| No.00377 新月 | 
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| 透明度と厚みを兼ね備えた最高品質のブルー・ムーンストーンです♪ | ||
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| まるでロッククリスタルのようなムーンストーン(左)は、さながら透明な新月です!♪ 厚みのある石の奥底から放たれるブルー・シラー(右)は、青白く発光しているようでもあります!♪ | ||
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| この画像だけだと、まるで高品質のロッククリスタルのリングです♪ | |
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| その無色透明な宝石から放たれる青白い光はミステリアスの極み!!♪ | |
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| このミステリアスさこそが最高品質のムーンストーンの魅力です!!♪ | |

| サイズがありながら、中間のタイミングは青みと透明度の高さ故に、清楚で高貴な雰囲気です♪ | 
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| ミステリアスで豊かな表情はシルクの手袋にも映えます♪♪ | |


ベゼルが宙に浮いて見える不思議なデザインの引力!♪


ブルー・ムーンストーンと共に魅力の強いダイヤモンド!♪
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|  |  ←等倍↑ | ローズカットと見まごうほどの極小ダイヤモンドは特注のシングルカットで、光を取り込みやすく設計し、透明感の高さと底部からの煌めきを強調する特別仕様です。最高級ブルー・ムーンストーンのためのとびきり贅沢な名脇役です!♪ | 
|  |  |  ←等倍 | 
| ファイアの出やすい極上ダイヤモンド!♪ プラチナの覆輪も、精緻な極小細工が圧巻です!♪ | ||
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|  |  ←等倍↑ | こんなに小さなダイヤモンドで、裏側の窓のデザインまでここまで凝ったエドワーディアン・リングは前代未聞です。最高級リングの証であり、極小ダイヤモンドそのものの特別さの証でもあります!!♪ | 

サイドまでシンプル・イズ・ベストの極上デザイン&作り!♪
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 | 『新月』 | ||
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| 48年間で恐らく初めてのご紹介となる、エドワーディアンの最高級ブルー・ムーンストーンのリングです。ムーンストーンは透明度が高いほど評価も高いですが、大きさがある上にロッククリスタルに見まごうほど透明感が強いです。シラーは積層構造から放たれる性質上、厚みがあるこの石はシラーの重なりが多く発生します。瞬間によっては青白く発光しているようにすら感じられます。リングの宝石としては大きさがありますが、青みと透明度の高さ故に成金感がなく、どこまでも清楚で高貴な雰囲気も魅力です♪ 奇跡と言えるクラスのムーンストーンだからこそ、デザインと作りも最高級です。最高品質のダイヤモンドは特別に設計した極小シングルカットを施しており、透明感の強さと共に、煌めきは表面ではなく主に石の奥(底面)から放つよう設計しています。至高のムーンストーンを最大限に生かす名脇役として、最高に贅沢かつ完璧な組み合わせです! 定番の取り巻きリングのデザインですが、ベゼルが宙に浮いて見える視覚設計、画期的な新素材として当時最も注目を集めたプラチナを目立たせるデザイン、見えない裏側に至るまでの美意識の高い作りなど、これ以上のものはないと確信できる極上エドワーディアン・ブルームーンストーン・リングです。王侯貴族にムーンストーン・ジュエリーが流行したのは主に19世紀後期で、20世紀に入ると美意識の高い最高級品は極端に少なくなり、市場は成金を含めた庶民用の低級品で溢れかえるようになります。エドワーディアン、すなわちプラチナと組み合わせた王侯貴族のためのムーンストーンの最高級ジュエリー自体が滅多にない上に、このようなリングは一度手に入れたら滅多に手放すものではありません。 特徴的なデザインが主役ではなく、『ブルー・ムーンストーンという宝石そのもの』を主役にしたリングとしては最高峰であり、HERITAGEでも2度と類似のものすら出ないであろう至極の宝物です♪ | 
この宝物のポイント
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1. 稀少なムーンストーンの最高級リング
1-1. 『質』により外観も価値も大きく異なるムーンストーン
|  | 過去48年間で、様々な美しい高級ムーンストーン・ジュエリーをご紹介してきました。 しかし、案外ないのがリングです。参照資料を探しましたが1つも見つかりませんでした。意外でしょうか? | 
|  | ムーンストーンという石自体はそこまで珍しくありませんが、最高級ジュエリーに選ばれるクラスの最高評価の石は物凄く稀少です。 そこに理由があります。 | 
1-1-1. 『透明度』が価値の基準となる一般的なムーンストーン
|  スイス産ムーンストーン "AdularireSuisse2" ©Didier Descouens(24 August 2009)/Adapted/CC BY-SA 3.0 | ムーンストーンは『シラー』と呼ばれる独特の輝きを放ち、古代から特別視されてきました。 幻想的な青の輝きは他の宝石にない魅力を放っており、人を惹きつけます。 | 
|  | あまりにも魅惑の光を放つからこそ、そこにばかり意識が行きがちです。 | 
| 戦後の長石のシルバー・アクセサリー | ||
| ムーンストーン | レインボー・ムーンストーン (ホワイト・ラブラドライト) | ブルー・ムーンストーン (ペリステライト) | 
|  "Ring Moonstone" ©Ra'ike(2006-12-19)/Adapted/CC BY-SA 3.0 |  |  | 
| 鉱物学的な詳細は以前ご紹介しましたが、現代では青いシラーが出る石を何でもかんでもムーンストーンと誤解させて販売する戦術をとっています。商売なのでメーカーは売りたいものを売るためのPRしかしませんし、書籍や知識系のインターネット記事も純粋な知識ビジネスでは成り立ちません。背景に販売者がいるのが通常で、スポンサーの販売と利益に結びつくことしか書きません。ダイヤモンド然り、養殖真珠然り、都合に合わせて発言がコロコロ変わるなんて日常です。 | ||
|  低品質のムーンストーンのシルバー・リング(現代) "Ring Moonstone" ©Ra'ike(2006-12-19)/Adapted/CC BY-SA 3.0 | 青いシラーさえ出れば価値があるかの如くPRすることも少なくありませんが、シラーが出ない状態はただの石ころです。 御影石や河原の小石と同様、磨けばどんな石もそれなりに綺麗に見えます。稀少性は関係なく、全ての石がそうです。 ただ、このようなムーンストーンは高く評価される対象ではありません。 | 
| 【参考】現代のダイヤモンド原石のリング | ||
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| 石の種類(+大きさ)だけで判断する人が相当数いるからこそ、現代にはこれらの"宝石ジュエリー"が存在します。石の種類だけで判断し、安い(但し実際の価値に対しては割高)ことを喜び、品質と美しさには意識が行かない人間性が、身につけたジュエリーから如実に伝わります。 | ||
|  『ミラー・ダイヤモンド』 アーリー・ヴィクトリアン オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド イギリス 1840年頃 ¥3,700,000-(税込10%) | 良いものは眺めているだけでも心が満たされます。出逢いを運び、素晴らしいご縁をつないでくれることすらもあります。 しかし良くないものは着けない方が、マイナスにならない分だけまだマシです。 | 
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| この図は全ての宝石に当てはまります。人工的に生産する合成石は品質を均一にすることも可能ですが、天然石は無限の個性があります。ムーンストーンもムーンストーンならばどれも同じ質、同じ価値ということはなく、質によって稀少性と美しさ、評価は大きく変わります。 | 
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| 現代も、ムーンストーンはインクリュージョンがない物が良質とされます。 GIA(Gemological Institute of America:米国宝石学会) | 
|  『FULL MOON』 ムーンストーン ネックレス イギリス 1890年頃 SOLD | 本物の上質なロイヤルブルー・ムーンストーンは今も昔も稀少価値の高い宝石です。 | 
| 【参考】ホワイト・ラブラドライトのアクセサリー(現代) | |
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| しかし、ホワイト・ラブラドライトが間違ってブルー・ムーンストーンあるいはロイヤルブルー・ムーンストーンとして販売されていることもあるそうです。 ムーンストーンの中でも最上級の石にしか命名されないはずのロイヤルブルー・ムーンストーンがたくさん存在することもあり得ませんし、安いわけもありません。考えればすぐに気づくことができるはずですが、業者を鵜呑みにする人は想像以上に多いです。そして、このような石がロイヤルブルー・ムーンストーンだと思い込み、疑いもしません。低品質な石は、シラーが出ない瞬間はただ濁っているだけの石です。 | |
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| 本当に上質なムーンストーンは透明度が高く、"何もない"ところに突如ブルー・シラーが浮かび上がります。驚きと共に、幻想的な美しさに魅了されます。そのようなムーンストーンこそが、最高級ジュエリーに相応しい宝石として最高評価を受けます。低品質の石とはまるで別物ですが、そのような本物の極上ムーンストーンはアンティークジュエリーでも滅多に見る機会がありませんから、知られざる宝石と言っても案外過言ではないのです。 | |
1-2. 19世紀後半の新鉱脈発見とムーンストーンの流行
1-2-1. 古代から愛されたスイス産ムーンストーン
|  古代ローマの博物学者プリニウス(23-79年) | ムーンストーンは古代から愛されてきました。古代ギリシャ人は古代ローマ人はムーンストーンは月光が結晶化した宝石と考え、月の女神などと関連して尊んでました。 博物学者プリニウスはムーンストーンの中に月の光があり、月の満ち欠けを反映して輝きが変化するとしました。 現代の偽ムーンストーンや低品質のムーンストーンしか知らないと、これはいまいちイメージして共感できません。 | 
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| 『Blue Moon』 ブルー・ムーンストーン ネックレス イギリス 1890年頃 SOLD | しかし、最高品質のムーンストーンを見れば至極納得できます。これらは5〜6mmと小ぶりですが、質が良い石だけを丸いドーム状にカットしています。新月、三日月、半月、満月、全ての月齢が石に浮かび上がります♪ | 
|  | 古代もやはり透明度の高い石が上質とされていました。 新月は透明度の高いムーンストーンにしか表現できません!♪ | 
|  スイス産ムーンストーン "AdularireSuisse2" ©Didier Descouens(24 August 2009)/Adapted/CC BY-SA 3.0 | ムーンストーンの主な産地はスイス南部、アルプス山脈のアデュラー山(ラインヴァルトホルン山)でした。アルプス式熱水脈中に産出する正長石の一種です。 透明度が高く美しい青の光を放つ上質なムーンストーンが採れ、石は山に敬意を表して『アデュラリア』と呼ばれていました。 | 
| 宝石が採れるアルプス山脈 | |
|  『アルプスの溶けない氷』 アルプス産ロッククリスタル 回転式3面フォブシール イギリス 18世紀後半 ¥1,400,000-(税込10%) |  モンブラン山麓シャモニーのクリスタル・ハンター/猟師/ガイド ジャック・バルマ(1762-1834年) | 
| アルプス山脈はロッククリスタルの産地でもあります。古くはクリスタル探しや猟師、ガイドなどで生計を立てる者もいました。ウラル山脈も宝石庫として知られますが、アルプスもなかなかですね♪ | |
1-2-2. 19世紀後半のスリランカ産の発見
| 19世紀後半、ブルー・ムーンストーンの産地として有名なスリランカのミティヤゴダ鉱山で漂砂鉱床が発見されました。これにより新たに上質なムーンストーンが手に入るようになりました。ファッションリーダーがヴィクトリア女王からアレクサンドラ王太子妃に移り、最先端ファッションも女性らしい軽やかで繊細なデザインが好まれるようになったタイミングと重なり、ムーンストーンは流行の最先端の宝石の1つとなりました。 | 
| レイト・ヴィクトリアン | エドワーディアン | 
|  ムーンストーン&クリソベリル ネックレス イギリス 1880年頃 SOLD |  『アルテミスの月光』 ムーンストーン メアンダー ネックレス&ティアラ イギリス 1910年頃 SOLD | 
| レイト・ヴィクトリアンからエドワーディアンにかけて、上流階級のためのハイジュエリーとして、個性あふれる様々なデザインを見ることができます。過去48年間を振り返っても、ムーンストーンのハイジュエリーは大体この年代のものです。 | |
2. 王侯貴族の最高級品ならではの気品に満ちた雰囲気
2-1. 安物ムーンストーン・ジュエリーとの明確な違い
|  | 現代の詐欺的な偽ムーンストーンは問題外ですが、アンティークの時代もムーンストーン・ジュエリーは安物が数多く作られています。 このような王侯貴族のために作られた本物の最高級品は制作数が少ない上に、見る機会がある人は限られます。入手はさらに難しいです。 | 
| 一方で大衆用に作られた安物は数が多いため人目に触れやすく、必然的に知名度が高いです。カテゴリーとして成立し、ブランド化するには一定の数が必要です。王侯貴族のためのハイジュエリーはそこまでの数がないため、世に知られざる存在となるのは宿命です。ムーンストーンは人気の高さもあり、現代はアンティークの安物が尤もらしく"代表者"のように幅を利かせています。明確に違いがあるので、具体的にご説明いたします。 | 
2-1-1. 19世紀後期の王侯貴族のムーンストーン・ジュエリー
| 新しい鉱脈が発見された結果、全員が有り余る財力を所有する社交界ではただ『ムーンストーン』というだけで差別化することはできなくなりました。ちなみにブルー・ムーンストーンだけでなく、ホワイト系の雰囲気あるシラーが美しいムーンストーンも、その特徴を生かした美しい宝物が作られています。 | 
|  | 石が豊富に採れた時代、美意識の高い王侯貴族に試みられた1つが無駄の多いカットです。石そのものが稀少すぎる時代はトライできません。 ハート型は定番で人気があり、シラーを表現するためのカボションカットとの相性も良いため、たまに出逢うことができます。 | 
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|  ムーンストーン・カメオ ペンダント フランス 1870年頃 SOLD | 特に贅沢なのは手の込んだムーンストーン・カメオです。 『マン・イン・ムーン』は人気になり過ぎたため、質の悪い石と良くない彫り、安物の作りのものも一定量が作られました。一種のブランドと化し、割高な価格で市場で見ることができます。 左はGenが14年前にご紹介した宝物です。美しい彫り、ローズカット・ダイヤモンドを散りばめた贅沢なセッティングなど、相当な高級品です。 | 
| このような美しいムーンストーンのカメオは20年ぶりのご紹介だったそうで、「今度出会うのは二十年後なのか、これで最後なのかは、僕にも解りません。」と、当時ディーラー歴33年だったGenが述べていました。私も一度はお取り扱いできる日が来るかしら・・。 | 
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| その他、どれも個性に溢れています。金属は主にゴールドで、ダイヤモンドを使用の場合はシルバーにゴールドバックです。 | |
| デマントイドガーネット  | ルビー  | 
| ダイヤモンドの他、様々な色石との組み合わせも特徴です。ホワイト系のシラーのムーンストーンは特に、様々な色石と相性が良いです。 | 
2-1-2. アーツ&クラフツの最高級品と庶民向けの量産品
| 世界に先駆けて産業革命を経験したイギリスは、世界の工場として1850年から1870年頃にかけて大英帝国最盛期となる『パクス・ブリタニカ』を迎えました。中産階級の新たな資本家たちが、新興成金としてジュエリーを買い始めたのがミッド・ヴィクトリアン頃からです。 レイト・ヴィクトリアンにかけて裾野は広がりました。植民地政策の成功もあり、高度経済成長からバブル期にかけての日本のように、広く大衆が小金持ちとなり、旅行や娯楽に出かけたりジュエリーも買うようになりました。19世紀後半以降は、そのような大衆向けの高級品(上流階級基準では安物)が相当な数、作られました。 | 
| 王侯貴族の最高級品 | 庶民用の量産品 | 
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| 王侯貴族の最高級品はムーンストーンという宝石頼りにはせず、ムーンストーンという主役を最大限に生かすデザインで制作されています。天然マベ真珠、クリアなローズカット・ダイヤモンドなど上質な高級宝石との組み合わせ、シルバーにゴールドバックの高価な作り、高度なナイフエッジ技術の組み合わせなど、ムーンストーン以外の見えない細部に至るまで相当なお金と技術がかけられています。 右は庶民向けの高級品ですが、上流階級にとっては対象外の安物です。1947年に身分制が廃止された日本では今は想像しにくいですが、当時のイギリスでは現代以上に身分によって明確な境界が存在し、その壁を超えることはありませんでした。庶民の領域での高級品と、上流階級の領域の基準は次元が異なります。 庶民の高級品は、シルバーはシルバーだけです。見えない裏側に高価なゴールドを使うくらいなら、正面にゴールドを持ってきてドヤります。ムーンストーンだけでいっぱいいっぱいなので、他の宝石も使えません。 | |
| 【参考】安物のアーツ&クラフツのシルバー・ジュエリー(1900年頃) | ||
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| 量産の既製品なので、デザインも無難で似たり寄ったりです。明確な個人のために制作される王侯貴族のオーダー品の場合、依頼主に合わせてデザインします。しかし誰が買うか分からぬ既製品の場合、最大数を狙う都合上、デザインがボヤけます。不特定多数を想定すると、個性的なものは売れ残りリスクが高くなるため、無難なデザインで作るのが最も戦略的です。また、技術の低い職人でも早く簡単に作れることを考えると、デザインも使いまわして機械作業的にやらせる方が効率的です。 | ||
|  アーサー・ランセビィ・リバティ(1843-1917年)1913年、70歳頃 | それを大衆向け"高級店"で効率的に販売しました。 『百貨店』は、王侯貴族が経済活動の主役だった時代には存在しませんでした。大衆が小金持ちとなり、可処分所得を贅沢品に使う意識が芽生え始めたタイミングで、大衆のお財布をターゲットに時代の流れとして生まれたビジネス・スタイルが百貨店です。イギリスだと1875年創業のリバティ百貨店が有名です。 1862年の第2回ロンドン万博に出展されたラザフォード・オールコック駐日総領事の日本美術コレクションが大いに話題を呼び、コレクターである上流階級のパトロンや専門店などに雇われた日本美術ディーラーたちが活躍するようになりました。 | 
| その一人がアメリカのティファニー創業者チャールズ・ルイス・ティファニーだったりします。だから創業者時代の初期のティファニーは、ジャパネスク様式の作品が有名なのです。イギリスではファーマー&ロジャー極東品店に雇われたアーサー・ランセビィ・リバティが、こぞって日本の美術工芸品を買い集め始めました。 | 
|  リバティ百貨店(ロンドン) "Liberty department store London" ©Lios Volla del Campo(26 March 2006, 14:22:08)/Adapted/CC BY 2.0 | 
| しかしながらリバティはファーマー&ロジャーとの折り合いが悪くなり、ディーラーとしての経験を活かし、将来の義父に借金をして1875年に自身の店を出店しました。初期は日本を始めとした東洋の美術工芸品を扱っていましたが、あくまで商売人として儲かるもの、つまり『人気があるもの』を商品としたため、時代の潮流に合わせてラインナップは(良く言えば)柔軟に方向転換されました。 | 
|  詩人/作家/劇作家オスカー・ワイルド(1854-1900年) |  1906年版『ボヌール・デ・ダム百貨店』の挿絵、p377(エミール・ゾラ著 1883年発行) | 
| 耽美主義やアールヌーヴォーなど流行の最先端を扱い、1889年には劇作家オスカー・ワイルドに「リバティ百貨店は芸術的な買い物客の選ばれしリゾート地である。」と書いて宣伝してもらいました。同時代に活況をとなったフランスの百貨店も、大衆を巧みに誘導・操作する心理テクニックを駆使し、買い物中毒や窃盗症などによる人生破綻などが問題視されるほどとなりました。 大衆ウケ抜群、話題の知的イケメン大先生に常連客として店を持ち上げて貰えば、衣装協力や原稿料を支払ったとしてもそれ以上の莫大な儲けが期待できます。広告宣伝費として見れば安いものであり、簡単に転がせる大衆は、こぞって知的な芸術家が愛用する憧れの高級店に頑張って背伸びして大金を落としました。百貨店なんてそんなものです。だから転がされる側ではない、少なくとも当時の上流階級は百貨店に高級イメージを持ちませんし、元々のヨーロッパに百貨店への高級イメージはないのです。 | |
| 【参考】安物のアーツ&クラフツのシルバー・ジュエリー(1900年頃) | |
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| 物心つかない時期から徹底した教養を施され、良いものに囲まれて育ち、感性や眼を養った上流階級は自身の感覚で選ぶことができます。しかし大衆はそうではありません。だからブランドや権威のお墨付きと威光を必要とします。孤高の存在となることに不安を覚え、人と同じものを持つことで安心感を得ます。 稀少価値のない安い材料、使い回しのデザイン、簡単な作りのジュエリーに、「百貨店のお取り扱い」や「アーツ&クラフツ」、「耽美主義」、「アール・ヌーヴォー」などのキャッチコピーを付けただけで割高な価格で買ってくれ、しかもそれを大衆同士でマウンティングし合いながら自発的に宣伝までしてくれます。大衆心理学的には面白いですが、HERITAGEではお取り扱い対象外です(笑) | |
2-1-3. 20世紀前半の安物ムーンストーン・ジュエリーの氾濫
| そうは言ってもアーツ&クラフツくらいまではまだマシです。流行は高位貴族から下位貴族、ブルジョワ中産階級から庶民へと時間をかけて降りていきます。大量生産と大量消費を前提とした現代の流行は、早ければ半年ごとに変化します。廃れさせないと新しく買ってもらえないため、意図的に流行遅れに追いやるのです。だからセットで"セール"という販売法も必要です。この消費社会が本格的に日本へ到来したのは戦後です。アンティークの時代の常識とは異なります。 | 
|  アーツ&クラフツ ネックレス イギリス 1880〜1900年頃 (プラチナ・チェーンは1920年頃) SOLD | 古い時代は数十年かけて、流行が庶民に降りていました。30年から50年くらい時間差があるのは普通です。出来の良し悪しはあってもいずれもハンドメイドだからこそ、作るのに時間がかかるからです。 アーツ&クラフツ・ジュエリーが社交界で流行したのは1880年頃からです。 ちなみに普遍の魅力を備えられるほど傑出したデザインだった場合、陳腐化することなくいつまでも愛されます。左はアールデコの時代に受け継いだ人が"当時の最高級の基準"に合わせてチェーンのみ、お金と技術と手間をかけてプラチナにリメイクしています。そうするに値する、上流階級が認めた魅力の証です。 | 
| 【参考】ムーンストーンのシルバー・ジュエリー劣化の変遷 | ||
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| この辺りは中産階級の中ではお金持ちと言える層のものです。左の2つはアーツ&クラフツに分類されます。王侯貴族の流行より遅れた流行なのでせいぜい1900年頃、20世紀以降のものとなります。アーツ&クラフツ運動の精神自体は趣向を凝らしたデザイン、手仕事へのこだわりが特徴です。それ故に、使い回しのデザインであれどそれなりに頑張って作られています。 どれもムーンストーンのハンドメイドのシルバー・ネックレスですが、右に行くほど年代が新しくなります。手間と技術、つまり見えにくいコストに直結するデザインと作りが簡素化し、宝石の分量だけで売ろうとする意図が如実に反映されています。教養や美意識を育てる機会のないまま大人になった成金庶民は、目に見えて分かりやすい宝石さえ付いていれば喜んでお金を出した帰結です。 | ||
2-1-4. ムーンストーンの人気が高まった時代の社会構造
| ムーンストーンの人気が高まった時代は、新興成金を含めた中産階級が勢力を増した時期と重なります。従来の王侯貴族が力を落とし、新たな新興成金をターゲットにした方が儲かるようになってきたタイミングです。この頃になると、政治経済的にも『大衆の文化教育』が重要視され始めました。可処分所得を溜め込むことなく適切に使ってもらい、経済の循環を促進するためです。もはや庶民が経済活動の主役となりつつありました。 | 
|  第5回パリ万国博覧会のパノラマビュー(1900年) | 
| 大衆の効率的な教育の場として重要視されたのが万博でした。1900年のパリ万博は、都市の消費文化が繁栄を極めたベルエポックの頂点と言われた万博です。『アール・ヌーヴォーの祭典』とも呼ばれます。「芸術的かつラグジュアリー」と評される、当時の世界のビッグ・スリーのジュエラーが一堂に会した最初で最後の万博でもありました。 ・ロシアの天才プロデューサーのファベルジェ 世界中の注目を集めた1900年のパリ万博は、過去最大の4,800万人を動員する大規模なものとなりました。どんな人もウェルカムな大規模な箱物なので、大衆をメインとした大規模イベントと見て良いでしょう。 | 
|  ルネ・ラリック(1860-1945年) |  『アザミ』(ルネ・ラリック 1898〜1900年頃) "Cigales Lalique Musee Gulbenkian" ©Yelkrokoyade(13 July 2010)/Adapted/CC BY-SA 3.0 | 
| ラリックもムーンストーンの作品を制作しています。このラリックが曲者です。1870年に皇帝ナポレオン3世を廃位し、フランスはいち早く大衆の時代としてベルエポックを迎えました。高度経済成長からバブル期のような、大衆が活気に満ちた社会です。もはや上流階級は存在せず、大衆のスターである女優や歌手などが憧れのアイドルとして持て囃されました。 | |
| テオドラに扮する同時代の上流階級と舞台女優 | ||
| 本人 | イギリスの上流階級 | 舞台女優 | 
|  東ローマ帝国テオドラ皇后(在位:527-548年) |  ランドルフ・チャーチル夫人:チャーチル元首相の母(1897年) |  サラ・ベルナール(1900年) | 
| 大衆の中で埋もれることなく自分の身1つで成り上がる女優や歌手は、上流階級とは絶対的に異なります。教養や財力は比べるべくもありません。 社交界の仮装舞踏会の衣装と、女優の舞台衣装を見比べても一目瞭然です。舞台衣装は遠くからも目立つこと、凄そうに見えることが重要です。そして、残念ながらお金はかけられません。人々に夢を見せる職業であり、高そう、凄そうに見えても実際はそうではないのです。サラ・ベルナールのような屈指の知名度を誇る女優ですら、ある程度の名声を得ても高級娼婦の方が「稼ぎが良いから。」と続けていたことは有名です。 | ||
| クレオパトラに扮する同時代の上流階級と舞台女優 | |
| イギリスの上流階級 | 舞台女優(フランスの大衆のスター) | 
|  アーサー・パゲット夫人(1897年) |  サラ・ベルナール(1899年) | 
| 社交界では、同等の知識や教養のある人に見られることが前提です。女優は主に大衆ウケが重要です。小難しい教養や仔細を衣装に詰め込んでも意味がありません。まさにハリボテの虚飾の世界であり、近くで見れば、残念ながらそこはかとないチープ感が漂います。 | |
|  鶏のティアラ(ルネ・ラリック 1897-1898年)グルベンキアン美術館 "Tiara de Lalique - Calouste Gulbenkian" ©Antonio(23 August 2008, 09:23:58)/Adapted/CC BY-SA 2.0 | 
| ルネ・ラリックも、大衆のための『作られた大先生』感が強いです。ド派手で目立つ悪趣味なラリックの作品は、女優や歌手などが主な顧客でした。スターたちが愛用するラリック大先生、という感じです。 | 
|  『蝉』(ルネ・ラリック 1860-1945年)グルベンキアン美術館 "Cigales Lalique Musee Gulbenkian" ©Yelkrokoyade(13 July 2010)/Adapted/CC BY-SA 3.0 | 
|  『メデューサ』(ルネ・ラリック 1860-1945年) "Medusa by Rene Lalique22" ©HTTPS://www.flickr.com/photos/shadowgate(31 December 2006)/Adapted/CC BY 2.0 | 
| 悪魔崇拝者なのか、あるいは精神が病んでいるのではとちょっと心配になるほどです。作られた大先生の虚像によってフランスで大衆の支持を集め、1900年のパリ万博ではビッグ・スリーの一角として注目されたラリックでしたが、ロシア皇帝御用達のファベルジェ、上流階級や知的階級から高く評価されたティファニーとは実力差が明らかでした。 | 
|  『スカラベ』(ルネ・ラリック 1860-1945年)グルベンキアン美術館 "Scarabe Lalique Musee Gulbekian" ©Yelkrokoyade(13 July 2010)/Adapted/CC BY-SA 3.0 | 
| 比較対象がある中で世界の王侯貴族の目にも晒され、メッキが剥がれました。1905年頃を境にして、ラリックは著しく人気が凋落しました。『作られた人気』を作っていた側の評論家たちは、手のひらを返したようにラリックの作品に「陳腐だ!」、「悪趣味だ!」と、悪評を浴びせかけるようになったそうです。本当に見る目のある上流階級たちがそう言ったからでしょう。全く分かっていないのに専門家を名乗る、『専門家ビジネス』の商売人は昔から存在したわけですね。 | 
|  『アザミ』(ルネ・ラリック 1898〜1900年頃) "Cigales Lalique Musee Gulbenkian" ©Yelkrokoyade(13 July 2010)/Adapted/CC BY-SA 3.0 | ラリックはジュエラーからグラス・アーティストに転向せざるを得なくなりました。 そうやって低評価を浴びたラリックのジュエリーが、これまた自称専門家によって日本で凄いものであるかのように宣伝され、鵜呑みにする人が驚くほど多いのも興味深いです。 当時の流されやすい大衆もそれは同様で、ムーンストーンは大先生が好む素晴らしい宝石というイメージができ、大衆向けのジュエリーとして益々人気が高まったというわけです。 | 
| 【参考】安物のムーンストーンのシルバー・ネックレス | |
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| そして大衆の多くは宝石の分量が多ければ納得し、安ければ安いほど喜ぶので、それに合わせてジュエリーも進化・・。退化しました。 古めの左はまだ銀細工を頑張ろうとする意思が見えますが、より新しい時代の右は完全に石頼りです。石の質もろくに選んでいません。1つ言えるのは、ムーンストーンがそれだけ産出し、大量に供給できるようになっていったということです。ミッド・ヴィクトリアンからレイト・ヴィクトリアンにかけて、中産階級にも大流行したガーネット・ジュエリーと同じです。 実は右も「1910年頃のアーツ&クラフツ」と称していました。刻印があれば別ですが、このデザインで年代特定は困難で、現代でも作れるレベルです。とりあえず『アーツ&クラフツ』と言っていれば楽に高値で売れるという理由で、適当なことを言う業者は安物市場には溢れています。 | |
|  【参考】アーツ&クラフツの安物ムーンストーン・ネックレス | これはムーンストーンの1つが明らかに破損しており、一応アーツ&クラフツの安物でしょう。 以前は安物であれば市場にもう少しあったと感じますが、今では大量に作られた安物すら枯渇状態にあるのでしょう。 現代でもシルバー・アクセサリーやインディアン・ジュエリーのレベルのデザインや細工は可能ですが、この程度でもハンドメイドで作るのはコストがかかります。 | 
|  【参考】自称アーツ&クラフツのシルバージュエリー | 
| ゴールドと違い、シルバーは圧倒的に安いです(金:18,563円/g、銀:217円/g、2025.9.4現在)。金属そのものとしてのシルバーは、ゴールドの100分の1くらいの価値しかありません。シルバーでこの程度の作りなら、リプロダクションやフェイクを作るにも安上がりです。 | 
| 【参考】ムーンストーンのシルバー・ネックレス | ||
|  自称1900年代アーツ&クラフツ |  自称1930年頃アールデコ |  自称1940-1950年代ヴィンテージ | 
| それをアンティーク、アーツ&クラフツ、アールデコ、ヴィンテージなど自称させるだけで高く売れます。買う人がいるからこそ、リプロか中古か、ヴィンテージか判別などできないものが市場に氾濫しています。現代の偽ムーンストーンのアクセサリーもあんまりですが、当時の大衆も石の種類と分量しか気にしない人が大半だったことがよく分かります。基本的に人間心理は今も昔も変わりません。 | ||
2-1-5. 高級市場でのムーンストーンの陳腐化
|  【参考】ティファニー 1910年頃、イヤリングとセットで約2,040万円で落札(2017年現在) | ビッグ・スリーのもう一角、ティファニーもムーンストーン・ジュエリーを多く販売しています。 ただし1900年のパリ万博より後で、カリスマ創業者チャールズ・ルイス・ティファニーの没後です。 | 
|  店に立つ創業者チャールズ・ルイス・ティファニー(1887年) | 
| 身分制度のない自由な国アメリカで、チャールズは身一つで高級文房具や小物の店から始めました。粗野で文化的後進国と見られていたアメリカで、ヨーロッパ上流階級に認められるべく粉骨砕身しました。チャールズは創業者・経営者として随一の才能を持っていました。 従業員を搾取し、顧客にだけ媚を売るような金儲け主義の成金経営者ではありませんでした。毎朝屋敷から徒歩で店に出勤していたそうで、1888年にニューヨークが豪雪となった際も出社し、「半世紀前に店を開いた日より人が少ない。」と笑ったそうです。純粋に仕事を愛した人物でした。没後の追悼式でスピーチした友人はティファニーについて、「人の内面を見抜き、能力を判断する力に優れた人物だった。」と述べています。このため従業員の雇用期間が長く、仕事上の関係以上のつながりがあったとも語られました。 | 
| ティファニー創業者一族 | |
|  【創業者】チャールズ・ルイス・ティファニー(1812-1902年) |  【芸術家】ルイス・カムフォート・ティファニー(1848-1933年) | 
| だから息子も無理に経営者にしようとはせず、芸術家としての傑出した才能を持っていたルイス・カムフォート・ティファニーの創作活動を支援しました。ルイスは実に多才ですが、特にグラス・アーティストとして天才的な才能があり、1900年のパリ万博では自身の『ティファニー・スタジオ』としてグランプリを受賞し、本家のティファニー社を凌ぐほど高く評価されました。 | |
| ルイス・カムフォート・ティファニーの作品 | |
|  お花のグラス・アート(1900-1902年) |  『睡蓮』(1913年) | 
| こうしてルイス・カムフォート・ティファニーは、アメリカのアールヌーヴォーの第一人者と看做されるようになりました。 | |
|  ローレントン・ホールのリビング(ルイス・カムフォート・ティファニー 1905年完成) "Laurelton Hall(demolished)from HABS(3707644026)" ©whitewall buick from Hoxie, Kansas, USA/Adapted/CC BY 2.0 | 
| これはニューヨーク州ロングアイランドのオイスター・ベイにあるルイスの邸宅の内装です。アール・ヌーヴォー様式の邸宅で、ルイスの内装デザインと共にルイスの有名作品を多数所蔵しており、それ自体が芸術作品と高く評価されています。パリ万博グランプリ受賞、連作『四季』も飾られています。 創業者の父が最初に扱った高級文房具や小物は、紳士を主な顧客とします。ルイスの作品も女性向けというより、紳士に認められるべき作品という印象です。金儲け主義ではなく、虚飾も追い求めず、真に良いものを求めて王道を歩んだ硬派で地道な親子だったように感じます。 | 
|  ティファニー一家(1888年) 左端:息子ルイス、中央:赤ん坊に微笑む創業者チャールズ | 
| 自身も十分に成功し、さらに才能を信じた愛息の世界から認められた姿も見て、大満足しながら安心して創業者チャールズは90歳の生涯を閉じました。副社長を勤めていたルイスは社長職を継ぐことはなく、芸術家としてさらに活躍すべく、ティファニー本社のアーティスト・ディレクター部門顧問に就任しながら、ティファニー・スタジオのグラス・アーティストとして活動を続けました。グランプリ受賞から2年、芸術家として最も脂が乗っている時期です。才能を芸術分野に全力で注ぐのは自然な流れです。 | 
| ティファニー創業者なき後のティファニー・ジュエリー | |
|  【参考】1910年頃、 オークション予想価格$40,000-60,000(2015年現在) |  【参考】1910年頃、メトロポリタン美術館 【引用】THE MET / Necklace with Pendant ©The Metropolitan Museum of Art | 
| どのような人物たちが役員会や経営を牛耳ったのかは分かりません。しかしカリスマ創業者が亡くなった後の経営は、速攻で成金を主要ターゲットにする方針へ舵を切ったようです。世界の王侯貴族から認められ、万博でグランプリも受賞したというネームブランドを使っていくらでも成金相手にボロ儲けできます。王侯貴族に認められるものを作るにはコストも手間もかかります。創業者チャールズの目的はアメリカ人の誇りとしてヨーロッパの王侯貴族に正当に認められることでしたが、もはやそのような高潔な精神はティファニー社から消え失せました(T T) | |
|  【パリ万博グランプリ】『アイリス』(ティファニー 1900年)"Tiffany and Company - Iris Corsage Ornament - Walters 57939" ©Walters Art Museum/Adapted/CC BY-SA 3.0 | 天才デザイナーを失ったのも最大級の痛手でした。 皆様は何を基準にジュエリーを選ばれるでしょうか? 石コロの分量しか見ない人が一般のジュエリー好きには多いですが、HERITAGEのカタログを読んでくださるような方ならば、私と同様デザインを重視する方が多いと思います。 ジュエリーのデザインは特別な才能が必要です。絵画と違い、性質の異なる様々な素材の特徴を熟知した上で、立体デザインをしなければなりません。 飾るだけではなく使うものなので、耐久性や動きなども完璧に計算しなければなりません。その上で、唯一無二の個性と美しさを備える必要があります。 | 
| ティファニー最盛期の天才デザイナー | ||
|  ジョージ・パウルディング・ファーナム(1859-1927年)1900年 | パリ万博(1889)金賞 | パリ万博(1900)グランプリ | 
|  『オーキッド(蘭)』 |  『アイリス』 【引用】Iris Corsage Ornament ©The Walters Art Museum | |
| デザイナーは極めて重要です。ティファニーに栄光をもたらした最大級の立役者と言っても過言ではありません。それがジョージ・パウルディング・ファーナムでした。当時はティファニーの傑出した天才デザイナーとして有名でしたが、存在を知られてもむしろマイナスにしかなりませんから、創業者一族とは全く関係のない今のティファニー社がわざわざPRすることはありません。 ファーナムは彫刻家、冶金学者でもありました。現代の作り上げられた"天才像"は滑稽です。閃きと感覚だけでチョイ・チョイ・チョイっと一瞬でウン千万円、ウン億円の傑作を完成させるなんてあり得ません。閃きと感覚は必要ですが、具現化にはさらに天才だけがなせる神技も必須です。 | ||
|  エドワード・C・ムーア(1827-1891年) | ファーナムが26歳でティファニー社のデザイン部門に加わった当時、デザイナーを統率していたのはエドワード・C・ムーアでした。 優れたデザインを生み出すために、デザイナーたちに世界中の様々な年代のジュエリーや工芸品から勉強するよう指導していた人物です。 そのために、ムーア自身も様々なものを買い集めた美術品コレクターとしても著名です。 メトロポリタン美術館のパトロンでもあり、多くのコレクションや図書を寄贈してアメリカの芸術文化の向上に寄与したとされます。 創業者チャールズがそれだけの給料を支払っていた証でもあります。やりがいがありますね。 | 
|  イギリスの有力政治家ジョゼフ・チェンバレン(1836-1914年) |  【1889年パリ万博金賞】『蘭のブローチ』(ティファニー、ジョージ・パウルディング・ファーナムのデザイン) 【引用】Alchetron / Paulding Farnham ©Alchetron/Adapted. | 
| 現代の基準で見て勘違いする人も多いですが、創業者時代のティファニー社は女性に媚を売ってチョロく儲けようとする店ではなく、ヨーロッパ上流階級の紳士に認められるべく切磋琢磨しました。 | 
| 万博で金賞をもたらしたエナメルのオーキッドもあっと驚く意外性の高いお花の選択、卓越したデザイン性と共に、具現化させた高度な技術力が高く評価されました。 上流階級を満足させるには高度な技術のみならず、広く深い知識と教養に基づくデザインが必須です。それらの知識と教養を養うために、一体どれだけのお金がかかるでしょう。これは完全にオモテには見えない部分です。稼ぎ出す一方で、より良いものを作るために創業者チャールズがどれだけ人材と環境づくりにどれだけ投資していたか計り知れません。 | 
| 1900年の万博グランプリ『アイリス』を生んだ天才集団 | ||
| 天才経営者 | 天才デザイナー | 天才鉱物学者 | 
|  チャールズ・ルイス・ティファニー(1812-1902年) |  ジョージ・パウルディング・ファーナム(1859-1927年)1900年 |  ジョージ・フレデリック・クンツ(1856-1932年)1900年 | 
| 1902年にカリスマ創業者チャールズが旅立ち、ティファニーに名声をもたらした天才デザイナーのファーナムも1908年にティファニーを去りました。26歳からの23年間でデザイナーとしては、やり切った感があったかもしれません。チャールズがいなくなったこともあるでしょう。鉱山開発に乗り出したことから、アメリカン・ドリームに挑戦したかったこともあるでしょう。ちなみにこれは失敗して全財産を失ったそうです。 鉱物学者として名声を得ていたクンツ博士は副社長として残りました。アメリカの宝石モンタナ・サファイアの『アイリス』は、奇跡的に揃った天才たちの集大成として生まれたものでした。 | ||
|  【参考】アーツ&クラフツ モンタナサファイア&ムーンストーン・ブローチ(ティファニー 1915年頃) 落札価格約242万円(2011年現在) | しかし、カリスマ創業者亡き後の経営陣は栄光のモンタナ・サファイアと、その箔付として宝石学の権威クンツ博士でプロモーションすれば良いと判断したのでしょう。 しかも成金富裕層の女性向けに舵を切ったようです。要求の高いヨーロッパ上流階級の男性を満足させるモノづくりには、お金も労力も膨大にかかります。 | 
| 初期は良い時代の残り香もあってまだマシです。これもシラーは分かりませんが、ムーンストーンの透明度は高いですし、デザインは平凡ですが、細工も高級店に見合うだけの技術と手間をかけています。 | 
|  【参考】モンタナサファイア&ムーンストーン・ブローチ(ティファニー 1910年頃) 落札価格約236万円(2017年現在) | 
| しかし転がり落ちるのは一気です。創業者が人生の全てを捧げて創り上げたティファニー帝国でしたが、いなくなるとすぐに、威光を傘にこんなもので儲けるようになりました。ちなみに8年前でも高いですが、コロナ禍でアンティーク・ジュエリーは投機マネーが流入した上にインフレ、ブレグジットなどによる増税、対円では為替レートの悪化もあって暴騰しています。特にこのようなブランド物はそれが激しく、今では10倍くらいの値段が付いていたりします。これも今の市場だと2,000万円代くらい付くことも十分にあり得ます。 | 
|  【参考】ティファニー 1910年頃、イヤリングとセットで約2,040万円で落札(2017年現在) |  【参考】ブレスレット(ティファニー 1920年代)
約660万円(2019年現在) | 
| 宝石頼りで全くデザイン的な魅力はありませんが、見ただけでティファニー社の製品とは分かります。自身の魅力で勝負できない成金は、ブランドの権威に頼らないと自信が持てません。だからどのブランドの製品か一目で分かるのは重要です。自身の中身が空っぽで貧相なことを、少なくとも無意識には自覚している現れです。だからこそ痛いです。それを食い物にする側もエグいと感じます。 | |
|  【参考】モンタナサファイア&ムーンストーン・ブローチ(ティファニー 1920年頃) | 第一次世界大戦でヨーロッパの王侯貴族の時代は壊滅的ダメージを受けた一方、アメリカは一人勝ちで狂騒の時代を迎えました。 戦争成金も量産され、こんなつまらないものでもブランドの権威によって、作るだけ売れたのでしょう。 | 
|  【参考】モンタナサファイア&ムーンストーン・ブローチ(ティファニー 1940年代) | ヴィンテージに入ると需要も一巡し、さすがにアメリカ人も目が肥えてきました。 さらにデザイン性の高いコスチューム・ジュエリー(アクセサリー)が新たな競合となり、クリスタルガラスやアクリルなどの模造宝石の質も上がってくると、太刀打ちできなくなりました。 今ではルイ・ヴィトンやディオールなどと並び、LVMHの子会社となっています。 | 
2-2. ロッククリスタルにも見まごう最高級ムーンストーン
| 成金や庶民に大流行した結果、ムーンストーン・ジュエリーは王侯貴族の興味の対象外となっていきました。19世紀後期に比べ、王侯貴族のために作られたエドワーディアンのムーンストーン・ジュエリーはとても数が少ないですし、アールデコの時代は見なくなります。 | 
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| そのような中で、今回の宝物はかなりレアな、王侯貴族のためのエドワーディアンのムーンストーン・ジュエリーです。ムーンストーンのリング自体が、48年間で初めてのご紹介かもしれないほど珍しいです。だから作りだけでなく、宝石そのものも納得するほど抜群です。 | ||
2-2-1. エドワーディアンのムーンストーンの高級品
| 過去48年間でご紹介した宝物の中で、20世紀に入ってからのムーンストーンのハイジュエリーとして見つかったのはこの2点です。ムーンストーンという宝石自体が成金や庶民のものとなりつつあったため、上流階級は、よほどムーンストーンへの強いこだわりがある人しかオーダーしなくなりました。 | 
|  『アルテミスの月光』 ムーンストーン メアンダー ネックレス&ティアラ イギリス 1910年頃 SOLD |  ハート型ムーンストーン ペンダント アメリカ? 1910年頃 SOLD | 
| 左のティアラは大きくて上質なムーンストーンが印象的です。組み合わせた宝石は繊細な輝きを放つローズカット・ダイヤモンドで、透かし細工のメアンダー模様も意匠化が見事です。教養があれば、古代ギリシャの月の女神アルテミス(古代ローマのダイアナ/ディアナ)をムーンストーンで表現したことはすぐに分かります。宝石頼りではなく、教養に裏付けされた美しいデザインが主役です♪ | |
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| このペンダントは、かなり厚みのある上質な石を極めて贅沢にカットしています。ハート型の美しいフォルムは職人の技術と美的センスの魅せ所ですが、完璧と言える仕上がりです。バチカンはローズカット・ダイヤモンドをあしらった贅沢なもので、ハート型に合わせたカリブレカット・ルビーの作りも精緻です。 | ||
2-2-2. 質とサイズを両立する最大のカット
| 今回の宝物はデザインそのものは飽きのこない定番系ですが、それだけに宝石の質へのこだわりと、細部までの作り込みはさすが王侯貴族のための最高級ムーンストーン・ジュエリーと思えるものです。 | 
2-2-3. ロック・クリスタルにも見えるムーンストーン
| このムーンストーンは、シラーを放っていない時はロック・クリスタルかと思うほど無色透明です。これほどの透明度は小さな石では見ることもあるのですが、このサイズでここまでクリアなムーンストーンは初めてで、見たことのない美しさに感動しました!♪ | 
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| かなり厚みがあります。透明で重々しくないのであまり大きく感じませんが、成金のような下品さを伴わないリングにする場合、これが限界の大きさと思うくらいサイズがあります。メインストーンが大きい分、品良く指に収まるよう、脇石のクラスターのダイヤモンドは小さめということです。このムーンストーンの驚異的な透明度の美しさを画像でお伝えするのは不可能です。 | |||
|  『L'eau』 オパール&ダイヤモンド ロング・ネックレス イギリス 1900年頃 ¥3,300,000-(税込10%) | 厚みがあって透明度が高い石は、実物では奥行が感じられ、それが美しいと感じます。 しかしながら無理やり2次元に変換する画像の場合、全てを同じ平面に表現します。 だからそのまま見てしまうとゴチャゴチャしているように感じたり、透明感が感じにくいです。 心眼で見ることのできる人もいらっしゃると思いますが、厚みのある透明度の高い石はそのような特徴があります。 | 
|  |  |  | 
| このムーンストーンはオパールよりさらに撮影が難しいです。磨き上げられたカボションカットの表面は、写り込みが激しいです。さらにレンズ効果も相まって、写り込みや透けたものが歪んだ状態で一緒くたになって、同一の平面上に画像として表現されます。しかもシラーの出ない角度や照明位置を狙わないと、透明度が分かりません。これは実物と印象が違いすぎます(T△T) | ||
|  |  | 
| 印象はスマホ画像の方が近いです。撮影環境によって認識ソフトによる肌色などの表現に違いはありますが、肌の透け感や陰影などから高い透明度を感じていただけると思います。そして、クリアなので成金リングのような下品さはありませんが、これがガーネットなどの色の濃い宝石だったらなかなかの迫力となるほど大きいです。驚異的なムーンストーンなのです!!この画像だと本当にロッククリスタルのリングに見えませんか?♪ | |
|  |  |  | 
| それほどクリアな石なのに青い光を帯び、最もシラーが出ている際は、まるで石そのものが青く発光しているかのように見えるほどです。このダイナミックな変化が、この最上質のムーンストーン最大の魅力です!♪ | ||
|  | 僅かに青みを帯びた状態でも、とても美しいです。曇りなき透明な石だからこそ、青い光がより映えます♪ 赤み系だと華やかさや可愛らしさがありますが、青系は清楚で気品ある雰囲気が良いですね♪ | 
|  |  | 
| 僅かな角度の変化でダイナミックに表情が変わります。リングは手元で眺めて楽しめるのも魅力ですね。 | |
|  |  | 
| なぜムーンストーンの上質なリングが市場に滅多に出てこないのか不思議ですが、一度手に入れる幸運を掴んだら、ほとんどの人が手放さないからかもしれませんね♪ | |
2-2-4. ブルー・シラーが美しい奇跡のムーンストーン
|  単純な表面反射と、積層構造に伴う干渉光の違い | 詳細は以前ご紹介しましたが、上質なムーンストーンは見た目には透明ですが、積層構造になっています。 内部に侵入した光が各層の界面で反射し、それらが重なり合うことで複雑な干渉を起こし、シラーと呼ばれる独特の輝きが生まれます。積層構造の厚みによって、シラーの色彩も変わります。 石の透明度が高いほど、より奥行ある多くのシラーを期待できることがご想像いただけるでしょう。 | 
|  ラブラドライト "Ladrador iridescence" ©Boris Lobastov(21 April 2019, 11:40:27)/Adapted/CC BY 4.0 | 
| 『レインボー・ムーンストーン』と称して販売されるラブラドライトも同じ原理で干渉光が出ますが、透明度が低いと表面的な光にしかなりません。 | 
|  ラブラドライト "Ladradorite with rare colours" ©Awiejekeal(21 Ausust 2015, 14:10:45)/Adapted/CC BY-SA 4.0 | 
| また、積層構造のほんの僅かな厚みの違いや厚みムラによって、人間の眼には劇的に色彩が違って見えます。シャボン玉や、水たまりの油膜などと同じですね。表面的で単純な色彩や、ゴチャゴチャと賑やか過ぎる色彩は、上品には感じられません。 | 
| 波長によって名称が異なる電磁波(光)  可視光線の波長:約360-830nm "Specre" ©Tatoute and Phrood~commonswiki(21 January 2006)/Adapted/CC BY-SA 3.0 | 
| ムーンストーンは可視光線の波長に近い、500nm(0.5ミクロン)に近い厚みで正長石とアルバイトの2種類が交互に重なった構造です。積層構造が薄いとブルー・シラーとなりますが、ミクロンどころかナノ単位で条件が揃わなければ美しいブルー・ムーンストーンにはならないのです。 | 
|  | 
|  |  ←等倍↑ | カットの方向を間違うと、良い角度でシラーは出ません。積層の方向を見極めてカットする必要があります。 | 
|  |  |  | 
| 透明度が高い上に厚みがあるムーンストーンだからこそ、石の奥深くから滲み出るような青い光が出てきます。何もない所から出てくる青い輝きは幻想的です。 | ||
|  | 
|  |  ←等倍↑ | より多くの干渉光が出てくると、重なり合って強力になります。 | 
|  |  |  | 
| それが一番右のような姿です。表面の一層二層程度の重なりでは、ここまで強力な輝きにはなりません。透明度が高く、厚みのある奇跡のブルー・ムーンストーンだからこそ魅せることのできる特別な青の輝きなのです!♪ | ||
3. シンプル・イズ・ベストの最高級品らしい作り
|  | この宝物は定番のクラスター・リングです。シンプルなデザインの最高級品として作られているからこそ、各要素ごとのこだわりが感動的に行き届いています! | 
3-1. 超贅沢な特注のシングルカット・ダイヤモンドの魅力
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 | 取り巻きのダイヤモンドはとても小さいこと、透明感を強く感じるダイヤモンドであること、またハイジュエリーのムーンストーン・ジュエリーはローズカット・ダイヤモンドを組み合わせるのが定番路線なので、買い付けの時点ではこれもローズカット・ダイヤモンドだろうと思っていました。 しかし、きちんと確認するとシングルカットのオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドでした。これはかなり特別なことです! | ||
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3-1-1. ムーンストーンのための一般的なダイヤモンドのカット
|  【参考】安物のアーツ&クラフツのムーンストーン・リング(1900年頃) | そもそも庶民用の安物だと高価なダイヤモンドは使えません。アーツ&クラフツ系なのに葉っぱの造形はペラく、彫金も適当です。 成金の場合は派手さを好むので、ギラつく4C基準のダイヤモンドを選ぶかもしれません。 | 
|  ダブルハート ムーンストーン ブローチ イギリス 1880年頃 SOLD | しかし、ムーンストーンは雰囲気のあるシラーを特徴とする宝石です。 ギラつくダイヤモンドを合わせると脇役としての務めを果たすどころか、主役のムーンストーンを霞ませる可能性があります。 素材だけで見るのは教養も美的感覚もない証であり、古の上流階級は素材のみならずカットにも気を遣っていました。 透明感があり、時折閃光を放つ清楚なローズカット・ダイヤモンドはムーンストーンにピッタリです。 | 
|  アーツ&クラフツ ネックレス イギリス 1880〜1900年頃 (プラチナ・チェーンは1920年頃) SOLD |  ムーンストーン&ダイヤモンド ピアス イギリス 1880年頃 SOLD | 
| ある程度の大きさを持たせる場合でも、煌めきの強いオールドヨーロピアンカットではなく、透明感の美しいローズカットが意図して選ばれています。 | 
|  ムーンストーン・カメオ ペンダント フランス 1870年頃 SOLD |  ムーンストーン ロケット・ペンダント イギリス 1880年頃 SOLD | 
|  『アルテミスの月光』 ムーンストーン メアンダー ネックレス&ティアラ イギリス 1910年頃 SOLD |  ハート型ムーンストーン ペンダント アメリカ? 1910年頃 SOLD | 
| 台頭した成金が幅を効かせるようになった時代だからこそ、それとは一線を画す、小ささと上質さを追った王侯貴族のためのハイジュエリーは気品と知性が際立ちます。その貴族らしさを生み出すのが上質なローズカット・ダイヤモンドであり、「ムーンストーンにダイヤモンドを組み合わせるならばローズカット!」と言えるくらい定番でした。 | |
3-1-2. シングルカットという最上級の贅沢
|  |  |  | 等倍で並べています。今回のリング以外のダイヤモンドは全てローズカットです。 今回の左上の宝物のダイヤモンドが最も小さいというのは、アンティークジュエリーを見慣れた者にとって信じがたい事実です。 | 
|  | |||
|  ←等倍↑→ | |||
|  |  | このピアスも定番デザイン故の最高級のこだわりの作りです。9年前のGenもカタログでご説明している通り、このローズカット・ダイヤモンドは上質かつ大きめです。ただ、それより遥かに小さなオールドヨーロピアンカットというのはかなり特殊です。 | 
|  ←等倍↑ | ||
|  | 
|  |  ←等倍↑ | 肉眼で見た際、小ささと共にその透明感の美しさから、ダイヤモンドはローズカットだろうと感じました。ファセットの数が多いオールドヨーロピアンカットをそのまま小型化すると、1つ1つのファセットの面積が小さくなって輝きは弱くなる上に、透明感も感じにくくなります。 | 
|  | 
|  |  ←等倍↑ | 実体顕微鏡で拡大してみて納得しました。通常のオールドヨーロピアンカットではなく、全てのダイヤモンドが簡略化したシングルカットだったのです! | 
|  | 
|  |  ←等倍↑ | だからこそとても小さいにも関わらず、豊かな透明感と、オールドヨーロピアンカットならではのダイナミックなシンチレーションが両立していたのです!!♪ | 
|  『MIRACLE』 エドワーディアン ブラックオパール ペンダント イギリス 1905〜1915年頃 ¥10,000,000-(税込10%) | このような宝物は王侯貴族のためのハイジュエリー専門で扱ってきても、滅多に出逢うことはありません。 左もシングルカットを駆使した、小さな石まで全てオールドヨーロピアンカットの宝物でした。 二度と出逢うことのない、奇跡と言えるレベルのブラック・オパールを主役にした宝物です。 | 
|  | 
|  |  ←↑等倍 | 今回のムーンストーン・リング同様、エドワーディアンの宝物というのがポイントです。ダイヤモンドのカットが近代化され、電動のダイヤモンド・ソウや研磨機が使えるようになったタイミングだからこそのチャレンジです。 | 
|  カリナンに第一刀を振り下ろすアムステルダムのアイザック・ジョセフ・アッシャー(1908年) | ジュエリー制作は分業です。宝石の採掘者、カット職人、ジュエラーは別です。 ジュエラーはデザインと細工を行いますが、宝石はカット専門の工房から既製品として入手するのが通常です。 カッターは原石を見極めながら、その石にあった最適のカットを施します。 | 
|  『ダイヤモンドの原石』 クラバットピン(タイピン)&タイタック イギリス 1880年頃 SOLD | 王侯貴族が通常オーダーするジュエラーに対し、デザインや細工の細かな要求はしやすいです。 しかし、宝石のカットの時点からスペシャル・オーダーしようとすると、難しさもかかる費用も全く違ってきいます。 だからこそカットからオーダーしているクラスの宝物には、滅多に出逢うことがありません。 | 
|  | 
|  |  ←等倍↑ | 取り巻き18粒、両サイドの2粒、計20粒のシングルカットのダイヤモンドは全て特注のカットで、しかも質も極上です。殆どの人は気づかないような部分にこれだけのお金がかけられるのは、特別な美意識と有り余るほどの財力の証です。 | 
|  | 
|  |  ←等倍↑ | 小さいながらも驚くほど透明度が高く、豊かなシンチレーションと共に色とりどりのファイアも出てきます。 | 
|  | 
|  |  ←等倍↑ | ファイアは内部反射を繰り返すことで出てきます。インクリュージョンが多いと侵入した光が拡散してしまい、ファイアが出ません。ファイアはダイヤモンドの上質さの証明でもあります。 | 
|  | 現代ジュエリーのダイヤモンドは一見クリアに見えますが、このようなインクリュージョンは小さな穴をあけて強酸で溶かし、空隙はガラスで充填するなどの手法で誤魔化すことが可能です。 ただ、光学特性は誤魔化せません。侵入した光は直進できず拡散します。 一見すると小綺麗に見えても、現代のダイヤモンドがいまいち美しく感じられない理由です。 | 
| 【参考】目立つ内包物があるダイヤモンドのルース | 
|  | 特に『メレダイヤ』と呼ばれる小さなダイヤモンドは低品質の石が使用される場合が多く、小さな石はダイヤモンドとして存在する意味があるのか疑問に感じるほど | |
| 【参考】パヴェ・リング(現代) | ||
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|  |  ←等倍↑ | 人工処理で誤魔化す必要のない、本当に上質なダイヤモンドであれば、どれだけ小さくても美しい輝きとファイアで人の心を魅了することができます。持ち主はそれを熟知していたからこそ、お金を惜しむことなく、この特別なムーンストーンのための名脇役としてシングルカットを特注したのでしょう。 | 
3-1-3. 計算された天才的フォルムが魅せる美
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|  |  ←等倍↑ | とても驚いたことに、全てのシングルカット・ダイヤモンドはクラウンに高さを持たせていません。高さを出さないことで摩耗リスクの低減が可能ですが、驚異的な硬度を誇るダイヤモンドにその目的はフィットしません。 | 
|  | 
|  『ワルシャワ・クロス』 アールデコ クロス・ペンダント ポーランド 1930年頃 ¥750,000-(税込10%) | アンティークの最高級品に使用するダイヤモンドは、クラウンに厚みを持たせたカットが多いです。 特にダイヤモンドならではの煌めきを重視している場合、驚くほど厚みを持たせていることがあります。1粒のルースのために、貴重な原石をまるまる1つ使うようなカットなので、超贅沢なカットです。 とても魅力的なカットですが、通常のカットの倍とまではいかなくても超高額なルースとなってしまうため、アンティークジュエリーでもよほどこだわりをもって作られた最高級品でしか見ることはできません。 | 
|  【参考】1ctオーバーのダイヤモンド・リング(ハリーウィンストン 現代) |  【参考】ダイヤモンド・リング(現代) | 
| 薄っぺらいカットは現代ジュエリーが得意です。平面方向で見た場合、薄くしても大きさは変わらないように見えます。つまり、カラットの割に大きく見えます。あくまでも正面から見た時だけの話です。カラットを抑えられるのでコスト的に安く済む一方、平面的にしか物事を見ない人にとっては「大きさの割に安い!」と感じることができます。ここに「お得!」というセールス文句を重ねることで、実際の価値より割高に販売することができます。 性別的な傾向からすると、空間認識や立体視が得意な男性に対し、女性はそれが苦手で平面的に視る割合が多いです。このようなジュエリーは女性をバカにしている証で不快ですが、実際に買って自慢する人たちが存在するのも事実なので、女性も色々いるということですね。一緒くたに見られたくないです。 | |
|  【参考】現代の通常のブリリアンカットのテーブル 左:反射しない時(チラチラした輝き)/ 右:反射した時(白っちゃけた輝き) | 
| ブリリアンカットは学者が理論的な思考実験で考案したカットです。最も美しい理想的なカットではありませんし、そもそも『美しい』の定義がなされぬまま、多くの人が何となく雰囲気で合意した状態で一人歩きしています。 底面から光が抜けず、全てが反射して戻ってくるカットは透明感がゼロです。しかもブリリアンカットは下部ファセットの数が多く、その分だけ各ファセットの面積が狭いため、チラチラとした弱い輝きしか出ません。一方、広いテーブルは反射した際に白っぽさが強く印象に残ります。 磨き仕上げが良いと、右のテーブルも透けることなく強烈なダイヤモンド光沢が出ると思いますが、これは全然ダメですね。表面がまだ粗いのでしょう。 | 
|  【参考】サファイア・リング(現代) |  イエロー・ダイヤモンド リング(ティファニー 現代) 【引用】TIFFANY & CO / Tiffany Soleste Cushion-cut Yellow Diamond Halo Engagement Ring in Platinum ©T&CO | 
| 現代のダイヤモンドはモサモサとした輝きと、白っちゃけた輝きの2種類のオン・オフの輝きです。しかも実質的に、規格が決まった量産の工業製品なので、均質で1つ1つに個性がありません。現代のダイヤモンドが美しく感じられない理由はいくつもあり、論理的に説明も可能です。 | |
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| 通常、アンティークの最高級ダイヤモンドはクラウンに厚みを持たせることはあっても、薄くするのは見たことがありません。現代ジュエリーの安っぽいダイヤモンドのこともあり、薄いカットに好印象を持っていなかったのですが、この宝物の薄いカットには計算された理由があります。 | 
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| テーブルが面反射するタイミングは多くありません。それ以外のタイミングは内部に光を取り込みます。肉眼ではローズカットかと思うほど透明感を強く感じたのは、テーブルの広さによって光を取り込みやすかったのが理由にあります。 クラウンに厚みがなく、クラウンのファセットからの直接的な反射は少ないです。だから煌めきの割合的には、侵入した光が下部ファセットで反射した光が多いです。 「オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドのダイナミックなシンチレーション」は、上部のクラウンに厚みによって出てきます。面積の広いクラウンのファセットからの直接的な反射が、華やかさのあるダイナミックな輝きとして感じられるのです。 | 
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| ダイヤモンドの奥から放たれる、小さな無数のファセットから放たれる輝きが、この特別なシングルカット・ダイヤモンドの計算され尽くした美しさです。清楚さと華やかさを併せ持つ、驚くべき輝きです!♪ | 
3-1-4. ダイヤモンドの特別さが分かる裏側
| このシングルカット・ダイヤモンドがいかに特別で、いかに想いを込めて設計&カットされたのかは、その扱いを見ても明らかです。 | 
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|  | ベゼル両サイドはゴールドにかなりの厚みがありますが、ダイヤモンドの裏側は精緻な窓を開けています。 これだけ厚みがあるので省略してサイドはクローズド・セッティングにする選択肢もあり得ますが、この宝物は徹底しています。 | 
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|  |  ←等倍↑ | ベゼル裏側の取り巻きダイヤモンドも、デザイン性の高い窓を開けています。綺麗な窓が開いているだけでも十分に高級品です。見えないこの部分にまでデザインを施すのは最高級品でも珍しく、19世紀ではなくエドワーディアンでというのはかなり珍しいです。さらに、ここまで小さなダイヤモンドにというのは前代未聞の扱いです!! | 
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|  |  ←等倍↑ | シャープな作りは黒背景の方が分かりやすいでしょうか。覗き込まないと分からない作りですが、流れるような回転する美しいデザインは、手元でいつまでも眺めていたくなります。 | 
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|  |  ←等倍↑ | 大きさのある通常のオールドヨーロピアンカットだと、ムーンストーンには華やかすぎる。ローズカットだと普通すぎるし、大人しすぎる。まさに絶妙の塩梅であり、作者の天才的な閃きと実行力に感激します。新たに持ち主となって下さった方には特別なムーンストーンだけでなく、このダイヤモンドもぜひ愛していただきたいです♪ | 
3-2. 覆輪留めの清楚で美しいクラスター・リング
| 今回の宝物は、取り巻きのダイヤモンドが覆輪留めなのもポイントです。クラスター・リングは定番なので様々な素材、様々な年代で制作されていますが、美意識の高い人のために制作された高級品はどれもセッティング方法の選び方が絶妙です。 | 
3-2-1. 覆輪留め&爪留め
| 最高級品として制作されたクラスター・リングを眺めると、取り巻きのダイヤモンドは、覆輪留めと爪留めが半々くらいの印象です。右の2つは爪留めです。 | 
| 覆輪留め | 爪留め | |
|  今回の宝物 イギリス 1905年頃 |  『海のヴィーナス』 天然ボタンパール リング イギリス 1880年頃 SOLD |  『煌めきの青』 サファイア リング イギリス 1880〜1900年頃 SOLD | 
| 爪留めはサイドから光をより多く取り込むことで、ダイヤモンドのさらなる華やかな輝きが期待できます。また、極上品は高度な技術によって爪そのものが目立たないため、宝石そのものの美しさに没入できます。 覆輪留めの場合、より強固なセッティングと共に、お花のようなデザインを感じられる利点があります。留め方の選択は優劣や高級・低級ではなく、センスと好みに依ります。だから併存するのです。 | ||
3-2-2. ミルグレインのデザイン・センス
| 覆輪留めの場合も、ミルの有無や素材などにより雰囲気は大きく変わります。これらは全て取り巻きのダイヤモンドは覆輪留めです。今回の宝物はプラチナ、右2つはシルバーです。 | 
|  今回の宝物 イギリス 1905年頃 |  『神秘なる宇宙』 オパール リング イギリス 1880〜1900年頃 SOLD |  ムーンストーン ピアス イギリス 1880年頃 SOLD | 
| 今回の宝物はムーンストーン、ダイヤモンド共に覆輪留めですが、ミル打ちはダイヤモンドの覆輪のみです。オパール・リングはその逆で、オパールの覆輪のみミル打ちしています。右のピアスは、ムーンストーンは幾つもの爪で持ち上げたセッティングなのが特徴的です。ダイヤモンドの覆輪も花びらの先端を意識したような、窪みのあるデザイン性の高い作りです。 ダイヤモンドの大きさと数で花びらの枚数が変わるので、それだけでも全体の雰囲気は大きく変化します。でも、覆輪の厚みや角度、ミルの有無など、ちょっとしたことでも想像以上に雰囲気は変わるものです。「適当にお任せで!」という、ボンヤリとしたオーダーでは本当に良いものにはならないのです。 | ||
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| ミルグレインによって、透明感のあるオパールの繊細で豊かな遊色が惹き立ちます。その一方、ダイヤモンドはミルのないセッティングによって、キリッとした透明感が際立ちます。どちらもミルなしだと簡素すぎます。一方、両方にミルを施すと対比効果がなくなり、ただの『普通の高級品』という雰囲気になっていたでしょう。 | 
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|  |  ←等倍↑ | 今回の宝物の場合、覆輪にミルを打たないことで、透明で大きさのあるムーンストーンに意識を没入させています。その一方で、小さなダイヤモンドの覆輪には微細なミルグレインを施すことで、輝きを分散させてダイヤモンドの気配を小さくしています。 | 
3-2-3. プラチナならではの美
| プラチナもシルバーも白い金属ですが、醸し出す質感も違いますし、加工特性も違います。今回の宝物はプラチナにゴールド・バックの作りで、画期的な新素材としてプラチナがジュエリーの一般市場に登場したばかりのタイミングだからこその極上の細工も魅力です。 | 
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|  |  ←等倍↑ | 柔らかく粘り気があり、しかも強靭さを持つプラチナはシルバー以上に繊細な石留めが可能です。ムーンストーンの覆輪はどこまでも薄く、厚み的には限界まで気配を消しています。しかし、磨き上げられた表面は硬質で強烈な輝きも放ちます。 ダイヤモンドの覆輪も非常に薄く、それでいて1粒1粒に個性があるハンドカット・ダイヤモンドのフォルムに正確にフィットさせています。 | 
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| ムーンストーンのプラチナのフレームは、角度によって冴えのある線の光を放ちます。極細だからこそ主役の宝石を邪魔しませんし、プラチナならではの白く硬質な輝きが、雰囲気ある青いシラーを効果的に惹き立てます♪ | ||
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|  |  ←等倍↑ | 外周の覆輪も高度な技術と共に、かなりの手間をかけて作っています。形状に沿った精緻な凹凸が、第一級の職人の腕を象徴しています。 | 
|  今回の宝物 イギリス 1905年頃 |  『神秘なる宇宙』 オパール リング イギリス 1880〜1900年頃 SOLD |  天然真珠 リング フランス 1925年頃 SOLD | 
| 覆輪留めのセッティングはダイヤモンドが小さく、数が増えるほどに、技術のみならず手間も必要となります。コストにも直結するこの手間のかけようこそ、最高級品の証です。花びらの数が少ないと、お花の感じと可愛らしい印象が強くなりますが、今回の宝物くらいの数だとお花の感じは薄まり、純粋に宝石の美しさに没入しやすくもありますね。しかしシンプルな爪留と違い、繊細なミルグレインの輝きが気品と清楚さを醸し出します。 | ||
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|  |  |  ←等倍 | 
| 球状に粒だたせたミルグレインではなく、浅い溝状にして主張を抑えめにしているのも見事な設計です。輝きの強度が絶妙です。 厚みを抑えた薄〜い覆輪も、粘り気と強靭さを併せ持つプラチナだからこそ為せたものです♪ | ||
3-3. 職人の天才性が分かる特別なショルダー
|  | このリングのオーダー主は莫大な財力と共に、特別な美意識を持っていたことは確実です。 ショルダーにも、360度のこだわりが驚異的に詰め込まれています。 たっぷりとゴールドを使用した贅沢な作りです。高さを出すと共に、様々なデザインと視覚効果を可能としています。 | 
3-3-1. シャープなV字型のゴールドの造形
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|  |  ←等倍↑ | ベゼルの左右にデザインしたダイヤモンドの三角形のフレームから続く流れのように、ゴールドのショルダーは深いV字型の凸状に造形されています。フラワー型のクラスター・リングでありながら可愛らしくなり過ぎず、シャープで知的な大人らしさを演出します。 | 
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|  |  ←等倍↑ | このゴールドのV字ショルダーは高さがあるため、高級感が抜群です。また、指につけた際も、この高さのお陰で主役のベゼルが際立ちます。さりげない部分ですが、よく考えて設計されています♪ | 
3-3-2. 宙に浮いて見えるベゼル
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|  |  ←等倍↑ | このリングは、ベゼルがまるで宙に浮いて見えるデザインも特徴です。両サイドの三角形のフレームとの間に、狭い隙間が存在します。 | 
|  今回の宝物 イギリス 1910年頃 |  『神秘なる宇宙』 オパール リング イギリス 1880〜1900年頃 SOLD |  天然真珠 リング フランス 1925年頃 SOLD | 
| 好みによってショルダーのデザインは様々です。シンプルにすることでベゼルに意識を集中させる方向性もありますが、今回の宝物の持ち主は主役のベゼルを目立たせながらも、もう一捻り欲しかったようです。そもそも普通よりサイズがあるベゼルなので、サイドには何もデザインしない方が多いくらいだと思います。並の美意識ではありませんし、その理想を実現できる財力も驚異的です! | ||
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|  |  ←等倍↑ | 普通に見る分にはこの隙間を意識することは殆どないと思いますが、このような部分は無意識の部分に効果的に影響します。まるで宙に浮いて見える不思議さが、人を惹きつける引力となるのです♪ | 
|  | 耐久性に不安を感じるほど、繊細に見えるかもしれません。 | 
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|  |  ←等倍↑ | 実際にはゴールドに十分な厚みがあります。精緻な作り込みによって、はっきりと影ができるからこそ宙に浮いて見える視覚効果が実現しています。叩いて鍛えた鍛造の作りと設計デザイン力、第一級の職人の技術だからこその作りです。これぞアンティークジュエリーです!!♪ | 
3-3-3. プラチナで満たすための両サイドの立体デザイン
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|  |  ←等倍↑ | ベゼル両サイドにゴールドで高さを持たせることで、指の正面から見た時、ダイヤモンドをセットした三角形のプラチナ・フレームが目立つ効果が期待できます。 | 
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|  |  ←等倍↑ | 三角形のフレームより外側は、角度が急になります。だからプラチナ・フレームまでは目立つ一方、ゴールド部分以降は急速に気配が消失します。使用されている分量から、この宝物はプラチナが画期的な新素材として出てきたばかりのタイミングでデザインされたと予測できます。プラチナという素材そのものがステータスの象徴だった頃です。 | 
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|  |  ←等倍↑ | プラチナそのものが輝きが強い上に、そのような角度的な視覚効果も緻密に計算されているため、プラチナでデザインした部分だけが印象に残ります。これも普通に撮影したつもりですが、見事にゴールド部分は気配が消えていました。 | 
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| 実際に指につけた際も、サイドは影になるのでゴールド部分は気配が消えます。ゴールドも依然としてかなり効果な時代でしたが、たっぷりと使った意味は間違いなくありますね。ただの贅沢ではなく、お金に糸目をつけず美しさを最大限まで追い求めたからこそです。 ここまでの配慮に気づける人は、一体どれくらいいるでしょう。たとえ気づかれなくても全力を注ぐ。でも、きっと分かってくれる人が代々持ち主になってくれるはず。 これは、持ち主への信頼と尊敬の心がなくてはできない細工です。女性をバカにしたようなジュエリーがある一方で、このような宝物は見ているだけでも心が洗われ、豊かな気持ちとなれます♪ | ||
裏側
|  | 裏側まで含めて全体にゴールドをたっぷりと使っており、かなり贅沢な作りです。 | 
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|  |  ←等倍↑ | これ以上は望めぬほど、美意識の行き届いた見事な作りです。 | 
|  | 内側にメイカーズ・マークがありますが、詳細は不明です。デザインと作りの良さから、当時は間違いなく王侯貴族に大人気の御用達メーカーだったことでしょう♪ | 
着用イメージ
|  | サイズ感があり、ムーンストーンという宝石そのものの魅力が存分に楽しめます。 透明感が強いこと、青み系であること、ダイヤモンドが小ぶりなこともあり、メインストーンの大きさがありながらも成金っぽくならないのが素晴らしいです♪ ベゼルとショルダーに高さがあるからこそ、高級感や格調の高い雰囲気がしっかり備わっています。 | 
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| シルクの手袋にも映えます。黒い手袋を合わせるとミステリアスな雰囲気が強調されるので、明るい場所での華やかなパーティだけでなく、少しドレスアップして出かける暗めのレストランやバーでも魅力がUPしそうです♪ | |
|  月の女神『セレネ』(アルベール・オーブレ 1880年) | 
| 太陽に照らされた月は、私たちに様々な表情を魅せてくれます。満月に半月、三日月。陽光の明るさの中に姿を消してしまう新月も・・。 | 
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| この特別なムーンストーンは、シラーの出ない状態だと、大空に紛れた透明な新月のようにも感じます。そこへ突如として現れる青白い光は幻想的であると共に、一種の神々しさをも感じます。アクセサリー品質のムーンストーンしか知らない人に見せたら、驚かれるされるかもしれませんね。これこそが最高品質のブルー・ムーンストーンであり、ヨーロッパ王侯貴族の最後の時代、エドワーディアンのムーンストーン・リングの最高峰です♪ | |

