No.00361 海のヴィーナス |
滅多にない見事な天然ボタンパール!!♪
ボタンパールに合わせた優雅なフォルムと神技の透かし細工!♪
最高級ボタンパールの名脇役に相応しい極厚ダイヤモンド!♪
純白の真珠と表情豊かなダイヤモンドのコラボレーション!!
『海のヴィーナス』 |
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ショルダー裏側の見えない箇所に施された神技の透かし細工、ベゼル裏側の溝の彫金など、細部まで美意識が行き渡っています。特別な王侯貴族の美意識を満足させるために、惜しみなくお金と技術が込められた最上質の宝物です。定番デザインなので似たものが他にもあるように感じるかもしれませんが、これだけのボタンパール自体が唯一性が高く、ダイヤモンドも特別オーダーのカットなので、神技の細工と合わせて無二の宝物と言えます。末長く愛せる、HERITAGEの自慢&オススメの宝物です!♪ |
この宝物のポイント
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1. 指輪のために生まれたような美しいボタン・パール
球状の核で作る養殖真珠は、球体しかありません。 養殖真珠しか見たことがないと、「真珠=球体」という認識になってしまいます。 しかし、中まで真珠層でできた無核の天然真珠は、形の個性が様々です。天然真珠が好きなGenが特に好きなのが、このような少し扁平なボタンパールです♪ |
1-1. 適材適所の天然真珠
ヨーロッパ王侯貴族の歴史の中で、天然真珠は至高の宝石です。ダイヤモンドで儲けたい宝飾業界のイメージ戦略によって、現代はダイヤモンドの方が凄そうなイメージとなっていますが、ほぼ全ての時代で真珠の方が格上です。 真珠ダイバーが命を賭け、過酷な海に素潜りして母貝を採ってきますが、その中に宝石品質の真珠が入っている確率は宝くじを当てるようなものです。まさに一攫千金、下手をすれば命を落とす仕事です。 1935年の記録によれば、4人の真珠ダイバーが終日働き、1,000匹の 母貝から27粒の真珠しか見つかりませんでした。27粒の内20粒がバロック、5粒が丸みを帯びた形状でした。その他の記録だと、数十人のダイバーが1週間で35,000個の母貝を採取し、真珠が出てきたのが21個。そのうち商品価値があったものは僅か3個だったというほど稀少な宝石です。形のみならず、色や質感も重要なので、この割合になってしまうのです。 真珠そのものが見つかる確率が極めて低い上に、その中でさらにジュエリーにできる品質に限定すると、1万の母貝を採ってきて1粒もないような割合なのです。命懸けで採る価値があった、超高額の宝石でした。だからこそ天然真珠は古くは王族のステータスであり、時代が下っても稀少価値の高い超高級宝石として、適材適所で全てが大事に使用されました。 |
1-1-1. 360度が球形の天然真珠
『桜色の輝き』 天然真珠ネックレス イギリス 1920年頃 SOLD |
どこから見ても丸く見える球体の場合は、天然真珠のネックレスに使用されました。 大きさに個性がありますが、サイズをグラデーションにすることでエレガントな美しさが出てきます。全て同じ大きさである必要はないのです。 |
1-1-2. 完全な球形ではない天然真珠
『真珠の女神』 ストーンカメオ ブローチ&ペンダント イギリス 19世紀後期 SOLD |
これは天然真珠の見事なフレームでした。 照り艶が良く、これだけ質感と大きさが揃った真珠を38粒も揃えるのは大変なことで、それだけでこのストーン・カメオがいかに高級品なのかが分かります。 天然真珠はどれも正面から見ると綺麗な真円です。 |
かなり斜めから見ても球形に見えますが、真横ぐらいから見ると、正面から見た時に真円に見えるよう微調整して正確にセットしていることが分かります。ジュエリーとして使う際、この角度から見ることは通常はありません。全ての真珠が貴重であるからこそ、真球でない真珠でもこのような工夫で生かされます。 |
『Lover's Knot』 シードパール ブローチ アメリカ? 1900年頃 SOLD |
この宝物も、左右の大きな天然真珠は、横から見るとボタンパールであることが分かります。 正確な角度と深さで穴をあけ、ゴールドのフレームに芯を立て、隙間なく上下にも飛び出さずセッティングするのは至難の業です。 天然真珠を集めるだけでも大変ですし、個性ある1粒1粒に対応した超精密な技は見事なものですね。考えながらでなければできませんし、機械では無理です。 高度な職人技あってこその宝物です。 |
1-1-4. 雫型の天然真珠
砂粒の侵入など、何らかのきっかけで天然真珠は形成されます。核の大きさと形にも寄りますが、薄い真珠層を幾重にも重ねてできるため、基本的には球形に近い形になる傾向があります。 |
『マーメイドの涙』 ペンダント&ブローチ イギリス 1880年頃 SOLD |
『薔薇』 アールヌーヴォー オパールセント・エナメル&天然真珠 ブローチ イギリス 1900年頃 SOLD |
『アイリス』 アールヌーヴォー ブローチ フランス 1890〜1900年頃 SOLD |
しかしながら下げるデザインの場合、球形より雫型の方がバランスが美しく見えたりします。雫型で質の良い天然真珠は、真球より遥かに入手困難です。このため、上質な雫型の天然真珠は好んで最高級品のメインストーンに選ばれました。 |
『雫の芸術』 ダイヤモンド&天然真珠 ブローチ フランス 1920年頃 SOLD |
ガーランドスタイル ペンダント ヨーロッパ 1920年頃 SOLD |
アールデコ ネックレス オーストリア or ドイツ 1920年代 SOLD |
同じ『雫型』と言っても、大きさもフォルムも唯一無二なのが天然真珠の魅力ですね。左の宝物の場合、硬いダイヤモンドに施した驚異のブリオレットカットに合わせて、6粒もの質の揃った雫型の天然真珠を使っています。本当にこだわる人の、半端ないこだわりぶりが伝わってきますね。それと共に、想像もできないほどの財力にもため息が出ます。 |
1-1-5. 歪で個性ある天然真珠
もともとヨーロッパ美術は高い対称性と規則正しさ、完全性を是とする性質がありました。一方、日本は『不完全の美』に理想の美を求めました。開国した日本の美術様式の影響によって、アール・ヌーヴォーではむしろ歪な天然真珠を好む傾向が出現しました。 |
日本人の琴線に触れる美しさですね♪ありのままの自然を表現するのに、歪な天然真珠が最高に生かされています。日本人には当たり前の表現にすら感じますが、完璧なものほど素晴らしいという固定観念があった欧米人にとっては画期的で、最先端の美の表現でした。 |
バロックパール | 球形の真珠 |
アールヌーヴォー エナメル ブローチ フランス 1890-1900年頃 SOLD |
天然真珠 ブローチ オールドヨーロピアンカットダイヤモンド ローズカットダイヤモン |
同じ植物の実の表現でも、バロックパールと丸い天然真珠では雰囲気が全く異なります。右の宝物はヨーロッパのオーソドックスと言えるガーランドスタイルで、偉大な古代ギリシャ神話やローマ帝国に通ずる格調高い雰囲気が特徴です。形の整った天然真珠はピッタリです。 左のようにバロックパールだと、ありのままの自然を感じますね。何だかホッとする美しさや、自然のものならではの儚い美しさも感じます。 |
『雪珠真珠』 バロック天然真珠 ゴールド・ロングチェーン ヨーロッパ 1890-1900年頃 SOLD |
この時代には、不完全の美に魅了されたヨーロッパ貴族の存在が分かる、このような宝物も作られています。 歪で面白い形でも、色が悪かったり、照り艶が悪ければ美しいとは感じられません。 このクオリティの天然真珠を、よくこれだけ集めたものだと感激します。 当然ながら同様の宝物を作ることは、材料の観点からほぼ不可能です。まさに唯一無二の宝物ですし、1つ1つの個性が愛おしい天然真珠ですね♪ |
1-1-6. 想像力を掻き立てる不定形の天然真珠
『キャニングの宝飾品』 天然真珠 ペンダント ヨーロッパ 1850〜1860年 全長:10.2cm V&A美術館 V&A museum / The Canning Jewel ©Victoria and Albert Museum, London |
『古代ローマ軍の兜』 天然真珠 ペンダント イギリス 1870年頃 真珠:20×15×13mm SOLD |
『真珠のアート』 天然真珠 ペンダント ヨーロッパ 1890〜1900年頃 真珠:25×10mm SOLD |
極端に大きくなると球形は無理で、面白い形になります。自然が偶然に創り出した個性ある形は、人間に様々なインスピレーションをもたらしてくれます。この丁重な扱いが良いですね〜♪ 「歪なのはダメで、完璧な球形ほど良い!」という考えの人にはできない発想かもしれません。むしろこのような天然真珠ほど、天然ならではの魅力があるとも言えます。 |
『ラブ・バード』 天然真珠と宝石のブローチ イギリス 1880年頃 SOLD |
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ハートを射抜かれた宝物も作られています。よく本物の心臓のような形の天然真珠があったものだと驚きます。想像力を掻き立てる宝石や宝物は、本当に強い魅力がありますね♪ |
1-1-7. 小さな天然真珠
手間ばかりかかるため、現代ジュエリーでまず見ることがないのが極小天然真珠です。出来始めたばかりの天然真珠は、特に形の個性が様々です。形を揃えることは実質不可能ですし、そもそも意味がありません。大きさや色味を揃えて使用されていました。 |
アミーリア王女(1783-1810年)英国王ジョージ4世の妹 | 『小さなたくさんの宝物』 ジョージアン 天然真珠 三連ネックレス イギリス 1830年頃 SOLD |
真珠ダイバーが命懸けで海から採ってくる大変さは、大きな天然真珠と同じです。大きな天然真珠よりは得られる確率が高いですが、小さい分だけジュエリーにするには数が多く必要です。穴を開ける手間など、加工の手間も何倍もかかることになります。 大粒の天然真珠ネックレスは材料費の割合が高い『宝石物』、極小天然真珠ネックレスは加工費の割合が高くなる『細工物』の要素が強いと言えます。どちらが高級とは言えない理由です。 |
ジョージアンの英国王室女性の天然真珠ネックレス | |||||
未婚 | |||||
アミーリア王女 | ソフィア王女 | シャーロット王女 | |||
14歳頃 | 20歳頃 | 31歳頃 |
既婚 | ティアラは既婚者のジュエリーですが、天然真珠ネックレスも古い時代はそのような使い分けをしていたようです。 ジョージアンの英国王室女性の事例を見ると、年齢ではなく未婚の女性は極小天然真珠、既婚女性は大粒の天然真珠ネックレスを着用しています。 大きいほど高級というのは、成金を含めた現代の庶民の発想でしかないのです。 |
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メアリー王女 "Cuii pec pd0024 large" ©Historyfan98(2014)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
シャーロット王妃 | |
40歳以上 | 24歳頃 |
人間も含めて全ての存在に尊ぶべき個性があり、ダメなもの、劣ったもの、不要なものなどあるはずがありません。適材適所なのです。古の日本人もそうであったように、ヨーロッパ貴族もすべての存在を慈しみ尊んでいたのでしょう。小さいからこそ可能となる表現があります。 |
アーティスティックな天然真珠ジュエリー | |
マイクロパール | 大型バロックパール |
『柳と羊』 マイクロパール・ミニアチュール リング フランス 1792年 SOLD |
『古代ローマ軍の兜』 天然真珠ペンダント(真珠: 20×15×13mm) イギリス 1870年頃 SOLD |
同じ天然真珠の芸術的なジュエリーでも、方向性は全く異なります。右のような宝物だと、バロックパールの個性次第です。唯一無二の個性に想像を膨らませ、最大限に生かす作品に創り上げます。宝石が主体です。 一方、マイクロパールの宝物は作者の芸術的なセンスが主役です。真珠による制約なく、自由に発想してゼロから創造します。優劣などない、どちらも素晴らしい芸術作品言えます。 |
20世紀初期の極小天然真珠の宝物 | ||
マイクロパールブローチ イギリス 1910年頃 SOLD |
『華奢×強靱』 天然真珠ブレスレット イギリス? 1910〜1920年頃 SOLD |
『キューピットとヴィーナス』 リバースインタリオ ペンダント イギリス 1920年代 SOLD |
細工に信じ難い手間をかけるのは古い時代のイメージが強いですが、20世紀初頭でも極小天然真珠を使った手間のかかるジュエリーは作られています。清楚さや芸術性に基づく知性が感じられるので、上流階級には好まれたのでしょう。天然真珠の評価が高い時代だったこともあるでしょうし、成金が大きな天然真珠ばかりに目がいっている中で、むしろこのようなジュエリーを身につけ知性を纏うことが王侯貴族らしさだったかもしれません。 |
母貝からこの数を集めるのも大変ですし、破損することなく綺麗に穴を開けるのも大変な技術です。そして1粒1粒を丁寧に連結するなんて、天然真珠という存在が大小問わず別格視されていた証なのです! |
1-2. 人工的な核を使わないからこそのボタン・シェイプ
1-2-1. 球体しかない養殖真珠
あこや養殖真珠 "Akoya peari" ©MASAYUKI KATO(17 February 2011)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |
養殖真珠は人工的に均質化されます。調色(脱色と染色)によって色を均一にしますし、表面も粒度を統一した研磨剤で磨くので質感が同じです。大きさと形状は核に依存します。 |
【参考】アメリカ産ドブガイを削った養殖真珠の核 【引用】真珠屋珠ちゃんアコヤ真珠通販 / 挿核作業 ©2021 Yamamotosuisan |
5mmの養殖真珠を作りたいなら5mmの核、9mmなら9mmの核を使います。 4〜6mmサイズで2〜3粒、7〜9mmサイズだと1粒を挿核するのが一般的だそうです。 |
ドブ貝A型(ヌマガイ) "Numagai050804" ©KOH(2005-08-04)/Adapted/CC BY 3.0 |
アメリカの淡水産の二枚貝である『ドブ貝』が、主に使用されます。天然真珠のネックレスは持った質感が軽くてマットですが、養殖真珠は貝殻の核に真珠層を薄くメッキしただけなので持つと冷たく、珠同士をぶつけるとカチャカチャと音がするほど硬質です。 |
【参考】深海シャコ貝 ネックレス 【引用】宝石屋 /深海シャコ貝 氷透玉化料 108玉 仏珠 ネックレス ©2Mercari, Inc. |
養殖真珠のネックレスは、ほぼこういうことです。 貝殻を削った珠のネックレスというのが正体です。 |
養殖真珠は生き物を犠牲にして作られます。『挿核』と言うと簡単に聞こえますが、自然環境であり得る砂粒ほどの異物と異なり、いきなり6mmや8mmもの珠が体内に無理やり挿入されるのは異常なことです。実際は母貝にとって大きな外科手術と言えるもので、だからこそ挿核は作業者によって上手い下手が発生します。 半分ほどの母貝はこの手術に耐えられず、海に戻されても死んでしまいます。苦しくて核を吐き出したり、真珠層をうまく巻くことができず、真珠と呼べないものしか得られなかった場合を含めると半分以上となります。 砂粒ほどの異物などから真珠層の形成が始まる天然真珠の場合は、長い時間をかけて徐々に大きくなるので母貝への負担は少なく、自然な共存関係にあります。しかしながら養殖真珠は無理やり大きな異物を入れられ、取り出すために殺される日まで、たとえ死ななくても大怪我と大きな異物で苦しみ続けます。 たとえ貝の怨念であっても、怨念の塊に美しさを感じられる人はサイコパスです。養殖真珠をつけた霊能者がいたら、私はその人を信頼しません。怨念を感じない自称霊能者か、感じてもどうでも良いと考える怖い人です。 |
低品質の養殖真珠製品 |
真珠層が均一に巻けなかったり、核が露出しているものも少なくありません。そのような不良箇所を狙って穴開けします。ネックレスとして連結してしまえば、顧客には見えないからです。あまりにも安い場合、引っ張って穴開け部分を見ると、このように剥がれていたりブツがあるなどのケースもあるようです。 |
低品質の養殖真珠製品 |
養殖真珠の剥がれて浮き上がった真珠層と内側の核 |
これは貝殻の核にメッキしただけという、養殖真珠の正体がよく分かりますね。 Genが養殖真珠業界の酷い状況を知ったのは、昔ながらの真面目な作り方をしていた養殖真珠業者の方が、天然真珠を見せて欲しいとアトリエを訪れて、色々と聞かせてくれたことがきっかけでした。初期の養殖真珠は品質を落ち着かせるために、取り出した後も2年間は自然乾燥させていたそうです。 生体膜と貝殻の核では含水量が違いますし、乾燥させると収縮率も異なります。ある程度は柔軟性があるため、簡単に真珠層がヒビ割れることはないものの、核との間に隙間ができますし、酷いものだとこれくらい剥離したりヨレたりします。 |
養殖真珠の剥がれて浮き上がった真珠層と内側の核 |
外側からは見えなくても、内部に隙間ができていたりします。これは分かりやすい事例ですが、視認できないくらいの隙間でも汗や皮脂、大気中の汚染物質が浸透するには十分です。たとえ無傷の養殖真珠であっても、ジュエリーとして加工するために穴を開けますから、その部分の隙間から侵入できます。そこから劣化が始まります。 |
アコヤガイ(浅虫水族館) | 小さなアコヤ貝にとって、メスで切開して無理やり入れる巨大異物は、半分ほどが途中で死んでしまうほど大きな負担です。 球体以外だとさらに死亡率が高くなり、不良品率も上がるそうです。歩留が悪いので、例外を除き球体でしか作らないそうです。 |
1-2-2. 養殖真珠のデザイン上の制約
養殖真珠リング(現代) | ||
球体はネックレスには適していますが、リングはそうではありません。サイズによらず、デザイン的にヘンテコです。 |
これも正面からは分かりにくいですが、斜めから見るとチープさが漂う残念な感じです。 アンティークのハイジュエリーを見慣れていないと違和感を感じないかもしれませんが、HERITAGEの宝物をご覧くださっている方なら、私が言わんとすることは感じ取っていただけると思います。 ボタンパールやハーフパールの重要性を改めて強く認識します・・。 |
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『矢車』(ミキモト 1937年) 【引用】MIKIMOTO JEWELRY MFG. CO.,LTD / Yaguruma ©MIKIMOTO JEWELRY MFG. CO.,LTD. |
『硬い愛の心』 ハートシェイプ・ダイヤモンド ペンダント&ブローチ イギリス 1880〜1900年頃 SOLD |
ハーフパールはスプリットパールとも呼ばれ、1つの真珠を割って使います。核のない天然真珠だからできることです。 養殖真珠は中が貝殻の核なので、綺麗に割って使うことができません。貝殻の核まで上手くカットできたとしても、真珠層との密着性が悪いのでツルンと剥がれてしまうそうです。 但し、天然真珠を正確にカットするのも至難の業です。超貴重なので失敗は許されません。下手をすると、全てが台無しになります。 現代の職人さん曰く、「片面を削って1つだけ作るならできるが、割って2つにするのは無理。」だそうです。それでは意味がありませんし、天然真珠の価値を正確に理解していたら、とてもそんなことはできません。 |
天然真珠 | 養殖真珠 |
『桜色の輝き』 天然真珠ネックレス イギリス 1920年頃 SOLD |
『矢車』(ミキモト 1937年) 【引用】MIKIMOTO JEWELRY MFG. CO.,LTD / Yaguruma ©MIKIMOTO JEWELRY MFG. CO.,LTD. |
ある程度の高さを出すことは高級感につながりますが、飛び出すぎるとブサイクにあります。 素材を生かすために加工せずそのままお出ししました感も、お料理同様チープ感が出ます。 核がある養殖真珠は、制約上どうしようもないのです。一方で、アンティークのハイジュエリーは本当によく計算されていると感じます。技術もあってこそです。 |
養殖真珠の18Kペンダント(現代) | |
このような18Kジュエリーが存在すること自体が俄かに信じがたいです。 デザインする人、作る人、買う人は変に思わないのでしょうかね。ヘンテコ過ぎます。アクセサリーならばまだしも、18Kでこれをやるのが現代の残念すぎる美意識です・・。 |
1-2-3. 超貴重なボタンパール
アンティークのハイジュエリーは、どの角度から見ても美しいよう惜しみない技術と手間がかけられます。天然真珠をセットする際も、デザインには細心の注意が払われます。 |
『Quadrangle』-四角形- エドワーディアン 天然真珠 ネックレス オーストリア? 1910年頃 SOLD |
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これは通常のハーフパールより遥かに大きさがありますが、見事にカットされています。天然真珠自体がそれぞれ個性ある無二の存在なので、この1つの宝物ためだけに確実に全力が注がれています。 |
このように大きさのある天然真珠の場合、カットに失敗した場合のリスクが大きすぎるため、普通はボタンパールを使ったり、デザインで対処します。ただ、通常はある程度の大きさになると球体に近くなるため、都合よくボタンパールが得られることは稀です。 |
天然真珠のダイヤモンド取り巻きリング | ||
今回の宝物 |
『Flower』 天然真珠 クラスターリング イギリス 1880年頃 SOLD |
天然真珠 リング フランス 1925年頃 SOLD |
同じダイヤモンド取り巻きデザインでも、天然真珠の個性はかなり違います。過去にご紹介した宝物は、埋め込むようなデザインにして上手く高さを調整していることが解ります。今回の宝物は見事なボタンパールですね。正面から見ると真円で、横から見ると扁平です。高さがないことでぶつけるリスクを減らせますし、この奥ゆかしさが、より清楚な雰囲気を演出します♪ |
『Toi et Moi』 エドワーディアン トワエモア リング フランス or イギリス 1910年頃 SOLD |
これはGenが大喜びしたボタンパールです。 美しいボタンパールは、アンティークのハイジュエリーでも滅多に見られないからです。 天然真珠とオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドのトワエモア・リングで、”貴方を私"を表現する2つの宝石の高さが揃っています。 硬くて強いダイヤモンドが男性、優しく清らかな天然真珠が女性でしょう。天然真珠が激しく主張するように飛び出していたら、ちょっと興醒めですよね。 種類の異なる2つの宝石が、最高のバランスで一体となっています。そして、それでも受ける印象は天然真珠が主役です。紳士が貴婦人をさりげなく惹き立てる、レディ・ファーストが上手くいっている印象です♪♪ |
1-2-4. 見事なボタンパール
天然真珠としてあまりにも見事だからこそ、この1粒を主役にして、余計な飾りはつけないリングにしたのでしょう。 ダイヤモンドも敢えて小さめなのが印象的です。それが成立する、奇跡のような天然真珠なのです!♪ |
真珠の取り巻きリング | ||
今回の天然ボタンパール | 【参考】現代の養殖真珠 | |
現代ジュエリーでも取り巻きリングを探してみましたが、横から見ると不恰好なものばかりです。特に巨大さがウリの南洋真珠系は酷いです。欲しがる人が限られるのも納得です。アンティークジュエリーを知る幸運に恵まれなければ、真珠自体におかしなイメージを持ちそうです・・。 |
2. 天然真珠の密度の濃い白の質感
2-1. 養殖真珠から分かる真珠層の厚みの重要性
真珠の外観の比較 | ||
天然真珠 | 初期の養殖真珠 | 現代の花珠養殖真珠 |
Genは天然真珠の輝きや質感を、「内側からにじみ出るような美しい輝き」とよく表現します。実際、天然真珠の輝きは内側から来るものです。一方で、養殖真珠は表面的で薄っぺらい輝きしか感じられません。これはきちんと理由があります。 真珠は真珠層の薄膜が幾重にも重なってできます。1mmの1,000分の1が1ミクロンですが、それよりさらに薄い数百nmの層が積み重なっています。 |
養殖真珠と天然真珠の断面の違い |
今では95%以上の養殖真珠が、僅か6〜8ヶ月の養殖期間で出荷されるそうです。1年以上養殖したものを高級品として『越物(こしもの)』と呼びますが、僅か1年ほどの越物では、真珠層の厚みは0.4〜0.6mm程度です。 『花珠』という養殖真珠もブランド化していますが、高いのに質が悪くて違和感を感じた人も多いようです。実は花珠の統一規格は存在しません。認定機関が無数に存在し、それぞれが花珠を名乗っているのが実情です。だから品質もバラバラで、とんでもない品質のものが花珠として売られていたりもします。 |
上:官製ハガキ(約0.22mm) 下:封筒(約0.35mm) 【引用】柏崎インサツ / Q & A ©kashiwazaki Print Co.,Ltd. |
業界では著名な認定機関でも、 真珠層が0.25mm以上あれば花珠認定されます。お墨付きのある高級品として、平気で数百万円の価格が付きます。 0.25mmというのは、昔の官製ハガキの厚みを基準にしたそうです。かなり適当ですね(笑) |
厳しいとされる認定機関でも、花珠の認定基準は0.4mmです。「真夏の午後2時頃のビーチ」に相当する強い光を当てても、核の縞模様が浮き出すことがないという検証結果から設定されたそうです。「0.3mm以上の厚みがあれば見た目は変わらない。厚みにこだわるのは意味がない。高くなるだけだ。」と、いかにももっともらしい顔で断言する自称専門家もいますが、完全に詐欺です。自分の商品を売りたいだけです。そのために平気で嘘を吐く人間がいることが気持ち悪いです。 天然の貝殻の核には、筋や模様などがあります。手間とコストをかけてまで核を漂白することも、真珠層が透けて見えることを業界人が認識していることを証明しています。 |
スケスケの養殖真珠の真珠層 |
これは一目瞭然ですね。薄すぎる真珠層は形を保ったまま綺麗に剥がせないので、それなりに厚みのある箇所です。しかしスケスケです。色が飛んでしまうので強いライトは当てていません。 金属はかなり薄くても可視光を透過しません。金属メッキはかなり薄くできます。しかし、真珠層は想像以上に透明度が高いです。かなり厚くしても、可視光を透過します。 同じ生体タンパク質として、まぶたを考えてみましょう。まぶたの皮膚の厚みは約0.6mmだそうです。明るい場所で目を閉じても、真っ暗にはなりません。皮膚はかなり光を通すことが解ります。指の間にある水掻きも、光にかざすと透けて見えますよね。 |
天然真珠 | 初期の養殖真珠 | 現代の花珠養殖真珠 |
現代の養殖真珠は、出荷前に研磨するのが一般的だそうです。表面のブツを除去するだけでなく、仕上げとしてツヤ出しを目的に『高速バレル研磨』を行うそうです。均質化もできます。 表面だけ異様にピカピカの養殖真珠があったりしますが、表面をツヤ出し研磨しているからです。真珠は独特の清楚な雰囲気が魅力の1つだと思うのですが、ピカピカだと安っぽい成金臭が漂います。生産する側のセンスを疑います。業界人が見ても削り過ぎと感じることがあり、まるで樹脂コーティングしているように見えたり、真珠表面の成長模様が失われていることもあるそうです(笑) |
今回の天然ボタンパール | 【参考】現代の養殖真珠 | |
天然真珠に侵入した光は幾重にも重なった真珠層の各面で反射し、複雑に重なりながら干渉光として出てきます。真珠層の透明度にもよりますが、かなり内部まで光は侵入します。奥深い複雑な輝きは、内部まで真珠層でできた天然真珠ならではのものです。 現代の宝飾業界は、売りたいがために平気で嘘を断言する人や、教えられた嘘を鵜呑みにして語る頭デッカチの人が多いです。人間が本来備えている感覚を研ぎ澄まして視ることができれば、違いは分かるはずなのです。 |
2-2. 質感の個性が非常に豊かな天然真珠
同じ日本人であっても1人1人、肌の色も髪の色も違います。同じ種類の母貝であっても、やはり天然真珠も1つ1つ質感に個性があります。特別なカラー天然真珠を除き、どれも白とは言えますが、その質感や美しさを『白』と表現するだけでは不十分なのです。 |
シルキー・マット | 水をまとったような瑞々しさ |
『Quadrangle』-四角形- エドワーディアン 天然真珠 ネックレス オーストリア? 1910年頃 SOLD |
『山海の恵み』 葡萄 ペンダント イギリス 1920年頃 SOLD |
どれも同じにしか見えない養殖真珠と違い、天然真珠は形だけでなく質感も個性に富みます。だからこそ見る者の意識に深く訴えかけ、印象に残ることができます。左は緻密で滑らかなシルキー・マットの質感が美しく、一方で右は表面に水の膜をまとっているかのような瑞々しい質感が印象的でした。真珠層の違いで、ここまで質感に違いが出ます。 |
『マーメイドの宝物』 アールヌーヴォー 天然真珠 リング フランス 1890〜1900年頃 SOLD |
小さいながらも、この天然真珠も強いインパクトがありました。 金属反射を思わせるような、超強力な光沢がありました。光りすぎて、どの角度から撮影しても強い写り込みがありました。 ダイヤモンドも肉眼でないと真の魅力が伝わりにくい宝石ですが、天然真珠も負けず劣らず画像では分かりにくいです!! |
可視光の波長領域 【引用】『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』k可視光線 2024年7月2日 (火) 15:47 UTC |
今回の天然真珠は、白の密度が濃い印象です。 真珠層の厚みは数百nmとされており、可視光線の波長領域と重なります。僅かな厚みの違いによって、様々な色彩の干渉光が現れます。僅か数十〜数百nmという僅かな厚みの違いで、人間の目には大きな色の違いとして感じられるのです。 |
角度によっては干渉光の色彩が強く感じられるものもありますが、このボタンパールはとにかく『白』の印象が強いです。 |
『ライア(竪琴)』 天然真珠 ブローチ イギリス 1820年頃 SOLD |
意識しないと案外気づきませんが、この宝物でも、いくつかはハッキリとピンク色の色彩を帯びています。ピンク色を意識下で知覚する必要はありませんが、無意識に受ける印象として、僅かな色彩が確実に影響します。 |
表情を変化させる幻想的な干渉光も魅力がありますが、揺るぎない純白を湛えた天然真珠も強い魅力があります。 |
これこそがこのボタンパールの、唯一無二の魅力ある個性と言えるでしょう。約5.5cmで存在感があるので、お手元で存分に天然真珠の美しさをお楽しみいただけます♪♪ |
3. 清楚で高級感のあるクラスター・バランス
3-1. 組合せで雰囲気が大きく変わるクラスターリング
定番のクラスター・リングもフル・オーダーしようとすると、思いのほか奥が深いです。決めなければならない箇所がいくつもあり、僅かな違いで雰囲気は大きく変化します。 |
天然真珠のダイヤモンド取り巻きリング | ||
ゴールド×爪留 | シルバー×爪留 | プラチナ×覆輪留 |
今回の宝物 |
SOLD |
SOLD |
金属は何を使うか、留め方は爪留か覆輪留か、ミルは打つか否か。天然真珠とダイヤモンドのバランスはどうするのか。ダイヤモンドのカットも、オールドヨーロピアンカットかローズカットで大きく雰囲気が変わります。 |
3-2. 天然真珠を惹き立てる極上バランス
ゴールド×爪留 | シルバー×爪留 |
今回の宝物 |
SOLD |
今回の宝物が特徴的なのは、天然真珠が大きめなことに対し、ダイヤモンドが小さめで数が多いことです。視覚効果としては、大きなダイヤモンドを配置してベゼル全体を大きくした方が、天然真珠そのものも大きく見える効果があります。右の宝物が該当します。天然真珠そのものの大きさは、今回の宝物の方が大きいです。 右の宝物は取り巻きのダイヤモンドもかなり存在感があり、天然真珠とダイヤモンドで構成したクラスター・デザイン全体が主役と言えます。 |
今回の宝物は、類い稀なボタンパールこそが主役です。 全体を煌びやかに見せるのではなく、敢えてダイヤモンドは小さめにして、天然真珠そのものを際立たせているのです!♪ |
ダイヤモンドが小さめな分、奥ゆかしさや清楚さが感じられ、主張したがる成金ジュエリーとは全く異なる高級感につながっています。 主張する必要が全くない、自己肯定感に満ちた、よほどの高貴な女性がオーダーしたものだろうと想像します♪ |
3-3. 名脇役の上質なダイヤモンド
12粒のオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドは、小さいながらも肉眼でもとても上質なことが分かります。 透明感、シンチレーション、ファイアが見事な石です。 |
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3-3-1. 厚みのある贅沢なカット
←↑等倍 |
それもそのはずで、ダイヤモンドはアンティークの高級品でもあまり見かけないほど、贅沢な厚さでカットしています。 |
ダイヤモンドのラフカット | ||
劈開を見極め正確に突く職人技 (〜1900年頃) |
劈開を無視した力技 電動ダイヤモンド・ソウ (1900年頃〜) |
レーザー・スキャン× レーザー・ソーイング (1980年代〜) |
結晶が整った約6%の原石のみ可 | 結晶系が整っていない原石も加工可 | |
今回の宝物が作られた時代はまだ電動ダイヤモンド・ソウが発明されておらず、劈開を利用したカットしかできませんでした。 |
【参考】様々なダイヤモンド原石 | |
職人技うんぬんということだけでなく、使用できる原石にも制約がありました。劈開を利用するカットは、ダイヤモンドの結晶が整っていてこそできる技です。結晶系が整っていないと、そもそもカットすることができませんでした。19世紀までは、得られた原石の約6%しか利用できなかったのです。 |
貴重だからこそ、得られた原石は最大限に活用するため、カットも工夫されます。 同じ結晶系で考えた場合、現代はブリリアンカットをなるべく幅が広く大きく見える形で2つ得ようとするので、1つ1つが薄っぺらくなります。 アンティークジュエリーの場合、1つの原石からメインのオールドヨーロピアンカットと、オマケのローズカットを取ります。 オールドヨーロピアンカットを厚く得ようとすると、その分だけローズカットは小さくなります。 |
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ローズカットの分は無視し、好みの美しさを惹き出すため、最大限に厚みを持たせてカットしています。この特別なボタンパールの名脇役にするための、特別オーダーのカットです。非常に贅沢なことです。クリアなダイヤモンドにこのカットを施したからこそ、透明感を強く感じ、クラウンからのシンチレーションもパワフルなのです! |
3-3-2. ダイナミックな輝き&パワフルなファイア
正面から見ると、透明感があるからこその瑞々しさや、華やかな照り艶が印象的です。ファイアも豊かで、主役の白い天然真珠との対比が美しいです♪♪ |
他のオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドと比べて、ファイアが出やすいです。 侵入した光が内部反射を複雑に繰り返すことで、分散した光がファイアとなって現れます。 インクリュージョンが少なく、内部で光が拡散してしまわないこと、ダイヤモンドに厚みがあるので光路長が稼ぎやすいことが理由です。 |
これだけ華やかに煌めくダイヤモンドだからこそ、このサイズが天然真珠に対してはベスト・バランスですね♪ |
定番デザインのシンプルに見えるリングですが、小さな宝物の中に込められた情熱と技術は、計り知れないものがあるのです。だからこそ一目見て、「美しい!♪」と感じることができるわけですね。 |
4. 見えない細部にまでこだわった上質な作り
4-1. 神技の透かし細工
この宝物は細部までの作り込みが、いかにも高級品らしいです。ショルダー部分にご注目いただくと、正面のベゼルにかけてグッと幅が細くなっています。 |
すべて同じ太さだった場合を想像すると、これだけでも劇的に女性らしいエレガントさがプラスされていることが分かります。華奢すぎて、壊れないか不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし大丈夫です。そこはさすがアンティークのハイジュエリーです! |
正面から見える、細い一箇所で接続しているわけではありません。手前と奥の2箇所ずつで両側を接続しています。叩いて鍛えた鍛造による一体化した作りなので、140年以上は経っていてもビクともしていません。見た目の華奢さと耐久性を両立するために、惜しみない技術と手間が込められているのです。 |
今回の天然ボタンパール | 【参考】現代の養殖真珠 | |
現代ジュエリーはコストにつながる手間をかけたがらないため、1箇所ずつで接続します。アンティークのハイジュエリーでも1箇所ずつで接続するリングはありますが、鍛造の作りなので現代ジュエリーほど太くする必要がありません。現代ジュエリーは溶かして冷やし固めただけの鋳造(キャスト)の作りなので、強度を確保するために金属の量が多くなり、ボテっとしたイカつさが出てしまいます。美しさと強靭さの両立は、技術と手間をかけてこそ実現できるものなのです。 |
細部にこだわったアンティークの定番リング | |
今回の宝物 |
SOLD |
フォルムの細部に関しても、想像以上に持ち主の個性が出ます。右のアールデコの宝物はショルダーからベゼルにかけて、流れに沿うシンプルな形状です。 一方、今回の宝物は曲線上に変曲点が存在し、返しがついた形状になっています。エレガントな雰囲気と共に、ボタンパールへとつながる反り上がるフォルムが、この宝物独特の高級感へつながっています。構造的にはちょっとしたことですが、随分と雰囲気が変わるものですね。 |
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鍛造のゴールドを削り出して透かし細工にしています。かなり拡大していますが、最も細い部分はシャーペンの芯も入らぬ細さです。そのような極小細工にも関わらず、真横から見ると完璧にスッキリしています。 |
奥行きがさほど無ければ驚きませんが、実際にはそれなりの幅があります。透かし細工は厚みがあるほど指数関数的に手間がかかり、技術的にも難しくなっていきます。奥行き方向に僅かでも斜めにズレれば、真横から見た時に美しく窓が空いた状態にはなりません。完璧に垂直に透かしを施さなければ、このようなスッキリとした見た目にはならないのです。 |
正面からは見えない部分に、どうやったか分からないレベルの神技を全力で施しているのが最高ですね!!♪ |
指元でチラリと見える神技の透かし細工を眺め、持ち主は自分だけの楽しみを堪能していたかもしれません。最高のボタンパールとダイヤモンドを使っているけれど、それだけでは満足できない。細工の魅力まで知り尽くした、美意識の高い女性ならではのリングと言えるでしょう♪♪ |
4-2. 背後のエレガントな彫金
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ベゼルのフレーム土台部分に、綺麗に溝が彫金されています。これは機能的なものではなく、美しく魅せるための細工です。 |
土台は強度が必要なので、ある程度ゴールドに厚みがあります。 そこに溝を彫金することで、2つのパーツに分割する視覚効果が生まれます。結果的に、細く華奢に見えます。 |
機能的に意味があるわけではないため、高級品ならば必ず彫金されているわけではありません。 シンプルな作りにすることもあれば、溝とは別のデザインを施すこともあります。 |
『財宝の守り神』 ダイヤモンド ブローチ フランス 1870年頃 SOLD |
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これは誰が見ても分かりやすい高級品でしょう。約2ctの超特別なダイヤモンドの土台にも、精緻な溝が彫金されていました。 |
『ダイヤモンドの原石』 クラバットピン(タイピン)&タイタック イギリス 1880年頃 SOLD |
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むしろシンプル・イズ・ベストの宝物ほど、このような細部までの作り込みが重要と言えます。デザイン的には極めてシンプルなこの宝物も、フレーム土台に溝が彫金されています。 |
『Bright things』 アールデコ ダイヤモンド 3連ピアス イギリス 1930年頃 SOLD |
宝石主体のジュエリーの場合、細工する範囲は限られます。 美意識の高い高級品は、見えない裏側に溝を彫金するのは定番と言えます。 細工にそこまで技術と手間、すなわちお金をかけるのですから、メインの宝石は間違いなく最上質と言えます。 宝石が主役のジュエリーなのに、細工にばかりお金をかけて宝石がないがしろなんてあり得ません! |
使い勝手の良いシンプルな定番デザインは人気がありますが、市場にある大半は手抜きのシンプルです。業界内では「売れ筋」と表現されますが、そのようなものはお取り扱いしません。 HERITAGEは業界随一の厳しい判断基準で選ぶので、高確率でこの彫金をご紹介できる機会があります。 |
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リングの裏側なので、傾斜が付いた部分に彫金しています。 |
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溝を彫った後、綺麗に磨き上げることで、自然で美しいフォルムと黄金の光沢が生まれます。見えない部分まで行き届いた美意識こそ、真に価値あるジュエリーの証です。定番デザインの宝物といえども、良いものは見どころが満載です!♪ |
裏側
スッキリとした美しい作りです。ダイヤモンドの裏側の窓もできるだけ大きく開けてあり、美しい透明感と煌めきが感じられるのです。 |
ロンドンの天然真珠の鑑別書
着用イメージ
仰々しさはありませんが、照り艶の良い極上のボタンパールとオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドの組み合わせは、それだけで特別な存在感を放ちます。 定番デザインの上質なジュエリーは飽きが来ず、合わせやすさもありますので、末長くご愛用いただけると思います♪♪ |