リング(現代) |
現代ジュエリーは美しさではなく、コストカットによる利益の最大化を優先するため、薄っぺらくカットされる傾向にあります。そのようなものは正面から見たら大きくても、横から見るとペラペラだったりします。厚みがないので透明感を感じにくいですし、ファセットの設計がいまいちなので、白っちゃけた輝きやモサモサと弱い輝きしか出てきません。 |
今回のハートフォルム・ダイヤモンド | 【参考】現代のブリリアンカットのテーブルの輝き 左:反射していない場合(チラチラした輝き) 右:反射した場合(白っちゃけた輝き) |
右は現代のブリリアンカットです。底部の光が全て反射するよう計算された結果、光が抜けないので透明感がゼロです。そもそもの定義がイケてないカットです。数学的な面白さを追っただけのカットであって、本当の輝きの美しさを表現するためのものではありません。 ブリリアンカットはテーブルが広いため、テーブルが面反射する際に白っちゃけて見えるのです。一方、テーブルが面反射しない時は、細かすぎる下部ファセットがチラチラと弱く反射するため、モソモソとした輝きに感じます。良いことなど何1つありません。 今回のハートフォルム・ダイヤモンドはテーブルが狭く、クラウンに高さを出した設計で、透明感と輝きのバランスがとても良いです。 |
2-2. 現代とは異なるハート型と石留に見る価値
2-2-1. 現代のハートフォルム・ダイヤモンド
大衆をターゲットにした民主主義経済は、絶えず売り続けなくては存続できないビジネスモデルです。大量生産したものを、大量消費してもらう必要があります。壊れないもの、長く愛用できるものを作り、大切に長く使われては新しいものを買ってもらえません。それでは成立できない経済システムです。 だからすぐ壊れる消耗品であったり、すぐ流行遅れになるデザインを押し付けることで、モノのライフサイクルを短くして消費者にお金を吐き出させ続ける経済システムが構築されました。 |
『ミラー・ダイヤモンド』 アーリー・ヴィクトリアン オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド リング イギリス 1840年頃 ¥3,700,000-(税込10%) |
『夜桜を舞う梟』 両面・赤銅高肉彫り象嵌 ロケット・ペンダント 赤銅:日本 1870年頃 ロケット:イギリス 1870年頃 ¥3,800,000-(税込10%) |
王侯貴族が経済や文化を牽引していたアンティークの時代は、ジュエリーは消耗品などではなく、財産性を持つ資産の1つでもありました。稀少価値のある素材、卓越したセンスと高度な技術に基づく高い芸術性などが、財産としての稀少価値を生み出していました。財産として代々受け継がれるのが当然ですし、そのために100年以上の使用に耐える耐久性は当たり前です。 |
『La Dame pourpre』 アーリー・ヴィクトリアン アメジスト 一文字リング イギリス 1840〜1850年頃 ¥950,000-(税込10%) |
『新時代の花』 モダンスタイル ダイヤモンド ピアス イギリス 1910年頃 ¥1,500,000-(税込10%) |
しかしながら100年以上も愛用できるものを売っていては、1度買ったら終わりになります。それでは現代のビジネスモデルではすぐに商売が成り立たなくなります。だから市場経済主義の商品の場合、すぐに飽きたり、壊れるものでなければなりません。 現代宝飾業界にとって、耐久性と普遍の魅力を持つアンティークの価値あるジュエリーは、邪魔な存在でしかありませんでした。そこで生み出されたのが、ダイヤモンドの4C戦略でした。 |
アイデアルカット・ダイヤモンド | 南アフリカ鉱山から無尽蔵に出てくるダイヤモンドは、供給量の観点からも、大衆ビジネスに最適でした。 ダイヤモンドが唯一無二の至高の宝石とし、カットも4Cに合わないものは価値なしと定義しました。 それまでジュエリーなど買ったことがなかった一般庶民は、楽して自分たちからお金儲けするために、業界が嘘を教えるなんて思いもしません。結果、ダイヤモンド以外の宝石を使ったジュエリーや、アンティークのダイヤモンド・ジュエリーの排除に成功しました。 |
EXCELLENT、VERY GOOD、VERY GOOD | 何の違いがあるかよく分からないものに全力を捧げる、シュールな光景です(笑) |
個性のない工業製品化されたブリリアンカット・ダイヤモンド | |
【参考】タイヤのようなパヴェのエタニティ・リング(現代) | 【参考】現代のダイヤモンドリング |
最近では現代ジュエリーに興味を持たない人が多くなっていますが、それまでジュエリーを見たことすらなかった戦後の大衆は、高度経済成長などもあって一通りの人が買いました。ただ、同じようなものばかりで見飽きますし、メッキは剥がれます。こんなものに本当に価値があるのか、これが本当に美しいと言えるのか。 大衆は愚かではありません。実際に手に入れ、身近なものとなり、心の満足が得られないことを経験で学んだ結果、多くの人たちは買わなくなります。 |
【参考】奇をてらって目新しさをPRする現代ジュエリー | ||
原石 |
プリンセスカット |
オールドカット |
その結果、今度はブリリアンカット以外に活路を求めました。4Cに適応するカット以外は価値がないと強烈にPRしたのに、その舌の根が乾かぬうちに「個性があるカットが素敵でしょ!!」と方針を変えました。自分たちの首を締めることになるので、今では4Cのカットを強く言わなくなりました。厚顔無恥さに感心しますが、詐欺師には必須の特徴ですからね・・。 |
ファンシーカット・ダイヤモンド "Fancy cut diamonds" ©Paul Noilimrev(26 Sptember 2012, 04:58:11)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
そういうわけで、個性を売りにするカットの1つとして売り出されたのが、ハートフォルム・ダイヤモンドでした。 |
2-2-2. 現代のダイヤモンドのカット
【参考】ハート型ダイヤモンド リング ハリー・ウィンストン 現代 ¥4,400,000台中心 【引用】HARRY WINSTON /ハートシェイプ・クラシック・リング ©Harry Winston, Inc. |
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現代のハートフォルム・ダイヤモンドは、はっきりとしたハート型に見えます。このイメージで今回の宝物を見ると、ハート型と思わないかもしれません。 |
ダイヤモンド・ソウ(1903年頃) | 【参考】進化したレーザーによる切断装置 |
しかし、今回のダイヤモンドがカットされた時代は、ダイヤモンド・ソウすらありませんでした。現代ではコンピュータ制御のレーザーでカットする時代です。職人の技など微塵も入る余地はありません。 |
【参考】ハート型ダイヤモンド・リング(
ハリー・ウィンストン 現代)¥4,114,000〜 【引用】HARRY WINSTON /ハートシェイプ・プロングセット・リング ©Harry Winston, Inc. |
劈開を無視し、職人の勘なども抜きに同じものを大量量産できます。ありがたみゼロなデザインですが、それでもブランドの権威とダイヤモンドの量によって、高級品であると納得させる商売スタイルかもしれません。実際には同じものがいくつでも簡単に作れますから、稀少価値も美術品としての価値もあるわけがありません。現代ジュエリー業界が虚飾の世界であることは疑いようもないのです。 |
2-2-3. 古い時代ならではのハートフォルム
レーザーどころか、ダイヤモンド・ソウすらなかった時代・・。 劈開でラフカットし、そこからこの形に削って整えるまでに、一体どれほどの時間と労力がかかったことでしょう。 これは硬いダイヤモンドだからこその話です。 |
ムーンストーン | オパール | アメジスト |
1880年頃 | 1880〜1890年頃 | 1880〜1900年頃 |
今回の宝物が作られたのは、1880年から1900年頃です。同時代、ダイヤモンドやルビー、サファイアほど硬くない宝石であれば、ハートカットは作られています。無駄が多く出てしまう贅沢なカットなので、数自体は少ないですが、ダイヤモンドほど硬くなければ技術的には可能でした。 |
この1粒のために設計されたハート型ファセット・カットです。40年以上の経験を誇るGenも認める、極めてクリーンで照りの強い上質なダイヤモンドです。それだけに、無駄が多く出るこのカットは贅沢と言えます。透明感とシンチレーションの両方が抜群です!♪ |
シールパールのハート中央にセットされたこの1粒に、贈り主はどれほどの硬い愛の想いを込めたことでしょう。 人の心を動かす本当に価値ある宝石とは、このようなダイヤモンドを言うのです。 |
2-3. 美意識の高いセッティングが示す価値
2-3-1. 爪留に見る美意識
私もそうでしたが、HERITAGEのお客様は現代ジュエリーを買ったことがない方が少なくありません。 現代のカットによるダイヤモンドの魅力のなさも一因ですが、多くの方が気になってしまうが「宝石以上に悪目立ちする爪」です。 |
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【参考】現代のサファイア・リング |
【参考】爪が特に目立つ現代ジュエリー | |
さすがにここまで酷いものは滅多に見ませんが、正直現代ジュエリーはどれも五十歩百歩です。私は欲しいと思えるものがありませんでした。人によってはブツブツ恐怖症を発症しそうですね(笑) |
【参考】現代のオールドカット・ダイヤモンド リング | |
古いスタイルのカットをアピールする現代ジュエリーもあります。たとえスタイルが古くても、機械によるカットは均一性が高すぎて工業製品感は否めません。性能の良い、人間の目や感覚を誤魔化すのは困難です。 セッティングに関してもアンティーク・レベルの高度な職人技ではないため、作りがスッキリしません。 |
ダイヤモンドのカットも、セッティングも、高度な職人技と共に、人間だからこそ持てる美的感覚が必須です。アンティークジュエリーは、古いスタイルのカットだから美しいわけでは決してありません。隅々に行き渡る人の真心がなければ、心を動かす美しさなんて表現できないのは当たり前の話ですね。 |
2-3-2. 耐久性と気配のなさを両立させる職人技
【参考】ハート型ダイヤモンド リング ハリー・ウィンストン 現代 ¥4,400,000台中心 【引用】HARRY WINSTON /ハートシェイプ・クラシック・リング ©Harry Winston, Inc. |
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価値ある宝石は、絶対に落として無くすことがないよう固定せねばなりません。ただ、そのために固定する爪が目立ち、宝石の美しさを邪魔しては本末転倒です。今回の宝物は、7つの爪でしっかり固定されています。7箇所で固定するため、1つ1つの爪も可能な限り細くできるので目立ちません。叩いて鍛えた鍛造の作りなので、同じ素材でも鋳造(キャスト)より遥かに強度が高いことも、爪を細くできる理由の1つです。 |
【参考】現代のハート型ダイヤモンドの無骨な爪留 | |
現代ジュエリーはどれも似たり寄ったりのつまらないデザインですが、爪留も似たようなものばかりです。ダイヤモンドと言えども角が欠けやすいのは分かりますが、アゴ部分のV字型のこの留め方は無骨で嫌です。全体的にボテっとしています。溶かして固めただけの鋳造(キャスト)の金属は弱いので、どうしても量が多く必要です。「貴金属をたっぷりと使っているから高級」という説明が常套ですが、実は技術や手間にコストをかけない安い発想でしかありません。だから美しくないのです。 |
【参考】現代のハート・デザインのジュエリー | |
寄せ集めて、より低コストでハート型ダイヤモンドに見せるものもあります。作りが稚拙で、爪留がブツブツしています。作りの技術がないため、現代ジュエリーに良いデザインは不可能です。 |
【参考】京セラの合成エメラルド・リング(現代) 【引用】odolly / エメラルドリング(ハーフエタニティ/10石合計1.10カラット/プラチナ/5月誕生石) ©京セラジュエリー通販ショップodolly-オードリー |
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高さを出す爪留の場合、技術による美しさの違いがよりハッキリと分かります。ジュエリーとして使う場合、正面からしか見ないなんてことはありません。アンティークのハイジュエリーは、どの角度から見ても美しく見えるように作られています。現代ジュエリーはそのような美意識が感じられないものばかりです。 |
【参考】ブリリアンカットの鋳造ダイヤモンドリング(現代) |
現代ジュエリーは、拡大しても全く意味がないですね。むしろ逆効果でしょうか・・。 |
2-3-3. 見えない部分への手のかけ方
【参考】ハート型ダイヤモンド・リング(
ハリー・ウィンストン 現代)¥4,114,000〜 【引用】HARRY WINSTON /ハートシェイプ・プロングセット・リング ©Harry Winston, Inc. |
現代ジュエリーの場合、高ければ上質かと言えば全くそうではありません。高いことで有名なブランドでも、裏側の窓のあけ方など作りはかなりチャチです。聞かなければイミテーションのアクセサリーと思いそうです。だからこそ成金は、聞かれなくてもわざわざどのブランドのものかや値段を教えてくれるのです。見ても誰も価値が分からぬことを、持ち主自身も分かっている証です。それ故に、そのようなものをどれだけたくさん持っていても、いつまでも心の満足は得られません。食べても食べても満たされない、餓鬼道に堕ちたも同然です。いつか気づけると良いですよね。高い勉強代を払ったとしても、賢くなれれば決して無駄ではありませんから・・。 |
作りの良し悪しは、やはり裏側を見るのが最も分かりやすいです。ハートフォルム・ダイヤモンドの裏側は、なるべく多くの光を取り込み美しく見えるよう、限界まで穴をあけています。そこまではアンティークのハイジュエリーならば通常ですが、この宝物はフレームの裏側がフラワー型になっていることが特別です。正面からは全く見えない部分です。オーダー主の美意識の高さと、贈る女性への愛の深さが伺えます。タダでできるものではなく、相応の費用もかかりますが、とにかく最高の宝物を贈りたかった証です。 |
斜めから見ると、実際に花びらが表現されたお花の上にハートシェイプ・ダイヤモンドがセットされていることが分かります。贈られた女性も、このような細部までの気遣いに喜ぶことができる女性だったに違いありません♪ 言葉のやりとりは必要ありません。『言葉』は制約があります。このような宝物は見ただけで人の想いを深く理解し、心のコミュニケーションが成立できます。 言葉によるコミュニケーションでないからこそ、140年ほど後の時代を生きる私たちも想いを感じ取ることができます。優れたアンティークジュエリーの魅力の1つですね♪ |
3. 天然真珠が高騰した時代のダイヤモンドが主役の宝物
この宝物が作られた時代は、南アフリカのダイヤモンドラッシュによってダイヤモンドの稀少価値が低下し、相対的に天然真珠の価値が上がった時代でした。 ダイヤモンドの稀少価値が低下したと言っても、小さなダイヤモンドだけです。 大きさのあるダイヤモンドはまだまだ稀少だったので、この宝物のメインストーンに選ばれています。 そのような時代背景もあって、他の時代より多くのシードパール・ジュエリーが作られています。 |
19世紀後期のシードパール・ジュエリー
天然真珠の白さは、女性の清楚な雰囲気を惹き立てますね♪ 官製ハガキよりも薄い真珠層しかない養殖真珠では無理ですが、内部まで全て真珠層でできた天然真珠は、内部から放たれる干渉光の独特の美しさがあります。清楚さの中に華やかさもあって、女性にピッタリの宝石です。 |
マルチユースのウェディング・ネックレス | |
だからシードパールは、ウェディング・ジュエリーとしても好まれました。主役の場では上のように、最も華やかな状態で使います。 そうでない時はTPOに合わせて、清楚なネックレスやブローチとして、様々な組み合わせで使うことができます。 |
この2つも愛の贈り物ですね。左のウィッチズハートは定番の愛のモチーフですし、右の宝物は、愛を表現したハートから植物が芽吹き、花開いています。現代の量産品とは全く異なる、1つ1つの宝物に込められたそれぞれの愛の形が愛おしいです♪♪ |
他の宝石と組み合わせたシードパール・ジュエリー
白い天然真珠は無色透明のダイヤモンド同様、あらゆる色石と相性抜群です。だから、様々な色石と組み合わせた多様なシードパール・ジュエリーも作られています。色彩の美しさが惹き立ちますね♪ |
ダイヤモンドと天然真珠の関係
ハートシェイプ・ムーンストーン ブローチ イギリス 1880年頃 SOLD |
ダブルハート ムーンストーン ブローチ イギリス 1880年頃 SOLD |
天然真珠はデイ・ジュエリー、揺らめく蝋燭の炎に映えるダイヤモンドはナイト・ジュエリーに好まれる傾向がありました。それぞれ白と透明ということもあり、この2つだけを意識的に組み合わせてデザインしたジュエリーは多くありません。 |
イギリス 1860年頃 SOLD |
イギリス 1860年頃 SOLD |
イギリス 1870年頃 SOLD |
イギリス 1880年頃 SOLD |
ないわけではありませんが、その場合は基本的に天然真珠が主役で、ダイヤモンドは脇役です。 |
『Flower』 天然真珠 クラスターリング イギリス 1880年頃 SOLD |
天然真珠 リング フランス 1925年頃 SOLD |
『影透』 アールデコ 天然真珠 リング イギリス 1920年頃 SOLD |
年代が違っても、この傾向は普遍です。天然真珠が歴史の中で、絶えず至高の宝石だったことの現れでもあります。印象がガラリと変化してしまったのは、量産の養殖真珠の登場以降です。 |
『Quadrangle』 天然真珠 ネックレス オーストリア? 1910年頃 SOLD |
エドワーディアン バー・ブローチ イギリス 1912年 SOLD |
逆の関係性は見ない印象です。 |
『Shining White』 エドワーディアン ダイヤモンド ネックレス イギリス or オーストリア 1910年頃 SOLD |
『勝利の女神』 アールデコ初期 ガーランドスタイル ダイヤモンド ネックレス イギリス or フランス 1920年頃 ¥6,500,000-(税込10%) |
ダイヤモンドがメインのジュエリーだと、脇役もダイヤモンドであることが通常です。大きさで緩急を付けるだけでなく、ダイヤモンドの場合はカットでも印象をコントロールすることができるため、脇役としての能力は宝石の中でも随一と言えるのです。それもあって、ダイヤモンドがメインでシードパールが脇役のジュエリーは、あまり作られなかったのでしょう。 |
これは珍しい例です。南アフリカのダイヤモンド・ラッシュが始まったばかりの、ダイヤモンドの価値がまだ特別だった時代ならではの作品と言えるでしょう。 |
そうは言っても天然真珠自体の価値も高く、撚り線や粒金などの高度な金細工も特徴的であることから、ダイヤモンドだけが主役とは言い切れません。 |
これらの観点から、確実にダイヤモンドを主役にしたこのシードパールの宝物は、非常に特別な存在と言えます。 ダイヤモンドのように硬い愛。 厳密に言えば、ダイヤモンドと言うよりも、贈り主の『硬い愛の心』こそがこの宝物のメインストーンと言えるのかもしれませんね♪ |
4. 最高級品らしい極上の作り
4-1. 完成度の高い曲線の透かし細工
少し前の時代のミッドヴィクトリアンだと、隙間を埋め尽くすようなボテっとしたデザインが多いですが、この宝物は透かしのデザインを駆使した軽やかさも大きな魅力です。 |
曲線のナイフエッジでスパイラルを表現しています。高度な技術と手間を要するナイフエッジ自体が、よほど美意識の高い人のための高級品でしか見ることがありません。直線のナイフエッジ自体が特別な宝物の証と言えますが、それより遥かに難しい曲線スパイラルで精緻なナイフエッジを実現させているのが素晴らしいです。 |
大きさを考えると、鑢(ヤスリ)も特別に作ったことは確実です。 精度を保ったまま磨き上げるには、恐ろしいまでの集中力と忍耐力が必要です。並の職人ができるものではなく、この細工ができることこそ、作者最大の自慢ポイントだったかもしれません。 スパイラルはケルトの渦巻きや太陽エネルギーなど、様々なものをイメージさせます。オーダー主にとっても、きっと特別な意味があったのだろうと思います。 |
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←↑等倍 |
どの角度から見てもシャープさが際立つ、完成度の高い作りです。 1つスパイラルを完成させるだけでも大変ですが、12ものスパイラルがデザインされています。 1年を巡る12の月、DNAの12螺旋など、見る側によって様々なことが想像でき、デザイン的にも魅力が強いです♪ |
4-2. エレガントなフォルムのフレーム
時代的には、開国による日本美術の影響で『直線』がデザインに取り入れられることも多くなった時期でした。 そのような中で、この宝物はこれだけ多くのデザイン要素がありながら、1つも直線がないことも大きな特徴です。 |
天然真珠をセットしたフレームも、全ての辺が絶妙なカーブで表現されています。 端の真珠から上下に実る黄金の果実も、僅かにカーブが付けられています。 |
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←↑等倍 |
この左右端の黄金の果実も、茎はナイフエッジになっています。普通は気づかないくらい、さりげない部分です。このような、細部に至るまでの気遣いと手間の掛け方が素晴らしいです♪ |
フレームはフチの仕上げも見事ですし、よく磨き上げられているので綺麗に輝きます。 |
磨き上げられた黄金の輝きが高級感を演出し、左右対称の曲線のみのデザインが、ヨーロッパ貴族らしい格調の高さとエレガントな雰囲気も醸し出します。 それでいて透かし細工ならではの軽やかな雰囲気もあって、この宝物ならではの魅力となっています。 |
4-3. 高さを工夫した立体デザイン
ハート・フレームの裏側を見ると、フレームに高さが出るように作られていることが分かります。主役のダイヤモンドはそこから一段と高い位置になるよう、セッティングされています。 |
また、ハート型フレームの周囲の装飾も、丸いフレームでセットされた大小のハーフパールは高さを出したセッティングです。高さが均一だとノッペリとした印象になりますが、こうすることで1粒1粒が際立ちます。 |
大きなものはもちろん、小さなハーフパールも精緻な覆輪留めです。 また、この宝物はミルグレインを施していないのも印象的です。 |
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←↑等倍 |
『ゴールド・オーガンジー』 ペリドット&エナメル ネックレス イギリス 1900年頃 ¥1,000,000-(税込10%) |
同じ覆輪留めでも、覆輪の幅やミルグレインの有無で全く雰囲気が変わります。 細かな輝きを無数に放つミルグレインは、ハイジュエリーの重要な技法の1つです。 黄金の繊細な輝きは、ゴールドならではの格調の高さではなく、繊細な美しさを感じさせます。 高度な技術と手間を要するため、美意識の高い高級品でのみ、完成度の高いミルグレインを見ることができます。 |
ミルグレインがない場合は手抜きの安物か、デザイン的に意図してのものとなります。 この宝物はデザインの要素が多いため、ミルグレインまで施すとクドくなったでしょう。 そのようなものが好きな人もいるはずですが、持ち主はスッキリとしたこのバランスを好んだということです。 安物でないことはその他の作りからも明らかであり、センスが良いと感じます♪ |
正面から見ると、ミルグレインのないスッキリしたフレームと、ナイフエッジの線で構成されたシャープなデザインです。2次元で表現してしまう画像では分かりにくいですが、肉眼で見た際、各パーツの高さを工夫した立体デザインが、印象に大きく効いてきます。まさに「実物で見る方がずっと美しい!」と感じる宝物です♪♪ |
4-4. 天然真珠の贅沢なバチカン
天然真珠は個性があるため、数が増えるほど質を揃えるのは大変になります。それでもバチカンの5粒まで揃えるのは、想像できる最高のものを作ろうとした証です。色だけでなく、照り艶も優れた美しいハーフパールが使用されています。サイズ・グラデーションにして隙間なくフレームを埋め尽くしており、本当に贅沢ですね♪ |
裏側
スッキリとした美しい作りです。 バチカンは取り外すことができます。 |
ペンダントとしても、ブローチとしても使えるのが良いですね♪ |
着用イメージ
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短めでも、長めに下げても素敵です。 撮影に使用しているアンティークのゴールドチェーンは参考商品です。 黒の高級シルクコードをご希望の場合は、サービス致します。 ゴールド製で8.5gの重さがあり、金具の摩耗などを考慮すると、シルクコードやリボンで下げたり、ブローチとして使用する方がお勧めです。 もし摩耗しても専門の職人さんが修理できますので、神経質になる必要はございません。どうぞ安心してお楽しみくださいませ。 |
ベルベットのリボンで、クラシックな合わせ方をしても素敵です。お顔周りに近いコーディネートだと、パーティなどでも映えそうです。ハイネックの首元にブローチとして着用しても、きっと素敵ですね♪実はコーディネートの幅が広い、オススメの宝物です♪♪ |