No.00344 MIRACLE

最高級のライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

 

 

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールの遊色

 

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールの遊色

 

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

 

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

 

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
奇跡の遊色が浮かび上がる
夢のように美しいブラックオパール!!♪

 

 

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
名脇役・最高品質のオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドの
ダイナミックなシンチレーション!!♪

 

オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドとシングルカットのシンチレーションとファイア
最高品質のブラックオパールの遊色を惹き立てる
ダイヤモンドの虹色のファイア!!♪

 

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント 最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
←↑実物大
ブラウザによって大きさが違いますが、1円玉(直径2cm)を置いてみれば実物との大小比が分かります
『MIRACLE』
エドワーディアン ブラックオパール ペンダント

イギリス 1905〜1915年頃
ライトニングリッジ産ブラックオパール(推定)、オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド、プラチナ
サイズ:4.2×1.5cm(バチカン含む)
重量:3.6g
¥10,000,000-(税込10%)

こんな宝石があったなんてと驚く、まるで夢か幻のような素晴らしいブラックオパールのペンダントです!♪

ブラックオパール自体がホワイトオパールと比較して極めて少ないですが、このブラックオパールは大きさもあります。それにも関わらず1つ1つの遊色パターンは小さいため、大きさのある宝石にありがちな嫌味な派手さがまるでなく、ただひたすら上品で幻想的な美しさのみを感じます。

稀少なブラックオパールの中でも、赤やオレンジ色を持つ石は稀少中の稀少とされますが、この石はあらゆる美しい色彩がバランス良く浮かび上がる、まさに奇跡のブラックオパールです!!!!!

ライトニングリッジで新発見されたばかりだからこそ手に入ったと見られる、ブラックオパールの最高峰と言えます。ちょうど画期的な新素材としてジュエリーの一般市場にプラチナが登場したばかりで、イギリス貴族らしさを感じるエドワーディアン・デザインにオール・プラチナという極めて贅沢な作りとなっています。

ダイヤモンドはスペシャル・オーダーによるシングルカットも駆使し、通常ならばローズカットを使うような小さな石まで全てオールドヨーロピアンカットになっています。最高品質のダイヤモンドをオールドヨーロピアンカットにしたからこそのダイナミックなシンチレーションや、色彩豊かなファイアが名脇役として見事に奇跡のブラックオパールを惹き立てています。

第一級の職人ならではのフレームの作りも、立体的でシャープさが際立つ見事なものです。より美しさを印象付けるためのグレインワークは神技レベルで、高さのある極上の仕上がりです。

細部まで全てに気遣いとセンスと最高水準の技術が行き渡っており、これぞ最高級の宝石を使った王侯貴族のハイエンドのアンティークジュエリーであると、見ているだけで溜息が出る宝物です♪♪

 

 

この宝物のポイント

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
  1. 新発見時ならではの極上ブラックオパール
    1. ブラックオパールの歴史
    2. 知られざるブラックオパールの真の魅力
    3. 最高級ブラックオパールならではの美しさ
  2. エドワーディアンらしい魅力あるデザイン
    1. 宝石を生かす計算されたデザイン
    2. リングではなくペンダントにしたメリット
    3. ヨーロッパ貴族らしいエレガントな雰囲気
  3. 最高級品ならではの特別な作り
    1. オールドヨーロピアンカットの贅沢な輝き
    2. 完成度の高いシャープなフレームの作り
    3. 高さのある印象的な神技のグレインワーク
    4. 最高級の宝石ならではの優美な爪

 

 

1. 新発見時ならではの極上のブラックオパール

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

この宝物は宝石・デザイン・作りの三拍子が揃った、宝石が主役のアンティークジュエリーの最高級品です!!♪

小さな石の中にあらゆる色を浮かび上がらせる、ブラックオパールの最高級ジュエリーとも言えます。

これだけ見事なブラックオパールを使った最高級品は、ブラックオパールが新発見されたタイミングならではと言えます。

デマントイド・ガーネット リング アンティークジュエリー『ウラルの秘宝』
1.71ctのウラル産デマントイドガーネット リング
イギリス 1880年頃
SOLD

どの宝石もそうですが、新たな宝石とフレッシュな鉱脈が発見された直後は、上質な石が相次ぎ得られます。

たくさんの石の中から選ぶことができるため、大きさがあるもの、質が良いものを手に入れるベスト・タイミングと言えます。

美しい宝石ほど争奪戦になりますが、"お金さえ出せば手に入る"というのは実は貴重なタイミングなので、それを理解している当時の上流階級はお金を惜しみません。

【参考】ナミビア産デマントイドの9Kリング(現代) 【参考】ナミビア産デマントイドの9Kリング(現代)

人気が高いほど、あっという間に宝石は枯渇します。そうなると、どれだけお金を持っていたとしても上質な宝石は手に入らなくなります。

魅力に乏しい低品質の石ですら、ただ"デマントイド・ガーネット"というだけで高い値段が付いていることも多々あります。アンティークの時代の上流階級は"石の種類"ではなく"美しさ"、すなわち"宝石の質"を重要視していました。美しい宝石は、王侯貴族のための最高級品に使用されます。低品質の石は庶民用の安物やアクセサリーに使用されますが、もっと質が悪いと誰も見向きもしません。

【参考】工業用ダイヤモンド原石を使ったアクセサリー(現代)

現代ジュエリー業界は、もう終わっていますね。

楽してボロ儲けする利益至上主義であり、美しさではなくコストカットばかりを追い求めた結果、新たに優れたジュエリーを生み出せない体質になってしまいました。陳腐化し、飽きられた結果、奇を衒って買ってもらおうとする意図が見え見えの商品が多く見られます。

こんなダイヤモンド・リングまで製造する始末です。古の王侯貴族は見向きもしない、工業用ダイヤモンドを尤もらしくリングにセットしています。まともにカットすらしておらず、原石そのままを使っているので、製造コストの観点からは優れた製品と言えます。でも、美しくない時点でジュエリーとは言えません。

【参考】工業用ダイヤモンド原石を使ったアクセサリー(現代)

これは冗談のような見た目ですが、「婚約指輪に最適!」と真面目に販売されていました。石も作りも汚くて、こんなリングがこの世に存在すること自体が驚きです。

『ダイヤモンド』というだけでありがたがる人種は、確かにいます。また、質の良し悪しは全く気にせず、悪目立ちしているだけの安物を身につけて「私、変わっているものが好きなの。」と主張する人もいて、そういう人たちには受け入れられるのかもしれません。

これを見せびらかされながら、「ほら、ダイヤモンドよ!いいでしょ!!」、「変わったものが好きな私はセンス良いでしょ!!」などと言われたら、私は困ってしまいそうです。馬鹿正直なので、素直に「変。」とコメントして怒られるかもしれません(笑)

すみません。お目汚しはここまでにして・・。

『エメラルドの深淵』
珠玉のコロンビア産エメラルド&ダイヤモンド リング
イギリス 1880年頃
SOLD

ジュエリーと言えば、まずゴージャズな宝石を思い浮かべる方も多いでしょう。

実際、宝石主体のジュエリーは目立つので目が行きます。そういうジュエリーは、王侯貴族が富と権力を象徴するために使用されてきました。

グランドツアー由来のイギリス貴族のロッククリスタルのアルプス山脈フォブシール『アルプスの溶けない氷』
アルプス産ロッククリスタル 回転式3面フォブシール
イギリス 18世紀後半
¥1,400,000-(税込10%)

しかしながら大変面白いことに、アンティークの最高級ジュエリーは宝石主体のものだけにとどまりません。

美術品としての価値を追い求めた最高級ジュエリーが、上流階級のために作られたアンティークのハイジュエリーには存在します。

これはアンティークの時代の王侯貴族が、学芸のパトロンであったことが大きく関係しています。

イギリス王ジョージ3世とシャーロット夫妻と上の6人の子供たち(1770年)

現代は、君主が存在する国は少なくなりました。イギリスも、それに倣った日本も『象徴』と呼べば聞こえが良いですが、君主は実質上お飾りと化しており、アンティークの時代と現代ではまるで異なる存在となっています。それ故に、とてもイメージしにくくなってしまいました。

現代のイメージで、当時の王侯貴族を想像することは不可能です。当時の王侯貴族は政治・外交を司り、学芸に関してもリーダーシップを発揮していました。特に高貴な男性は政治・外交面を担当し、高貴な女性は学芸の振興を重要な役割としていました。

神聖ローマ帝国出身の同時代の王妃
イギリス王妃 フランス王妃
王妃シャーロット・オブ・メクレンバーグ=ストレリッツシャーロット・オブ・メクレンバーグ=ストレリッツ(1744-1818年)1768年頃 天然真珠とエイグレットの髪飾りが美しいマリー・アントワネットマリー・アントワネット(1755-1793年)

『勝者の歴史』の代表例とも言えるほど、「我儘で贅沢」というイメージを付けられているフランス王妃マリー・アントワネットですが、誤った情報に加えて、庶民の発想によって不正確に解釈されたものが多いです。

ここではその詳細は割愛しますが、マリー・アントワネットと同じ神聖ローマ帝国出身でイギリス王室に嫁いだイギリス王妃シャーロット・オブ・メクレンバーグ=ストレリッツの2人は仲良しでした。

会ったことはないものの、音楽や芸術への情熱が非常に共通しており、熱心に手紙をやりとりしていたそうです。与えられたものを享受するだけの立場は楽です。何も考えなくて良いのは本当に楽です。しかしながら、絶えず新しい流行や文化を創り出す役割を担う王妃は大変です。奇を衒っただけの"新しいもの"ではなく、より良くなるための"新しくて、且つ上質なもの"を発想し具現化し続けなくてはなりません。

享受する立場しか経験がないと、新しい価値の創造は簡単そうに感じられるかもしれません。しかしながら、これは想像を絶する大変なことです。

【引用】日刊工業新聞/ 研究開発費、12年連続増 DX推進7割越す 本社アンケート ©2022 NIKKAN KOGYO SHIMBUN,LTD.

これは企業の研究開発で見ると、想像しやすいかもしれません。

トヨタはたった1年で1兆1,600億円も投じていますね。

まず、このように莫大なお金がかかります。しかも単年ではなく、毎年この規模のお金がかかり続けます。そうしなければ進化し続けられません。

『現状維持』は、進化する世の中では『衰退』と同義です。

まあでも、お金で解決できれば楽なものです。そうはいかないからこそ大変です。

私も大企業の研究所で研究開発に携わったり、新規事業開発の経験もあるので体感的に分かります。所属した会社に限らず、研究職の鬱病率は問題視されるほど高いことが一部に知られています。ゴールや出来不出来が明快な仕事と異なり、研究開発はゴールを自身で描き設定しなければなりません。どのような状態だと成果が出ていると判断するのかも、決めるのは自分たちです。

研究開発は何年もかかることは少なくなく、何年間も結果が出なかったり、結果が出ずに終わることも多々あります。ほぼ失敗ばかりです。失敗を積み重ねる中、その中で1つでもうまく行き、そのたった1つが莫大な利益を生み出すことで全体としてプラスになれば御の字という世界です。

ただでさえ高学歴が必要とされる大企業、その研究職と言えば、挫折したことがなさそうなエリート揃いでした。それがゴールも不明瞭、どこに向かっているか、どこに向かえば良いのかも分からないまま、失敗を繰り返し否定され続けるという環境を何年も味わえば、鍛えられて最強メンタルを手にれる場合もあるでしょうし、一方で鬱病になってしまう場合もあります。それほど過酷でした。まさに向き不向きがある世界でした。

まあでもサラリーマン研究者ならば、結果が出せなくても決まった給料が出ますし、向かないと思えば異動や転職などの逃げ道があります。逃げ道のない王族と比べれば楽なものです。

農婦姿のフランス王妃マリー・アントワネット(1755-1793年)1791年、36歳頃

生まれながらの身分であり、役割を定められている王妃はそうはいきません。新しい価値を、確実に創造し続けなくてはなりません。

それは研究開発費として莫大なお金を使うだけでは不可能で、研究開発者としてのセンスと才能が必須です。

王妃の誰もがセンスと才能に恵まれるわけではありません。しかしながら、研究開発活動は行わねばなりません。

贅沢と解釈されていたマリー・アントワネットのお金の使い道は、新しい文化を創り出すための研究開発費だったとみなすのが妥当です。

【王妃の村里】マールバラ塔と王妃の家
"Marie Antoinette amusement at Versailles" ©Daderot(30 May 2005)/Adapted/CC BY-SA 3.0

マリー・アントワネットが作った『ル・アモー・ドゥ・ラ・レーヌ(王妃の村里)』は威圧的なフランス式庭園が主流だった中、当時最先端だったイギリス式庭園が取り入れられました。心安らぐ場所として愛した場所です。

情報交換するにも、現代のように気軽に画像をやりとりできるどころか写真すらない時代です。電話もメールもありません。インターネットで動画を観るどころか、テレビすらもありません。移動手段も発達しておらず、気軽に国外へ視察に行くことも困難です。

『王妃の村里』は王妃同士のやりとりを通し、王妃という身分だからこそできた、マリー・アントワネットの試行錯誤の結果の1つと言えるのでしょう。まあ、お金は莫大にかかったでしょうね。

このような、新しい流行や文化を作るために必要な研究開発の投資をやらなくなった結果、現代は新しい流行や優れた文化を作り出せなくなりました。アールデコからモダンデザインになって以降、現代のデザインは進化していないと言われています。陳腐化して飽きられ、定期的にリバイバルが流行させられているのが現状です。天才が一瞬の閃きで優れたものを生み出すなんてことはあり得ず、天才が試行錯誤を重ねないと、真に優れたものは創造できないものです。そして、その試行錯誤にはお金も時間も労力もかかります。失敗も当たり前です。そこへの投資を無駄で不要と見做し、投資しなくなれば新しいものは生み出せません。優れた文化が生み出せる環境にも、生み出せない環境にも理由があるのです。

フランス王妃マリー・アントワネット(1755-1793)1783年、28歳頃

ところで、ヨーロッパ貴族の女性で最も有名と言えるマリー・アントワネットですが、「美人だった。」とは聞かないことにお気づきでしょうか。

褒められているポイントとしては、『稀代のセンス』とも称されるセンスの良さがまず思いつきます。

マリー・アントワネットをよく知る人は、次のように述べているそうです。

「もっと整った美しさの容姿を見つけ出すことはできるが、もっとこころよい容姿を見つけ出すことはできない。」

「美しくはないが、すべての性格の人々をとらえる眼をしている。」 

「顔つきは整っていなかったが、肌は輝かんばかりで、透き通って一点の曇りもなかった。」

「彼女ほど典雅なお辞儀をする人はいなかった。」 

誰も外見の造形は褒めていません。実際、瓜実顔で額が広すぎ、鼻は少し鷲鼻気味で、顎はボッテリして『ハプスブルク家の下唇』と呼ばれる下顎前突症の特徴も持っていたそうです。それでも周囲はマリー・アントワネットを美しい存在であり、王妃としての威厳を感じてていたことが伝わってきます。

古の社交界は、上っ面な外見だけで通用するような場所ではありませんでした。

ハープを奏でる王妃マリー・アントワネット(1777年、22歳頃)

優雅な立ち居振る舞い。人としての思い遣りの心。

そして、特に社交界で特別視されていたのが芸術分野での才能でした。

この才能はある意味残酷です。

生まれ持った才能が大きな割合を占め、才能無き者はどれだけ努力しようとも絶対に到達できない領域が広大だからです。

神聖ローマ皇帝
神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世(在位:1576-1612年) 神聖ローマ帝国皇帝マティアス(在位:1612-1619年)

古の王侯貴族がいかに芸術面の才能を重視していたかは、神聖ローマ皇帝のルドルフ2世とマティアスの兄弟を見ても明らかです。

基本的にハプスブルク家は仲が円満だと言われていますが、ルドルフ2世と5歳下の弟マティアスは「ハプスブルク家の中でも最悪」と歴史に残るほど、仲が悪い兄弟でした。その最たる理由が、芸術面での才能でした。

兄ルドルフ2世は『無能』と言われるほど政治能力には全く欠けていましたが、教養に富んだ、優れた文化人として有名でした。ルドルフ2世の統治下、政策によって学芸が振興しています。

アルチンボルドに依頼した公式肖像画『ウェルトゥムヌスに扮するルドルフ2世』(1590-1591年)

「政治的に無能だが、芸術面の才能は傑出している。」
「政治的に優れているが、芸術面は全く理解できないようだ。」

皆様ならば、究極の選択としてはどちらを選ばれるでしょうか。

神聖ローマ皇帝
ルドルフ2世(在位:1576-1612年) マティアス(在位:1612-1619年)

弟マティアスは、ルドルフ2世の文化人としての才能に激しくコンプレックスを抱いており、それで仲が悪かったそうです。

現代の価値観だと、芸術文化は分かっていなくても、政治の腕が優れていれば全く構わないという価値観の人も多いかもしれません。しかしながら、無能扱いされるほど政治ができないにも関わらず、芸術面での傑出した才能があることでルドルフ2世は激しく嫉妬されているのです。

生まれ持った才能が大部分であるが故に、どれだけ努力しても勝てません。それを自覚した時、激しい憤りを覚えるのは無理もありません。全部勝てなければしょうがないと諦めもつきそうですが、ルドルフ2世が芸術以外はダメダメだったからこそ、余計にイラついたかもしれませんね。

芸術が理解できれば、他はどれだけダメでも羨望と嫉妬の対象となる。それがヨーロッパの古の上流階級の価値観だったと言っても過言ではありません。

鳥モチーフ ブローチ スリーカラー・ゴールド アンティークジュエリー
『情愛の鳥』
卵形天然真珠 ブローチ
イギリス 1870年頃
SOLD
だからこそ派手な宝石に頼らない、芸術性を追求した最高級ジュエリーがアンティークの時代には存在するのです。宝石に頼りはしませんが、最上質の宝石を使用していることは言うまでもありません。
アンティークの最高級ジュエリー
神技の細工が主役
その神技の腕を持つ職人のみ制作可能
特別な宝石が主役
特別な宝石が入手できた時のみ制作可能
エトラスカンスタイル ブローチ アンティーク・ジュエリー『古代の太陽』
エトラスカン・スタイル ブローチ
イタリア 1850〜1870年代(FASORI)
SOLD
約2カラットのオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド ブローチ アンティーク・ジュエリー『財宝の守り神』
約2ctのダイヤモンド ブローチ
フランス 1870年頃
SOLD

そういうわけで、王侯貴族のために作られたハイジュエリーは主に2種類にカテゴライズできます。神技の技術を主役にしたものと、特別な宝石を主役にしたものです。もちろん、両方を兼ねることも少なくありません。

合成宝石が幅を利かせ、ろくに技術も使わないことが当たり前となった現代では、お金さえ出せば欲しい時に欲しいものが手に入る感覚の方も多いことでしょう。しかしながら、これらのジュエリーは双方とも特別なタイミングでしか手に入りません。

人間技を超えた『神技の細工』と言うものは、その職人ただ1人しかできないからこそ神技の細工と言うのです。教えたからと言って継承できるものではありません。弟子がそれっぽいものは作れたとしても、見た者に情動を起こす領域に到達することは残念ながらありません。その職人がいなくなれば技術は消え去り、もう創ることはできません。だからこそ作られた数は絶望的に少ないですし、手に入ればGenも私も大喜びで、尊敬と自慢の念を持ってご紹介するわけです。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

今回の宝物は、特別な宝石が主役の最高級ジュエリーです。

このような宝石が主役の宝物の場合、特別な宝石が手に入ったタイミングでしか作ることができません。

神技の細工物とは違った意味で、幸運なタイミングでしか作れないジュエリーです。

新発見されたばかりの、上質なブラックオパールが入手できた時代ならではの宝物と言えます。

ブラックオパールの宝物をヘリテイジでご紹介するのは初めてなので、その歴史についてご紹介しておきましょう♪

1-1. ブラックオパールの歴史

1-1-1. 古代から知られているオパール

古代ローマの博物学者プリニウス(23-79年)

オパール自体は、古代から知られている宝石です。

古代ローマの博物学者プリニウスも、著書『博物誌』でオパールについて言及しています。

1-1-2. ヨーロッパ産のオパール

ハンガリーの位置 ©google map

古代から知られるオパールは、チェコスロバキアやハンガリー産でした。

スロバキア産の白と青のオパール
"SLOVAKIAN OPAL 12" ©Slovakiaopal(22 November 2015, 13:00:31)/Adapted/CC BY 4.0

これはスロバキア産のオパールです。

皆様のオパールのイメージとは異なるかもしれません。

これはハンガリー産オパールのブレスレットです。

一応、オパールならではの遊色はありますが、私たちがイメージするオパールよりも遊色が弱いです。

ハンガリーやスロバキア産のオパールは、上質な石でもオーストラリア産より遊色が弱かったそうです。

【参考】ハンガリー産オパールのブレスレット(19世紀)
オパールのティアラを着けたヴィクトリア女王(1819-1901年)

それでも遊色自体が他にはないオパール独特の魅力だったため、稀少性もあって高値で取引されていました。

アルバート王配がオパールを好んだことから、アルバート大好きなヴィクトリア女王も好んで頻繁にオパール・ジュエリーを着用しました。

このティアラもオパールがセットされています。遊色の程は、よく分かりませんね。画家泣かせの宝石ですが、その捉え所のない美しさこそが、知的で不確定な美を好む上流階級を魅了したとも言えるでしょう。

ヴィクトリア女王のオパール・ピアス(南オーストラリア美術館)
【引用】ABC News / Royal opals worn by Queen Victoria sent to Adelaide for SA Museum exhibition (24 September 2015, 5:57)

これはヴィクトリア女王のピアスで、オパールが使われています。

制作年代から、オーストラリアではなくヨーロッパ産オパールと推測します。

白っぽくて遊色が感じられませんが、大英帝国の女王クラスの最高級オパールですらこの程度だったことが分かります。

1-1-3. オーストラリアで新発見された宝石品質のオパール

コモンオパール "MilkyRawOpal" ©CRPeters(9 July 2010)/Adapted/CC BY-SA 3.0

1849年、南オーストラリアでドイツ人の地質学者ヨハネス・メンゲがコモンオパールを発見しました。

コモンオパールは遊色がないオパールです。

ヨーロッパ上流階級のハイジュエリーに使用する高級宝石としては、魅力に乏しいです。

Aram Dulyan permittedオーストラリア産プレシャスオパール

しかしながら探索・調査の結果、1870年頃から宝石品質のプレシャスオパールの鉱山が発見され始めました。1875年までにはいくつかの鉱脈が発見されたのですが、オーストラリアには採掘したオパールを流通させてお金に変えるための市場がありません。そこで1879年に鉱山所有者が集まって石をロンドンに売るための組合を組織し、ロンドンで会社を上場しました。残念ながらこの試みはうまくいかなかったのですが、この動きを知った大のオパール・ファン、ヴィクトリア女王が全面的にバックアップを決めたのです。

1-1-4. オーストラリア産オパールの流行

女王のバックアップというのがどういうことか、現代の日本人にはイメージしにくいと思います。現代とアンティークの時代では売りたい側の主体も、主要顧客も異なるからです。

1-1-4-1. ハイジュエリー市場の構図
  現代:大衆の時代 第二次世界大戦以前:王侯貴族の時代
売りたい側の主体 宝飾業界(宝飾メーカー) 君主(※宝飾メーカーが自分たちで徒党を組み、主体としての"業界"になる以前)
ファッションリーダー
(憧れの存在)
女優や歌手などの大衆のスター(セレブ) 王侯貴族
主要顧客層 大衆 上流階級
供給数 無数 ごく少数
生産体制 量産対応の工業生産 高度な技術を持つ職人のハンドメイド
1-1-4-2. 現代のハイジュエリー市場の構図

現代では、大衆が"ハイブランド"とされるメーカーのジュエリーを買うような時代です。たくさんの大衆に数を売ることで儲ける構図です。どうやってより多くの大衆に買ってもらうかと言えば、大衆が憧れる"セレブ"を使って宣伝します。

ティファニー社の広告用レンタル・ネックレスを着用した有名人
【引用】People ©DAVID FISHER/REX/SHUTTERSTOCK, GETTY, MASON POOLE, People

自社製品を大衆の憧れの存在に着けてもらうことで、大衆が自社製品を買うよう促進します。

着用しているセレブ自身は最高級ジュエリーを買えるような、有り余るほどのお金は持っていません。当然ながらレンタルです。

着けるのは、メーカーがPRしたい商品です。メーカーが主体です。そのセレブが美しく見えるように作ったわけではなく、しかも不特定多数の大衆に訴求するためのものであり、着用者の個性を表すものでも、着用者自身をより美しく見せるものでもありません。

確固たる美意識や絶対的な美的感覚を持つ人には魅力的に映るわけもありませんが、そういう人は業界にとって無視できるほど少数派です。手本を示さないと選べないのが大多数です。

イエロー・ダイヤモンド・リング(ティファニー 現代)
【引用】TIFFANY & CO / Tiffany Soleste Cushion-cut Yellow Diamond Halo Engagement Ring in Platinum ©T&CO

そういう人たちがそのメーカーやPRする商品を良いものと思い込み、その中の一定数が大金を出してくれればそれで十分に成立するのが現代です。

分かる人から見ると、本当に虚飾で『裸の王様』のような世界ですね。

1-1-4-3. ヴィクトリア女王によるオーストラリア産オパール流行戦略

戦後は王侯貴族が世界を主導する時代が終わり、大衆の時代となりました。日本はアメリカを手本にするよう先導されました。アメリカは王侯貴族が存在しません。天皇家だけは存在するので誤認している人が多いですが、日本も1947年に貴族が廃止され、徐々に全く異なる世の中となりました。

もう少し前ならば貴族が存在し、政治・外交や流行・文化を貴族が主導した世界をご存じの方もいたはずですが、今の日本人で体感的にそれを知る人は殆どいないでしょう。Genですら戦後(占領下の日本)生まれです。戦前生まれでも、ある程度世の中を認識できる年齢でなければなりません。

日中戦争の始まりは1937年。第二次世界大戦の始まりは1939年。太平洋戦争の始まりは1941年。1930年代に入ると、これらの戦争に向けて軍事的な緊張が高まり始めています。1920年代までには生まれていないと、貴族が主導した時代をきちんと認識することは難しいでしょう。

王侯貴族 女優や歌手などの大衆のスター
フランス皇后ウジェニー・ド・モンティジョフランス皇后ウジェニー・ド・モンティジョ(1826-1920年) 1854年、28歳頃 フランスの舞台女優サラ・ベルナールの肖像画フランスの舞台女優サラ・ベルナール(1844-1923年)1876年、32歳頃

現代では殊更セレブが持て囃される世の中ですが、王侯貴族が存在した時代に、王侯貴族が女優や歌手などの大衆のスターに憧れていたと考えるのは無理があります。

実際、日本でも貴族が存在した時代は、これら芸を見せてお金をもらうことを生業とした『芸人』は卑しいものとみられていました。

気をつけたいのは、芸を披露すること自体が卑しいと見られていたわけではないことです。現代では大衆向けに陳腐化して、完全に娯楽化したジャンルもありますが、もともと音楽、踊り(舞)、演劇(能)は上流階級の重要な教養でした。

平敦盛(平安末期 1169-1184年)

織田信長が『平家物語』の幸若舞『敦盛』の一節を特に好み、舞っていたというのは有名ですね。

"思へばこの世は常の住み家にあらず
草葉に置く白露、水に宿る月よりなほあやし
金谷に花を詠じ、榮花は先立つて無常の風に誘はるる
南楼の月を弄ぶ輩も 月に先立つて有為の雲にかくれけり
人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり
一度生を享け、滅せぬもののあるべきか
これを菩提の種と思ひ定めざらんは、口惜しかりき次第ぞ"

作者も制作年も不明の演目ですが、聞き手によって感じ方もその深さも大きく異なる、いかにも知的階層が好みそうな詞章です。分かる人にとっては、心に響き渡り、鳴り止むことのない至高の芸術でしょう。
一方で経験値が不足していると、何歳であろうと心には全く響かず、価値が全く分からないであろう難解さです。

戦国大名・織田信長(戦国〜安土桃山時代 1534-1582年)

現代人にとっては平敦盛も織田信長も『昔の人』、『歴史上の人物』ですが、当時の信長にとっては平敦盛が『昔の人』、『歴史上の人物』でした。

教養であり、好みの趣味の1つとして幸若舞『敦盛』を舞っていたのでしょう。

ローマ帝国第5代皇帝ネロ(在位:54-68年)
"Nero pushkin" ©shakko(November 2007)/Adapted/CC BY-SA 3.0
シェルカメオ 『黄金の馬車に載った太陽神アポロン(ヘリオス)』 アンティーク『黄金馬車を駆る太陽神アポロン』
シェルカメオ ブローチ&ペンダント
ヨーロッパ 19世紀後期
¥1,330,000-(税込10%)

ヨーロッパでも、古くは第5代ローマ皇帝ネロが数千人を集めてワンマンショーのコンサートを開き、歌を聞かせていたことが知られています。

ネロ帝が芸術、特にギリシャ芸術を好んだことは有名です。ネロ帝は竪琴の歌手をやっていたようですが、詩歌や音楽を司る古代ギリシャの芸能・芸術の神アポロンを象徴する楽器が竪琴であることを考慮すると、やはり深い教養を元に歌を聞かせていたであろうことが想像できますね。

オペラで主演した神聖ローマ皇帝夫妻(1667年)
オペラ『ガラテア』でアシスに扮する神聖ローマ皇帝レオポルト1世(1667年)27歳頃 ゴールド ピン アンティーク・ジュエリーオペラの衣装に身を包む神聖ローマ皇后マルガリータ・テレサ・デ・エスパーニャ(1667年)16歳頃

もちろん古代だけではありません。特に音楽と芸術の分野で価値観を共有できたという神聖ローマ皇帝レオポルト1世夫妻は、結婚翌年となる1667年に夫婦でオペラを主演しています。

観るだけの人もいたでしょうけれど、得意な人は率先して披露していたのでしょうね。

バレエを踊るヨーロッパの王族
フランス王ルイ14世 神聖ローマ皇女マリー・アントワネット
アポロ(太陽神)を演じるルイ14世(1638-1715年) 兄、神聖ローマ皇帝ヨーゼフ2世の結婚式で祝いで踊る9歳のマリー・アントワネット(右)1765年

バレエを踊る人もいます。フランス王ルイ14世は5歳で即位した際、5時間にも及ぶ盛大なバレエで自身も出演しています。バレエが好きで、15歳で本格的に舞台デビューし、32歳となる1670年に引退したそうです。かなり本格的だった感じですね。

『太陽王』の異名も、バレエでアポロ(太陽神)を演じたことから生まれたそうです。皆を照らす太陽であり、芸術の神でもあったアポロン(アポロ)は本当に人気が高い神だったようです。

音楽も得意なフランス王妃マリー・アントワネット
スピネットを弾くマリー・アントワネット(1755-1793年)1769年頃、14歳頃 ハープを奏でる王妃マリー・アントワネット(1777年、22歳頃)

マリー・アントワネットの場合は音楽の都ウィーン仕込みで、音楽も得意でした。作曲もできるほど優秀で、フランス王室に嫁いでからもよく演奏していたそうです。美しい声も持っており、皆に歌声も披露していました。

歌手や女優のように、芸を見せてお金をもらうのは卑しいという印象がある一方で、芸自体は上流階級の教養の1つでもあるという、なかなか複雑ですね。

1900年前後の世界(大英帝国)のファッションリーダーのブロマイド
イギリス国王 イギリス王妃(王太子妃)
エドワード7世(1841-1910年) エドワード7世の妻アレクサンドラ・オブ・デンマーク(1844-1925年)

さて、誤解を防ぐために少し脱線しましたが、王侯貴族の時代は芸人(セレブ)ではなく上流階級が憧れの対象だったことに話を戻しましょう。

日本でも1990年代頃まではブロマイドが活況でした。写真のデジタル化に伴い廃れ、今では一部のコレクターのみの世界です。若い方は馴染みがないでしょう。戦後の日本人が知っている『ブロマイド』は、人気の俳優や歌手、スポーツ選手などの"スター"の葉書大の肖像写真です。憧れの人の写真を持っていたいという気持ちは、人種や年代を問わず存在します。

王侯貴族が世界を主導した戦前の時代は、日本もヨーロッパも上流階級がゴシップのネタとなり、グラビア写真が雑誌に掲載されたり、ブロマイドが販売されたりもしていました。

上の写真も、当時のファッションリーダーである英国王室のエドワード7世や妻のアレクサンドラ・オブ・デンマークのブロマイドです。女性だとあまりご興味がないかもしれませんが、エドワード7世(バーティ)は「ダンディと言えばこの人!」と言われるほど、男性の永遠の憧れのファッションリーダーとして知られています。ファッションなども参考にできるよう、ビシッと決めた姿で写っているわけですね。

もちろん当時からスターのブロマイドもありましたが、別格の憧れの対象として王侯貴族が存在していたのです。

テオドラに扮する同時代の上流階級と舞台女優
本人 イギリスの上流階級 舞台女優
東ローマ帝国テオドラ皇后(在位:527-548年) ランドルフ・チャーチル夫人:チャーチル元首相の母(1897年) サラ・ベルナール(1900年)

ファッションにかけられる予算も、教養にかけるお金も、上流階級と芸人(大衆のスター)ではまるで次元が違います。スターの場合、限られた予算で舞台映えする衣装となります。遠目に見ると凄そうでも、近くで見るとチャチで安っぽく見えるのは仕方のないことです。

昔の人はそれを分かっていたはずですが、現代は混乱した状況にあるようにも感じます。

クレオパトラに扮する同時代の上流階級と舞台女優
イギリスの上流階級 舞台女優(フランスの大衆のスター)
クレオパトラに扮する仮装大舞踏会のアーサー・パゲット夫人アーサー・パゲット夫人(1897年) クレオパトラを演じるサラ・ベルナールサラ・ベルナール(1899年)

1度しか使わないようなものに、平気でとんでもないお金や手間をかけていたのが上流階級です。大衆のスター、主に大衆から広く支持されることが大事です。一方で上流階級は大衆からの支持ではなく、社交界で一目置かれることが大事です。

目が肥え、知識も豊富な上流階級が集まる社交界で一目置かれるには、お金も手間もケチっていては始まりません。それ故に皆がとんでもないお金をかけますし、それだけでファッション市場が成立してしまうのです。

オリジナルのオパールのオリエンタル・サークレット・ティアラを着けたヴィクトリア女王(アルバート王配がデザイン 1853年)

王侯貴族の時代の、上流階級のファッションリーダーは君主夫妻です。

君主が手本を示し、周りにいる高位の王侯貴族に流行らせ、そこから徐々に地方の上流階級にまで流行を降ろしていくというのが、王侯貴族の時代の流行です。

ただ、オーストラリア産オパールをプロモーションしようとした当時、アルバート王配は既に旅立ち、ヴィクトリア女王自身は喪服しか着なくなっていました。

また、ファッションに対する意欲旺盛な若い女性たちがお手本にする年齢でもなくなっていました。

ヴィクトリア女王と親族たち(1877年)

20歳で結婚したヴィクトリア女王は21歳で母となり、39歳で孫も生まれています。オパールを流行させたい頃には、年頃のロイヤルファミリーが多数いました。

PDアルバート王配の喪中(1862年)婚約中のアレクサンドラ・オブ・デンマーク王女(17歳頃)とヴィクトリア女王(43歳頃) 【出典】Royal Collection Trust / Queen Victria (1819-1901) and Princess Alexandra of Denmark, later Queen Alexandra (1844-1925) © Her Majesty Queen Elizabeth II 2021

もう、気分も乗らないのに無理に煌びやかに着飾る必要はなく、若者たちにファッションリーダーの役目は任せれば良いですよね。

現代だと、王族が誰かに高価なジュエリーをオーダーしてプレゼントしたら「国民の税金でけしからん!」と王室廃止論が出かねませんが、王侯貴族の時代は普通にあることでした。

これは王太子バーティ(後のエドワード7世)が結婚する際、王太子妃となるアレクサンドラ・オブ・デンマーク王女にヴィクトリア女王がウェディング・ギフトとして贈ったオパールのパリュールです。

ヴィクトリア女王から王太子妃アレクサンドラへのウェディング・ギフト(1863年)

年代的にはオーストラリア産ではないと推測しますが、アルバート王配との愛の宝石として、オパールが本当に好きだったのでしょう。

ヴィクトリア女王の5人の王女
長女ヴィクトリア
(1858年)17歳
次女アリス
(1862年)19歳
三女ヘレナ
(1866年)20歳
四女ルイーズ
(1871年)23歳
五女ベアトリス
(1885年)28歳

5人の愛娘にも、ウェディング・ギフトとしてオパール・ジュエリーを贈ったそうです。

このように、ヴィクトリア女王周囲にいる高位の貴族にオパール・ジュエリーを贈るなどして積極的に着けさせることで、それを見るであろう他の貴族にもオパール・ジュエリーを浸透・流行させていきました。

1-1-5. オーストラリア産オパールのハイジュエリー

ヴィクトリア女王のプロモーションにより、19世紀後期から20世紀初期にかけて社交界でオパールが流行しました。

ホワイトオパールのネックレス
レイト・ヴィクトリアン エドワーディアン アールデコ
オパール ネグリジェ・ネックレス ネックレス アンティーク・ジュエリー『Rainbow World』
ネグリジェ・ネックレス
イギリス 1890年頃
SOLD
雫型オパールとシャンパンカラー・ダイヤモンドのエドワーディアン・ネックレス アンティークジュエリー『シャンパーニュ』
雫型オパール&シャンパンカラー・ダイヤモンド ネックレス
イギリス 1910年頃
SOLD
雫型オパールのアール・デコ・ネグリジェ・ネックレス アンティーク・ジュエリーオパール ネックレス
イギリス 1920年頃
SOLD

各時代でデザインの傾向や、組み合わせる宝石は異なります。もちろん、持ち主の好みによっても様々な個性が出ます。

ホワイトオパールのハイジュエリー
フラワーデザインのオパール・ネックレスオパール ネックレス
イギリス 19世紀後期
SOLD
ハート型オパール・リングハート型オパール リング
イギリス 1880年頃
SOLD
雫型オパールのネグリジェ・ネックレス ネックレス アンティーク・ジュエリーペンンダント
イギリス 1880年頃
SOLD

Genも私も妥協がないので厳選したハイジュエリーしかご紹介していませんが、それでも46年間で一定数があります。ただ、その大半はホワイトオパールです。

1-1-6. ブラックオパールの発見

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

ブラックオパールの宝物をご紹介できる機会は、ホワイトオパールと比べて遥かに少ないです。

1-1-6-1. オーストラリア大陸に於ける一攫千金のロマン
オーストラリア

ヨーロッパ人にとって、オーストラリア大陸はアメリカ大陸同様に未開のフロンティアでした。

アメリカは1948年にカリフォルニアでゴールドラッシュが起き、一攫千金を夢見る男たちの悲喜交々が繰り広げられました。

オーストラリアも19世紀後半にゴールドラッシュが発生しています。1851年のニューサウスウェールズ州とヴィクトリア州のゴールドラッシュや、1890年代の西オーストラリア州のゴールドラッシュが有名です。

アールデコのモンタナサファイア&天然真珠のネックレス アンティーク・ジュエリー『天空のオルゴールメリー』
アールデコ 天然真珠&サファイア ネックレス
イギリス 1920年頃
¥1,230,000-(税込10%)

そのような、金採掘の中で新発見された宝石の1つがアメリカの宝石モンタナサファイアでした。

アメリカのティファニー最盛期を作った創業者時代の人材
カリスマ統括者 天才デザイナー 鉱物・宝石学の権威 神技の職人
チャールズ・ルイス・ティファニー(1812-1902年) ジョージ・パウルディング・ファーナム(1859-1927年) 副社長ジョージ・フレデリック・クンツ(1856-1932年) 【パリ万博 グランプリ受賞】『アイリス』
©Walters Art Museum/Adapted/CC BY-SA 3.0

アメリカのハイジュエリー・ブランドとして、確固る地位を築いたのがティファニー社です。創業者のチャールズ・ルイス・ティファニーが経営者としてカリスマで、それ故に当時、各分野の第一級の人材が集まったからこそ成し得たことでした。どの分野も欠けては成立しませんが、宝石に関する偉業もとても大きいものでした。

宝石に関しては、副社長にもなった宝石・鉱物学者のジョージ・フレデリック・クンツ博士が活躍しました。入社は1879年、23歳の時です。「アメリカにはまだ発見されていない宝石がたくさんある!♪」と魅力的に語るクンツに、「費用は気にせず、美しい宝石を集めてきなさい。」と創業者チャールズが言ったそうです。

クンツ博士は少年時代から鉱物への興味が高かった人物で、本とフィールドワークによる独学でその分野のエキスパートとなりました。クーパー・ユニオンという私立大学に入学したものの、通わず卒業しませんでした。

チャールズが肩書きで判断するタイプだと、「え、大学を出ていないの?」、「推薦者は?」など相手にしなかった可能性がありますが、きちんと本質で判断できる人だったのでしょうね。特定のお金と時間を差し出せば手に入る学位や肩書きは、有り余る才能を持つ人には時間の無駄です。クンツは有り余る才能と情熱を持っていたことが分かったのでしょう。

PDアメリカの擬人化(マイセン工房 1760年頃)

手付かずの広大なアメリカ。

見たこともない、様々な珍しい生き物に溢れ、豊かな土壌は無限とも思えるほどの食べをもたらしてくれます。

そして、ゴールドや宝石を秘めた土地でもありました。まさに一攫千金、男のロマンを掻き立てるものです。

クンツァイトとみられる鉱物を調査するクンツ(1903年、47歳頃)

特に宝石は、知的にも面白いです。

学者が食事や寝る間も惜しんで研究に励む話はよく聞きます。

クンツの場合、原動力はお金や名声ではなく、純粋な知的好奇心だったと想像します。

知的好奇心は何よりも強い原動力になると、私自身は思っています。クンツは鉱物・宝石界の先導役となり、新しい宝石を追い求めて各地を飛び回りました。

ペリドット&ホワイトエナメル ネックレス アンティークジュエリー『ゴールド・オーガンジー』
エドワーディアン ペリドット&ホワイト・エナメル ネックレス
イギリス 1900年頃
¥1,000,000-(税込10%)

それにはお金も伴ったことでしょう。

大学ならば、稼がなくても自動的に研究予算が得られるかもしれません。

各地を飛び回り、最先端の研究活動をするにはお金もかかります。

新しく発見した宝石がお金を生み出すことで、さらなる研究ができるという好循環が作り出せたことで、アメリカで次々に新しい宝石が発見されました。

1904年に公式に報告された、アメリカ産ペリドットもその1つでした。

本当に豊かな土地ですね〜。

アメリカのティファニー最盛期を作った創業者時代の人材
カリスマ統括者 天才デザイナー 鉱物・宝石学の権威 神技の職人
チャールズ・ルイス・ティファニー(1812-1902年) ジョージ・パウルディング・ファーナム(1859-1927年) 副社長ジョージ・フレデリック・クンツ(1856-1932年) 【パリ万博 グランプリ受賞】『アイリス』
©Walters Art Museum/Adapted/CC BY-SA 3.0

そのような一攫千金と、次々に現れる新興成金がド派手に遊ぶ姿を直近に見れば、「俺も!」と夢見るのは無理ないことです。

1902年にそのカリスマ経営者チャールズが亡くなると、ティファニー躍進の中心人物とも言えた天才デザイナー、ジョージ・パウルディング・ファーナムは1885年から23年間勤めたティファニーを退社しました。1908年、まだ49歳頃です。万博で金賞に続き、グランプリを受賞した天才デザイナーとして世界的な名声を確立し、ティファニー社の役員の地位も得て、まだまだデザイナーとして活躍できるであろう年齢でした。

しかしながら、アメリカン・ドリームをどうしても追い求めたかったようです。鉱山経営者を目指し、投資と移住のために退社してしまいました。しかしながら、殆どの人は夢破れます。1911年までには、ファーナムは財産の殆どを使い果たしてしまったそうです。まあでも、やらぬ後悔よりやってからの後悔の方が、人生には意味のあるものとなります。結果論ですので、やらない方が良かったですねとは言いません。

ファーナムが去った後のティファニー社のデザインは明らかに劣化していますが、結局は寿命分だけ勤め上げたらファーナムはいなくなりますからね。せいぜい20年前後の違いでしかありません。もう少しティファニー社の優れたジュエリーを見たかった気もしますが、カリスマ創業者が旅立った時点で、ティファニーの優れたジュエリー制作の歴史は終焉が確定していたのでしょう。

レイト・ヴィクトリアンのオーストラリア産オパール&ダイヤモンドのペンダント『魅惑のオパール ペンダント』
イギリス 1880年頃
SOLD

アメリカに続きゴールドラッシュが起こり、魅惑のホワイトオパールが発見されたオーストラリアでも同様の状況だったことは、ご想像に難くないでしょう。

同時代、オーストラリアでも無数の男たちが、一攫千金のロマンを夢見て探索に明け暮れました。

1-1-6-2. ブラックオパールの発見
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

ブラックオパールの最初の発見として記録が残っているのは、オーストラリアのライトニングリッジです。

オーストラリアのライトニングリッジ ©google map

広大なオーストラリア大陸の内陸にあります。シドニーからも遠いですね。

ブラックオパールの発見がなければ、町として成立していたかも怪しいほどの田舎です。町としての設立は1922年です。

ライトニングリッジの町とオパール鉱脈 "Lightning Ridge5" ©M P Goodwin(17 April 2006)/Adapted/CC BY 3.0

今も過疎っており、2016年の国勢調査での人口は2,284人でした。

それにしても広大です。日本も面積はあるものの、森林率が約7割と人が住めない場所が多いため、人口が密集しています。私の場合、見渡せば、まず山が視界に入るのが当たり前という印象があります。地平線なんて見えません。Genも内陸の米沢、2,000m級の山々に囲まれて育っています。

そんな感覚からすると、山がなくて全く隠れる場所がないなぁと感じます。実際、隠れる場所がなかったようで、雷が落ちると避雷針的な役割ができるものがありません。

この辺りは19世紀後半までにイギリスの植民団が定住し、牧畜に使用するようになっていました。

雑草を食べるシルバーのトイプードル小元太草を食む羊のような小元太1世(2011.5.10)

1870年代のある日、通行人がこの土地で牧童と牧羊犬、羊200頭(或いは600頭)の死体を発見しました。遮るものがなかったためか、運悪く雷に打たれて感電死したらしいです。上の画像は羊ではなく、羊っぽい小元太1世です。それはさておき、これをきっかけにこの地域がLightning Ridge(雷の尾根)と呼ばれるようになったと言われています。そんな、特に産業も無かった地域です。

ライトニングリッジの町とオパール鉱脈
"Lightning Ridge5" ©M P Goodwin(17 April 2006)/Adapted/CC BY 3.0

1870年代に初めてブラックオパールが発見されたものの、その発見はランダムかつ偶然によるものでした。このため、以降もこの地域はオパールの重要産地とは見られていませんでした。

山や洞窟、川などであればちょっと探してみようと思えますが、この広大な平地だと目測もつきませんしね。

『バウンダリー・ライダー』(サミュエル・トーマス・ギル 19世紀中期)

そのような状況でしたが、1901年にバウンダリー・ライダーのジャック・マレーが、ライトニングリッジで初めて採掘者として登録しました。

バウンダリー・ライダーとは、羊などの牧畜場を管理する従業員です。敷地の外周を定期的に周って柵の状態を確認したり、逃げた牧畜を戻したり、迷い込んだ野良犬などを追い出すなどが仕事です。

ホワイトクリフからライトニングリッジまでの徒歩ルート ©google map

1年後、新しい外観のオパールの噂を聞きつけて、チャーリー・ネトルトンという人物がホワイトクリフから徒歩でやってきました。東京からだと、青森や島根までの距離だそうです。昔の人は凄いですね・・。

ネトルトンは、ホワイトクリフのオパール採掘者でした。

1-1-6-3. ブラックオパールの宝石としての価値を見出したネトルトン
アールデコ 天然真珠 リング アンティークジュエリー『影透』
アールデコ 天然真珠 リング
イギリス 1920年頃
SOLD

通常、宝石はカットが必要です。

手を加えることなく、ありのままで美しいのは天然真珠しか思いつきません。


ブラックオパールの原石

このような小汚い石を拾っても、価値を見出す人は殆どいないでしょう。長い間、ライトニングリッジでオパールを探そうとする人がいなかったのもご想像いただけると思います。

しかしながらネトルトンはオパール採掘者だったこともあり、通常のオパールとは異なる外観に大きな可能性を見出しました。

ライトニングリッジのオパール鉱脈と平原 "Lightning Ridge2" ©Cgoodwin(25 December 2007)/Adapted/CC BY 3.0

後に『ネトルトンの丘』と呼ばれるようになる丘で本格的な調査を開始しました。1903年、地下鉱脈で高品質のブラックオパールが産出される大きな区画を発見しました。

ただ、新発見の宝石というものは、誰も価値が分かりません。どういうものほど価値が高いのか、定義も存在しません。売るのは大変です!

しかもその場で売ることはできません。当時のライトニングリッジはオパールの産地としての地位もなく、ただの過疎地です。

ホワイトクリフからライトニングリッジまでの徒歩ルート ©google map

ネトルトンは再び、マレーと共にホワイトクリフまで歩いて戻りました。ところでこの時代の庶民は、この距離を歩くのは普通なんでしょうかね。

ホワイトクリフのオパール鉱脈 "White cliffs opal fields" ©Peterdownunder(28 September 2008)/Adapted/CC BY-SA 3.0

元々ネトルトンがオパール採掘を行っていたホワイトクリフはオーストラリアで最初のオパール鉱山で、1884年以来たくさんの上質なホワイトオパールが産出する場所でした。買取業者が多く集まっており、そこでの市場開拓を目指したのです。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント 最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダントの裏側

宝石の原石の買取は博打のようなものです。

秘めたる真の美しさは、実際にカットしてみるまで目には見えません。

私のように、ジュエリーとして完成された形で選べるのは楽なものです。一か八かの博打ではなく、確実に良いものだけを選べるのですから。

ブラックオパールの原石

原石の買取業者は、カットしていない状態で判断しなくてはなりません。

期待はずれでガッカリ大損ということもあれば、とんでもなく価値あるものが一攫千金的に手に入ったということもあるでしょう。

誰がやっても同じという仕事ではなく、これこそ経験と勘などの腕が物を言う仕事です。

『未知のもの』、『まだ価値が定義されていないもの』に手を出せる人は、ほんの一握りです。大半の凡人は、価値が確定してからしか手が出せません。その意味で、ブランドや権威の裏付けがあるとは言い難いアンティークジュエリーに手を出せるHERITAGEのお客様は、特殊な存在と言えます♪

ネトルトンが、有力な買取業者だったテッド・マーフィーに原石を見せました。マーフィーは即座に価値を見出し高値で買取り、追加購入も約束しました。

売却成功の知らせを耳にしたホワイトクリフのオパール採掘者は、次々とライトニングリッジを目指しました。

ハーレクイン・ブラックオパールのエドワーディアン・ネックレスエドワーディアン ブラックオパール ネックレス
イギリス 1910年頃
SOLD

宝石品質のブラックオパールが商業規模で産出されるのは、ライトニングリッジだけだったそうです。

見たことない魅力的な遊色を浮かび上がらせるブラックオパールは、たちまち話題の宝石となりました。

一攫千金を目指す鉱山労働者の大量流入によって、町は劇的に拡大しました。最初の買取業者テッド・マーフィーも移り住んだそうです。1909〜1910年までに人口は約1,000人に達し、採鉱は町の西、約10kmにまで拡大しました。

ブラックオパールのアールデコ・ネックレスブラックオパール ネックレス
イギリス 1920年頃
SOLD

1910年代は適度な数のブラックオパールが、安定して採掘されました。

しかしながら、手掘りで採掘できる範囲は限られています。すぐに採り尽くし、1920年以降は僅かな生産量しか記録されていません。

ブラックオパールのアンティークジュエリーは1903〜1920年頃までのごく僅かな期間しか作られず、ホワイトオパールのアンティークジュエリーと比較して圧倒的に数が少ないのです。

また、デザインや使用する素材の幅も該当の期間に限られます。

アンティークの時代が終わった戦後、1958年に採掘で機械が使用されるようになると、再びブラックオパールが得られるようになりました。

もともと強い魅力がありながら、枯渇して入手できなくなっていた幻の宝石でした。当然のように人気が再燃し、価格は高騰し、それに伴って地下鉱脈も延伸されました。

1970年頃には大規模な露天掘りが行われるようになりました。

【参考】ブラックオパールの中古リング

1980年代から1990年代にかけて全盛期となりました。

高度経済成長を経験し、バブルもあって景気の良かった日本人が買い漁り、大きな需要となりました。

多くの日本人にとっては、ブラックオパールのジュエリーはこの頃のものがイメージが強いと思います。

稚拙な作りと美意識の欠如を象徴する"目立つ爪"、ありきたりな"成金的デザイン"が、いかにもな感じですね。

採掘博物館『ボトル・ハウス』(ライトニングリッジ)"Lightning Ridge 5" ©Cgoodwin(25 December 2007)/Adapted/CC BY 3.0

日本人の需要は下火になりましたが、現代でもライトニングリッジは観光なども含めたブラックオパール産業によって支えられています。

ライトニングリッジは、『オパール・スクール』と呼ばれる最初の学校が1907年に開校しました。1909年には『帝国ホテル』が開業し、その後すぐに最初の店舗もオープンしました。1914年までに州政府はライトニングリッジを植民地として統合し、郵便局や学校、看護所なども設立されました。

ライトニングリッジの精神 チャーリー・ネトルトン
【引用】Monument Australia / Charlie Nettleton (Spirit of Lightning Ridge) ©Monument Australia 2010 - 2023

今では世界的な知名度のあるライトニングリッジですが、ネトルトンがブラックオパールの魅力に気づき、諦めることなくその価値を信じ続けることがなければ、その繁栄はありませんでした。

その大きな功績を讃え、ライトイングリッジの精神としてネトルトン像が造立されているほどです。

ブラックオパールの原石

誰も見向きもしなかったような、ただの小片。

ネトルトンだけがその秘めた魅力を頑なに信じ、数百キロを歩く労力を惜しまず、来る日も来る日も大変な採掘作業に従事し、価値をきちんと評価してくれる人を諦めずに探し続ける。

本当にロマン溢れる時代です。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

ネトルトンがいなければ、この宝石はまだオーストラリアの大地に埋まっていたかもしれませんね。

1-2. 知られざるブラックオパールの真の魅力

1-2-1. 質によって異なるブラックオパールの美しさ

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

アンティークの時代は、高級品を買うのは極少数の上流階級と富裕層のみでした。

だから制作数はとても少ないです。

それ故に、ハイジュエリーに使う宝石も間違いなく選び抜かれた上質な石のみでした。

だからハイジュエリーの宝石は、どれも当たり前のように美しいです。

質によって異なる稀少性と価値
宝石とその他の違い

人工的に作る合成石と異なり、天然石は質がピンからキリまであります。誰が見ても美しいと感じられる宝石品質の石は、割合がとても少ないです。その稀少性と美しさ故に、高い価値がつくわけです。

稀少なので、たくさんは手に入りません。それでもアンティークの時代はハイジュエリーの制作数も限定されていたため、需給バランスが取れていました。

現代はハイブランドとされるメーカーが、全世界に向けて無数の量産ジュエリーを売るような状況です。本来、天然の上質な宝石ではあり得ないことです。合成石かどうか、人工的な処理の有無に言及しているブランドは見当たりません。実際、どうなのか疑問を感じます。

値段は高いですが、本当にそれだけの価値があるのか疑わしいです。果たしてハイジュエリーと呼んで良いのか否か。

エメラルド・リング(ティファニー 現代)¥1,617,000-(2020.5現在)合成や処理については記載なし
【引用】TIFFANY & CO / Tiffany Soleste Ring ©T&CO

一般の顧客は高級ブランドだからと信用して購入しているわけですが、その信頼を悪利用しているならば酷いことです。

天然のままで美しい宝石ならば、それだけで高い価値があります。販売の上で重要なアピール・ポイントになりますから、記載しないなんてことは考えにくいです。

実際はどうなんでしょうね。

【参考】現代のブラックオパール・ジュエリー

自称"ハイジュエリー"を買う人数が桁違いに多い現代は、ハイジュエリーに相応しい高品質の宝石が全く足りません。だからアンティークの時代ならば使用しないような品質の石でも、それなりの価格のジュエリーに使用されることは当たり前にあります。

誤魔化すために、尤もらしく派手なダイヤモンドで飾り立てたりします。HERITAGEに辿り付くような美的感覚に優れた方だと、感覚的に優れていると感じないため、この類の現代ジュエリーには手を出しません。

買うのは「ブラックオパールだから」、「高そうなダイヤモンドが付いているから」など、石コロの種類だけで判断するような頭デッカチ的な選び方をする人たちだけです。そのような商売が長く続くわけがなく、日本でのブラックオパール人気は下火になっているわけです。

【参考】現代のブラックオパール・リング

現代ジュエリーで、ブラックオパールの質の良し悪しを判断するのはもはや不可能に近いです。

競うのは質ではないからです。

いかに利益を最大化して儲けるかという世界なので、どれだけ上手に尤もらしく顧客に納得させるかだけに注力します。

ブランドの権威化であったり、仰々しいデザインなどであったりです。

真っ当な時代であれば、価格が高いものほど上質と認識できましたが、今はその構図が成り立ちません。見ても、ますます訳が分からなくなってしまう悲しい状況です。

【参考】安物ブラックオパールの9ctブローチ(20世紀初期)

アンティークの時代は本当に分かりやすいです。これは9ctの安物のバー・ブローチです。安物とは言っても、HERITAGEがお取り扱いするような高級品を使っていたような上流階級にとってという意味です。庶民にとってはシルバーではなくゴールドというだけで、憧れの高級品となります。庶民用のアンティークジュエリー専門店ならば、これは高級品として紹介するレベルに該当します。

それだけに、作りは丁寧で悪くないです。わざわざ彫金なども施されており、適当に作った量産品ではなく、一応は手間をかけたものと言えます。

20世紀初期のブラックオパール・ジュエリー
最高級品 安物
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

ただ、こうして比較すると、最高級品と安物ではブラックオパールの質がまるで違うことがお分かりいただけるでしょう。

単品で見ると、もしかすると安物でも綺麗に見えるかもしれません。でも、所詮安物は安物なりでしかありません。遊色の出方に関しては実物を見ないと分かりにくいですが、まず安物は磨き仕上げの悪さが目につきます。ダイヤモンドも同じですが、ラフカットして形を整える以上に、表面を磨いて整える作業は地味ながら恐ろしく時間がかかります。だから安物は磨き仕上げが甘いです。

ダイヤモンドの場合は輝きや透明感に影響します。ブラックオパールの場合は表面の艶感に出ます。

最高級品 安物
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

石の厚みも違います。これは遊色の魅力に大きく影響します。

遊色が美しい上質なホワイトオパール
オパールの婚約指輪『神秘なる宇宙』
オパール リング
イギリス 1880〜1900年頃
SOLD
オパールのアンティークの婚約指輪

これは以前ご紹介した、とても綺麗なホワイトオパールのリングです。石に厚みがありますが、見方によっては石の後ろ側が透けてみるほど透明度の高いオパールでした。

厚みがあることは大事です。これにより、上質なオパール独特の「石の奥から湧き上がってくるような魅力的な遊色」が生まれるのです。大宇宙、あるいは大空に浮かぶオーロラ、または虹の世界。まるで万華鏡のようでもある、オパール最大の魅力と言える遊色に石の厚みは不可欠です。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

最高品質のこのブラックオパールも、十分に厚みがあります。だからこそ石の奥から湧き上がるような遊色が美しいですし、見る角度や光によって大きく表情が変わります。

最高級品 安物
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

厚みのある最高級品は生き生きとした表情を魅せる一方で、厚みのない低品質のブラックオパールは死んだような表情しか出ません。同じブラックオパールという宝石であっても、品質によって美しさはまるで違うのです。

【参考】低品質のブラックオパールのプラチナ・ブローチ(1920年頃)

これはやや、チグハグに感じるアールデコのブローチです。HERITAGEで買付けできる基準には満たないですが、プラチナ製ですし、透かし細工も丁寧に施されており、全体としてはそんなに悪くない作りです。

ただ、宝石がその作りに見合わないほど、低品質です。このようなチグハグな作りの場合、後で石が取り替えられたなどの理由があったりもしますが、これはオリジナルだと思います。

これは1920年頃にはブラックオパールが枯渇していたことを如実に示している、時代の生き証人なのだろうと推測します。ブラックオパールは小さい上に質も悪いです。

それなのにフレームの作りも丁寧ですし、グレインワークも爪も綺麗に磨き上げられており整っています。透かし細工も通常の安物ならば粗が目立ち、これほどの拡大には耐えられません。

20世紀初期のブラックオパールのハイジュエリー
流行の最初期 枯渇期
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

ライトニングリッジ、一箇所でしか採れなかったからしょうがないと言えばしょうがないですが、真に美しいブラックオパールはある意味、幻の宝石と言えるのです。

アンティークの最高級品 【参考】現代の高級?品
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

大規模な露天掘りができるようになり、地中奥深くに眠っていた美しいブラックオパールが新しく得られることはあるかもしれません。でも、デザインも作りもコストカット追求主義の現代仕様にしかなりません。

その意味では、"美しい最高級ブラックオパール・ジュエリー"は1903年から1920年頃までの、ごく限られた期間にのみ生み出された『幻のジュエリー』と言えるでしょう。

1-3. 最高級ブラックオパールならではの美しさ

1-3-1. 表情豊かなホワイトオパール

宇宙のような遊色のオパール・リング『神秘なる宇宙』
オパール リング
イギリス 1880〜1900年頃
SOLD
イエロー系ホワイトオパールのアンティーク・リングオパール リング
イギリス 1880年頃
SOLD
万華鏡のような天然の特大オパール・リング アンティークジュエリー『万華鏡』
オパール リング
イギリス 1880年頃
SOLD

オパールほど、石によって個性が異なる宝石もありません。ホワイトオパールも青い遊色が強いものもあれば、黄色を強く感じる石もあります。遊色の出方も、石によってかなり違います。

しかしながら、ブラックオパールはホワイトオパール以上、石によって個性が異なると言えるかもしれません。

1-3-2. 様々なブラックオパール

ブラックオパールの色彩 "Blackopal colour" ©オパールカズ(2006年10月)/Adapted/CC BY-SA 3.0

ブラックオパールには様々な色彩があります。どの色が品質が高いということはあり得ません。好みで選べば良いだけですが、価格に関しては稀少性が影響します。

最も多いのはブルーです。次に多いのがブルーにグリーンが入ったもので、この2種でブラックオパールの半数以上を占めます。

イエローやオレンジ、レッドが入るものは稀少で、その分だけ市場では稀少価値が高いです。パープルやワインレッドを含むものもあり、様々な色が美しく混ざるものは特に稀少で、最高級品の中でもさらに稀少で高級とされています。

これの中で好みのものを純粋に選ぶなら、私は左の2つが何となく良いですけれどね。右の方は何だかケバくて、私には似合わなそうです。「右に行くほど稀少価値が高い」とプログラムされた瞬間、右を選びたがる人が増えるであろうことは想像できます。人間の性みたいなものですね。意外と、人の無意識にこのような印象操作は効果的に効くものです。

この辺りに関しては、Genと同じ1947年生まれの父の影響が強いかもしれません。基本的に外食せず、食べ放題に行ったりもしないのですが、子供の頃、「食べ放題に行くとしても、元を取ろうとしないように。美味しいと思える分だけを食べなさい。」と言われたことが印象的でした。

元を取ろうとするばかりに、ただ体に詰め込むだけなんて食べ物に対する冒涜でしかありませんし、それで幸せな気持ちになれるとも思えません。元を取れた気分になれたら、それが幸せという方もいらっしゃるかもしれませんが、私は美味しいと思えるものだけを感謝しながら食べたいです。

上質なものは美味しいですし、技術や手間をかけたものが高価になるのは当然ですが、必ずしも稀少性があるものや価格が高いものほど美味しいとも限らず、自分の好みだったり、感覚で選ぶのは本当に大事だと思っています。

星空のようなブラックオパールのアンティークリングブラックオパール リング
イギリス 1910年頃
SOLD
イエロー系ホワイトオパールのアンティーク・リングアールデコ ブラックオパール リング
イギリス 1920〜1930年頃
SOLD
南海を思わせる最高級のブラックオパールのアールデコ・リング アンティークジュエリー『ブラックオパールの海』
アールデコ ブラックオパール リング
イギリス 1920〜1930年頃
SOLD

私がブラックオパールの宝物をご紹介するのは今回が初めてなので、これらは全てGenが選んだ宝物です。さすが、どれも美しいです。Genも私も、基本的に選ぶ感覚は同じなんですよね。中央のリングは20年ほど前にご紹介した宝物です。55歳頃のGenもそのカタログで、私と同じようなことを語っています。

「高価な石にありがちなどぎつさがなく、清涼感のある清らかなイメージに魅力を感じます!♪」
「 色石の場合は、値段ではなくてあくまでも自分の好みにあうかどうかで選ぶべきなんですよ。」

別人とは思えず、Genはもう1人の私ではないかと思うほどです(笑)

そんなGenが言うように、左のブラックオパールはまるで美しい星空のようですね。一方で、右のブラックオパールは無限に広がるブルー・オーシャンのようです。これだけ表情が異なる宝石もありませんね。ブラックオパールが強く人を魅了してやまない理由でしょう。

1920〜1930年頃の作りでこれだけ美しいブラックオパールが使われているのは、先のご説明と矛盾しているように思う方もいらっしゃるかもしれません。偶然採掘できた、デッドストックを使用したなども考えられますが、リメイクの可能性が高いと思います。稀少な宝石を使うハイジュエリーではよくあることです。ジョージアン以前の宝石主体のハイジュエリーが少ない、最大の理由です。

エドワーディアンのブラックオパール&ダイヤモンドのネックレスブラックオパール リング
イギリス 1910年頃
SOLD
ハーレクイン・ブラックオパールのエドワーディアン・ネックレスブラックオパール ネックレス
イギリス 1910年頃
SOLD
ブラックオパールのアールデコ・ネックレスブラックオパール ネックレス
イギリス 1920年頃
SOLD

ネックレスだと、このような感じです。もしかすると他にもあるかもしれませんが、46年間でも僅かな数しかご紹介できていないのがブラックオパールのハイジュエリーです。

比較して言えるのは、色だけでなく、遊色パターンの大きさのバラツキも1つ1つ異なるということです。

1-3-3. 天然石と合成石で明らかに違う美しさ

【参考】合成オパールのアクセサリー

ところで、現代ではオパールの合成技術が確立されています。日本の京セラが販売しています。

合成オパールは好きなだけ量産できるので、宝石の定義には当てはまりません。量産できるので稀少価値はなく、これらもジュエリーではなくアクセサリーと呼ぶのが妥当です。

それでも綺麗ならば気軽なオシャレには良いと言えますが、いかがでしょうか。これを綺麗と心から感じる人は、一体どれくらいいるでしょうか。

合成オパール(京セラ 現代)
【引用】Kyocera Japan/ 世界初、「京都オパール」がフェイスパウダーに採用 ©KYOCERA Corporation

変動のある自然環境の中で、長い時間をかけて作られていく天然のオパールには、1つ1つに揺らぎと個性があります。

合成オパールの場合、工場の安定した環境で最速で合成されます。だから不自然さや違和感を感じるほど、模様が整っています。

縦方向に成長した様子も見えますね。

合成オパール(樹脂含浸タイプ)のさまざまな素材加工例(京セラ)
【引用】Kyocera / 京都オパール ©KYOCERA Corporation

樹脂含浸タイプも開発されています。高分子の樹脂中にオパール独特の遊色効果を実現したとのことで、素晴らしいですよね。

樹脂含浸のメリットは複数あります。1つは着色できることです。天然のオパールでは実現不可能な、様々な色を背景にした遊色が楽しめます。

オパールは加工時に割れやすく、扱う職人は高度な技術を必要とします。樹脂含浸によって割れや欠けに強くなり、様々なフォルムの大量生産品の製造が容易となりました。

高分子樹脂コロイド結晶(ポリマー)タイプ(京セラ)
【引用】Kyocera / 京都オパール ©KYOCERA Corporation

柔軟に曲げることすら可能ですが、もはや鉱物ではありませんね(笑)

宝石ではありませんが、適材適所、楽しく使えば良いと思います。


【引用】Kyocera / オパール&ブラックオパール ©KYOCERA Corporation

アクセサリー用は樹脂を使いません。ブラックオパールまで開発に成功しています。

ただ、単なる工業製品にここまで夢を見るのは妥当なんでしょうかね。知らぬが仏でしょうか。私は大企業にいて、新人研修で製造ラインで作業したことがありますし、研究者として様々な製造ラインを見学したこともあります。その経験があるせいか、ちょっとこんな夢を見るのは無理です。

合成ブラックオパール&プラチナ・リング ¥370,000-(2023年1月現在)
【引用】Kyocera odolly / ブラックオパールリング ©2015 京セラジュエリー通販ショップodolly-オードリー

直営ジュエリー通販ショップで最も高価なブラックオパール・アクセサリーが、これでした。

いくつでも量産できる割には、かなり高いですね。私はこれはアクセサリーと認識しますが、自称ジュエリー・ビジネスって儲かりそうだなぁと感じてしまいます。

それにしても、安定した環境で作る合成宝石は、やはり天然石ならではの魅力が感じられません。死んだ感じと言うか、精気が宿っていないと言いますか。あくまでも個人の感想ですが・・。

【参考】合成ブラックオパールリング
合成ブラックオパール&プラチナ・リング ¥350,000-(2023年1月現在)
【引用】Kyocera odolly / ブラックオパールリング ©2015 京セラジュエリー通販ショップodolly-オードリー
合成ブラックオパール&プラチナ・リング ¥330,000-(2023年1月現在)
【引用】Kyocera odolly / ブラックオパールリング ©2015 京セラジュエリー通販ショップodolly-オードリー

ハーレクイン・タイプだったり、ブルー・グリーン系だったり、ある程度は色彩がコントロールできるようです。その辺りはさすが日本人と言った印象です。

でも、やっぱり整い過ぎた不自然さがあるせいか、綺麗だとは感じられません。その上、本物のハイジュエリーがいかなるものかを知らない人たちが作っているせいか、デザインと作りもアンティークのハイジュエリーを知っていると、とても見るに耐えません。

目立つ爪。そして、右のリングは「このブツブツは何だろう?」と一瞬思いましたが、ミルグレインなんでしょうね。ハンドメイドではなく鋳造のミルグレインなので、1粒1粒が大きいです。とりあえずミルグレインを作っておけば良いというわけではないのですが・・。改めて、高度な技術に基づく手仕事の素晴らしさを実感しました。

3連ピアス
アンティークの最高級品 現代のアクセサリー
ダイヤモンド 3連ピアス アンティーク・ジュエリー 『Bright things』
アールデコ ダイヤモンド 3連ピアス
イギリス 1930年頃
SOLD
合成ブラックオパールセラミックピアス
K10ホワイトゴールド
¥23,800-(2023年1月現在)
【引用】Kyocera odolly / ブラックオパールセラミックピアス ©2015 京セラジュエリー通販ショップodolly-オードリー

合成であっても、工業製品の品質にバラツキは出るものです。品質が良くないものは、低価格帯の10Kアクセサリーにするようです。この価格が安いと感じるか、高いと感じるかは人それぞれだと思います。ここまで来ると、ガラスやアクリル樹脂などのオモチャ的なアクセサリーと、見た目に違いがあるのか怪しく感じます。

石の質はもちろんのこと、四方の目立つ爪が安っぽさを醸し出す大きな原因になっています。アンティークの最高級品を知ってしまうと、もう見たくもなくなります。いや〜、アンティークの宝物は本当に素晴らしいですね。自画自賛的で失礼しました!(笑)

【参考】合成オパール・ビーズ

ちなみに、これは合成オパールのビーズです。穴を貫通させて紐を通し、数珠のようなネックレスやブレスレットにして、ブラックオパールのネックレスなどとして販売します。天然のブラックオパールだけをイメージしている方は、これを見たら見た目と価格に混乱しそうですね。

不自然感が極まりないビジュアルです。人工的に合成しても、天然のブラックオパールならではの心地よい揺らぎのある自然な美しさは再現できないものですね。

しかも、こんなに大量に見せられるとチープ感しか漂いません(笑)
絶対的な美的感覚がある方だと、尤もらしくジュエリーっぽく加工して、尤もらしい価格と宣伝文句を付けて、尤もらしいブランドで紹介されても欲しいとは感じないでしょう。しかしながら、ちょっと体裁を整えればこんな二束三文の工業製品を"価値ある宝石"と見做して大金を出す人がいるのは、まるで『裸の王様』の世界を見ているようでもあります。

1-3-4. 豊かな色彩が微細に散りばめられたブラックオパールの至高

ハーレクイン・ブラックオパールのエドワーディアン・ネックレスエドワーディアン ブラックオパール ネックレス
イギリス 1910年頃
SOLD

天然のブラックオパールには天然ならではの揺らぎがあり、それが個性となっています。

このブラックオパールは多色かつパターンが大きいですね。

所謂『ハーレクイン』と呼ばれるタイプです。

厳密には正方形の大きなパターンが規則的に並ぶものを呼ぶそうですが、天然の石ですからある程度は幅があり、ハーレクインと呼ばれています。

道化師

"Akram Mutlak Ménage À Trois Öl auf Leinwand 150x120 2015 " ©Akram Mutlak(2015)/Adapted/CC BY-SA 3.0

"Narr haustuer" ©bdk(2004)/Adapted/CC BY-SA 3.0

中世の宮廷道化師の、色鮮やかなマダラ模様の衣装から『ハーレクイン』の名称が付いたそうです。

エドワーディアンのブラックオパール&ダイヤモンドのネックレスブラックオパール リング
イギリス 1910年頃
SOLD
エドワーディアンのブラックオパール&ダイヤモンドのネックレス
エドワーディアンのブラックオパール&ダイヤモンドのネックレス
エドワーディアンのブラックオパール&ダイヤモンドのネックレス

これもハーレクイン・タイプと言えるでしょう。1つ1つの色彩パターンが大きく、繊細な雰囲気のオパールとは一味違った魅力がありますね。

カラフルな遊色のブラックオパール
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント ハーレクイン・ブラックオパールのエドワーディアン・ネックレス エドワーディアンのブラックオパール&ダイヤモンドのネックレス

様々な色彩を浮かび上がらせるブラックオパールは、最高級品として数も非常に少ないです。並べて比較できるだけでも、46年間もアンティークのハイジュエリーを専門でお取り扱いしているからこそと言えるのですが、いかがでしょうか?

これまでの2点と比較して、今回のブラックオパールは全く毛色が異なると言えます。1つ1つの色彩パターンが微細で、しかも色が極めて多様です。

ハーレクイン・タイプだと、派手で目立つためにデザインされた道化師の衣装に例えられるように、はっきりとした存在感が魅力と言えます。

今回のブラックオパールは色彩パターンが微細な上に、上質だからこそ、それぞれのパターンが色の変化に富んでいます。上品で清楚な印象なのに、目を離せないほどその魅力に惹きつけられます。こんなブラックオパールが存在したのかと驚く、見たこともない石です!♪♪

1-3-5. 奇跡のブラックオパール

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

このオパールは本当に変化に富みます。

色も素晴らしいです!!♪

最高級ブラックオパールの中でもさらに稀少で高級とされる石の色彩 "Blackopal colour" ©オパールカズ(2006年10月)/Adapted/CC BY-SA 3.0

一応、これが現代の基準でも最高級ブラックオパールの中でもさらに稀少で高級とされる石の色彩です。

ルースなのでつまらないですが、マスター・ストーン的な位置付けかもしれません。

あらゆる色彩が浮かび上がっています。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのカラフルな遊色 最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのカラフルな遊色

このブラックオパールの場合、メインの色彩というものはなく、全ての色が細かく散りばめられているように感じます。真紅、赤紫、青紫、緋色、橙、山吹、黄、黄緑、エメラルドグリーン、深緑、水色、ターコイズブルー、青、青紫・・・。

虹の色と同じで、人によって知覚する色数も種類も無限のバリエーションがありそうです♪

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのカラフルな遊色 最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのカラフルな遊色

1つ1つの色彩パターンが微小なので、変化は静止画だと感じ取りにくいかもしれません。この微細なパターンがそれぞれに大きく色彩を変化させる姿は、実に奥ゆかしく美しいです!♪

この美しさは、この特別なブラックオパールだけのものです♪♪

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント 最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダントの裏側
ブラックオパールの原石

ブラックオパールは黒い母岩ごとカットします。

超稀少な石なので、なるべく無駄のないカットを目指しつつも、それでいて美しくなければ意味がありません。

大きさと美しさ。その最高のバランスを見極めながらの、高度なカット技術が必要となります。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

表面に一部、遊色が浮かび上がらない母岩が露出しています。本当にギリギリを狙い、最大サイズでカットしたことが伝わってきますね。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

厚みのある石だからこその、石の奥から湧き上がってくるような生き生きとした遊色・・。

静止画で見ると現代アートのような奇抜さも感じますが、刻々と表情を変化させるので、実物は繊細な美しさの方を強く感じます。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

どこまで、どうカットするのか。本当にギリギリの位置を狙ってカットされたことが、よく分かりますね。これだけのブラックオパールですから、当代随一の職人に依頼したことは間違いないでしょう。これ以上は望めない、最高の仕上がりとなっています♪♪

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

赤やオンレンジが出てくる石は、本当に稀少なのだそうです。それに加えて、本当に様々な色が浮かび上がります。しかも色彩パターンがこれだけ微小なブラックオパールというのは、現代ジュエリーも含めてこの石以外に探しても見当たりませんでした。本当に奇跡のような石なのでしょう。

それは後でご説明する通り、最高級品の中でもさらに高級と言える作りの良さに現れています♪

ライトニングリッジ産ブラックオパールの母岩
ライトニングリッジ産ブラックオパールの母岩

実は裏側の母岩にも一箇所、遊色が出ます。緑、赤、黄色、この一箇所だけで様々な色を見ることができます。とっても面白くて、私はこの裏側の部分を見るだけで楽しかったりします♪♪

ブラックオパールはあらゆる宝石の中でも、本当に特殊な魅力がある石ですね!♪

2. エドワーディアンらしい魅力あるデザイン

2-1. 宝石を生かす計算されたデザイン

2-1-1. デザインに如実に現れる美意識の有無

アクアマリン・ネックレス
¥1,155,000-(ティファニー 2023.1現在) 【引用】TIFFANY & CO / ティファニー ソレスト アクアマリン ダイヤモンド ペンダント © T&CO. 2023

この石に100万円台のジュエリーとしての価値があるかは、分かりかねます。

非加熱のアクアマリンであれば100万円台でも良さそうですが、カタログには非加熱か否かの記載がありません。市場の殆どが加熱石とされる現代市場に於いて、非加熱で美しい色彩のアクアマリンは、ただそれだけでも高い稀少価値があります。

絶好のPRポイントなので、非加熱石であれば記載しないということは考えにくいですが、一応、宝石を主体とした高価格帯のジュエリーとして販売されているものです。

ただ、ノーブランドでも買えるようなつまらないデザインで、敢えてこれを高級ブランドでブランド価格が乗った値段で買う意義が私には感じられません。お店でチヤホヤしてもらって、チヤホヤ価格が乗ったものと思えば、チヤホヤしてもらいたい人にはお値段分の価値があるかもしれません。モノそのものの価値は微妙です。

エメラルド・ネックレス
¥1,419,000-(ティファニー 2023.1現在) 【引用】TIFFANY & CO / ティファニー ソレスト アクアマリン ダイヤモンド ペンダント © T&CO. 2023
 【引用】TIFFANY & CO / ティファニー ソレスト アクアマリン ダイヤモンド ペンダント © T&CO. 2023

これも天然、合成、オイル含浸の有無等が無記載で、石そのものの価値は分かりかねますが、宝石メインとしては高価格帯のジュエリーとして販売されています。

これも個性がなくて、つまらないデザインです。コストカットを最優先にして大量生産&大量販売で儲けるビジネスモデルなので、どうしてもこうなります。

複雑で美しいデザインを具現化するには、高度な技術を持つ職人による手間をかけた作業が必要となります。この時点で大量生産できませんし、コストもかなりかかることになります。

それに加えて、特徴のあるデザインにすると買う人が限定されます。購買層を最大化しようとした場合、どうしても万人受けを狙った無難なデザインとなります。ターゲットが唯一無二の誰かのためではなく、ボンヤリとした不特定多数となるため、万人に受けたとしても深く愛されることはありません。大切な人からもらったという時に、その思い出分だけが宿るくらいでしょう。

特に現代ジュエリーは宝石だけを見る購買層が多いため、それ以外はなおざりの作りとなります。だから、無個性でつまらないものだらけなのです。中には奇を衒ったヘンテコなものもありますが、普通の人は買いませんし、素敵だと思う人も多くいるとは思えません。

ビスマルク・サファイア・ネックレス(カルティエ・フレール 1935年)

大衆が主要購買層となった現代は、あっという間に上質な宝石が枯渇して、本当に価値のある石はお金があっても入手困難となってしまいました。

アンティークの時代は、運と莫大なお金があれば価値ある石が手に入りました。

ただ、上質な石は手に入っても、それがどのようなジュエリーとして完成するかは別問題です。

石の価値だけで凄いか否かを判断する人だと、宝石にお金をかけるだけで、それ以外はないがしろです。むしろ成金嗜好の場合、宝石にお金がかかった分だけ、それ以外は安く済ませたいと考えるほどです。

それ以外というのはデザインや作りです。但し、高そうには見えるようにというのが希望です。

持ち主の美意識などの心の在り方、知性や教養、財力などの全てが一点物のオーダー・ジュエリーには如実に現れます。成金嗜好はすぐにバレます。

成金嗜好はヨーロッパの上流階級が嘲笑する対象でした。美意識やセンスを持たないと違いを知覚できませんが、分かる人には分かるからこそ、古の王侯貴族は宝石そのものの価値はもちろんのこと、デザインと作りにも余念がなかったのです。

2-1-2. 個性が伝わってくる宝石メインの貴族のジュエリー

フランス リング アールデコ エメラルド ペアシェイプダイヤモンド プラチナジュエリー アンティークジュエリーアールデコ エメラルド&ペアシェイプ・ダイヤモンド リング
フランス 1920〜1930年頃
SOLD

これはリングです。

リングとは思えないほど、複雑かつ優美でスタイリッシュなデザインですね。

これを付けこなす人がたくさんいるかと言えば、殆どいないでしょう。

こういうジュエリーは特定の誰かのために作るからこそできる、特別な宝物です♪

アイルランド貴族のセント・ジョージ男爵が娘ルイーザのクリスマスプレゼントのためにオーダーしたジョージアンのピンクトパーズ&コロンビア産エメラルドのアンティーク・ブレスレットジョージアン ピンクトパーズ ブレスレット
イギリス 1829年
SOLD
イエローダイヤモンド シャンルベエナメル アンティークジュエリー リング クッションシェイプダイヤモンドイエロー・ダイヤモンド&ブルー・シャンルべ・エナメル リング
イギリス 1880年頃
SOLD

実は上流階級のために作られたアンティークのハイジュエリーであっても、宝石メインでデザインが個性的で優れたものは本当に珍しいです。

これらのような超特別クラスの宝石は入手自体が、運もなければ手に入らないような困難なものです。使い回しが効くように、無難なデザインにしてしまいがちです。そのようなことすら心配の必要がない莫大な財力に加え、よほどのセンスがなければ作れません。だから作られた数自体が少なく、滅多に出逢うことはありません。それが分かっているので、Genも私も必ず見つけたら買い付けます!♪

ただ凄い宝石が付いているだけのものならば、もっとたくさんあるのですが、そのような単純なものはつまらないですし、私たちでなくてもご紹介できるのでお取り扱いしません。優れたデザインを実現するために神技の技術が必要となってきますが、単純なデザインだとその神技の技術すらも入り込む余地がありません。お金もかからず、結果的にこれらの宝物より安物となってしまいます。

デザインが優れているということは、本当はとても重要なことなのです。

戴冠式の英国王妃の正装

王侯貴族が単純なデザインの宝石主体のジュエリーを、1つも持っていないというわけではありません。

万人に広く権威を誇示するために、そのようなジュエリーを利用することはあります。

万人受けを狙うからこそ分かりやすさが必要で、デザインも単純で、宝石が凄そうに見えるように設計されています。

庶民は王侯貴族の正装をこのような姿でしか見る機会がないため、このようなジュエリーが最上級と勘違いしてしまうのです。

イギリス王妃アレクサンドラ・オブ・デンマーク(1844−1925年)1902年頃、58歳頃
"1902 alexandra coronationhr" ©Franzy89(9 August 1902)/Adapted/CC BY-SA 3.0
ファイヤーオパール カルロ・ジュリアーノ ネオルネサンス様式 エメラルド ヴィクトリアン エナメル アンティークジュエリーネオルネサンス様式 ファイヤーオパール ペンダント
カルロ・ジュリアーノ 1880年頃
SOLD
フランス製の約2カラットのオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドのアンティーク・ブローチ『財宝の守り神』
約2ctのダイヤモンド・ブローチ
フランス 1870年頃
SOLD

社交界の集まりには上流階級や、特別な知的階級のみしかいません。無個性の同じようなジュエリーを王侯貴族たちが着けているわけがなく、華やかな場で使用するための、庶民には知られざる真の最高級ジュエリーとしてこのようなジュエリーが存在するのです。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

奇跡のようなブラックオパールを使ったこの特別なペンダントも、まさにそのような宝物なのです♪♪

2-2. リングではなくペンダントにしたメリット

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

このブラックオパールは、ぎりぎりリングにもできる大きさです。

しかしながら、持ち主はペンダントを選択しました。

ヴィクトリア女王(1819-1901年)1898年、79歳頃

合成技術が確立されていなかった時代、大きな宝石は王侯貴族のステータス・アイテムとして重要でした。

大きくて目立つほど、目的に合致します。

リングとしては最大級の宝石を使った宝物
万華鏡のような天然の特大のオーストラリア産オパール・リング 『万華鏡』
オパール リング
イギリス 1880年頃
SOLD
アンティークジュエリー 大珠天然真珠 オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド アールデコ プラチナ リング 指輪 『神秘の光』
大珠天然真珠リング
イギリス 1920年頃
SOLD
南海を思わせる最高級のブラックオパールのアールデコ・リング アンティークジュエリー『ブラックオパールの海』
ブラックオパール リング
イギリス 1920〜1930年頃
SOLD

ただ、リングの場合はデザインに制約があり、大きな宝石を使う場合、どうしてもデザインで十分に個性を出すことが難しくなります。宝石の美しさに没入できますが、脇石やデザインは名脇役であって、主役級にはなり得ません。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント ペンダントだからこそ、この宝物は魅力ある宝石のみならず、凝ったデザインも堪能することができるのです♪♪

2-3. ヨーロッパ貴族らしいエレガントな雰囲気

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

この宝物はアンティークジュエリーならではと言える、ヨーロッパの王侯貴族らしさ漂うエレガントなデザインも大きな魅力です。

それでいて古めかしさや仰々しさ、ヴィクトリアン・ジュエリーにありがちな重々しさが一切ありません。

現代でも違和感なく楽しめる雰囲気がありながら、しっかりとアンティークジュエリーらしさがあります。

これは、作られた時代ならではの特徴と言えます。

ヨーロッパのデザインの進化
アーツ&
クラフツ
モダンスタイル エドワーディアン アールデコ インターナショナル
デザイン
前期 後期
初期アーツ&クラフツのフラワーステッキ型ダイヤモンド・ブローチ1880年頃 アクアマリン ネックレス アンティークジュエリー1900-1910年頃 エドワーディアンのエレガントなダイヤモンド・プラチナ・ネックレス1910年頃 アールデコ パール&ダイヤモンド ネックレス アンティーク・ジュエリー1920年頃 アールデコ後期のラピスラズリ&ダイヤモンドのスタイリッシュなペンダント1930年頃 アールデコのアーキテクチャのようなロッククリスタル&ダイヤモンドの芸術的ブローチ1930年頃

日本の開国は、西洋美術に急速で大きな変化をもたらしました。

日本美術は世界的に類を見ない、極めて特殊な環境で育まれました。町人文化を中心にした庶民文化なども存在しますが、ラグジュアリーという観点では天皇を中心とした『貴族(宮廷)文化』と、将軍を中心とした『武家文化』の2種類が存在します。

この2つも完全に孤立していたわけではなく、互いに影響を及ぼし合いながら、長い時間をかけて進化してきました。ただ、やはり2つは異なる文化と呼べるほど違いがあります。

ヨーロッパの豪奢な貴族(宮廷)文化と類似性が高いのは、天皇を中心とした雅な貴族(宮廷)文化と言えるでしょう。ヨーロッパの上流階級にとって、日本の武家文化は衝撃的だったはずです。武家文化の特徴と言えば、雅な宮廷文化に対して、シンプルイズベストを極めた研ぎ澄まされた美です。

開国後、この武家文化が特に大きくヨーロッパ美術に影響しました。ミッド・ヴィクトリアン頃まではコテコテのヨーロピアン・デザインという印象だったものが、次第にシンプルイズベストを取り込んで日本美術と融合・昇華し、現代のインターナショナル・スタイルにつながっています。

流行スタイルへのファッションリーダーの影響
【ミッド・ヴィクトリアン】
ファッションリーダー:ヴィクトリア女王
【レイト・ヴィクトリアン】
ファッションリーダー:アレクサンドラ王太子妃
アレクサンドラ王女(1844-1925年)1860年、16歳頃
 【出典】Royal Collection Trust / © Her Majesty Queen Elizabeth II 2020
アレクサンドラ王太子妃(1844-1925年)1880年初期、30代後半

特に20世紀初期の変化は目まぐるしいです。

アンティークの時代の流行スタイルは、ファッションリーダーの個性が強く反映されます。ミッド・ヴィクトリアンまでの上流階級の女性のファッションリーダーは、ふくよかなヴィクトリア女王でした。ふくよかさをカバーするスタイルが流行しました。

しかしながらアルバート王配に先立たれ、女王が喪服姿で引きこもった結果、レイト・ヴィクトリアンのファッションリーダーは社交界でも評判の気品と美貌を誇るアレクサンドラ王太子妃に移りました。日本美術の影響だけでなく、この変化もあって、洗練されたエレガントなスタイルへと流行が変化していきました。

20世紀初期のヨーロッパのデザインの急速な変化
20世紀初頭(エドワーディアン) アールデコ
プラチナ登場直前 プラチナ登場後 前期 後期
ペリドット&ホワイトエナメル ネックレス アンティークジュエリー1900〜1905年頃 エドワーディアンのエレガントなダイヤモンド・プラチナ・ネックレス1910年頃 初期アールデコのガーランドスタイルのトロフィー・ダイヤモンド・ネックレス1920年頃 アールデコ後期のラピスラズリ&ダイヤモンドのスタイリッシュなペンダント1930年頃

このため、エドワーディアンに入る以前から、ハイジュエリーのデザインも洗練されたエレガントなものとなっていました。ただ、20世紀初期は最高級金属がゴールドからプラチナへと変化しました。

ゴールドとプラチナでは雰囲気が全く異なることもあって、もの凄く変化した印象を受けるかもしれません。しかしながら実際にはレイト・ヴィクトリアンからエドワーディアンにかけてはデザインに極端な変化はなく、使用する金属が変わったことで異なる印象を受けるようになったというのが正確です。

そして、エドワーディアンからアールデコ初期にかけても、デザインに極端な変化はありません。プラチナにゴールド・バックだった作りが、オール・プラチナに変化したことで、前者を『エドワーディアン』と呼んでいるというのが実際です。デザイン的には完全にアールデコでも、ゴールド・バックの作りだからエドワーディアンと判断しているものも少なくありません。

その点で、アールデコ初期と後期ではデザインに明確な変化が現れます。『工業デザイン』の概念が様々なモノのデザインの主流となっていきました。量産を意図したコストカット&作りやすさを優先するものだったため、本来はラグジュアリーな1点物のジュエリーと親和性は良くありません。ただ、初期は目新しさもあり、実際に優れたデザインもいくつか生み出されました。最終的には陳腐化し、それが現代ジュエリーにつながっています。

エドワーディアンのスタイリッシュなペンダント
エドワーディアンのカリブレカット・ルビーが美しいリボン&月桂樹のダイヤモンド・ペンダント&ブローチ アンティークジュエリー『永遠の愛』
ダイヤモンド ペンダント&ブローチ
フランス? 1910年頃
¥1,220,000-(税込10%)
エドワーディアン 天然真珠 ネックレス アンティークジュエリー ボタンパール『Quadrangle』-四角形-
天然真珠ネックレス
オーストリア? 1910年頃
SOLD
エドワーディアン ストライプ 天然真珠&ダイヤモンド ペンダント アンティークジュエリー『ストライプ』
天然真珠&ダイヤモンド ペンダント
イギリス 1910年頃
SOLD

エドワーディアンからアールデコ初期にかけて、デザインに大きな変化はないとご説明しました。アールデコの特徴とされる幾何学や直線を意識したデザインは、プラチナにゴールド・バックのエドワーディアン・ジュエリーにも見られます。

エドワーディアンのスタイリッシュなブローチ
エドワーディアンのスタイリッシュな天然真珠&ダイヤモンドのトライアングル・ブローチ天然真珠&ダイヤモンド ブローチ
ヨーロッパ 1910年頃
SOLD
エドワーディアンからアールデコにかけての過渡期の天然真珠のバー・ブローチ天然真珠バー・ブローチ
イギリス 1912年
SOLD
かなり珍しいですが、ここまで先進的なデザインのエドワーディアン・ジュエリーも存在します。
エドワーディアンのエレガントなペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント    エドワーディアン マデイシトリン ペンダント アンティーク・ジュエリー
『麗しのマデイラ』
マデイラ・シトリン ペンダント
イギリス 1910年頃
SOLD

先ほどのような、スタイリッシュなデザインはエドワーディアンとアールデコの双方に見ることができます。しかしながら、これらのように直線を使用せず、ヨーロッパの王侯貴族らしいエレガントさを強く感じるオーソドックスで優美なデザインは、アールデコでは見ることはありません。

ゴールドのみの作り、或いはプラチナ以前のシルバーにゴールド・バックの作りだったとしても、また雰囲気は違っていたはずです。ここまでモダンな雰囲気はなかったでしょう。

このようなデザインのプラチナ・ジュエリーは、エドワーディアンのごく限られた高級品にのみ見ることができます。

第5回パリ万国博覧会のパノラマビュー(1900年)

ヨーロッパは1848年から1849年にかけて『諸国民の春』が発生し、その後、20世紀に向かって大きな近代化の波が押し寄せました。

オーストリア皇帝&ハンガリー国王フランツ・ヨーゼフ1世(1830-1916年)狩猟姿

移り行く時代・・。

ナショナリズムの意識が芽生えつつも、グローバリズムによって、各国の文化的な"独立した個性"が失われていくという面もありました。

そのような中で、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世は自ら『旧時代の最後の君主』と認める古いタイプの君主として存在しました。

新しいもの、いわゆる『文明の利器』である機械にはアレルギーを示し、自動車と電話は決して用いようとしなかったそうです。移動は馬と決めていました。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

新しいものに最優先で飛びついていく人がいる一方で、古から受け継がれてきた"良きもの"の価値を理解し、大切に守る人もいます。

ブラックオパールという、これまでに誰も見たことのない最先端の宝石。その一方で、伝統的なヨーロッパ貴族らしいエレガントなデザイン。それを画期的な新素材プラチナで作り上げた、この時代ならではの宝物。

持ち主の芯の強さ、しなやかさ、伝統を尊敬する心と新しいものへの知的好奇心の強さ。魅力的な個性が如実に伝わってくるではありませんか!♪♪

高位の身分の者ならではの、高いプライドと美意識を持つ女性の宝物だったはずです♪

3. 最高級品ならではの特別な作り

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

膨大な数の中から、HERITAGEらしい最高級品のみを一定数だけ選ぶ買付では、細部の作りまで完璧に理解しながら選ぶ時間はありません。使うのは主に直感です。

このため、撮影してカタログ作成に着手して初めて、想像以上に凄いものだったと論理的に気づくことは本当に多いです。

この宝物も、ブラックオパールがとんでもなく綺麗だから最高級品であるとは認識していましたが、宝石頼りになることなく、それ以外の作りにもこれほどこだわりがあったとはと大変驚きました。

本当に凄いんです!!

3-1. オールドヨーロピアンカットの贅沢な輝き

3-1-1. カットを使い分ける美意識の高いアンティークジュエリー

マーセル・トルコフスキー(1899-1991年) 【参考】ダイヤモンド ブローチ(ブシュロン 1940年代)

成金嗜好の人たちは、本当の美しさは眼中にありません。いかにお値段を抑えつつ、高そうに見せるか。それだけが重要です。また、権威やブランドに極端に弱いです。

その結果、偉い数学者を利用して権威化したブリリアンカットが、成金ジュエリーの主流となりました。王侯貴族の時代が終焉を迎え、成金や成金嗜好の庶民がジュエリーの主要購買層となった現代ジュエリーはブリリアンカットで溢れています。

トルコフスキー考案のアイデアルカット

一見、さも理想の美しいカットのように思えるブリリアンカットですが、上部のクラウンからの輝きは無視し、下部のパビリオンからの反射光しか考慮されていません。

【参考】サファイア・リング(現代)

光が一切抜けないため、ダイヤモンドの魅力の1つであったはずの『透明感』を十分に感じることができません。

また、下部のファセットは1つ1つの面積が小さいため、チラチラとした弱い輝きしか感じられません。

さらに現代は残念なことに、コンピュータや機械を使ったカットが精密過ぎて、ダイヤモンドが無個性です。

心がこもらない量産の工業製品に芸術性を感じ、心から感動できる人は普通はいないと思います。正直、つまらないです。身につけても、心躍ることはありません。
エドワーディアン ダイヤモンド ネックレス アンティーク・ジュエリー『Shining White』
エドワーディアン ダイヤモンド ネックレス
イギリス or オーストリア 1910年頃
SOLD
アンティークジュエリーの素晴らしいミルグレイン

美意識の高い王侯貴族のために作られたアンティークジュエリーを見ていると、同じダイヤモンドでも単純な大きさだけでなく、カットも使い分けて全体の雰囲気をコントロールしていることが分かります。

この宝物は、オールドヨーロピアンカットとローズカットを使い分けています。生き生きとした美しさがあります♪

エドワーディアン マデイシトリン ペンダント アンティーク・ジュエリー

最上質のマデイラ・シトリンを使ったこの宝物の場合、ダイヤモンドは全てローズカットです。

主役のマデイラ・シトリンを惹き立てるための名脇役として、透明感と繊細で清楚な輝きを特徴とするローズカットが選ばれたということです。

高い・安いではなく、いかにして最も美しく魅せるかということを念頭に入れて作られるアンティークジュエリーは、石の種類だけでなくカットの選び方も入念に計算されているのです。

没頭できるほど美しいのには、理由があるのです!!♪

何も考えずに作って、これほど美しいものはできません!!!

3-1-2. 全てがオールドヨーロピアンカットの華やかな作り

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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小さなペンダントですが、何と27石ものダイヤモンドがセットされています!
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

バチカンの下とその下、ブラックオパールの上下2石と左右、そして一番下のダイヤモンドが比較的大きめで、この9石がデザイン上のポイントとなっています。

これらがオールドヨーロピアンカットなのは、予想しやすいです。

実物大 最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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但し注意しておきたいのは、これら9粒の大きめのダイヤモンドですら、通常のオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドより小さめなことです。
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

十分に拡大していますが、これでも分かりにくいですね。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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プラチナ製のミルグレインやグレインワークの強い輝きも重なって、静止画ではちょっと状況が分かりにくいでしょうか。

バチカンの下の下にセットされた、大きめのダイヤモンドの両脇の小さなダイヤモンドと、ブラックオパール上部にセットされた2石の大きめのダイヤモンドの上にある小さなダイヤモンドも、オールドヨーロピアンカットです。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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他のダイヤモンドも同様です。

脇石の小さなダイヤモンドも全てオールドヨーロピアンカットです。あまりにも小さいので、肉眼でははっきり分かりません。光学顕微鏡で確認して、ようやくオールドヨーロピアンカットと断定できるレベルです。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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形状を視認できないのであればカットは何でも良いのでは言えば、そうではありません。ダイヤモンドはその煌めきが最大の魅力です。形が見えなくても、閃光によってはっきりとその存在を示すことができる宝石です。

ローズカットとオールドヨーロピアンカットでは、放たれる輝きが大きく異なります。オールドヨーロピアンカットは、何と言っても輝きに華やかさがあります。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

華やかな場で使うために作られたということでしょう。

また、このブラックオパールはそのような場で映える美しさがあります♪♪

3-1-3. シングルカットは特別なこだわりの証

エドワーディアンのエレガントなペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント    エドワーディアン マデイシトリン ペンダント アンティーク・ジュエリー
『麗しのマデイラ』
マデイラ・シトリン ペンダント
イギリス 1910年頃
SOLD

ローズカットならではの繊細で鋭い輝きによって惹き立ててもらうのがベストな、深みのあるマデイラシトリンなどと異なり、このブラックオパールは華やかな存在感と大胆な変化があります。オールドヨーロピアンカットのゴージャスな輝きでないと、脇役として力不足なのです。

ただ、このブラックオパールは遊色パターンが微小という、稀有な特徴があります。パターンが大きければ、大きなダイヤモンドの輝きでバランスが取れますが、このブラックオパールだと大きなダイヤモンドではチグハグな印象となってしまいます。

実物大 最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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この宝物は通常はあり得ない、とても小さなダイヤモンドまでオールドヨーロピアンカットです。ダイヤモンドのカットが近代化され、ダイヤモンドソウや電動研磨器が使えるようになった時代とは言っても、これはかなり特別なことです。
エメラルドのリボン型クラスプが可愛い天然真珠ネックレス

『エメラルド・リボン』
天然真珠 ネックレス
イギリス 1920年頃
天然真珠、 エメラルド、オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンド、ホワイトゴールド
SOLD

王侯貴族のハイジュエリーの中でもトップクラスの高級品として作られたものに、稀にそのような小さな小さなオールドヨーロピアンカットのダイヤモンドを見ることがあります。

『エメラルド・リボン』は大きくありませんが、最高品質の天然真珠で作られた最高級の天然真珠ネックレスでした。リボン・デザインのクラスプの作りも、最高級品に相応しいものでした♪♪

エメラルド&オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドの可愛いリボン型クラスプ アンティーク

割れやすくて加工が難しいエメラルドの見事なセッティングに目が行きますが、実はダイヤモンドも特別なものでした。小さなクラスプに、8石ものダイヤモンドがセットされています。だからこそ1石ずつは小さいですが、オールドヨーロピアンカットが使用されています。

これくらい小さいと、通常のオールドヨーロピアンカットは無理です。このため、簡素化された『シングルカット』と呼ばれるタイプのオールドヨーロピアンカットとなっています。

特別サイズであり、しかも通常のカットとは異なるということは、既製のルースを使うのではなく、この宝物を作るためだけにカットから特別オーダーしているということです。

カリナンに第一刀を振り下ろすアイザック・ジョセフ・アッシャー(1908年)

硬い宝石であるダイヤモンドの場合、カットのためだけの専門の職人がいました。

機械やコンピュータを使う現代だと、どの道具を使うかがカットの良し悪しを決め、誰がカットするかは殆ど関係なかったりします。

しかしながら、道具が未発達だった古い時代ほど職人の技術が物を言いました。

特別な職人にしか不可能な特別なカットが存在しましたし、腕によって出来不出来もありました。

カットが主役の1つであるダイヤモンド・ジュエリー
プリンスセス・カット ブリオレット・カット
ダイヤモンド&エメラルド リング アンティーク・ジュエリー『The Beginning』
ダイヤモンド&エメラルド リング
イギリス 1910年頃
SOLD
ブリオレットカット・ダイヤモンドと天然真珠がきらびやかなアールデコのブローチ『雫の芸術』
ダイヤモンド&天然真珠 ブローチ
フランス 1920年頃
SOLD
マーキーズカット
マーキーズカット・ダイヤモンドのアールデコのバーブローチ

ダイヤモンド バーブローチ
ヨーロッパ 1930年頃
SOLD

それ故に、ダイヤモンドのカットそのものを主役とした、王侯貴族のための特別なジュエリーが存在するのです。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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画像の中央にある通常のオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドと見比べると、その他のより小さなダイヤモンドはシングルカットになっていることがお分かりいただけるでしょうか。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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シングルカットであっても煌めきはダイナミックですし、美しいファイアも放たれます。ローズカットではこのような迫力ある煌めきとはなりませんし、ファイアもこのような出方はしません。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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ブラックオパールのカラフルで繊細な遊色に、小さなオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドならではの煌めきと虹色のファイアは最高に相性が良いです!♪

オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドとシングルカットのシンチレーションとファイア
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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これはカットの完成度の高さだけでなく、ダイヤモンドそのものも小さくても最上質の石を使っているからこそです。透明度が高く、黄ばみのない素晴らしいダイヤモンドです♪

【一点物】アンティークの最高級品 【量産品】現代の高級品
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント 【参考】ブシュロン ダイヤモンド・ネックレス ¥26,136,000-(税込)2023.2.2現在
【引用】BOUCHERON / セルパンボエム メダリオン ネックレス ©BOUCHERON

『石そのものの質』と『カットの質』によって、どれだけダイヤモンドの美しさが違うのかは見比べれば一目瞭然です。右のブシュロンのネックレスは2,600万円もするんですけどね・・。260万円でも高いですが、2,600万円代です。

現代のブリリアンカット・ダイヤモンドは白っちゃけた印象と、チラチラとした弱い輝きしか感じることができません。ダイヤモンドの本来のポテンシャルを全く惹き出せておらず、それ故に現代はダイヤモンドの真の魅力を知る人が少ないのです。2,600万円も出してこの程度のジュエリーしか手に入らないならば、デザインの良いアクセサリーで良いやと思っちゃいますよね。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

さて。この通り、この宝物を具現化するには特別な職人の高度な技術と労力が必要です。

この無比の美しさのためならば、惜しみなくお金をかけられる財力と美意識と持つ女性。

そのような女性がこの宝物の持ち主だったということを、この特別なカットのダイヤモンドが証明しているのです。

主役のブラックオパールのみならず、全てが愛おしくなる宝物ですね♪♪

3-2. 完成度の高いシャープなフレームの作り

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

この宝物はこれだけのブラックオパールを使っているにも関わらず、トップクラスの職人だからこそ具現化できたと言える見事なデザインが素晴らしいです!♪

流れるような優美な曲線がアールヌーヴォーの時代らしいですが、一般的なフランスのアールヌーヴォーに見られるような退廃的な雰囲気はなく、明るい未来を想像させるようなポジティブで勢いのある雰囲気が特徴です♪

これは極端にニョロニョロした曲線ではなく、シュッとしたスタイリッシュな曲線で表現されているからです。

しかしながら、それを具現化するのは大変です。

Genが表現するような「完成度の高いキリッとした良い作り」は、高度な技術を持つ職人が丹念に手作業で作るしかありません。

3-2-1. ハンドメイドの鍛造ジュエリーならではのシャープさ

【一点物の鋳造品】
アンティークの最高級品
【量産の鋳造品】
現代の高級品
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント 【参考】カルティエ ダイヤモンド・ブローチ ¥3,628,800-(税込)【引用】Cartier HP / PLUIE DE CARTIER BROOCH

現代は高級ブランドのジュエリーでも、全世界かつ通販でも販売していることからご想像いただける通り、高くても量産品です。

量産には、溶かした金属を型で冷やし固める鋳造が適しています。安く早く、技術なく誰でも同じものを作ることが可能です。ただ、型離れの観点から、細部が細かい作りには適しません。また鋳造の金属は、叩いて鍛える鍛造の金属より弱く、ジュエリーとしての耐久性を実現するためには、より多くの分量を必要とします。

これらの原因により、鋳造で作る現代ジュエリーはボテッとしたデザインと、ヌルッとした作りになってしまいます。「アンティークと違ってゴールドやプラチナをたっぷり使った贅沢な作り。」と宣伝する人もいるかもしれませんが、それは単純に言い訳です。ただ、宝石は大きければ大きいほど良いとしか考えない成金嗜好の人は納得し、喜んでお金を出します。

質やデザインはどうでも良い人は現代ジュエリーが向いていますし、お金がかかったとしても質やデザインにこだわった美意識の高い王侯貴族のジュエリーが欲しい方はアンティークのハイジュエリーでしか好みのジュエリーは見つけられないでしょう。

3-2-2. 高度な技術あってこそのシャープな作り

【参考】アンティークの庶民向けの安物ジュエリー(1900年頃)

この通り、アンティークジュエリーであっても庶民用の量産の安物は存在します。むしろ、圧倒的に少数派の上流階級のためのハイジュエリーよりも、無数にいた大衆向けの安物の方が市場では多く、大半を占めます。本物のハイジュエリーに限っては、HERITAGEのような専門店でしかご紹介できない理由です。

アンティークでも量産のための鋳造品はありますし、鍛造で作ってあっても、安物を専門とした職人は高度な技術を持ちませんし、手間をかけて丁寧に作る時間も与えてもらえませんから、ハイジュエリーのような美しい仕上がりにはなっていません。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

ここまでのシャープで完成度の高い作りは、ハイジュエリーでも稀に見るものです。いかに、ハイジュエリーの中でもトップクラスの最高級品であるかを物語っています。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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上下で交差したような、躍動感あるデザインです。

フレームには大きなダイヤモンド、小さなダイヤモンドが順番にセットされ、さらに細い部分はグレインワークが施され、もっと細い箇所はシャープな溝が彫られ、丹念に磨いて仕上げられています。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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どんな道具を使ったのだろうと思うほど、微細な作りです。道具自体も、この宝物のためだけに特別に作ったことは間違いありません。

溝は、ここまで深いものは見た記憶がないほど、かなり深く彫ってあります。だからこそ奥行きがあり、印象的な美しさを感じるのです。ため息が出るほど美しく、見事です。

3-2-3. 360度の立体造形

この宝物は正面から見た時の、左右上下の躍動感あふれるデザインも素晴らしいですが、奥行方向への立体デザインにも非常に気を遣ってあります。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

大きめのダイヤモンドはより印象的になるよう、見る者に対する手前方向、つまり一段と高い位置に配置されています。
流れるような曲線デザイン部分はより躍動感が出るよう、フレームは平坦ではなく、高さに緩やかなグラデーションが付いています。わざとらしくないため、パッと見るだけでは気づかないほどです。ただ、"印象"には明らかに影響を与えています。

ハイエンドのジュエリーならではの計算され尽くした視覚効果と、それを実現した第一級の職人の技術に脱帽です!!♪

3-3. 高さのある印象的な神技のグレインワーク

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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フレームの縁に鏨(タガネ)を打ち、鑢(ヤスリ)で半球状に磨いて整える『ミルグレイン』の他に、『グレインワーク』という技法があります。粒金を蝋付するのと異なり、フレームを削り出して粒状に整える技法なので、脱落しませんし、蝋付で見られるような蝋材の変色などもありません。

そのやり方から、かなり高度な技術と手間を要することはご想像いただけると思います。ただ、その割には地味に感じる方もいらっしゃるかもしれません。

ダイヤモンドなどに比べると、確かに地味です。費用対効果の観点から、真っ先に失われた技法の1つとも言えます。アンティークのハイジュエリーには当たり前のように見られる技法ですが、この宝物は特筆すべき完成度の高さです。

3-3-1. グレインワークの重要性

まず、グレインワークがいかに美しさのために重要なのか、ある場合とない場合を比較すると一目瞭然です。

【有り】
アンティークの最高級品
【無し】
現代の高級量産ジュエリー
ジャポニズムの笹竹のアールデコ・ダイヤモンド&天然真珠ペンダント アンティークジュエリー『清流』
アールデコ ジャポニズム ペンダント
イギリス 1920年頃
SOLD
【参考】ブシュロン ダイヤモンド・ネックレス ¥7,920,000-(税込)2023.2.2現在
【引用】BOUCHERON / プリュム ドゥ パオン ペンダント ラージ ©BOUCHERON

アンティークのハイジュエリーばかり見ていると、ジュエリーが美しいのは当たり前のように感じてしまいます。しかしながら、右の792万円の高級ブランド・ジュエリーをご覧ください。ブランド名や値段を言わなければ、チャチなアクセサリーくらいにしか思わない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ノッペリとした印象なので、チャチなアクセサリーのようにしか見えないのです。なぜノッペリして見えるかと言えば、ミルがないのも一因ですが、一番大きな原因は、先端まで相似形の均一なダイヤモンドで埋め尽くされているからです。

同じデザイン画を渡された場合、アンティークのハイジュエリーならば1つ1つのフレームの先端をより細くシャープにし、その中にはグレインワークをサイズ・グラデーションにして配置します。想像していただくと、グッと印象的になることがお分かりいただけると思います。

現代のデザイナーもその理論は理解しているかもしれませんが、量産のためにどうしても鋳造で作る必要があり、鋳造ではアンティークのハイジュエリーのような粒が際立った微細なグレインワークは再現不可能なのです。

3-3-2. グレインワークの難易度から見えてくる最高級品の証

Genも私もプライドにかけて、最高品質の宝物しかご紹介しません。だから、アンティークジュエリーならばどれでも作りが良いと勘違いされる方もいらっしゃるかもしれません。

私たちは買付けで様々な品質のアンティークジュエリーを見ます。その殆どは、ご紹介できないようなものです。

例えばこれくらいのものだと、他店ならば高級品としてご紹介すると思います。

実際、アンティークジュエリーの中では高級な部類に入りますが、私たちの基準は全く満たしません。

ミルグレインやグレインワークの作りを見れば、一目瞭然です。

【参考】HERITAGEでは扱わないレベルのエドワーディアン・ブローチ
【参考】HERITAGEでは扱わないレベルのエドワーディアン・ブローチ

拡大すると、潰れたようにグチャっとした気持ち悪い作りであることが分かります。この程度の高級品であっても、拡大には耐えられません。HERITAGEが拡大画像を掲載する一方で、他店はそれができない理由の1つです。

アンティークジュエリーの素晴らしいミルグレインHERITAGE品質の宝物の作り 【参考】HERITAGEの基準に満たない作り

HERITAGE品質の宝物だと、グレインワークはまるで粒金を蝋付したかのように際立っています。

基準に満たない安物だと、粒立たずにグチャッとくっついたようになっています。まあそれでもあるだけマシで、庶民用の安物だとグレインワークすら施すことはありません。

そういう観点ではグレインワークがあるというだけでもある程度の高級品とは言えますが、職人の腕によって仕上がりに大きな差が出るのもこの技法です。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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うまく行けば、最高の名脇役として宝物全体の美しさを何倍にもしてくれる、超重要な技法なのです♪

3-3-3. このグレインワークの特別さ

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

最高級品のグレインワークは見慣れていますが、なぜかそんな私の心を捉えて離さない魅力があります。

不思議に感じていましたが、斜めから見ると理由が分かりました!!

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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いかがでしょう?

ミルグレインがフレームの高さよりも、かなり飛び出していることがお分かりいただけるでしょうか。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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もう、ビックリです!!!

あまりに凄すぎて、「何だ、これ!」と笑うしかありません。よくやったものだと、呆気に取られて笑うしかないです。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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このような凄いグレインワークであれば、Genも私も気づく自信があります。しかしながら見た記憶がありません。ここまでのグレインワークが施されたものはこれまでになく、過去最高と言える神技のグレインワークです!!

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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高性能のカメラでも限界に近いくらい、拡大しています。グレインワークはきちんとサイズがグラデーションになっており、表面が綺麗な半球状に磨き上げられていることが分かります。

実際の大きさを考えると、人間技とは到底思えません!!
この時代にも凄い職人がいたものですね。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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これだけ高さがある、粒立った作りだからこそ、正面から見た時にも肉眼だととても印象的に見えるわけです!♪
また、高さがあるからこそ、プラチナならではの白く硬質な輝きもダイナミックに変化して美しいのです。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
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当然のようにミルグレインも最高品質の素晴らしいものですし、ダイヤモンドを留めた爪も半球状に見事に磨き上げられています。爪は正直どこにあるのか分からないくらい、美しく調和して輝きの1つとなっています。

作りも最高の宝物なのです!!♪

3-4. 無二の最高級の宝石ならではの優美な爪

普通はあまり気に留めないかもしれませんが、宝石の価値は、それをセットしている爪に如実に現れます。

3連ピアス
アンティークの最高級品 現代のアクセサリー
ダイヤモンド 3連ピアス アンティーク・ジュエリー 『Bright things』
アールデコ ダイヤモンド 3連ピアス
イギリス 1930年頃
SOLD
合成ブラックオパールセラミックピアス
K10ホワイトゴールド
¥23,800-(2023年1月現在)
【引用】Kyocera odolly / ブラックオパールセラミックピアス ©2015 京セラジュエリー通販ショップodolly-オードリー

稀少価値の高い宝石はその稀少性故に、お金を出したからといって確実に手に入るものではありません。「大金持ちなんだし、無くしたら新しいものを買えば?」というのは現代の量産ジュエリーが高級ジュエリーと思っている人の発想です。本物の価値ある宝石は、絶対に落としたらダメです。だから、いくつもの爪で厳重に固定するのが通常です。

但し、爪留めは手間や技術を必要とします。それは即ち『コスト』でもあります。

無価値同然の石の場合、無価値同然の石の価値よりも爪を増やす方がコストが高く付くようです。人工的に合成できる石ならば、落としても簡単に同じものが準備できます。落としたら新品をご提供できますということで、適当な爪でセッティングするだけの作りとなるわけです。

3-4-1. 現代ジュエリーの爪

【参考】合成ブラックオパールリング
合成ブラックオパール&プラチナ・リング ¥370,000-(2023年1月現在)
【引用】Kyocera odolly / ブラックオパールリング ©2015 京セラジュエリー通販ショップodolly-オードリー
合成ブラックオパール&プラチナ・リング ¥330,000-(2023年1月現在)
【引用】Kyocera odolly / ブラックオパールリング ©2015 京セラジュエリー通販ショップodolly-オードリー

30万円台の新品のリングが高いかどうかは人に依りますが、少なくともサラリーマンをやっていた感覚からすれば、頑張って買う高価なものです。でも、お値段分の価値はないからこそ、このようなチャチな爪となるのです。

但し、落ちやすくてクレームがたくさん来るのは大企業的にはNGでしょう。だからこそ、なるべく落ちないように爪が太く長いです。その結果ビジュアル的には爪が目立つデザインとなっていますが、購買層は『ブラックオパール』というスペックしか気にせず、爪が目立つかどうかに意識がいかない人たちというわけです。

HERITAGEのお客様は「現代ジュエリーの目立つ爪が苦手。」ということでジュエリーを買ったことが無かったという方も多いですが、気にならない人には本当に気にならないようです。興味深いですね。

【参考】現代のブラックオパール・ジュエリー

合成石ではなく、天然のブラックオパールでも現代ジュエリーはこんな程度です。

【参考】現代のブラックオパール・リング

4点で爪留めすれば簡単に落ちることはないはずですが、どうしても1つ1つの爪がゴツくて目立ちます。

宝石への尊敬の念は感じられませんし、なるべく爪を目立たなくして宝石を惹き立てようというような美意識も伝わってきません。

エメラルド・リング(ティファニー 現代)¥1,617,000-(2020.5現在)合成や処理については記載なし
【引用】TIFFANY & CO / Tiffany Soleste Ring ©T&CO

高級ブランドの100万円を超えるリングのメインストーンすら、こんなチャチな留め方です。

アクセサリーとの違いが分からないデザインと作りにガッカリすると共に、このような扱いしかしないからこそ宝石が高そうに見えないのだろうと思います。

実際、使用している宝石に価値がない証なのかもしれません・・。

3-4-2. アンティークのハイジュエリーの爪

「取り敢えず石がセットされていて落ちなければ良かろう」の、美意識のない現代ジュエリーと異なり、上流階級のために作られたアンティークジュエリーは美意識の行き届いたデザインと作りになっています。

爪については、2つの方向性があります。とにかく目立たなくする場合と、デザイン要素の一部にしてしまう場合です。

3-4-2-1. とにかく気配を消した爪
ダブルハート リング(エンゲージメント・リング) アンティーク・ジュエリー『愛の誓い』
ダブルハート リング(エンゲージメント・リング)
イギリス 1870年頃
SOLD
天然エメラルドのアンティーク・リング『エメラルドの深淵』
珠玉のエメラルド&ダイヤモンド リング
イギリス 1880年頃
¥3,700,000-(税込10%)

拡大画像なので、爪がどのようになっているか分かりますが、これらは肉眼だと認識できないほど爪に存在感がありません。「留まっているのかしら?!」、「どうやって留まってるの?!」と心配になってよくよく見ると、たくさんの数の小さな爪で留めていることが分かります。

外周をあらゆる方向から固定するので安全ですし、爪の数が多いので1つ1つは小さくすることができ、その結果として存在感を極限まで消すことができます。

宝石の美しさに没頭できますね♪♪
そして、大事な宝石を落とす心配も不要です。特にリングの場合、長く使っていると摩耗したり爪が緩んでくることがございますので、時々チェックして必要なメンテナンスは行わなければなりません。メンテナンスフリーではありませんが、大事に使えば何世代にも渡って楽しめます。アフターメンテナンスはお気軽にご相談ください!プライドを持つ高級店の務めですから!♪

3-4-2-2. デザイン要素の1つにした爪
アールデコのカボション・エメラルドの高級リングアールデコ エメラルド・リング
フランス 1920〜1930年頃
SOLD
天然真珠 バーブローチ アンティークジュエリー『キラキラ・クロス』
天然真珠 バーブローチ
イギリス 1880年頃
SOLD

知覚できないレベルまで気配を無くすことも、アンティークの時代ならば可能でした。しかしながら、いっそのことデザイン要素の一部にしてしまった宝物も稀にあります。

その方法は様々で、素晴らしいアイデアと高度な技術によって具現化されています。よほど美意識が高い人物の特別オーダーであったことは間違いありませんし、相当な技術も必要ですから、上流階級の中でも特に莫大な財力を持つ高貴な人物だったことが伺えます。

アメジストの最高級ガスパイプチェーン・ゴールド・ブレスレット『アメジストの楽園』
ヘキサゴンカット・アメジスト ゴールド・ブレスレット
イギリス 1880〜1890年頃
SOLD

この宝物も、超特別なアメジストであることは一目で分かりますが、ここまでは必要ないだろうと思うくらい、たくさんの爪で留めています。

アメジストの最高級ガスパイプチェーン・ゴールド・ブレスレット

単純な"安全にセッティングする"という域を超えて、もはや爪はデザイン要素の1つとなっているのです。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

今回の宝物もさすが、最上級のブラックオパールを使った王侯貴族のための最高級ジュエリーと言えるように、爪がデザイン要素の一部となった作りになっています。

全く目立たないので分かりにくいですが、ブラックオパールを留めた爪は12本もあります!

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

成金ジュエリーのように主張が激しくなく、宝石がそこまで大きく感じません。

しかしながら実際にはそれなりに大きさがあるので、12本もの爪を使っているのです。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

1つ1つの爪は目立たぬよう、ギリギリでブラックオパールの縁にかかっている作りです。このような爪が4本だけだとちょっと心配ですが、12本でグルリと外周を固定しているのでグラツキはありません。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

爪は二股に見えるよう、中央に溝が彫ってあります。このデザインが無ければ、もっと爪は無骨に見えたはずです。二股のデザインによって、爪が24本あるようにも見えます。より丁寧に留めてあるように感じられ、特別な高級感へとつながっています。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント

また二股デザインの爪から放たれるプラチナの輝きは、ダイヤモンドやグレインワーク、ミルグレインの輝きとも心地よく調和しています。

二股デザインは、爪から放たれる輝きの大きさもコントロールしているのです。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
←↑等倍

爪の土台もシャープなフォルムが美しく、見事に磨き上げられており、完璧な作りです。

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
←↑等倍

爪すらも見事な名脇役となっており、奇跡のようなブラックオパールの美しさに没入できます。最高の宝石主体のジュエリーはこうあるべきという、理想を実現したような宝物です!♪♪

裏側

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダントの裏側 裏側も、スッキリとした完璧な作りです♪
ライトニングリッジ産ブラックオパールの母岩

プラチナが画期的な新素材としてジュエリーの一般市場に出始めたばかりの、特に高価な時代だったにも関わらず、非常に贅沢にプラチナを使用しています。まさにブラックオパールの最高峰と言える、素晴らしい宝物です♪

着用イメージ

最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
最高級ライトニングリッジ産ブラックオパールのエドワーディアン・ペンダント
←↑等倍

撮影に使用している現代のプラチナ・チェーンは参考商品です。

大きさがあるにも関わらず、遊色パターンが小さく上品な雰囲気なので、嫌味なく様々なコーディネートやシーンに馴染むと思います♪♪