No.00352 新時代の花 |
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魅力的なデザインの小さなピアスです♪♪ |
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1つのピアスに17石、合計34石ものダイヤモンドを散りばめた、全体からのまばゆい煌めきに圧倒されつつも、限界を追求した透かし細工の圧倒的な美しさに心を奪われます!!♪ |

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ダイヤモンドの煌めきもさることながら、0.5mmのシャープペンシルの芯よりも細い透かし細工が見事です。最外周のフレームは花びらと花びらの間の根元と、花びらの先端部分が何とミルグレイン1粒分以下の細さに仕上げられています!!着脱時に力が加わらない、ピアスの小さなパーツでなければ不可能な細工です!! |
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モダンスタイル独特のフラットラインで作られたプラチナの2重円は、暗い場所でより一層インパクトある一瞬の強い輝きを放ちます。ダイヤモンドやグレイン系の細工では表現できない、神々しさすら感じる輝きです!!♪ |
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一方で、信じがたいサイズの極細ミルグレインの繊細な輝きと、 磨き上げられたグレインワークや爪、フレームのプラチナ光沢に魅了されます!♪ |
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『新時代の花』 宝石、神技の細工、凝ったデザインの3拍子が揃った、エドワーディアンの小ぶりなダイヤモンド・ピアスの最高峰です♪ |
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この宝物のポイント
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1. 20世紀初頭のイギリスを感じる明るいデザイン
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ジュエリーにかかるコストは主に二分されます。 ジュエリー全般に言えることですが、どんな時代でも宝石頼りのデザインは多いです。『デザインの魅力』は、おろそかにされる場合が少なくありません。大半の人にとって、価値が分かりにくいからです。 |
小ぶりなピアスで、ここまで複雑なデザインは滅多にありません。高度な技術と、相当な手間をかけて実現されたデザインであり、デザインの魅力がとても強い宝物です。この宝物は、特徴的な時代背景があって生み出されました。 |
1-1. 新世紀ならではの明るい雰囲気
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お花のデザインは可愛らしさや美しさ、可憐さなどを感じるものですが、この宝物からはポジティブさ、フレッシュさ、力強さを感じます。 既に少し未来のアールデコも見据えたような、当時の最先端の時代感が伝わってくるデザインです。 |
1-1-1. 退廃的なデザインが流行した19世紀末
世紀末は独特の雰囲気が漂うものです。今回の宝物は20世紀初頭のイギリスで作られましたが、19世紀末から20世紀初頭にかけて、フランスを中心にアール・ヌーヴォーが流行していました。 イギリスは貴族階級が一応現代まで存続する一方で、フランスは普仏戦争に伴う1870年のナポレオン3世の廃位と共に共和政に移行し、貴族階級が無くなりました。このため、フランスを中心としたアール・ヌーヴォーはフランス貴族主導ではなく、各国から集まった従来の王侯貴族、芸術家や知的階層、新興富裕層と商売人たちが主導した新しい形でした。貴族が主導した時代の貴族らしい雰囲気とは異なる、新しい層による試行錯誤やパワーに満ち溢れた、多様性に富む玉石混交の文化と言えます。 新しい文化は目新しさもあって、貴族がいる国にも大いに影響しました。 |
イギリスの男女別の識字率の推移【引用】Our World in Data / Literacy by Max Roser and Esteban Ortiz-Ospina(First published 2013; last revision September 20, 2018) © Max Roser /Adapted/CC-BY |
19世紀のヨーロッパの特徴として、後半は中産階級が力を持っていたことが挙げられます。産業革命によって中産階級が豊かになり、経済活動に於いて大きな影響力を持つようになりました。しかし、経験も知識もないと、何をどうしたら良いのか分かりません。このため、王侯貴族が主導して国民の教育に力を入れるようになりました。万人が参加しやすい万博の開催や、美術館など大きな箱物の新設などです。それまではごく限られた王侯貴族のみが持っていた教養や知識が、より広く行き渡るようになったのです。 識字率も上昇し、庶民でもやる気があれば、自身で知識を増やしていくことも可能になりました。 |
| 19世紀末の芸術 | |
『墓堀りの死』(カルロス・シュヴァーベ 1890年代) |
『哲学』(グスタフ・クリムト 1899-1907年) |
王侯貴族にとって、知的な教養は非常に重要でした。難しそうなもの、頭良さげなものに憧れる人は今も昔も一定数いますが、特に憧れの上流階級の文化や教養に触れられるようになったばかりの人々にとって、これらは強い関心を持つ対象でした。 難しそうなもの、頭良さげなものが芸術界でも大いに流行したようです。特に19世紀末は世紀末独特の雰囲気もあって、死や狂気をイメージするものも流行しました。 |
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『オフィーリア』ポール・アルベール・ステック(1894年頃) |
劇場で中産階級も演劇を楽しめるようになり、庶民ウケをメインにした様々な演目も演じられるようになりました。 誰でも観て分かりやすい演目がある一方で、やはり王侯貴族の教養を感じることのできるオーソドックスな演目も人気がありました。 『ハムレット』も人気が高く、この時代にはオフィーリアをモチーフにした絵画も多く描かれています。まさに狂気と死ですね。 |
| 【参考】安物のアールヌーヴォー・ジュエリー | ||
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このような流行は、中産階級向けのアールヌーヴォー・ジュエリーにも反映されています。上流階級に憧れた庶民の女性が、頭良さそう、教養ありそうに見せたいと願って使っていたのでしょう。 |
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当時の庶民の女性にとっては高価なものだったと思いますが、私には訳が分からないと言うか、作った人も販売した人も持ち主も訳は分かっていなかったのではと思うほど、訳が分からない表現です(笑) アールヌーヴォーはこのようなものが圧倒的に多いですが、基本的に庶民用に作られた安物なので、HERITAGEでご紹介することはありません。多くが退廃的かつ奇妙です。『頭良さげ』の解釈を間違った結果かもしれません。 |
1-1-2. 勢いに満ちた19世紀から20世紀にかけてのイギリス
大英帝国(1886年) |
世界に先駆けて産業革命を経験したイギリスは、特に1850年頃から1870年頃にかけて大量生産の拠点として『世界の工場』と呼ばれ、『パクス・ブリタニカ』と言う最盛期を迎えました。 その後、各国も産業革命を経験したいった結果、世界の工場としてのイギリスの優位性は失われていきましたが、新たに金融の中心として機能し、卓抜した経済力と軍事力を背景に、自由貿易や植民地化を巧みに使い分けて、19世紀半ばから20世紀初頭までの期間は世界の中心として栄えました。 |
| イギリス発祥のデザイン運動 | |
| アングロ・ジャパニーズ・スタイル 1851年頃〜1910年代 |
アーツ&クラフツ運動 1880年頃〜 |
『英国貴族の憧れ』アングロジャパニーズ・スタイル リング バーミンガム 1876〜1877年 SOLD |
『フラワー・ステッキ』ダイヤモンド フラワー ブローチ イギリス 1880年頃 SOLD |
世界の造船場スコットランドを持つイギリスは、外交や輸出入の面でも世界をリードしており、開国した日本との交易も先進していました。このため、イギリスと日本の美術様式を融合させる、アングロ・ジャパニーズ・スタイルの取り組みもいち早く始まりました。 その影響も受けて、ウィリアム・モリスのアーツ&クラフツ運動につながったようです。身近なありのままの自然にモチーフを求めたり、中世のような職人による高度な手仕事によるモノづくりというのは、まさに当時の日本が特徴としていたものです。 イギリスのアーツ&クラフツ運動などの影響を受けて、フランスのアール・ヌーヴォーへとつながります。イギリスではアール・ヌーヴォーは流行しなかったとされますが、元となった1つであるアーツ&クラフツ運動を既に経験していたイギリス人にとっては、時代遅れに感じたからとも言えるのです。 |
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| ウィリアム・モリスのデザインの進化 | ||
『トレリス』(1862年) |
『フルーツ』(1864年) |
『アカンサス』(1875年) |
『トレリス』(1862年)はモリスが28歳頃の、初期の作品です。理想像を描こうとする意思が伝わってくる一方で、デフォルメは殆ど感じません。13年後の『アカンサス』を見ると、ありのままの自然な姿ではなく、デフォルメが強く入っており、高度に意匠化されています。既にアールヌーヴォーな雰囲気ですね。 |
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| イギリスのアール・ヌーヴォー系のデザイン | |||
『幸せのメロディ』ダイヤモンド ブローチ イギリス 1880年頃 SOLD |
『生命の躍動』ルビー&シードパール ブローチ イギリス 1900年頃 SOLD |
アールヌーヴォー シードパール ネックレスイギリス 1900年頃 SOLD |
『MIRACLE』1905-1915年 ¥10,000,000-(税込10%) |
このため、1880年頃のイギリスには既に『幸せのメロディ』にも見られる通り、アールヌーヴォーのようなデザインのハイジュエリーも作られているのです。 数少ない、イギリスのアールヌーヴォー・ジュエリーとして『生命の躍動』やシードパール・ネックレスがあります。刻印でも判断できますが、Genや私はデザインからも、フランスではなくイギリスで制作されたものと判断できます。イギリスのこの時代のハイジュエリーのデザインは、退廃的な雰囲気がなく、明るい未来への希望に満ちていてパワフルです。 |
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外輪蒸気船クラーモント号(1870年) |
アイアン・デューク級蒸気機関車(1892年) |
18世紀に蒸気機関が発明され、19世紀はその技術を応用した各種の乗り物が発達していきました。帆船の時代から蒸気船へ移り、蒸気機関車の登場によって人だけでなく陸路での物の大量輸送も可能となっていきました。まさに大きく変わり行く時代でした。 |
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1840年のロンドンからの鉄道網 |
特にイギリスは先進していました。例えばブリテン島の南端に位置するブライトンは、王侯貴族の社交の中心地の1つであり、有名リゾートでした。 1841年にブライトンまでの鉄道が開通すると、ロンドンから日帰りのアクセスも可能となり、毎年10万人を送客するようになりました。産業革命によって豊かになった中産階級の衣食住が満ちたり、旅行も楽しめるようになりました。その旅先の1つとして、憧れの上流階級の高級リゾート地に庶民も行けるようになったのです。 |
ブライトン・ピアと砂浜"Brighton Pier, Brighton, East Sussex, England-2Oct2011 (1) " ©Ian Stannard from Southsea, England(2 October 2011, 15:14)/Adapted/CC BY-SA 2.0 |
元々は王侯貴族のリゾートとして発展したブライトンでしたが、庶民が主要顧客層に移っていきました。その結果、1899年にはゲームセンターや遊園地があり、ジェットコースターも楽しめる桟橋ブライトン・ピアもオープンしました。退廃的な世紀末どころか、庶民に至るまでワクワクした活気に満ちた時代だったはずです。 |
アルフレッド王子を乗せた戦艦ガラテア(1869年)"The Galatea carrying H. R. H. The Duke of Edinburgh. Wellcome V0036696 " ©Wellcome Trust/Adapted/CC BY-SA 4.0 |
上流階級や富裕層に関しては、蒸気船の発達によって世界旅行にも出られるようになりました。これはイギリスのアルフレッド王子が1869年に、ヨーロッパの王族として初来日した際に乗って来たイギリス海軍の蒸気フリゲート艦『ガラテア』です。帆も併用しています。船の技術も目まぐるしく進化した時代でした。 |
ロシア皇太子ニコライ2世(1868-1918年)1880年代 |
かつて、辺境の田舎貴族だったイギリス貴族は、教養やマナーを身につけるための実地訓練として、若いうちにヨーロッパ大陸へグランドツアーに出かけていました。 交通手段の発達により、行き先が世界各国となり、各国の上流階級は世界一周の視察旅行に出かけるようになりました。庶民が近隣に行けるようになれば、上流階級は当然その規模になるわけですね。 大津事件(1891年)で有名なロシア皇太子ニコライ2世も、次期ロシア皇帝としての世界視察旅行の目的地の1つとして、日本を訪れていたわけです。日本で23歳の誕生日を迎えました。 |
ニコライ2世のグランドツアーで使っていたロシア帝国のお召し艦アゾフ号(1892年のリトグラフ) |
『アゾフ号の記憶』(ファべルジェ商会 1891年)クレムリン武器庫博物館"Memory pf Azov Egg" ©Stan Shebs(August 2003)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
気軽に異国を訪れ、全く違う文化を直接体験できるなんて、知的好奇心の高い上流階級にとっては画期的で夢のような時代だったことでしょう。 乗り物の発達が著しい時代だったからこそ、お召し艦アゾフ号をモチーフにしたエッグも制作されています。船が特別なものではなくなった現代では、考えられないことですね。 |
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『ノルマンディー号』アールデコ ペンダント フランス 1935年 SOLD |
20世紀に入っても、テクノロジーの進化は勢いが止まりませんでした。まさに『科学の時代』でした。 女性初の世界一周旅行は誰が成し遂げるのか。最短記録はどの国どの船が更新するのか。豪華客船の優雅な旅・・。 馬から自動車やバスへと移動手段が変わり、空飛ぶ飛行船や飛行機まで出て来た時代です。 出始めの頃は何事も高価なので、大半の庶民には無縁に近いものだったでしょう。しかしHERITAGEでご紹介する宝物の持ち主だったような人たちは、まさにこのような時代の最先端を経験していました。 |
| エドワーディアンのポジティブな雰囲気のハイジュエリー | ||
今回の宝物 |
『ベルエポックの華』イギリス 1900-1910年頃 SOLD |
『Shining White』イギリス or オーストリア 1910年頃 SOLD |
フランスは1870年の普仏戦争で国土が戦場となり、敗戦もあって大変な経験をした人も多く存在しました。一方のイギリスはそこまでの状況は未経験でしたが、第一次世界大戦によってイギリスも国土が戦場となり、身近に死を感じた人も多くいました。この経験によって、第一次世界大戦以降はまたデザインの雰囲気も変わって来ますが、それまではとにかくポジティブな雰囲気のデザインが多いのです。 裏付けのないポジティブではなく、イギリスという国自体に勢いと強さがあったため、自信に満ち溢れた明るいパワーがデザインに宿っています。 |
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この宝物は、イギリスのエドワーディアンのハイジュエリーならではのデザインと言えるのです♪ |
1-2. モダンスタイル要素のあるエレガント・デザイン
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この宝物はデザインの過渡期に生み出されているため、定まったカテゴリーに当てはめるのが困難です。 エドワーディアンはヨーロッパの上流階級らしいエレガントなデザインと、アールデコにつながるスタイリッシュな雰囲気のデザイン、さらにグラスゴー発の未来的なモダン・スタイルが存在しました。 |
1-2-1. エドワーディアンのエレガント・デザイン
母から贈られたヴィクトリア女王のピアス(1850〜1860年頃)【出典】Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2024 |
ヴィクトリア女王がファッション・リーダーだったミッド・ヴィクトリアンは、女王が君主としての威厳を保つ目的もあり、大ぶりで主張の強いデザインが流行しました。 アンティークジュエリー市場はそのようなものが多いですが、歴史的に見れば異例の時代です。 |
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| 女王:君主 | 王妃:君主の配偶者 | |
アルバート王配とヴィクトリア女王(1819-1901年) |
アレクサンドラ妃と国王エドワード7世(1903年) |
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国のトップの女性という立場であっても、君主である女王と、君主の配偶者である王妃では立場と役割が全く異なります。君主は主役であり、国を代表する立場として威厳を持たなくてはなりません。 一方、王妃は夫である君主の惹き立て役であり、サポート役です。ヨーロッパ上流階級はレディ・ファーストの文化があるので、右の写真でもエドワード7世が紳士らしく妻アレクサンドラ妃を惹き立てる雰囲気がありますが、左のヴィクトリア女王夫妻を比較すると全く異なる構図なのがお分かりいただけると思います。 王妃は夫の邪魔はせず、その一方で名脇役として華を添えなくてはなりません。だから、通常の王と王妃の時代だと、淑女のジュエリーは華やかさがありながらエレガントで清楚な雰囲気を持つものなのです。 |
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『ゴールドオーガンジー』イギリス 1900年頃 ¥1,000,000-(税込10%) |
『白い花のバスケット』ペンダント&ブローチ イギリス 1910年頃 SOLD |
『永遠の愛』ダイヤモンド ペンダント&ブローチ フランス? 1910年頃 ¥1,220,000-(税込10%) |
『麗しのマデイラ』イギリス 1910年頃 SOLD |
悪目立ちすることで目を引こうとする、成金の奇をてらったジュエリーと違い、王侯貴族のハイジュエリーはオーソドックな王道を選びながらも目を惹きます。王侯貴族が世界を主導した時代は、未来を切り開く存在でもあったので、新しいチャレンジも旺盛です。最先端のデザインや素材、技術も取り入れるため、王道モチーフであっても古臭さは感じず、むしろ時代の最先端を感じるのです。現代人でも見惚れてしまう、魅力的なデザインですね♪ |
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1-2-2. アールデコへつながるスタイリッシュ・デザイン
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エドワーディアン バーブローチイギリス 1912年 SOLD |
![]() トライアングル ブローチ ヨーロッパ 1910年頃 SOLD |
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![]() SOLD |
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アールデコのようなデザインのハイジュエリーも、エドワーディアンには一定数が制作されています。デザインによる年代特定は困難で、エドワーディアンとアールデコを区別するのは素材や、記録された年代のみです。 |
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| 1876〜1879年制作のイギリスの美術工芸品 | ||
『英国貴族の憧れ』天然真珠&トルコ石 リング イギリス 1876〜1877年 SOLD |
『Théière』(1879年)デザイン:クリストファー・ドレッサー 制作:James Dixon & Sons |
ウィリアム・ワットのためのサイドボード(エドワード・ウィリアム・ゴドウィン 1876-1877年) "Godwinsideboard" ©VAwebteam at English Wikipedia/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
アングロ・ジャパニーズ・スタイルとして、早くからイギリスと日本の美術様式の融合が進んでいたイギリスでは1870年代には既にアールデコのような"シンプル・イズ・ベスト"なデザインも生み出されていました。約50年後のアールデコの時代に、ようやく欧米の一般の人たちも感覚が追いついたと言えるでしょう。 |
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1-2-3. 未来的なモダンスタイル
『ストライプ』天然真珠 ペンダント イギリス 1910年頃 SOLD |
『Future Design』天然真珠&ダイヤモンド ピアス イギリス 1900〜1910年頃 SOLD |
『Quadrangle』オーストリア? 1910年頃 SOLD |
![]() 『ALL WHITE』 ダイヤモンド ピアス イギリス 1910年頃 SOLD |
1900年前後のごく僅かな期間だけ、モダンスタイルとカテゴライズできる、いま見てもなお未来的に感じられるハイジュエリーが生み出されています。 一見するとアールデコのようなスタイリッシュな雰囲気もありますが、単純な直線や幾何学の組み合わせではなく、独特の曲線が組み合わされていたり、プラチナの輝きを印象付ける"面の輝き"が設計されていることを特徴とします。分かる人にだけ分かる、オシャレさを異次元の段階に引き上げる手間が込められています。分からない人には価値が分からない上に、ちょっとしたことに見える部分に信じがたいほどの技術と手間(イコールお金)をかけているため、最終的にはすぐに淘汰されてしまいました。 |
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『Samurai Art』アクアマリン&天然真珠 ネックレス イギリス 1900〜1910年頃 SOLD |
1900年前後という絶妙な期間に生み出されたモダンスタイルは、プラチナが一般ジュエリー市場に出始める1905年頃とタイミングが重なりました。このため、ゴールド製とプラチナ製の両方が存在します。 使う金属によって雰囲気が異なるので、両方が楽しめるのも私たちにとっては幸運と言えます。 第一次世界大戦によってイギリス貴族は疲弊し、それまでのようにジュエリーにお金をかけられなくなっていきます。 美意識を満たすために、お金に糸目をかけず技術と手間をかけられた最後の時代の、王侯貴族らしい魅力的なデザインと言えます。 |
『The Great Wave』モダンスタイル サファイア ブローチ イギリス 1910年頃 SOLD |
エドワーディアンならではのプラチナを駆使したデザインは、まさにヨーロッパ王侯貴族のジュエリーの、デザインの最高到達点と呼べるかもしれません♪ デザインで議論されることが少ないエドワーディアンですが、実は切磋琢磨、新しいものが絶えず生み出されていた非常にパワフルな時代だったのです。 |
1-2-4. エドワーディアンならではの贅沢デザイン
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今回の宝物はプラチナにゴールドバックの、典型的なエドワーディアンの作りです。 デザインとしては、カテゴライズが難しいです。エドワーディアンに試行錯誤された、魅力的なデザインを組み合わせた感じだからです。 |
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アールヌーヴォー系の曲線 | アールデコの 幾何学デザイン |
モダンスタイルの 面で輝くプラチナ |
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『MIRACLE』1905-1915年頃 ¥10,000,000-(税込10%) |
『ヒナゲシ』プチ ネックレス イギリス 1920年頃 SOLD |
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| 『Future Design』 モダンスタイル ピアス イギリス 1900-1910年 SOLD |
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今回の宝物は、上部の緩やかな曲線の重なりが、優美なアールヌーヴォーを連想させます。下部パーツのお花は、アールデコの幾何学を思わせるデザインです。透かし細工も組み合わされており、重厚さを追い求めた旧時代とは異なる、軽やかな美しさがあります。 花芯のダイヤモンドの外周には、プラチナの二重円がデザインされています。面で輝くよう、フラットに作られています。これはモダンスタイルの特徴です。 総合的に見るとモダンスタイルにカテゴライズできる気もしますが、独特のエレガントな雰囲気、それでいてアールデコを思わせる幾何学的なデザインもあって、どの枠にもピッタリとは収まりません。 |
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エドワーディアンに存在した様々なデザインの魅力が、小さなピアスにこれほどまでに詰め込まれていること自体が信じがたいです。 類い稀な美的感覚の女性が、特別にオーダーして作ってもらったのでしょう。 エドワーディアンならではの宝物ですね♪ |
1-3. 大き過ぎず華やかさもあるピアス
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このピアスは小ぶりなのに、デザイン性がかなり高いのが特徴です。 そのようなピアスは、市場では滅多に見つかりません。 |
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1-3-1. TPOに合わせたジュエリーを身につける上流階級
ヴィクトリア女王(1819-1901年)1898年、79歳頃 |
王侯貴族の女性はこの絵のように、いつも華やかなドレスを着て、豪華なジュエリーを着けているイメージを持つ人もいます。 |
| フランスのクラウン・ジュエリー | |
フランス王妃マリー・アメリ・ド・ブルボン=シシレ(1782-1866年)1830年、48歳頃 |
フランス王妃マリー・アメリのサファイアのパリュール(王妃の在位:1830-1848年)"Parure della regina maria amelia, parigi, 1800-15 poi 1850-75 ca" ©Sailko(16 June 2016, 16:34:00)/Adapted/CC BY 3.0 |
一般庶民は、そのような姿を見る機会の方が多いからです。 このようなボリュームあるデザインのジュエリーでも、イミテーションを使ったアクセサリー(コスチューム・ジュエリー)ならば重たくありませんし、破損や盗難の心配も不要です。しかし、貴金属や宝石を使った本物のこのようなジュエリーは非常に重いですし、破損や盗難のリスクもあります。当然、王侯貴族がこのように正装するのは特別な時だけです。 |
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| イギリスのアレクサンドラ王太子妃(後の王妃)のコーディネート | |
| お出かけ着 | 正装 |
1884年、40歳頃 |
1881年、36歳頃 |
エドワーディアンの世界の女性のファッション・リーダーだったアレクサンドラ妃も、日常は宝石ジャラジャラではなく、TPOに合わせたセンスの良い装いです。20代前半から既に肥満体型を気にしていたヴィクトリア女王と異なり、デンマーク王室出身のアレクサンドラ妃はヨーロッパ王族らしい気品や威厳を持つ美しさで、当時の社交界でも人気者でした。そのファッションに、世界の上流階級も庶民も注目していたそうです。 |
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アレクサンドラ王太子妃と3人の娘たち |
現代は、『普段着』のカジュアル化が進みすぎた印象もあります。見なりを整えることと、その日に会う人に礼儀を尽くすことは表裏一体です。当時は普段着イコール手抜きではなく、あくまでも日常用の装いでした。だから正装用の派手なジュエリーは着けませんが、普段着用のジュエリーは上流階級ならば10代でも着用します。 この写真では、当時流行していた首元のブローチが分かりやすいですね。日中の屋外のようで、小物としてパラソルを持ち、帽子も着用しています。普段は着けないということはなく、ジュエリーは王侯貴族にとって欠かせない存在でした。 |
| 普段着の英国王エドワード7世妃アレクサンドラ | |
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【引用】Britanica / Alexandra ©2021 Encyclopædia Britannica, Inc. |
ジュエリーは摩耗せぬよう、不適切なヘビー・ローテーションをすることはありませんが、コーディネートを変えたりもします。TPOに合わせて、様々なジュエリーを使い分けていたのがヨーロッパの上流階級です。 |
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| TPOで使い分ける上流階級のジュエリー | ||
| 夜・正装 | 日中・正装 | 日常用 |
『勝利の女神』ガーランドスタイル ネックレス イギリス or フランス 1920年頃 ¥6,500,000-(税込10%) |
『平和のしるし』ローマンモザイク デミパリュール イタリア 1860年頃 ¥2,030,000-(税込10%) |
『愛の白鳥』スワン バー・ブローチ イギリス 1923年 ¥950,000-(税込10%) |
だから、それぞれのTPOごとに最高級品が存在します。同じ階級の女性が、シーンに合わせて使い分けていたものです。どれも知的で上質です。 |
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| アレクサンドラ王太子妃(後の英国王妃)と3人の王女 | |
| 結婚式出席用の正装 | 普段着 |
ジョージ王子の結婚式用(1893年) |
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派手な宝石が付いた巨大なジュエリーこそが、貴族の女性が使っていた高級ジュエリーと勘違いしている人も少なくないようです。小ぶりなもの1点しか買えなかった庶民の女性がいたことも事実で、そのような女性のための安物の粗雑なジュエリーは確かに存在します。しかし、それらは上流階級の女性のための日常用のジュエリーとは、デザインも質も全く異なります。 |
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![]() 『芸術には自由を』 セセッション ブローチ オーストリア(ウィーン) 1900年頃 ¥770,000-(税込10%) |
当時の王侯貴族でも正装用の時しか使わない派手なだけのジュエリーなんて、自慢して自己顕示欲を満たしたい人には有用かもしれませんが、それ以外の現代人には持っていても意味がありません。 巨大で宝石じゃらじゃらイコール高級というのは成金の発想であり、そんなものを自慢すると、知識も想像力もないことがバレてしまいます。 小ささの中に詰め込まれた教養や贅沢こそが、真のアンティークジュエリーの魅力です。現代人でもコーディネートしやすいのも良いんです♪ |
1-3-2. TPOに合わせたピアスの大きさとデザイン
ピアスも昼と夜、正装用と日常用その他、各種社交のシーンに合わせて様々な種類があります。 当時の王侯貴族は一点しか使わないということはなく、ピアスを主役にするのか、ピアスは他のアイテムの惹き立て役にするのかでも大きさやデザインが変わってきます。目的に合わせて、本当に多様です。 アンティークの時代は、ダイヤモンドのピアスだけで比較しても実に様々です。20世紀初頭のみを見てみましょう。 |
1-3-2-1. 定番デザインのダイヤモンド・ピアス
| アールデコのハイクラスのシンプルなダイヤモンド・ピアス | |
『Bright things』アールデコ ダイヤモンド 3連ピアス イギリス 1930年頃 SOLD |
オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド ピアスイギリス 1920年頃 SOLD |
| このような、何にでも合わせやすいシンプルなデザインは普遍性があるので、定番化して現代でも存在しますね。デザインではなく、宝石の質と作りの良さが価値を分けます。 | |
| アールデコの最高級品 | 【参考】現代のダイヤモンド・ピアス | ||
『Bright things』ダイヤモンド 3連ピアス イギリス 1930年頃 SOLD |
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現代のブリリアンカットはその設計上、輝きが弱い上に大量生産の無個性な機械カットなので魅力がありません。ただの超硬い石ころです(笑) 左のアールデコのピアスのように、良いプロポーション設計、個性が存在する職人のハンドカット、安さでなく美しさを追求した磨き上げの良さ。これらが揃うことで、ダイヤモンドのポテンシャルが惹き出されるのです。 |
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1-3-2-2. デザイン重視のダイヤモンド・ピアス
アンティークの時代でも安物はつまらないデザインが多いですが、美意識の高い上流階級はデザインにこだわります。十分にセンスが良いものはなかなか見つかりませんが、Genと私の基準を満たした宝物を実物大で並べてみました。 |
| 正装用〜華やかな場 | 特殊な社交の場〜日常用 | |||||
SOLD |
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今回の宝物 |
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↑↓等倍![]() |
正装用は大型なので、それだけデザインできる面積があります。大きいほど、デザインの要素が多いことを感じていただけるでしょう。小ぶりでありながら要素が詰め込まれたピアスは本当に少ないです。滅多に出てこないので画像が古いですが、さらに比較しましょう。 |
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| 小さな面積にデザイン要素を詰め込んだエドワーディアンのピアス | ||
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今回の宝物 |
SOLD |
ほぼ等倍で並べています。右は13年前の画像なので、解像度はご容赦ください。作りや細部へのこだわりは、どれも優れています。比較のためにご注目いただきたいのは、デザイン要素の詰め込みぶりです。 左はおそらく正装用なので、かなり凝っています。右も小ぶりながら要素が詰め込まれています。過去47年間のお取り扱いから、両側の宝物くらいデザインに凝ったピアスは滅多に出てこないと言えます。小ぶりであるにも関わらず、これほどまでにデザイン要素を詰め込んだ今回の宝物は、例外的な存在だと断言できます! |
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小ぶりながら特別な気品を放つピアスは、一体どのようなシーンで着用されていたのでしょうね♪ 現代の日本人がコーディネートしやすい大きさと清楚な雰囲気でありながら、特別な存在感を放つ宝物です。 |
2. アンティークならではのダイヤモンドの魅力
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ジュエリーの魅力の1つがダイヤモンドです。 この宝物は、アンティークジュエリーならではのダイヤモンドの魅力が多く詰まっているのも特徴です♪ |
2-1. カットが画一的になる直前の時代
「磨く前のダイヤモンドの原石」という表現があります。原石の状態では、ダイヤモンドは輝きもファイアも透明感もありません。魅力的な宝石としてのダイヤモンドを手にするには、いかに上質な石を入手し、適切なフォルムに整え、表面をピカピカに磨き上げるかが重要です。 |
2-1-1. 人の手で加工しないと引き出されぬ魅力
| 古代ローマのダイヤモンド・リング(3世紀頃)大英博物館 | |
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【引用】Brirish Museum / finger-ring © British Museum/Adapted |
ダイヤモンドは硬すぎて、古い時代は加工のしようがありませんでした。劈開性があるため、ハンマーで叩きまくって偶然割れるという方法があったようですが、結晶系が整っていない石だと、それすら無理でした。このため、古い時代のダイヤモンド・ジュエリーは原石をそのまま使っていました。 あまり綺麗に見えないと思いますが、ゴールドにセッティングしており、最高級品として作られたことが分かります。この原石は、選び抜かれた極めて稀少性の高い石なのです。 |
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天然ダイヤモンドの約94%は、結晶系が整っていません。一般的にダイヤモンドの原石として紹介される、八面体の綺麗な形の原石自体が稀です。大半は工業用途品質で、磨いても美しくなれません。 |
| 【参考】現代のダイヤモンド原石のリング | ||
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ネタ切れの激しい現代ジュエリー業界ですが、あくまでも上質さを追うのではなく、奇をてらって目新しさでラクにボロ儲けしようという方向になるようです。ダイヤモンド原石を使ったアクセサリーが販売されているようですが、ただダイヤモンドなだけで見た目は全く魅力がありません。 |
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古代ローマ【引用】The Metropolitan Museum of Art / Octahedral Diamond Ring ©The Metropolitan Museum of Art. |
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いかに古代の人が原石を厳選してジュエリーにしたかが分かりますね。それでも磨かなければ美しくはないのですが、当時はダイヤモンドがポテンシャルとして秘めていた煌めきや透明感ではなく、何ものにも屈服しない特別な強度に価値を見出されていたようです。 |
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2-1-2. カットの形状の進化
| ポイントカット | ステップカット | ダッチローズカット | オールド ヨーロピアンカット |
ルネサンス ポイントカット・ダイヤモンド リングイタリア 15世紀 SOLD |
チューダー朝 リング1485-1603年 SOLD |
ジョージアン ダイヤモンド リングイギリス 1820年頃 SOLD |
『ミラーダイヤモンド』イギリス 1840年頃 ¥3,700,000-(税込10%) |
カットの技術が生み出されると、技術と共にカットのフォルムも進化していきました。それに伴い、ダイヤモンドが秘めていた多様な表情を惹き出せるようになっていきました。透明感を感じるステップカットも強い魅力がありますが、一般にはダイヤモンドならではの華やかな煌めきが持て囃され、ローズカットやオールドヨーロピアンカットへと発展していきました。 |
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2-1-3. カットの技術革新に伴うコスト的な変化
カリナンに第一刀を振り下ろすジョセフ・アッシャー |
ダイヤモンドのカットには2つの工程があります。 劈開を見極め、正解の1点を精確に突いて割るラフカットの工程が1つ目です。 これは見極めるための経験値と勘が要となる職人技であって、極端に時間がかかるものではありません。 |
ダイヤモンドの切削加工場(1710年頃) |
技術革新によって大きく変化するのは、ラフカット後の磨きの工程でした。 機械的な動力がない時代は、2人1組で作業していました。 1人はひたすら回転盤を回し、もう1人が回転盤の研磨面にダイヤモンドを押し付けて少しずつ磨いていくという作業です。 1870年代初めに蒸気モーターを使った研磨機が発明されるまでは、どれほどの時間をかけて磨き上げていたのか想像もつきません。 |
ダイヤモンド・ソウ(1903年頃) |
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さらに1891年の電動研磨機の発明によって、商用のラウンド・ブリリアンカット・ダイヤモンドの時代が到来したと言われています。 さらに1900年の電動のダイヤモンド・ソウの発明は画期的で、劈開の方向すらも無視したカットが可能となりました。それまでは結晶系が整った最高品質の6%程度しか宝石として利用できなかったダイヤモンドですが、利用価値がなかったそれ以下の品質のものまで宝石として販売が可能となったわけです。また、職人の経験値と勘も不要となっていきました。 |
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原石の状態のカリナン(1908年) |
イギリス王エドワード7世に献上されたカリナンのエピソードを見ると、宝石としてのダイヤモンドの値段には技術料と人件費が占める割合が極めて高いことが分かります。 上手にカットできなければ、ただの小汚い石ころですしね(笑) 人の手があってこその、美しいダイヤモンドなのです。 実際に作業を始めた後のカリナンのラフカットには、4日かかっています。 |
最も大きな9つのラフカットされたカリナン |
宝石として仕上げられた9つのカリナン |
既に電動研磨機があった時代とは言え、硬いダイヤモンドをダイヤモンドで少しずつ削って形を整えていく作業は、気が遠くなるほど時間と根気がいるものでした。9石は3人で1日14時間、8ヶ月作業してようやく宝石の形に磨き上げられたそうです。現代の日本だと労働基準法にひっかかるので、この労働時間自体が無理ですね(笑) 工場の2交代制より長時間労働しています。でも、その分だけ報酬もあったでしょうし、得られる名声も相応だったはずです。誇りを持てる楽しい仕事ならば、寝食を惜しんで仕事ができるものですしね。 |
コ・イ・ヌール(ロンドン塔に展示)英国王室蔵 |
蒸気モーターの研磨機すらない1852年に、アルバート王配がヴィクトリア女王のためにコ・イ・ヌールのリカットをオーダーしています。 現在の貨幣価値に換算して、約5,000万円ほどの費用がかかっています。ダイヤモンドそのものの値段ではなく、リカットするだけでそれだけお金がかかっているのです。 |
【参考】パヴェ・リング(現代) |
現代はコンピューターを駆使したレーザー・カットまで開発されており、技術費や人件費部分のコストが大幅に削減された結果、ダイヤモンド・ジュエリーは大幅に安くなりました。 庶民でも買えるほどです。 ダイヤモンドの稀少性がなくなり素材として安くなった上に、カットのための特別な技術が不要となり、楽に早くカットできるようになった結果です。 |
2-1-4. 技術革新に伴う個性の消失
| 近代化以前のカット | 近代化後のカット |
『幸せのメロディ』ダイヤモンド ブローチ イギリス 1880年頃 SOLD |
『勝利の女神』ガーランドスタイル ネックレス イギリス or フランス 1920年頃 ¥6,500,000-(税込10%) |
カットの技術革新は、ダイヤモンドのカットの正確性にも変化をもたらしました。電動のダイヤモンド・ソウと電動研磨機が使えるようになったことで、対称性の高いカットができるようになりました。その結果、正確性の高いダイヤモンドでジュエリーを作れるようになり、アーティスティックというよりは秀才的な雰囲気となっていきました。 どのような雰囲気を選ぶかは好みによりますが、Genもダイヤモンド自体は、古い時代の個性があるカットが好きだそうです。1粒1粒なるべく無駄が出ないようにしながら、それでいて美しさを最大限に追求してカットされています。だからこそ、それぞれの原石が持つ個性が最大限に生かされ、魅力となります。 新しい時代になると、1粒1粒を惹き立てるというより、機械を駆使して迅速かつ正確にカットしようという方向性になっていきます。 |
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| 近代化前のカット | 現代のカット |
『エメラルドの深淵』珠玉のエメラルド&ダイヤモンド リング イギリス 1880年頃 SOLD |
【参考】エメラルド&ダイヤモンドの量産高級リング(ピアジェ 現代) |
近代化以前のカットと、現代のカットを比較すると、同じ宝石とは思えないほど雰囲気が違います。現代のアイデアルカットは底面から光が漏れない設計であるため、透明感がありません。透明感と共に煌めきとファイアが組み合わさってこそのダイヤモンドなので、数学的には面白くても、美しさの観点からはブリリアンカットはナンセンスなのです。 もう1つご注目いただきたいのが、輝き方の個性です。現代のように1粒1粒が全く同じ形状だと、同じように光が当たると、同じような輝きにしかなりません。見ていてつまらないですし、工業製品でしかありません。昔の個性あるカットだと、同じように光が当たっても、輝きなどの表情が1粒1粒異なります。ただのダイヤモンドであっても、ずっと見ていられるほど美しいのです!!♪ |
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『天空のオルゴールメリー』アールデコ 天然真珠&サファイア ネックレス イギリス 1920年頃 ¥1,230,000-(税込10%) |
エドワーディアンからアールデコにかけては過渡期と言えます。 アイデアルカットで画一的になるのは第二次世界大戦後、大衆の時代になってからです。 オールドヨーロピアンカットならではの美しさがありつつ、かなり形状の正確性は上がった時代です。 |
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このエドワーディアンの宝物は、下部パーツの花芯のダイヤモンドだけがオールドヨーロピアンカットです。それ以外はローズカットです。オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドのカットの正確性がかなり高いです。 |
2-1-5. 技術革新に伴う精確性の向上
『ミラー・ダイヤモンド』アーリー・ヴィクトリアン オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド リング イギリス 1840年頃 ¥3,700,000-(税込10%) |
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古いオールドヨーロピアンカットの特徴の1つは、キュレット(底部)がカットされていることです。精確にカットすることが困難だった時代は、少しだけカットしていました。 最底部に精確にファセットを収束できるようになった現代では、キュレットはカットしません。 |
『スパイダー』オーストリア? 1900年頃 オールドヨーロピアンカット(トランジションカット)・ダイヤモンド、ローズカットダイヤモンド、エメラルド、ルビー、プラチナ、シルバー、18ctゴールド SOLD |
『スパイダー』に使用されたダイヤモンドは、ロンドンのディーラーが『トランジションカット』だと表現していました。 コンテスト・ジュエリーとして制作されたとみられる本作は、1ctオーバーの極めてクリーンなダイヤモンドが使用されており、最初期のトランジションカットを見ることができます。 そうは言っても、この拡大倍率でも分からないので、さらなる拡大画像をご覧ください。 |
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ここまで拡大すると、キューレットが僅かにカットされていることが分かります。肉眼ではほぼ分かりません。まさに過渡期のカットです。 |
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| ガーランドスタイル ネックレス
ヨーロッパ 1905〜1920年頃 SOLD |
エドワーディアンのこのネックレスも、トランジションカット・ダイヤモンドが使用されています。 |
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最高級品として作られた宝物なので、当時の最先端の技術を見ることができます。 僅かにキューレットはカットされています。最終的には必要ないと判断され、後の時代はカットされなくなっていったのでしょう。 |
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今回の宝物のオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドはより小さいため、綺麗な形にカットするには高度な技術が必要です。煌めきすぎることもあって、拡大してもキューレットのカットは殆ど分からないほど僅かです。 |
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キューレットのカットは視認できないものの、現代のブリリアンカットのチラチラとした弱い輝きとは全く異なります。古いカットならではのダイナミックなシンチレーションとファイア、透明感が調和した美しさに惹き込まれますね♪ |
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人の手でこれだけの精緻な作業ができるなんて、本当に感動します。作りを見る時、ミルグレインや透かしなどの金属細工に意識が行きがちです。しかし、宝石のカットも実は超絶技巧の凄技なのです。縁の下の力持ちに感謝ですね♪ |
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ちなみにダイヤモンド自体の質が良い上に、カットの仕上げも極上なので、トランジションカット・ダイヤモンドは裏側も煌めきやファイアが素晴らしいです。まさに裏側も見せたい宝物です!♪ |
2-2. 煌めきと透明感を計算し尽くした知的なデザイン
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この宝物のダイヤモンドは、輝きや雰囲気をよく計算さされていることがポイントです。 注目すべきは、以下の3点です。 |
1. オールドヨーロピアンカットとローズカットを組み合わせている 2. お花の花芯以外は全てローズカット 3. 大小のローズカットを使い分けている |
2-2-1. 消えていったローズカット・ダイヤモンド
1891年の電動研磨機の発明によって、商用のラウンド・ブリリアンカット・ダイヤモンドの時代が到来したと言われています。ラフカットしたダイヤモンドを、それ以前より早く楽に磨いて整えられるようになったからです。 日本の庶民がジュエリーを買うようになったのは、高度経済成長で余裕が出てきた1970年代以降です。戦後の大衆用の大量生産ジュエリーでは、ブリリアンカット・ダイヤモンドが4Cでプロモーションされました。楽にボロ儲けするためです。ローズカット・ダイヤモンドは業界によって排除された結果、多くの人はその存在すら知らない状況です。ただ、その存続に大きな影響を与えたのは、1900年の電動ダイヤモンド・ソウの発明と言えます。 |
| 20世紀に入り起きたラフカット手法の変化 | |
熟練の職人による劈開性を利用したラフカット |
劈開の方向を無視したカットを可能にした電動ダイヤモンド・ソウ(1900年発明) |
劈開を利用したカットは「割る」手法と言えます。一方、ダイヤモンド・ソウは「削る」手法になります。 実は研究所に勤務していた頃、電動ダイヤモンド・ソウや電動研磨機は普通に使っていました。ダイヤモンド・ソウの刃は糸鋸のようなタイプでした。ノコギリは使ったことがある方も多いと思います。物理的に徐々に削っていく手法なので、刃の幅だけ削れていきます。削りカスとして木屑が出てきます。 ダイヤモンドも同様です。劈開性を利用したカットだと、メインのルースと各種サイズの破片が得られることになります。しかし、ダイヤモンド・ソウを使う方式だと、メインのルースと削りカスとなります。 |
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| 『妖精のささやき』 ダイヤモンド・ピアス イギリス 1880年頃 SOLD |
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劈開性を利用していた時代は、メインのルース以外の小さな破片もローズカットなどとして利用していました。上の宝物以外にはセットされたものを見たことがありませんが、マイクロ・サイズの破片もあります。 |
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小さなローズカット・ダイヤモンドを研磨して整えたり、ジュエリーにセットするのは高度な技術と手間が必要です。それでも、劈開性を利用してカットするしかなかった時代は、産出した6%しか利用できなかったため、小さな破片もできる限り利用していました。 ダイヤモンド・ソウによって40%近くを利用できるようになると、技術と手間をかけて破片まで使おうとは考えなくなっていきました。また、そもそも削れて無くなってしまうため、ローズカットに適した破片は得られなくなっていきました。 |
| 高級ジュエリーの方向性の変化 | |
| 王侯貴族向け | 成金向け |
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【参考】ブリリアンカットのみの量産ダイヤモンド・ブローチ(ブシュロン 1940年代) |
アールデコ初期まではローズカットを巧みに組み合わせた左のようなハイジュエリーが存在しますが、ジュエリーの主要購買層が成金に移ってしまったアールデコ後期以降は、ローズカット・ダイヤモンドを使ったハイジュエリーが見られなくなります。 戦後の大衆の時代を待たずに、ただダイヤモンドが大きければ良いとしか考えていないようなジュエリーだらけとなってしまいました。比較すれば一目瞭然です。そのようなジュエリーからは、薄っぺらい人間性しか伝わってこず、美しさなんて微塵も感じられません。本当は、ローズカット・ダイヤモンドは重要なのです。 |
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2-2-2. 王侯貴族からローズカットが大注目されたエドワーディアン
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実はエドワーディアンは、ダイヤモンドにとって特殊な時代です。 |
| ジョージアン貴族のダイヤモンド・ジュエリー | |
『忘れな草』ブルー・ギロッシュエナメル ペンダント フランス? 18世紀後期(1780〜1800年頃) SOLD |
『木の葉』ヘアジュエリー メモリアル ブローチ イギリス or フランス 1820年頃 SOLD |
| 古い時代から、様々なカットを組み合わせたハイジュエリーが作られていました。しかし、敢えてオールドヨーロピアンカットやクッションシェイプ・ダイヤモンドのみを使った宝物も作られています。 | |
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王侯貴族のために制作されたそのようなジュエリーは、オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドやクッションシェイプ・ダイヤモンドを贅沢に使うことが、王侯貴族であっても難しい時代だったからこそ存在します。 |
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『魅惑のトライアングル』ダッチローズカット・ダイヤモンド ネックレス オーストリア 1910年頃 SOLD |
エドワーディアンはとても面白くて、ローズカット・ダイヤモンドを強く意識したジュエリーが王侯貴族の間で流行しています。 他の時代には見られない現象です。 それでも名脇役という使い方が多いのですが、『魅惑のトライアングル』の場合はローズカット・ダイヤモンドのみでデザインされています。 ダイヤモンド・ソウが導入されるようになると、ローズカット・ダイヤモンドは急速に入手困難となっていきました。 しかし、だからこそ美的感覚に優れた王侯貴族たちは、その魅力に改めて強い関心を持つようになりました。 |
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また、ローズカット・ダイヤモンドはダイヤモンド・ソウを使わなくてもラフカットができる、上位6%の最高品質のダイヤモンドの証でした。ダイヤモンド・ソウを使ってローズカット・ダイヤモンドを得ることは可能ですが、それでも原石はまだまだ貴重です。普通はオールドヨーロピアンカットを施します。 ローズカット・ダイヤモンドは特別なダイヤモンドの象徴となりました。透明感、繊細な閃光、三角形の輝きの美しさとその組み合わせは、他のカットにはないローズカットならではの魅力です。こうして、第一次世界大戦によって王侯貴族が力を失う前の、エドワーディアンの短い期間にローズカット・ダイヤモンドを駆使した気品に溢れるジュエリーが花開きました。 |
2-2-3. ローズカットのみのエドワーディアン・ジュエリー
【時を奏でる小さな宝物】『ダイヤモンド・ダスト』 エドワーディアン ブルー・ギロッシュエナメル ペンダント・ウォッチ フランス(パリ) 1910年頃 ¥15,000,000-(税込10%) |
『至高のレースワーク』エドワーディアン リボン ブローチ イギリス 1910年頃 SOLD |
この2つはコンテスト・ジュエリーの可能性が高い、芸術性と細工が傑出した最高級品です。 相当なお金と技術を込めてありますが、ダイヤモンドは徹底してローズカットしか使っていないことが印象的です。実にこの時代らしい作風と言え、高い美意識と極上のセンスを感じる宝物です♪♪ |
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『アルテミスの月光』ムーンストーン メアンダー ネックレス&ティアラ イギリス 1910年頃 SOLD |
権威の象徴として使用されるティアラの場合、王侯貴族のものでも派手さを追うものが多いです。 しかし、このエドワーディアンのティアラは雰囲気あるムーンストーンに合わせて、大きなダイヤモンドですらローズカットです。 小さなダイヤモンドも極小ローズカットです。肉眼では分からないくらい小さいですが、一瞬の閃光が繊細な美しさを表現します。 また、上質なローズカット・ダイヤモンドはファイアも出せます。赤い色が見えますが、このような輝きが美しさとして印象に残るのです♪ |
2-2-4. カットを組み合せた豊かな表現のエドワーディアン・ジュエリー
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| 『白い花のバスケット』 フラワーバスケット型 ペンダント&ブローチ イギリス 1910年頃 SOLD |
この小さな宝物のダイヤモンドは、天然真珠のお花の花芯だけがオールドヨーロピアンカットで、それ以外は全てローズカットです。 メインの白い花だけは貴族らしい華やかさを湛えつつ、随所から放たれる上質なローズカットの繊細な輝きが醸し出す清楚さや品の良さが、全体の雰囲気となっています。実にセンスの良い組み合わせなのです♪♪ |
『Quadrangle』-四角形-エドワーディアン 天然真珠 ネックレス オーストリア? 1910年頃 SOLD |
この宝物も、上下をつなぐ細長いパーツにセットされたダイヤモンドのみがローズカットです。 極細な部分までダイヤモンドがセットされています。ブリリアンカットしか使わない現代ジュエリーでは、不可能な技です。 全てがオールドヨーロピアンカットだったならば、このスタイリッシュな雰囲気にはなっていません。 絶えずゴージャスな煌めきを放つオールドヨーロピアンカットと、透明感や一瞬の閃光が印象的なローズカットを組み合わせることで、ジュエリーは実に豊かな表情を魅せるようになります。 |
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| 『シャンパーニュ』 雫型オパール ネックレス イギリス 1910年頃 SOLD |
これは雫型のオパールと、シャンパンカラーのダイヤモンドを使ったスペシャルな宝石の宝物です。覆輪留めの大きめのダイヤモンドはトランジションカットで、それ以外の小さな石はローズカットです。 宝石物ですが宝石頼りにならず、それぞれのカットと配置に並々ならぬこだわりが見えます。成金の高級品はローズカットを使いませんが、王侯貴族のこだわりのエドワーディアン・ジュエリーには上質なローズカットがつきものなのです♪ |
『プレシャス・パール』エドワーディアン 天然真珠 ネックレス イギリス 1910年頃 SOLD |
史上最も天然真珠の価値が評価された時代が、エドワーディアン頃です。 私たちは、天然真珠ネックレスはクラスプのデザインと作りを重視しています。使用されている天然真珠の当時の価値を推測したり、クラスプだけ取り替えられていないか判断もできます。 『プレシャス・パール』は最も大きな珠が6.6mもある高級品で、クラスプもそれに見合う豪華なものでした。 |
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クラスプの豪華なオールドヨーロピアンカットに目が眩みそうですが、それすらも天然真珠の惹き立て役です。として、そのオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドの名脇役として極小ローズカットが丁寧にセットされています。現代の養殖真珠ネックレスは、メッキや簡素なデザインのクラスプが当たり前です。このような、クラスプの細部に至るまでの美意識があってこその、ジュエリーの楽しさなのです。 |
『Shining White』エドワーディアン ダイヤモンド ネックレス イギリス or オーストリア 1910年頃 SOLD |
この宝物は、優美なデザインに惹きつけられて買付しました。 時間勝負なので、コンディション以外の細部までは見ないのですが、これもカットが使い分けられた宝物でした。 0.5カラット以上の大きさがある存在感抜群のオールドヨーロピアンカットに目が行きますが、それ以外のダイヤモンドのカットの組み合わせに、特にセンスの良さを感じます。 |
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細かな部分に極小ローズカット・ダイヤモンドをセットする所までは、王侯貴族のために作られた高級品ならば普通です。私が特に評価しているのは上部の左右端にセットされた2石ずつのダイヤモンドです。それぞれ覆輪留めされた小さな石ですが、1つはオールドヨーロピアンカット、より小さな石はローズカットです。 雪だるまのように2連続でセットしなくてもデザイン的には成立しますが、わざわざこのようなことをやっています。あるのとないので、雰囲気としては雲泥の差です。但し、分かる人にしか分からない部分です。エドワーディアンの特に美意識の高い人のための最高級品だと、こういう部分にこだわりが見えるのが特徴です。ローズカットを使いこなした時代と言えます。 |
| オールドヨーロピアンカットとローズカットを組み合わせた宝物 | |
| シルバーにセット | ゴールドにセット |
『財宝の守り神』ダイヤモンド ブローチ フランス 1870年頃 SOLD |
『MODERN STYLE』ダイヤモンド ゴールド ブローチ イギリス 1890年頃 SOLD |
| 他の時代でもオールドヨーロピアンカットとローズカットを組み合わせた、センスの良い宝物は作られています。ダイヤモンドの色味を邪魔せぬよう、通常はシルバーによるセッティングです。 | |
| ダイヤモンド・ピアス | |
| シルバー×クローズド・セッティング | プラチナ×オープン・セッティング |
『ミラーボール』魅惑のローズカット・ダイヤモンド ピアス ヨーロッパ 1860〜1870年頃 SOLD |
今回の宝物イギリス 1910年頃 |
シルバーの時代は長いです。色味もプラチナとは違いますが、性質も違っており、できるデザインや作りが異なります。プラチナがジュエリーの一般市場に出始めたのは1905年頃で、1914年から1918年にかけての第一次世界大戦によって、ヨーロッパの王侯貴族は急速に力を失います。その後のアールデコに時代になるとアメリカの新興成金がハイジュエリーの主要購買層となるため、ローズカット・ダイヤモンドは使われなくなっていきます。 |
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オールドヨーロピアンカットとローズカットを組み合わせた、プラチナを使ったダイヤモンド・ジュエリーは、エドワーディアンからせいぜいアールデコ初期までのごく僅かな期間にしか作られていないというわけです。 |
ダイヤモンド・ピアス(ティファニー 2023年)¥2,365,000-(2023.2) →¥2,585,000-(2023.11) 【引用】TIFFANY & CO / ティファニー ハードウェア リンク ピアス©T&CO |
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これは現代のピアスです。同じ素材を使っているとは思えないほど、単調な印象ですね。 ミルグレインなどがない鋳造の作りに加えて、ダイヤモンドの単調すぎる外観のせいです。メレ・ダイヤモンドはろくに価値がないはずですが、これで200万円以上して、買う人がいるのも凄いです。 |
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この宝物は、アンティークジュエリーでも"ありそうでない"ピアスなのです。 見たことがない美しさを感じられるのは、特殊な時代背景があるからです。 |
2-2-5. 表情豊かな極上ローズカット・ダイヤモンド
| ダイヤモンド・ピアス | |
| シルバー×クローズド・セッティング | プラチナ×オープン・セッティング |
『ミラーボール』魅惑のローズカット・ダイヤモンド ピアス ヨーロッパ 1860〜1870年頃 SOLD |
今回の宝物イギリス 1910年頃 |
ローズカット・ダイヤモンドは表情が幅広いです。 左の『ミラー・ボール』は、それまで世界のダイヤモンド供給地だったブラジル鉱山が枯渇し、ダイヤモンドの価値が高騰したことで富と権力のステータスとなった時代の宝物です。このため、ダイヤモンドを主張するデザインで制作されています。クローズド・セッティングなので、透明感ではなく煌めきに没入できます。 今回のエドワーディアンの宝物は、明らかに方向性が異なります。ローズカット・ダイヤモンドはオープンセッティングで透明感が強調され、小ささを追求した石は揺れるたびに繊細な輝きを放ちます。 |
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小ぶりなピアスとしてはかなりたくさんのダイヤモンドを使っており、何と片方で17石、左右合計で34石です!!極小ダイヤモンドも含め、裏側はしっかり穴を開けています。サイズを考えると、技術も手間も驚異的です! |
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34石、全てのダイヤモンドに個性があり、随所から輝きが放たれます。1つ1つの輝きは繊細ですが、透かし細工以外のほぼ全面にダイヤモンドがセットされており、ファセット(面)の数が多いので輝きの数が多く、かなり華やかな印象です。 |
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ファイアは内部反射を繰り返すことで現れます。光が拡散せぬよう、インクリュージョンが少ない透明度の高い石であること、適切な石の厚みと、反射しやすいファセットの角度など、複合要因で発生します。 厚みのあるオールドヨーロピアンカットはもちろんですが、この宝物はローズカット・ダイヤモンドも美しいファイアが現れます♪ |
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1つ1つのファセットは極小なので、手元で眺めている時以外は一瞬の色彩をハッキリ知覚できないかもしれませんが、見る人の『意識』には必ず影響します。 |
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表面的な姿かたちと違い、得られた印象は見た人の意識に残り続け、心象風景としていつでも再現されます。「綺麗だな〜!♪」と、印象に残ること。これはとても大事なことなのです。 |
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底がフラットなローズカットは、オールドヨーロピアンカットに比べると厚みがありません。しかし、磨き仕上げの良いルースは、底面もよく反射します。裏側の画像を見ると、左の花びら2石の底面が全反射しています。中央のオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドは、下部も無数のファセットがあるので、輝き方が全く異なることが分かります。 この宝物のダイヤモンドは磨き仕上げが極上なので反射率が高く、ローズカット・ダイヤモンドもファイアが出やすいのです!♪ 透明感と煌めき、ファイア。素材としてはシンプルなダイヤモンド・ピアスですが、カットや配置がよく計算されており、それを具現化した職人の見事な技術もあって、本当に表情豊かです♪♪ |
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| 【参考】現代の無個性なローズカット・ダイヤモンド | |
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現代でもローズカット自体は技術的に可能ですが、大量生産の工業製品と化しているため、個性が全くありません。職人の真心や美的感覚に基づかないダイヤモンドは味気ないもので、心を動かす美しさは微塵もありません。人に感動を与えられるのは、人の心だけなのでしょう。道具なら良いのですが、心がこもらない物体にジュエリーを名乗る資格など本来はありません。 磨き仕上げも不十分なので照りも弱く、ファイアもろくに出ないようです。このような、端正すぎる不自然な石を使ったフェイクも多く出回っていますが、騙されるのは美的感覚がなくスペックで見る人だけです(笑) |
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2-3. 極小ダイヤモンドから感じる貴族の美意識
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このピアスは極小ダイヤモンドを上手に使っています。 高い美意識、職人の高度な技術、贅沢なお金の掛け方の現れなので、極小ダイヤモンドを駆使した宝物は必ず買い付けるほど好みです。 一番上のダイヤモンドが最も小さいですが、円形パーツの三角形のフレームの隙間を埋めるダイヤモンドも極小です。 それぞれに7石ずつセットしているので、技術と手間を考えると相当なことです。 |
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極小であっても丁寧にファセットが磨き上げられているので、どの石もよく輝きます。 肉眼では形は分からなくても、"輝き"ははっきりと認識できます。 |
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特に心惹かれるのは、トップの極小ダイヤモンドです。デザイン的にはなくても成立しますし、もっと大きな石を使った方が楽だったはずです。安くなるわけではなく、むしろ技術や手間を考えるとより高価になった可能性の方が高いですが、それでも強いこだわりをもってここに極小ダイヤモンドをデザインしています。 信じがたいほどの、まさに神技で作られています。ここまで精緻にカットして綺麗にセットされているなんて、拡大画像を見なければ分かりません!! ここから放たれる極小の閃光に、職人のプライドと、オーダー主の類稀な美意識が感じられて嬉しくなります♪ |
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| 『キラキラ・クロス』 天然真珠 バーブローチ イギリス 1880年頃 SOLD |
このバーブローチも、天然真珠を留める爪の先端に極小ダイヤモンドがセットされています。高い美意識と、お金にこだわらない最高のラグジュアリーの現れです。いかにも王侯貴族らしいです♪ |
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| 天然真珠 ピアス イギリス 19世紀後期 SOLD |
約1cmという、かなり大きな天然真珠を使ったピアスです。天然真珠だけでも見事ですが、わざわざ穴を開けて極小ローズカット・ダイヤモンドをセットしており、只者ではない美意識の高さと、成金には不可能な知性が伝わってきます。 |
| エドワーディアンのポジティブな雰囲気のハイジュエリー | ||
今回の宝物 |
『ベルエポックの華』イギリス 1900〜1910年頃 SOLD |
『Shining White』イギリス or オーストリア 1910年頃 SOLD |
先の2点は19世紀後期の宝物ですが、20世紀初頭のこれらの宝物も極小ローズカット・ダイヤモンドをセンス良くデザインしています。よく見ないと気づかないくらい、さりげないです。優れたデザインには、このような細部に至るまでの美意識が行き届いているものです。高度な技術がなくてはできませんから、作りも間違いありません。また、そのようなオーダーにはお金がかかりますから、確実に最高級品として作られています。 極小ダイヤモンドを使用したアンティークジュエリーは、間違いなく良いものです。私が好き過ぎることもあってHERITAGEに集まっていますが、ここまでの宝物は市場で滅多に見つかりません。 |
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この宝物は一番上の極小ダイヤモンドのために、わざわざ高さを出してフレームを作っています。 この極小ダイヤモンドは、間違いなく重要ポイントなのです! |
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小ぶりのダイヤモンド・ピアスで、ここまでの細工物に出逢えるなんて本当にラッキーです♪♪ |
3. 美しいデザインを実現した神技の作り
3-1. 軽やかな透かしの美
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家具や調度品などと異なり、小さなジュエリーの透かし細工の細かさは別格です。今まで見た中では『Sunflower』がダントツで、透かしの幅はシャープペンシルの芯より遥かに細い0.2mmほどしかありませんでした。専用の鑢(ヤスリ)も、職人が自分で作るしかありません。シャープペンシルより遥かに細いヤスリで磨き上げて、透かし細工を完成させるのです。物理的な方法で磨くヤスリは消耗品ですし、細いほど折れやすくもあるので、透かし細工が多いほど集中力も手間もかかります。 |
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『Sunflower』天然真珠 フラワー ゴールド・ピアス イギリス 1880年頃 SOLD |
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等倍↑→ |
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透かしの幅自体は『Sunflower』の方が遥かに狭いですが、今回の宝物も0.5mmのシャープペンシルの芯は通らぬ狭さです。透かしの幅は、推定0.4mm弱です。『Sunflower』は極限の細さを追い求めたからこそ、直線だけの透かしです。今回の宝物は、曲線で可能な限界に迫っています!! どちらもよくやるなぁと感激します。私たちがこのような宝物が大好きだから、自然と集まってくるのだろうと思っています♪ |
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拡大すると簡単そうに感じられますが、シャープペンシルより細いヤスリでかなりの距離を透かしにしています。しかも曲線です。信じがたい集中力と精密さです。人間技とは思えません!上部のリボンが重なったパーツも、中央は極細の透かし細工です。恐ろしく精緻な作りです。 |
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上部のリボンのパーツも、下部の円形パーツも平らではなく、曲率をつけて制作されています。実際のサイズを考えると、とてつもないこだわりです!! 特に下部パーツは驚異的です。美しく見せるためとは言え、平面ではなく曲面に対して、超難度の透かし細工をトライしたということです!! |
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最外周のフレームは、花びらと花びらの間の根元がミルグレイン1粒分以下の幅しかありません。花びら先端部分も全て、ミルグレイン1粒分で整えています。よく人間の手で具現化したものです!!スッキリとした軽やかな美しさに没入できる理由です♪ |
3-2. 印象的なプラチナのフラット・ライン
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花芯のオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドは覆輪留めし、外周に二重円を透かし細工でデザインしています。 プラチナの二重円は表面がフラットなので、印象的な面反射を放ちます。 |
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右のピアスからもお分かりいただける通り、プラチナは光っていない時は黒っぽく見えます。 |
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光を面反射している際は、一転して白く強い輝きが印象的です。周囲のミルグレイン部分も輝いていますが、粒状の繊細な輝きと、面の輝きでは強さが全く異なります。ピアスなので、着用すると絶えず揺れます。面反射のダイナミックな変化や、面反射とミルグレインの輝きとの差が、表情の大きな変化として感じられます。 |
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明るい場所でも印象的ですが、暗い場所だとより強くプラチナの2重円を感じる瞬間が多いです。 |
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明るい場所だと透明感が楽しめて、暗い場所だと輝きが楽しめるピアスです♪ 常時輝いているのではなく、角度が合った瞬間だけ2重円が輝きます。 面白い仕掛けですよね♪ |
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アンティークの高級品だと当たり前ですが、立体デザインも細部まで行き届いています。 「画像も十分に綺麗だけど、実物の方がもっと綺麗ですね♪」と、多くの方に感じていただく理由の1つです。 画像は2次元でしか表現できません。しかし、実際に使う際は、両方の目で立体視します。だから、立体デザインは超重要なのです!! 下部の円形パーツは、かなり複雑な立体デザインで作られています。 |
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あり得ないくらい拡大すると、段々畑のように高さが異なることが分かります。中心のオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドから外周の円、さらにその外周の円、花びらのパーツに向けて、徐々に奥側に見えるよう作られています。 肉眼や拡大鏡でもここまで拡大できませんから、作者は感覚を頼りにこれほどまでの仕事をしたはずです。まさに職人の勘と、高度な技術のなせる神技です!♪ |
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花芯のダイヤモンドと外周のプラチナの円は、まるで浮いているように見えます。磨き上げた極細のナイフエッジで連結されています。プラチナではなくゴールドであること、奥側にあることで、極限まで存在感を消しています。 内側のプラチナの円は4箇所のナイフエッジで固定されていますが、花芯のダイヤモンドは2箇所のナイフエッジのみで固定されています。ここからも、存在感を消すための徹底した美意識が伝わってきます。それにしても信じがたい神技です!! |
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着脱時に力がかからない、小さなピアスのパーツだったから可能だった極限の細工と言えます。着脱時に力が加わるブローチではまず無理ですし、ペンダントやネックレスでもここまで繊細な作りは、ジュエリーとしての耐久性を考えると難しいです。王侯貴族のために作られるアンティークのハイジュエリーは、財産性や代々受け継がれることを考えて制作されます。適切な使用を心がければ100年以上は耐えられる耐久性を持たなければなりません。 ピアスは他のアイテムと比べると、デザインや細工を徹底したものをあまり見ない印象ですが、これはピアスでなければできない技です。この宝物はお見事です!!♪ |
3-3. プラチナ・グレインの繊細な輝き
3-3-1. プラチナ・グレインの重要性
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現代ジュエリーは業界の関係者自身が理解していないため、平気でこのような気持ちの悪いミルグレインを作ったりします。 ブツブツ恐怖症の人には耐えられそうにない外観です。 サイズが大きいせいですが、型離れを考慮する必要がある鋳造(キャスト)の作りだと、小さく作れないのです。 |
| 【参考】現代ジュエリーのミルグレイン |
| 【参考】フェイク・エドワーディアン・リング | |
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これは偽物のエドワーディアン・リングです。本物の高級品を見慣れていると、ミルグレインがないだけでこれだけ印象が変わるのかと参考になります(笑) 私は一瞬で分かるほどチープなフェイクですが、ローズカット・ダイヤモンドが使ってあったり、プラチナにゴールド・バックの作りなど、知識とスペックだけで判断する人が騙されて高値で買ってくれるのでしょう。 |
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3-3-2. 繊細な雰囲気を追った細幅ミルグレイン
| グレインの形状で変わる"印象" | |||
| 半球状 | 細さを追求 | ||
『スコットランドの騎士』エドワーディアン ミニチュア勲章(替章) イギリス 1910年頃 SOLD |
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![]() 『影透』 アールデコ 天然真珠 リング イギリス 1920年頃 SOLD |
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輝きを表現するために施されるミルグレインは、静止画では分かりにくいのですが、上手下手以外はどれも同じというわけではありません。間隔や形状によって、実は驚くほど印象が変化します。 肉眼で実物を見ないと明確に感じることができませんが、左のように半球状で仕上げたミルグレインは格調高い雰囲気を放ちます。英国王室から授与される騎士勲章のデザインなので、格調高い雰囲気は重要です。 一方、右は半球ではなく"線"のように細く仕上げているため、より繊細な輝きを放ちます。日本刀の鐔にインスピレーションを受けたデザインなので、ミルグレインの繊細な線状の輝きが、冴え渡った雰囲気をより高めます。 |
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プラチナの磨き上げられた半球が整列していると、力強さと格調高い雰囲気が自然に出てきます。形状自体は視認できなくても、"輝き"がそのような雰囲気を醸し出すのです。 |
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この宝物の場合はフレームの縁を限りなく細く仕上げた上で、ミル打ちしています。さらに丸みを帯びた形に磨き上げれており、綺麗に輝きます。半球と異なり、控えめで繊細に輝きます。冴え渡る美しさです。 |
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| 『勝利の女神』 ガーランドスタイル ネックレス イギリス or フランス 1920年頃 ¥6,500,000-(税込10%) |
勝利のトロフィーをデザインしたこの宝物のミルグレインは、半球状です。格調高い雰囲気を醸し出す意図が明確です。 そういうわけで、特にデザインにこだわったアンティークの最高級品だと、ミルグレインの形状も確実に計算されているのです。 |
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今回の宝物は女性らしい繊細な美しさや、透かしデザインからも分かる軽やかな美しさが追求されているため、ミルグレインは細幅でデザインされています。 格調の高さ主張するのではなく、繊細な輝きが実に美しいです。 |
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極細に整えられたフレームの縁にタガネでミル打ちし、半円状に磨き上げられています。実際の大きさを考えると驚異的な細かさで、アンティークのハイジュエリーを見慣れていても驚く出来栄えです!! |
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トップの極小ダイヤモンドの下部は、ミルグレインの2重ラインだけで一定の長さが構成されています。凄まじい技術に基づく、シャープな美しさは感動的です。下部パーツのような、円の中に丸型の花というデザインは、可愛いだけになってしまう可能性があります。しかし、上部のリボン型パーツがシャープなフォルムで作られているため、程よいスタイリッシュさがあって、知的な大人の女性に相応しい雰囲気となっています♪♪ |
3-3-3. 格調あるグレインワーク
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繊細さを追ったミルグレインに対し、グレインワークは格調高い雰囲気が出るようデザインされています。重なったリボン状のフレームには極小ローズカット・ダイヤモンドがセットされ、より細い部分にグレインワークが施されています。サイズ・グラデーションとなった輝きの連続によって、余韻のある美しさとなります。 極小ダイヤモンドと違和感なく連なるためには、相応の存在感が必要です。だから極細ミルグレインのような繊細な輝きではなく、粒状のはっきりした輝きを放つよう設計されています。 |
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横から見ると、グレインワークがフレームから飛び出して見えるほど高さあることが分かります。 |
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同じフレームに配置したローズカット・ダイヤモンドと同じくらいの高さになるよう、設計されています。グレインワークは完璧に磨き上げているため、どの角度から見てもプラチナの白い輝きを感じます。ダイヤモンドに見劣りしない、力強い輝きです♪ |
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さらにダイヤモンドを留める爪も、フレームの溝もピカピカに磨き上げられています。それぞれ輝き方が異なるため、表情の豊かさにつながっています。光の当たる角度で劇的に変化します。揺れるピアスなので、その効果は絶大です!♪ |
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魅力的なダイヤモンドに目が眩んで気づきにくいですが、信じがたいほど美意識の行き届いた、神技の細工のピアスです!!♪ |
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ピアス金具
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後ろで閉じるタイプのピアス金具です。 |
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裏側
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裏側もスッキリとした綺麗な作りです。それにしても見事な透かし細工です♪ |
着用イメージ
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魅力的に輝くよう設計されているため、着用すると僅かな動きにも反応して細かく揺れます。さらにスマホカメラは人間にオート・フォーカスすることもあり、鮮明な画像は撮れませんでした。 サイズ感をご参照いただき、宝物の詳細は他の画像をご覧いただければ幸いです。 小ぶりながら上品な華やかさがあり、日本人女性がコーディネートしやすいピアスだと思います♪ |
【モダンスタイル】グラスゴーのウィロー・ティールームズの『豪奢の間』再現(マッキントッシュのデザイン 1903年) "Room de Luxe" ©Dave souza(10 March 2006)/Adapted/CC BY-SA 2.5 |
この宝物が作られた時代は、重厚なヴィクトリアンのデザインが一般的だった19世紀が終わり、イギリスでいち早く未来的なデザインが生まれていました。 |
『芸術愛好家のための音楽室』のデザイン(マッキントッシュ夫妻 1901年) |
最先端のデザインを楽しんだのは、新しいものに敏感な知的でオシャレな人たちです。今回の宝物はクラシックな雰囲気とは異なる、未来的な場がピッタリです。 |
完成したウールワース・ビルディング(マンハッタン 1913年頃)241.4m、57階建て |
19世紀後期には超高層建築フィーバーが発生し、20世紀のアールデコの時代にかけては、世界一を競うように各地に摩天楼が建設されました。 宝物が作られた時代と重なる1913年、ニューヨークのマンハッタンには241.4m、57階建ての超高層建築も完成しています。 未来的でポジティブなジュエリーは、このような新しい社交の場でよく映えたことでしょう♪ |
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古めかしさが一切ない一方で、現代の簡素なピアスとは全く異なる、アンティークジュエリーならではの強い魅力を持っています。宝石物であり、神技の細工物でもある小さな宝物。100年以上も経っているとは思えぬ、未来的で明るいデザインが心を捕らえます。20世紀初期。希望に満ちた明るい時代だったのでしょう・・♪♪ |
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イギリスの男女別の識字率の推移
『墓堀りの死』(カルロス・シュヴァーベ 1890年代)
『哲学』(グスタフ・クリムト 1899-1907年)
『オフィーリア』ポール・アルベール・ステック(1894年頃)





大英帝国(1886年)
『英国貴族の憧れ』
『フラワー・ステッキ』
『トレリス』(1862年)
『フルーツ』(1864年)
『アカンサス』(1875年)
『幸せのメロディ』
『生命の躍動』
アールヌーヴォー シードパール ネックレス
『MIRACLE』
外輪蒸気船クラーモント号(1870年)
アイアン・デューク級蒸気機関車(1892年)
1840年のロンドンからの鉄道網
ブライトン・ピアと砂浜
アルフレッド王子を乗せた戦艦ガラテア(1869年)
ロシア皇太子ニコライ2世(1868-1918年)1880年代
ニコライ2世のグランドツアーで使っていたロシア帝国のお召し艦アゾフ号(1892年のリトグラフ)
『アゾフ号の記憶』(ファべルジェ商会 1891年)クレムリン武器庫博物館
『ノルマンディー号』
『ベルエポックの華』
『Shining White』
母から贈られたヴィクトリア女王のピアス(1850〜1860年頃)
アルバート王配とヴィクトリア女王(1819-1901年)
アレクサンドラ妃と国王エドワード7世(1903年)
『ゴールドオーガンジー』
『白い花のバスケット』
『永遠の愛』
『麗しのマデイラ』
エドワーディアン バーブローチ


『Théière』(1879年)
ウィリアム・ワットのためのサイドボード(エドワード・ウィリアム・ゴドウィン 1876-1877年)
『ストライプ』
『Future Design』
『Quadrangle』
『Samurai Art』
『The Great Wave』
『ヒナゲシ』

ヴィクトリア女王(1819-1901年)1898年、79歳頃
フランス王妃マリー・アメリ・ド・ブルボン=シシレ(1782-1866年)1830年、48歳頃
フランス王妃マリー・アメリのサファイアのパリュール(王妃の在位:1830-1848年)
1884年、40歳頃
1881年、36歳頃
アレクサンドラ王太子妃と3人の娘たち

『勝利の女神』
『平和のしるし』
『愛の白鳥』
ジョージ王子の結婚式用(1893年)

『Bright things』
オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド ピアス
『Bright things』


SOLD





古代ローマ
ルネサンス ポイントカット・ダイヤモンド リング
チューダー朝 リング
ジョージアン ダイヤモンド リング
『ミラーダイヤモンド』
カリナンに第一刀を振り下ろすジョセフ・アッシャー
ダイヤモンドの切削加工場(1710年頃)
ダイヤモンド・ソウ(1903年頃)
原石の状態のカリナン(1908年)
最も大きな9つのラフカットされたカリナン
宝石として仕上げられた9つのカリナン
コ・イ・ヌール(ロンドン塔に展示)英国王室蔵
【参考】パヴェ・リング(現代)
『勝利の女神』
『エメラルドの深淵』
【参考】エメラルド&ダイヤモンドの量産高級リング(ピアジェ 現代)
『天空のオルゴールメリー』
『スパイダー』





劈開の方向を無視したカットを可能にした電動ダイヤモンド・ソウ(1900年発明)


オールドヨーロピアンカットとローズカットのダイヤモンド
【参考】ブリリアンカットのみの量産ダイヤモンド・ブローチ(ブシュロン 1940年代)
『忘れな草』
『木の葉』
『魅惑のトライアングル』
【時を奏でる小さな宝物】
『至高のレースワーク』
『アルテミスの月光』
『Quadrangle』-四角形-
『プレシャス・パール』

『財宝の守り神』
『MODERN STYLE』
『ミラーボール』
ダイヤモンド・ピアス(ティファニー 2023年)











『Sunflower』










『スコットランドの騎士』











【モダンスタイル】グラスゴーのウィロー・ティールームズの『豪奢の間』再現
『芸術愛好家のための音楽室』のデザイン(マッキントッシュ夫妻 1901年)
完成したウールワース・ビルディング(マンハッタン 1913年頃)241.4m、57階建て