No.00358 L'eau |
清らかな水のような透き通る美しさと |
とっても楽しい画像が撮れました!!♪ |
フランスの印象派の画家クロード・モネは連作『睡蓮』を約300点も描いており、晩年に描いたのは全て『睡蓮』でした。まさにライフワークです。生涯追い求め続けたテーマ、「移ろいゆくもの」。それを表現するのに、『水(フランス語:L'eau)』はこれ以外にないと言えるモチーフでした。循環する生命の源でもある水は、刻々と変化する様々な景色を映し出します。朝、昼、夜。晴れ、曇り、雨、雪。アメンボの波紋、風のさざ波、水の揺らぎ。周囲の四季折々の風景。多様な雲の景色。太陽。月。輝く星々。2度と同じ景色にならないからこそ、生涯描き続けました。そのような「移ろいゆく儚く美しき水の景色」を想わせる、特別なオパールです。 |
高級感があって着け映えするロング・ネックレスです♪ |
脇石の小さなオパールとダイヤモンドまで夢のような美しさ!!♪ |
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『L'eau』 |
透明度の高さと厚みによって、これまでに類を見ないほど劇的に表情が変化するオパールのロング・ネックレスです。脇石のオパールまで個性豊かで、見ていて飽きません。小さなオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドも透明度が高い最高品質です。作りも最高級の宝石に相応しく、直線&曲線ナイフエッジには神技が詰め込まれています。一見するとシンプルに見えますが、粒金をポイントにしたデザインは時代的に珍しく、アールデコにはない凝ったデザインも魅力的です。目の細かいハンドメイド・チェーンも輝きが美しく、いかにもエドワーディアン頃のヨーロッパ貴族らしい、エレガントでスタイリッシュで華やかな宝物です♪ |
この宝物のポイント
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1. 時代背景を感じる軽やかで美しいデザイン
スタイリッシュさとエレガントな雰囲気を兼ね備えた、現代のファッションにも合わせやすいロング・ネックレスです♪ |
リングにできなくもないサイズですが、デザインの余地が殆どありません。また、リングだと石が主張しすぎて成金っぽさも漂います。 ネックレスならば上品さを保ちつつ、華やかさも出せるサイズです。装飾的なデザインもネックレスならば可能ですし、揺れることで遊色の変化も強調できますから、このオパールにはネックレスがベストな選択です!♪ |
1-1. 重厚さが抜け軽やかなデザインに移った19世紀末
1-1-1. オーストラリア鉱山の発見がもたらしたオパールの流行
古代ローマの博物学者プリニウス(23-79年) | 古代ローマの叡智が詰まった『博物誌』は、ヨーロッパ上流階級の必須かつ最重要の教養の1つでした。 それを著した古代ローマの博物学者プリニウスも言及している通り、オパールは遊色という唯一無二の魅力によって、古代から特別視された宝石です。 |
ハンガリーの位置 ©google map | オーストラリアでオパールが発見される以前は、長きに渡ってチェコスロバキアやハンガリーがオパールの供給地でした。 |
ハンガリアン・オパール | |
スロバキア産の白と青のオパール "SLOVAKIAN OPAL 12" ©Slovakiaopal(22 November 2015, 13:00:31)/Adapted/CC BY 4.0 |
【参考】ハンガリー産オパールのブレスレット(19世紀) |
ハンガリーやスロバキア産のハンガリアン・オパールは、もともと上質な石でも遊色が強くありません。上質なオーストラリア産オパールを見慣れていると、ハンガリアン・オパールはいまいちに感じられるかもしれません。 しかしながら、オーストラリア産の極上オパールなど誰も見たことがなかった時代は、遊色が出ると言うだけで特別な宝石でした。唯一無二の魅力を持つ宝石として、良い石は特に高い稀少価値がありました。ヴィクトリア女王の夫、アルバート王配がオパール好きとして知られており、主に知的な人が好む宝石だったようです。 |
オーストラリア産オパール | |
オーストラリア産プレシャスオパール | 今回の宝物 |
その点で、オーストラリアで新発見されたオパールは衝撃でした。上質なハンガリアン・オパールでも見たことがない極上の遊色に、多くの上流階級が魅了される一方、長年の採掘地であったハンガリーの人々は「そんなに煌めく石は見たことがない!本物ではない!!」と、石が偽物であると主張したほどでした。 |
オパールのティアラを着けたヴィクトリア女王(1819-1901年) | 君主であるヴィクトリア女王にとって、植民地政策は大英帝国のさらなる繁栄と国民の幸せのために、極めて重要でした。 最愛の夫アルバートがオパールが好きだったため、ヴィクトリア女王も元々オパールが大好きでした。 植民地オーストラリアで1870年頃から宝石品質のオパール鉱山が発見され始め、新しい宝石市場として確立して活性化するために、女王自らが絶賛プロモーションすることにしました。 |
アルバート王配がオパールでデザインしたオリジナルのオリエンタル・サークレット・ティアラを着けたヴィクトリア女王 | 国益になりますし、先立たれた最愛の夫との想い出もあって熱が入ったようです。 上流階級のファッションリーダーとなる、王族などの高位貴族に積極的にオパール・ジュエリーを贈るなど、力を入れてプロモーションしました。 |
ハンガリー産 | オーストラリア産 |
【参考】ハンガリー産オパールのサーベル | 『神秘なる宇宙』 オパール リング イギリス 1880〜1900年頃 SOLD |
その結果、オーストラリア産オパールのジュエリーが19世紀後期から流行しました。一方で品質の劣るハンガリアン・オパールは、質の良いオーストラリア産に対して競争について行くことができず、20世紀初頭にはオパール鉱山の操業が停止されました。枯渇したわけではありませんが、採算が合わなければ採掘はできません。オパールで生活していたハンガリーの地元の人々は困窮した一方で、オーストラリアには人々を潤おす新たな産業が成立したのでした。 |
1-1-2. オパール・ジュエリーのデザインの変遷
レイト・ヴィクトリアン | エドワーディアン | アールデコ |
オパール ペンダント&ブローチ イギリス 1880〜1900年頃 SOLD |
『シャンパーニュ』 雫型オパール ネックレス イギリス 1910年頃 SOLD |
アールデコ オパール ペンダント ヨーロッパ 1920年頃 SOLD |
1870年代以降、オーストラリアからもたらされるオパールによって様々なジュエリーが制作されました。年代としてはレイト・ヴィクトリアン、エドワーディアン、アールデコにかけてです。世界中を移動できる交通手段の発達によって文化のダイナミックな相互作用が発生し、デザインが無国籍のインターナショナル・デザインに向かって急速に変化したタイミングです。それ故に、オパール・ジュエリーは時代ごとにデザインが多様です。 |
1-1-3. ヴィクトリアン・デザインからの脱却
今回のロング・ネックレスは、プラチナが使用され始める1905年頃よりも前に作られたものです。 典型的なヴィクトリアン・デザインとは異なっており、まさに過渡期ならではのデザインです。 |
レイト・ヴィクトリアンの高級オパール・ジュエリー
Genも私も、突出した魅力のあるセンスの良いジュエリーしか選ばないため、典型的なコテコテ・デザインというものはお取り扱いがないのですが、レイト・ヴィクトリアンはオーソドックスなヨーロピアン・デザインがまだまだ残る時代です。 |
『華麗なるパピヨン』 宝石の蝶々 ブローチ イギリス 1890年頃 SOLD |
バタフライ・ブローチ フランス 19世紀後期 SOLD |
クレッセント ブローチ イギリス 1880〜1890年頃 SOLD |
象徴主義の時代と重なっており、蝶々のジュエリーにも使用されています。当時スピリチュアルが大流行し、蝶は魂を象徴しました。遊色の美しいオパールは、まさにそのようなジュエリーの宝石として相応しいと思われたのでしょう。クレッセントのデザインも、ヴィクトリアンの定番です。 |
母から贈られたヴィクトリア女王のピアス(1850〜1860年頃) 【出典】Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2024 |
ちなみにこれはヴィクトリア女王のピアスで、ミッド・ヴィクトリアンの典型的なデザインです。白い石はオパールです。母ヴィクトリアから贈られたもので、年代的にオーストラリアではなくヨーロッパ産のオパールなので遊色が弱いようです。 女王がファッションリーダーだったミッド・ヴィクトリアンのデザインは、仰々しさや威圧感が強い傾向にあります。世界の中心、大英帝国の君主としてヴィクトリア女王が女性でありながら無理してでも虚勢を張る必要があり、それがデザインにも反映された結果です。Genも私も好みではないため、ミッド・ヴィクトリアンのジュエリーは極端にお取り扱いが少ないです(笑) |
オパール ペンダント&ブローチ イギリス 1880〜1900年頃 SOLD |
オパール ペンダント イギリス 1880年頃 SOLD |
オパール ブローチ イギリス 1890年頃 SOLD |
1861年に最愛のアルバート王配が亡くなり、ヴィクトリア女王は2度と華やかなファッションをしなくなりました。年齢もあって、レイト・ヴィクトリアンの女性のファッションリーダーはアレクサンドラ王太子妃に移りました。王妃や王太子妃は配偶者として支える立場なので、女性らしい華やかさや、存在感のある高貴な佇まいは必須です。しかし変に主張したりはしません。そのような変化があるのがレイト・ヴィクトリアンのデザインです。 ナイフエッジを駆使した透かしデザインや、曲線による動的な表現が軽やかさを感じさせます。「目立つが勝ち!」を主張するような重厚さは抜けつつも、日本美術の感覚とは異なる、オーソドックスなヨーロピアン・ラグジュアリーの雰囲気が十分に感じられる時代です。 |
その後、最終的にはシンプル・イズ・ベストのアールデコへとデザインが収束していきます。その過渡期と言える時代に作られたこの宝物は、典型的なヴィクトリアン・デザインとは一線を画す軽やかさがありながらも、一切の無駄を削ぎ落として遊び心すらも感じられなくなった、アールデコ後期の簡素すぎるデザインとも異なります。 画期的な新素材としてプラチナがジュエリーの一般市場に出始めると、最高級ジュエリーは白い金属一色になり、それに伴ってゴールドならではの細工も見られなくなってしまいます。ゴールドの曲線ナイフエッジや粒金細工が、シンプル・イズ・ベストとも異なる魅力を醸し出します。まさに過渡期のジュエリーならではの魅力が詰まった宝物なのです♪ |
1-2. スタイリッシュとエレガントを兼ね備えた縦長デザイン
この宝物はチェーンが61.3cmあり、胸あたりにペンダントが収まる長さです。アンティークジュエリーでは、通常は見ないほど長いです。さらにペンダントも縦長デザインで、オパールも楕円なので長さが強調されたデザインと言えます。これはファッションの変化にも関連しています。 |
【ミッド・ヴィクトリアン】 ファッションリーダー:ヴィクトリア女王 |
【レイト・ヴィクトリアン】 ファッションリーダー:アレクサンドラ王太子妃 |
アレクサンドラ王女(1844-1925年)1860年、16歳頃 【出典】Royal Collection Trust / © Her Majesty Queen Elizabeth II 2020 | アレクサンドラ王太子妃(1844-1925年)1880年初期、30代後半 |
ヴィクトリア女王がファッションリーダーの時代は、女王らしい迫力と威厳を演出するという目的に加えて、肥満体質を気にしていた女王を細く見せるためのボリュームあるファッションが流行しました。 しかしながら次にファッションリーダーとなる、長男の妻アレクサンドラ王太子妃は年子で6人産んだとは思えぬほどスタイル抜群でした。さらにヨーロッパの王族らしい気品を持つ、美しい女性として社交界でも評判でした。自身の個性を惹き立てるファッションが基本なので、結果としてアレクサンドラ妃に似合う、細身で気品あるファッションが主流となっていきました。時代背景もあってヴィクトリア女王が大衆のお手本として頑張った一方で、アレクサンドラ妃は憧れの貴族という感じです。 |
ファッションリーダー/社交界の華だった上流階級の女性 | ||
オーストリア皇后エリーザベト(1837-1898年) | 公爵夫人 大山捨松(1860-1919年)鹿鳴館時代 | ノルウェー王妃モード(1869-1938年)37歳頃 |
ヴィクトリア女王の次の世代のファッションリーダーの貴婦人たちは、とにかくスタイル抜群な美人が多かったようです。ヨーロッパ宮廷一と言われた美貌を持つオーストリア皇后エリーザベトは、身長172cmでウエスト51cm、体重は生涯43〜47kgだったそうです。日本初の女子の海外留学生であり、鹿鳴館の華として近代日本の社交界を牽引した公爵夫人・大山捨松も約176cmの長身だったそうです。アレクサンドラ妃の娘で、ノルウェー王妃となったモード妃も母親譲りの抜群のスタイルです。ヴィクトリア女王の孫にあたりますが、肥満とは真逆ですね。 |
イギリスの風刺雑誌 The Comic Almanack による、巨大なクリノリンのパロディー(1850年) |
風刺画で揶揄されるほど横方向にボリュームがあったミッド・ヴィクトリアンは、主張の激しいデザインのジュエリーが映えました。 |
縦長のフォルムに合う縦長のジュエリー | |
アレクサンドラ王妃(1844-1925年)1904年、60歳頃 | 『雪珠真珠』 バロック天然真珠 ロングチェーン ヨーロッパ 1890-1900年頃 SOLD |
一方で細長いシルエットには品のある上質で小ぶりなジュエリーや、長めのネックレスがよく合います。必然的に、レイト・ヴィクトリアン以降のジュエリー・デザインはそのような傾向となりました。 |
【ミッド・ヴィクトリアン】 クリノリンを使ったボリュームあるシルエット |
【レイト・ヴィクトリアン】 透け感のある素材による身体に沿うシルエット |
ヴィクトリア女王とアルバート王配(1861年)共に42歳頃 | シルクとオーガンジー素材のドレス姿の女性(19世紀後期) |
ドレスの生地も変化しました。クリノリンでボリュームを出す場合、ハリのある厚い生地が適します。重さのあるブローチも余裕です。 レイト・ヴィクトリアンにかけては、オーガンジーなど透け感のある軽やかな素材が流行しました。身体や動きに寄り添い、美しいシルエットを実現します。薄い素材だと、重さのあるブローチは付けられません。ジュエリーの主流が、ブローチからペンダントやネックレスなどに移行した理由です。 |
『ダイヤモンド・ダスト』 ギロッシュエナメル ペンダント・ウォッチ フランス(パリ) 1910年頃 ¥15,000,000-(税込10%) |
【極めて珍しい最も初期の腕時計】 フランス 1890年頃 時計の大きさ 直径2,3cm SOLD |
腕時計も既に存在した時代に、社交界で最高級ジュエリーとしてロング・ネックレスの時計が流行したのも、そのようなファッションの流行と関係がありました。 |
レイト・ヴィクトリアン〜エドワーディアン頃のファッション (1890〜1910年頃) |
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当時流行した縦長のフォルムに、透け感のあるエレガントなドレス。透明度が高く、美しい遊色を呈する縦長オパールのロング・ネックレスは、まさにそのような時代に相応しい最先端のジュエリーだったのです♪♪ |
1-3. 宝石を生かすシンプル・ラグジュアリーなデザイン
この宝物は、デザインのセンスが非常に優れています。 オパールという宝石の魅力をよく分かっているなと感じます。 |
1-3-1. 宝石を生かすための最小限のデザイン
宝石の特徴を活かしたアーティスティックな宝物
『華麗なるパピヨン』 宝石の蝶々 ブローチ イギリス 1890年頃 SOLD |
バタフライ・ブローチ フランス 19世紀後期 SOLD |
『天女の舞』 オパール 扇ブローチ イギリス 1900〜1910年頃 SOLD |
ある程度までの大きさだと、石の特徴に合わせたデザインを施すことで、アーティスティックな作品にするのも非常に魅力があります。宝石が主役というより、デザイン全体が主役と言えます。もちろん、そのための美しい宝石があってこそ成立する総合芸術です。 |
主役にすべき大きさのある宝石
『麗しのマデイラ』 マデイラシトリン ペンダント イギリス 1910年頃 SOLD |
エドワーディアン オパール ペンダント イギリス? 1905〜1914年頃 SOLD |
『MIRACLE』 ブラックオパール ペンダント イギリス 1905-1915年 ¥10,000,000-(税込10%) |
上質でしかも一定以上の大きさがある宝石の場合、宝石そのものを見ているだけで満足できるくらいの芸術的な魅力を備えます。そのような場合、ゴチャゴチャと装飾を施すのは蛇足であり、返って宝石そのものの魅力を感じにくくすらさせます。だからこそ、本当に美的感覚がある人の宝石主体のジュエリーは、装飾は必要最小限の上質なものです。その僅かな中に、驚くほど持ち主の教養やセンス、個性が詰め込められます。 |
フランスのクラウン・ジュエリー | |
フランス王妃マリー・アメリ・ド・ブルボン=シシレ(1782-1866年)1830年、48歳頃 | フランス王妃マリー・アメリのサファイアのパリュール(王妃の在位:1830-1848年) "Parure della regina maria amelia, parigi, 1800-15 poi 1850-75 ca" ©Sailko(16 June 2016, 16:34:00)/Adapted/CC BY 3.0 |
こういう個性がない、ただのドヤ目的のジュエリーは違います(笑) 「王族のジュエリーって、案外つまらなくて面白くない。」と、Genもコメントしています。プライベートで使用するものは違うと想像しますが、巨大な宝石にさらに装飾しまくった目立つジュエリーは、貴族としての仕事用です。着用感など二の次で制作されていますから、重くて付け心地も悪いです。英国王室の王冠やティアラも、とても長時間は着用できぬほど重いのは有名な話です。本物の宝石や貴金属と違い、見た目は似ていてもイミテーションだと軽いので、本物を知らぬ成金は想像できないのです。 この類のジュエリーは個性や教養やセンスではなく、万人に向けて財力と権力を誇示するためのものなのでしょうがないです。知識も教養もなくても凄そうに感じてもらえる、分かりやすいジュエリーということです。社交界の内部で、成金を含む庶民向けのこのようなジュエリーの評価が高いわけがありません(笑)ただ、一般人が目にできる"王族のジュエリー"はこのようなものがメインなため、ジュエリーの真髄を勘違いされている方が多いのが残念です。 |
【参考】現代のスイスブルー・トパーズ・ペンダント | ある程度の大きさがある宝石は、そのものを生かす方向でデザインされます。 もちろん現代ジュエリーのように、宝石の価値だけで売るようなことはありません。ただ宝石をセットしたただけの、ろくにデザインのないジュエリーが現代は多いです。 |
【参考】ティファニー ソレスト アクアマリン ダイヤモンド ペンダント ¥1,001,000-(2019.12現在) →¥1,474,000-(2024.6現在) 【引用】TIFFANY & CO / ティファニー ソレスト アクアマリン ダイヤモンド ペンダント |
高級とされる有名ブランドであっても同じです。 このようなデザインだとどこで買っても同じですし、イミテーションとの見た目の違いも分かりません。 円安でえげつなく値上がりしていましたが、5年以上同じものを売り続けるには、流行や個性のないデザインでなければなりません。 ボロ儲けするための大量生産品は、どうしてもこのようなデザインにしかならないのです。楽して高く売るために、製品そのものではなくブランドイメージを高めるための広告宣伝費や店舗、チヤホヤ要員の人件費などにお金がかけられます。 チヤホヤされたい人の場合、ホストクラブだと罪悪感があっても、高級ブランド・ジュエリー商法だとモノとして一応は形が残るため、罪悪感が残りにくい利点があります。支払い価格はチヤホヤ代であって、モノの価値ではないので、モノの価値は低いです。 |
『道を照らす黄金提灯』 ジャパネスク クラバット・ピン フランス 1900〜1910年頃 ¥420,000-(税込10%) |
納品先が決まっている1点物のオーダージュエリーは、広告宣伝費はかかりません。代金はすべてジュエリーを制作するために充てられます。 また、最大数に売るための無難でボヤけたデザインは不要で、依頼者の好みに完璧に応えます。 このような強い個性が感じられる特別なデザインは、大多数の凡人が選べるものではありません。複雑なデザインを具現化するための高度な技術や高級な素材にも相応のお金がかかりますから、対価を払えたのも特別な身分の人だけです。 だから、このような芸術性の高いジュエリーは、特別オーダーされたアンティークジュエリーでしかあり得ないのです。 |
オパール ネックレス イギリス 1880〜1890年頃 SOLD |
『虹色のアート』 オパール バーブローチ イギリス 1900〜1910年頃 SOLD |
ある程度の大きさがある上質なオパールの場合は特に、宝石そのものが"自然が描き出すアート"と言えます。だから、上流階級のオパール・ジュエリーは装飾が必要最低限の宝物も多いです。"簡素"とは絶対的に異なります。名脇役として最大限に主役の宝石を惹き立て、個性を際立たせるデザインです。 |
1-3-2. 過渡期ならではのラグジュエリー・デザイン
デザインの構成要素による雰囲気の違い
曲線 | 直線×曲線 | 直線/幾何学 |
宿り木 ブローチ&ペンダント フランス 1890年頃 SOLD |
天然真珠&ダイヤモンド ブローチ ヨーロッパ 1910年頃 SOLD |
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モダンスタイルは男性的な直線や幾何学のスタイリッシュさと、女性的な曲線による優美さを兼ね備えたデザインが特徴です。曲線で構成されるアール・ヌーヴォーとも、直線と幾何学がメインのアール・デコ系のデザインとも異なる、不思議な雰囲気があります。 |
私は様式としてはモダンスタイルが最も好みですが、1900年前後の短い期間にしか見ることができません。 マッキントッシュや、マッキントッシュに触発されたセセッションのヨーゼフ・ホフマンなども、最終的にはコストカットという時代の波に流れ、望むような理想の制作活動はできなくなりました。 シンプルに見えて高度な技術と手間がかかるため、デザインとしては優れていても、ごく僅かな期間しか制作できなかったのだろうと思います。だから、このように直線と曲線が融合した美しいジュエリーは、あまり出逢えないのです。 |
1870年代後半のアングロジャパニーズ・スタイルの作品
『英国貴族の憧れ』 天然真珠&トルコ石 リング バーミンガム 1876〜1877年 SOLD |
ウィリアム・ワットのためのサイドボード(エドワード・ウィリアム・ゴドウィン 1876-1877年) "Godwinsideboard" ©VAwebteam at English Wikipedia/Adapted/CC BY-SA 3.0 | 『Théière』 シルバー&黒檀のティーポット (クリストファー・ドレッサー 1879年) |
政治・外交・商業政策の結果、日本美術の影響によってデザインが最も早く進化したのはイギリスでした。『アングロ・ジャパニーズ・スタイル』というカテゴリーです。1870年代には、武家文化のシンプル・イズ・ベストに基づくデザインが現れています。1930年代の後期アールデコや、それ以降のモダニズム、インターナショナル・デザインを思わせるデザインですが、それより50年以上も時代を先取りしています。 |
『英国貴族の憧れ』 天然真珠&トルコ石 リング バーミンガム 1876〜1877年 SOLD |
『虹色のアート』 オパール バーブローチ イギリス 1900〜1910年頃 SOLD |
左の宝物は年代を特定できる刻印のお陰で、1870年代という制作年代が特定できました。右の宝物はプラチナが使用されておらず、しかしながらアールデコを思わせるデザインなので、1900〜1910年頃と推定しましたが、もっと前に作られた可能性もあります。 |
ヨーロッパのデザインの変化
従来の王侯貴族が力を失い、新興成金がますます力をつけた結果、ゆとりある優美なデザインのジュエリーが作られなくなっていったのです。 この宝物の優しくエレガントな雰囲気は、宝石の力だけではありません。 技術と手間をかけて実現させた、このデザインにあるのです。 |
2. 湖畔のような美しい雰囲気を持つオパール
2-1. 存在感のあるメインストーン
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メインのオパールは1.3×0.9cmと大きさがあり、十分な面積の中にたくさんの景色が現れます。 ジュエリーとして、上品ながらも存在感のあるサイズです♪ |
2-2. 個性ある雰囲気と色彩豊かな遊色
このオパールは透明度が高く、その上で十分な厚みがあるため、奥深くから湧き上がるような遊色がとても綺麗です。遊色の密度が高い石はパワフルな美しさがあるのですが、このような透明度の高いオパールは、表情の変化がより豊かだと感じます♪ 現代はこのような上質なオパールが枯渇しており、ダブレットやトリプレットと呼ばれるアセンブルド・オパールが跋扈しています。 |
【参考】合成オパールのアクセサリー
管理された環境下で作る合成オパールの場合、均一すぎる品質が不自然さを感じさせ、美しさを感じられない結果となっています。人工的すぎて、誰が見ても天然ではないと分かります。 |
【参考】ダブレット・オパール製品
しかし、現代の『天然のオパール』と言われる製品でも、全然綺麗に見えなかったりします。遊色はあるものの変化に乏しく、薄っぺらくて安っぽく見える謎のオパールです。『天然のオパール』と謳っているので、素直に受け取って「オパールってあまり綺麗じゃない宝石なんだな。」と思われる方もいそうです。 これは薄っぺらくカットした天然オパールに、別の石やプラスチックを接着剤で裏打ちして遊色を強調した『ダブレット』と呼ばれる製品です。透明感がありませんし、オパールに厚みがないため、遊色はあっても変化に乏しいのです。 |
【参考】トリプレット・オパール製品
薄っぺらさをカバーすべく、さらに正面側に透明なガラスやプラスチックを接着剤で貼った『トリプレット』という製品すら存在します。 斜めから見たらヘンテコで違和感を感じますし、もちろん遊色の変化も乏しいです。 |
接着剤で貼り合わせるので、すぐに劣化が始まります。接着剤が剥離してできた隙間から、水や汗などが浸入することで内側から曇り、最終的には完全に剥がれます。また、樹脂やガラスはモース硬度が低いため、すぐに表面が摩耗して曇った外観になります。もはや宝石とは到底呼ぶことのできない代物ですが、業者の言い分では"天然の宝石"を使った製品です(笑) |
厚みのある上質なオパールは裏打ちがなくてもしっかり遊色が出ますし、変化に富みます。誤魔化しのない裏側は、価値ある天然オパールの証です。左の画像は、裏側が透けるように中空で撮影しています。石のカットがドーム型で、しかも透明度が高いので、レンズ効果で写り込みが発生しています。2次元の画像だと厚みや透明感は伝わりにくいのですが、なんとなく透明度をご想像いただけるでしょうか。 |
このような面白い景色が見られるのも、裏打ちで誤魔化す必要のない上質なオパールだからこそです。影からご想像いただける通り、これは左斜めからライトを当てています。 |
真上に近い角度から当てると、より鮮明に黒背景と白背景の層がはっきりします。静止画だと大きな違いに感じませんが、実物で変化の様子を見ると大きな印象の変化として感じられます。それにしても赤が出やすい石です。通常のオパールはこんな風にはならないので、ここまで赤い画像が撮れるとは予想しませんでした! |
全ての石に、十分な厚みがあります。背景色は同じまま、明るさを変えるだけでこれだけ色相や景色が変化します。厚みに加えて、透明度の高さも兼ね備えているからです。 |
そして透明度が高いからこそ、同じ明るさでも背景色次第で全体の雰囲気は大きく変化します。眺めているだけでうっとりします♪ |
透き通る美しさに、あらゆる色彩と景色を映し出す夢のようなのオパールです。 |
Genはオパールをよく、「宇宙をイメージする♪」と言います。私もそれに賛成ですが、このオパールはちょっと特別で、宇宙と言うより湖畔を連想させます。空の景色まで映し出す、変化に富んだ水辺のような印象です。それほどダイナミックに変化します。 どのオパールもそれぞれに個性があり、様々な表情を魅せてくれます。それが美しく調和します。一瞬一瞬の変化を見ていると、先ほどまでと同じ石とはとても思えぬほどです! |
少し暗い方が、遊色はより一層強く感じられます。透明度が高く、奥行きがある中に色彩が浮かび上がるので、実物はどぎつい印象にはなりません。 フランスのクロード・モネは、自邸に造った美しい池を眺めながら、後半生をかけて『睡蓮』の連作を描きました。朝の景色、真昼の景色、夕暮れなど様々な景色があり、水面に映り込む色彩も多様です。湖畔の景色ほど、変化に富む美しい景色はありません。刻々と変化する美しい景色はいつまで眺めていても飽きることがなく、同じ景色にはなりません。まさにそのような美しさが、このオパールにはあります。 |
脇石のオパールもそれぞれ個性があり、全ての石にあらゆる色彩が浮かび上がります。 オパールは『虹を閉じ込めた石』とも称されます。まさにそうだと感じます♪ |
全てのオパールが赤く輝く瞬間もあります。通常はスタジオの照明と専用カメラで撮影していますが、曇り空のある一瞬もハッとする美しさだったので、思わずスマホカメラで撮影しました。オパールは赤い光が出にくいと聞きますが、条件が揃うとどの石も赤がはっきり出ます。 透明度の高さも感じていただけるでしょうか。本当に表情豊かです!♪ |
さっきまでロイヤルブルーも浮かぶ青空の景色を魅せていたかと思えば、一瞬で夕暮れのような赤い景色になったりします。ここまで振れ幅の広いオパールは見たことがありません!!♪ |
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メインストーン以外の小さな石も極上オパールで揃えられた、魅惑の宝物です!♪ |
2-3. 爪の数から分かるオパールの価値
←↑等倍 |
この宝物はどの宝石も、尋常ではない数の爪でセットされています。小さな石も8つの爪で固定されています。ある程度の大きさがあれば、爪8つはたまに見かけますが、このサイズでこの数はハイジュエリーでも普通ではありません! |
2-3-1. 価値の高い大きなオパールの爪留
オパール ペンダント イギリス 1880年頃 SOLD |
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大きさのあるオパールの場合、繊細な爪を数多く使って固定するのが主流でした。1つ1つの爪は目立たず、それでいて確実に固定します。美しさと耐久性を兼ね備えた、高度な技術と手間を要するセッティングです。 |
オパール ペンダント イギリス? 1905〜1914年頃 SOLD |
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当時のオパールの評価の高さが伝わってきますね♪ |
現代のオパールの石留
【参考】現代の天然オパール・ジュエリー | |
職人さん曰く、3点で留まっていれば大丈夫なのだそうです。現代ジュエリーの場合、大きさがある石でも4点留めが基本です。なるべく落ちないようにするためには爪の数を増やせば良いだけなのに、ゴツく見えても爪の数は増やさず、爪を大きくするだけです。美しさではなくコスト重視の結果です。現代ジュエリー業界はジュエリーの本質を間違えています。 |
【参考】現代の合成オパール・アクセサリー | |
現代ジュエリーはアクセサリーと作りが変わりません。外観に違いがなく、その結果、大半の人がジュエリーに興味を持たなくなりました。アンティークジュエリーを知ればまた別だと思いますが、現代ジュエリーしか知らなければ、オシャレをするならアクセサリーでいいやと思うのが当然の流れです。 |
【参考】アセンブルド(トリプレット)オパールのリング | |
作りを見れば、その石の価値は一目瞭然なのです。 |
【参考】乾燥でヒビ割れしたオパール・ペンダント | このようなペンダントでも、4つの爪しか使わないようです。 ちなみにこれは本来、宝石として扱うべきではないクラスの低品質オパールです。戦後、ろくでもない業者が低品質のオパールを安さを謳って販売し、安さだけで飛びついた顧客によって、オパールは割れやすいというイメージがつきました。 通常のオパールは、乾燥に耐えられたものだけを使います。乾燥に10年以上かける業者もあるそうで、当然ながらそれだけコストもかかります。そこまでしたオパールは頑丈で、電子レンジで3分加熱してもびくともしないそうです。 |
そのような観点で、アンティークジュエリーをお取り扱いするのは安心感があります。 この宝物も作られてから120年以上は経過しています。 120年以上もこの最高のコンディションを保っており、しばらくしたら乾燥してヒビが割れていたなんてことは考えられません。 そもそも1960年代にひび割れで問題になったのは、水分の多いメキシコ産オパールです。オーストラリア産オパールの水分含有量が約6%前後に対し、メキシコ産オパールは約12%も水分を含むと言われています。 |
【参考】乾燥でヒビ割れしたオパール | 安いとは言っても、業者がボロ儲けできる程度の値段はしたはずです。 買った人はショックだったでしょうし、オパールのみならずジュエリー業界全体に対しても悪いイメージを持ってしまったでしょう。 |
この宝物のメインのオパールは、ここまで多くなくてもと思えるほどたくさんの爪でセットしています。上質なオパールは、どの石も唯一無二の美しさがあります。 唯一無二の美しい宝石への想い。価値ある宝石を扱うことができる、職人としてのプライド。使う人に対しての真心。この爪からは、持ち主や職人の真摯な心が伝わってきます。作りにこそ、全ての価値が現れるのです。 |
2-3-2. 小さなオパールの特別な爪留
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特筆すべきは、小さな石にも爪が8つも使用されていることです。 |
ダイヤモンド ピアス イギリス 1880年頃 SOLD |
HERITAGEでは高級品の中でも特別なものばかりを集めているので、爪8つで留めた宝石もかなり多いですが、本来は爪6つもあれば十分すぎるほどです。 1つの爪が緩んでも、大事な宝石がすぐに落ちることはありません。 きちんとチェックし、石がグラついてきたら落ちる前に締め直しをすることで、紛失は防止できます。 |
【参考】ロシア皇帝ニコライ2世の買上品 デマントイド・ガーネット&ダイヤモンド バングル(ファベルジェ 1896年頃) |
これは極端に大きな石ではありませんが、デマントイドガーネットはこれくらいのサイズだと大きい方で、極めて稀少価値が高かったので、ダイヤモンドも含めて爪は8つずつでセットされています。ロシア皇帝ニコライ2世と皇后アレクサンドラによって買い上げられた、ファベルジェ商会のバングルです。ロシア帝国の皇帝クオリティとしてご参照ください。 ちなみに2015年のオークションでは3万スイスフランで落札されており、1CHF=110円として計算した場合は約330万円です。最近、再び市場に出てきて144,000ドルで売れたようです。1$=156円で計算すると、およそ2,246万円になります。もともと欧米で特別視されるロシアン・ジュエリーはプレミア価格が年々上がっていましたが、コロナの影響による投機マネーがアンティークジュエリー全体を高騰させており、めちゃくちゃな価格が成立したようです。こういう虚飾の世界には近づきたくないものです(笑) |
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今回の宝物は、ダイヤモンドを含めて小さなオパールも8つの爪でセットしています。他の宝物のメインストーンとサイズを比較すれば、いかに特別なことかお分かりいただけると思います。ここまで小さな宝石に8つも爪を使った宝物は、これまでに見たことがありません!! |
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つまり、メインストーン以外の小さなオパールも特別という証です。それぞれに透明感や遊色の現れ方が独特なので、どれを眺めても楽しいです。魅惑の遊色を秘めています。名脇役の小さなダイヤモンドも、透明度や煌めきが抜群です。どれも、8つの爪に相応しい宝石です!♪ |
3. モダンな雰囲気にアンティークらしい細工が詰まった作り
洗練された雰囲気に加えて、なんとなくシンプルに見えるデザインなので、アンティークジュエリーならではの細工が詰まっているようには感じられないかも知れません。しかし、通常の高級品でも見ないような神技こそが、この美しいデザインを実現しています。 |
3-1. 直線ナイフエッジと高さを出した極上ダイヤモンド
3-1-1. 『線』で美しさを表現するデザイン
日本美術の影響を受ける以前のヨーロッパは、隙間なく装飾で埋め尽くすのがラグジュアリーという意識でした。特にミッド・ヴィクトリアンは、とにかく面積を大きくして主張する傾向が強くありました。しかしながら日本美術、特に武家文化ならではのシンプル・イズ・ベストの思想が入ってくると、『線』や『空間(間・ま)』を使った美の表現が試行錯誤されるようになりました。 |
フラットライン | ナイフエッジ | |
『社交界の花』 シトリン ブローチ&ペンダント イギリス 1870年頃 SOLD |
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『草花のメロディ』 サファイア&天然真珠 ネックレス イギリス 1900年頃 SOLD |
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そのような中で、"線の美"としてハイジュエリーに応用されたのがフラットラインとナイフエッジです。どちらも『線』による表現ですが、方向性が真逆なのが面白いです。 フラットラインは『線』そのものが主役です。凝ったデザインが主役のジュエリーに好まれます。一方、存在感を極限まで消すナイフエッジは繊細なデザインに好まれる傾向がありますが、特に注目したいのは、宝石の美しさを際立たせる名脇役としての能力です。 |
今回の宝物は、極上の宝石が主役です。 宝石を最大限に惹き立てるためのデザインと作りです。 『直線』の気配を極限まで消すことで、宝石のみに意識が行くよう計算されたデザインです。 本当に才能あるデザイナーは、見る者の『意識』をも計算して設計するのです。 |
3-1-2. 極細の直線ナイフエッジ
真横から見ると、直線ナイフエッジは相応の厚みがあることが分かります。18ctよりも硬さが出せる15ctゴールドの作りなのと、ブローチと違って着脱時に力がかからないペンダントなので、極限まで細さを追求できます。 |
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見事な出来栄えです。これ以上は無理と思えるほど、限界まで細い直線ナイフエッジです! さりげない部分に至るまでの完成度の高さが、いかにも最高級品らしいです♪ |
3-1-3. 高さを出して際立たせたダイヤモンド
直線ナイフエッジ上に、オールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドが2石セットされています。かなり高さを出しています。相対的に直線ナイフエッジが奥側になるため、より一層ダイヤモンドが際立ちます。 |
天然真珠を丸ごと使って高さを出した宝物
『Samurai Art』 モダンスタイル アクアマリン&天然真珠 ネックレス イギリス 1900〜1910年頃 SOLD |
同時代、天然真珠を使った宝物でも同様の発想でデザインされた宝物がたまにあります。 |
『PURE LOVE』 ピンクトルマリン&天然真珠 ネックレス イギリス 1900年頃 SOLD |
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天然真珠を丸ごと使った、贅沢な作りです。天然真珠の大きさの分だけ、高さが出ます。 真珠セメントで固定できる、天然真珠のジュエリーならではのデザインです。 |
フレームで高さを出した高度な細工物
アクアマリン&天然真珠ネックレス イギリス 1900年頃 SOLD |
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宝石そのものではなく、フレームを駆使して高さを出した宝物もあります。 上質な宝石が際立ち、非常に魅力的なので、もっとこの細工を駆使した宝物はあってもよさそうなものですが、滅多に見る機会はありません。この宝物が出てきたのも9年も前です。 見た目より、遥かに高度な技術と手間を要する証なのでしょう。 |
このタイプで、初めてHERITAGEでご紹介したのはピアスです。 ハーフパールが点線のようで、まるで宙に浮いているかのようでした。初めて見た時は、本当に衝撃的でした。 それもそのはずで、横から見ると驚くほど高さを出していることが分かります。 間違いなく、この視覚効果を狙って設計し作られています。 |
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『清楚な花』 アクアマリン&シードパール ピアス イギリス 1900年頃 SOLD |
【参考】20世紀初期のペリドット・ジュエリー | |||
最高級品 | 安物(庶民には高級品) | ||
『ゴールド・オーガンジー』 ペリドット ペンダント イギリス 1900年頃 ¥1,000,000-(税込10%) |
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そもそもナイフエッジすら、よほど美意識が高い人のための高級品でしか見ることはありません。安物は、よく見たら表裏の太さが変わらないただの棒です。設計されたフラットラインのような、気の利いた視覚効果もありません。物理的には僅かな違いですが、印象は大きく変わります。価値の分かる人だけが、喜んで職人の高度な技術にお金を出します。分かる人にとっては全然違いますよね。高級品ほど、現代の市場では割安だと感じます。 |
そこへさらに高さを出して宝石をセットするのは、よほどの腕を持つ職人でなければ不可能です。だから滅多に見る機会はありませんが、その印象的な美しさはオーダー主にとってお金をかける価値があるものでした。 |
この宝物も、かなり高さを出して宝石をセットしています。覆輪留めではなく爪留なので、爪の長さがあります。横からも光を取り込みやすく、宝石の透明感やより明るい輝きを出せるメリットもありますが、技術的には極めて高度です。これもあって、小さなダイヤモンドに至るまで、通常より多い8つの爪を使用したのでしょう。見事な神技です!♪ |
3-1-4. 小さくても極上のダイヤモンド
ダイヤモンドの選び方にも、抜群のセンスと強いこだわりが伺えます。オパールに比べると主張が強い宝石だからこそ、同じ大きさではなく脇役らしい大きさのダイヤモンドが選ばれています。控えめなローズカットではなくオールドヨーロピアンカットが選ばれており、華やかな印象も添えてくれます。 |
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ダイヤモンドは同じ大きさではなく、下の石が若干小さいです。視覚的に流れが発生し、全体の雰囲気に躍動感が生まれます♪ 小さいながらも厚みがある上質なダイヤモンドです。透明感とダイナミックなシンチレーション、色とりどりのファイアのコラボレーションが見事です!♪ |
特別なオパールとダイヤモンドのコラボレーションは、夢のような美しさです。表情豊かな魔法のオパールに対して、これくらい魅力あるダイヤモンドでなければ名脇役にはなれませんね!♪ |
3-2. 見たことのない特殊な曲線ナイフエッジ
この宝物のデザインは、非常に個性があります。 スタイリッシュな雰囲気なのでアールデコも彷彿とさせますが、これがもしアールデコ・デザインだったならば、曲線の装飾や粒金細工は施されません。 ご想像いただくと、この2種の装飾はなくてもデザインとしては十分にオシャレに成立することがお分かりいただけると思います。 そのようなネックレスならば、割とアールデコ・ジュエリーにありそうな感じですよね。 |
この曲線ナイフエッジの装飾こそが、デザインの要です。 単なるスタイリッシュなジュエリーに終わらせず、エレガントさも併せ持つ、唯一無二の『雰囲気』を持つジュエリーたらしめているのが、この曲線の装飾なのです!! |
3-2-1. 通常の曲線ナイフエッジ
実は今回の宝物の曲線ナイフエッジは特殊です。曲線のナイフエッジ自体は、デザイン性の高いハイジュエリーではたまに見る機会があります。 |
『ゴールド・オーガンジー』 ペリドット&エナメル ペンダント イギリス 1900年頃 ¥1,000,000-(税込10%) |
『永遠の愛』 エドワーディアン ダイヤモンド ペンダント&ブローチ フランス? 1910年頃 ¥1,220,000-(税込10%) |
どちらも月桂樹の茎がナイフエッジで表現されています。左の宝物は、上部のナイフエッジが緩やかな曲線でデザインされています。 |
曲線ナイフエッジも直線ナイフエッジ同様、シャープな鋭角二等辺三角形で整えられています。斜めから見ても、スッキリとした雰囲気です。 |
3-2-2. 膨らませた曲線ナイフエッジ
今回の宝物は、膨らませた曲線ナイフエッジになっています。 だから、通常のシャープなナイフエッジとは雰囲気が異なるのです。 |
『天女の舞』 オパール 扇ブローチ イギリス 1900〜1910年頃 SOLD |
これまでに1点だけ、同様の発想で作られた宝物をご紹介しています。 扇の宝物は、上部の外周フレームはフラットなゴールドの板で制作されています。一方で下部は鋳造により、膨らんだ曲線ナイフエッジ型で作られています。 |
上部(切り立ったフラットな側面) | 下部(膨らんだ凸状の側面) |
これは黄金の輝き方に影響します。フラットな面と、凸状の面では輝きが異なり、これが印象の違いとして大きく効いてきます。 |
シャープな曲線ナイフエッジの場合、側面は限りなく気配を消すためにフラットに整えています。輝いて主張する設計ではありません。 |
膨らませるナイフエッジは、様々な角度から見た時に、豊かに表情が変化します。 |
今回の宝物は鋳造ではなく、叩いて鍛えた鍛造の板を丹念に削って、膨らんだ曲線ナイフエッジに整えています。実物を見ると、そのふっくら感を感じる取ることができますし、実際に輝き方にも効いています。 |
正面から見ると『線』のシャープさが際立ちますが、少しでも斜めから見ると、ふっくらとした女性らしい美しさが感じられます。 |
正面から見た場合でも、なんとなくシャープなナイフエッジとは異なる雰囲気を感じる方もいらっしゃると思います。完全には気配を消しておらず、曲線のエレガントなフォルムをさりげなく強調します。 |
斜めから見るほどに黄金光沢の豊かな表情の変化によって、曲線ナイフエッジの主張は強くなります。ダイナミックな変化はオパールにも引けをとりません。天然宝石と職人技のコラボレーションが実に素晴らしいです!!♪ |
この角度だと、シャープに整えた直線ナイフエッジと、膨らんだ曲線ナイフエッジの違いが分かりやすいです。 |
膨らんだナイフエッジでなければ、このような輝きにはなりません。鋳造で作られた『天女の舞』のブローチはありましたが、鍛造でこのフォルムのナイフエッジは初めてです! 鑢(ヤスリ)で丹念に磨きながら、職人の勘でこのフォルムに整えています。 |
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美的感覚と高度な技術を兼ね備えなければ不可能で、まさに作者でしか不可能な神技と言えます。 特に驚異的なのは、下部のクルンと渦を巻いたナイフエッジです。 実際の大きさを考えると驚くばかりです。通常のナイフエッジならまだ分かりますが、この複雑な形状を一体どんなヤスリで実現させたのでしょう。 道具から一から作った特別製であることは、疑いようもありません!! |
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美しいオパールについ目が行きますが、神技の曲線ナイフエッジもぜひご注目いただきたいです。この宝物は、大自然と人間がコラボレーションして創り上げた傑作なのです。人の手がなければ決して生み出されることはありません!!!♪ |
3-3. センス抜群の粒金装飾
この宝物は、大きさが異なる6つの粒金がデザインされています。 粒金の使い方が独特で、単なるオマケ的な装飾ではなく、強いこだわりを以ってデザインされているのは明らかです。 |
3-3-1. 様々な粒金装飾
『La Dame pourpre』 アーリー・ヴィクトリアン アメジスト 一文字リング イギリス 1840〜1850年頃 ¥950,000-(税込10%) |
粒金は私が好きな細工の1つです。大きさや配置の仕方だけで、驚くほど雰囲気が変化します。 それぞれの宝物に高度な技術のみならず、個性的なアイデアが詰まっており、知的にも非常に面白い細工です。 粒金が好きすぎて、このような宝物をオーダーした人もいるほどです♪ |
3-3-1-1. 同じサイズの粒金を使ったハイジュエリー
小さな粒金 | 大きな粒金 | 巨大な球金 |
『薔薇』 ピエトラドュラ ブローチ イタリア 1860年頃 SOLD |
ピエトラドュラ バングル イタリア 1860年頃 HERITAGEコレクション |
【参考】エトラスカン・スタイル ゴールド・ブレスレット(ロバート・フィリップス 1870年頃) |
同じサイズの粒金を規則正しく配置すると、格調高い雰囲気が生まれます。小さな粒金だと、名脇役に相応しい控えめな美しさがあります。少し大きなサイズになると、威厳が現れます。しかしながら大きければ大きいほど威厳が増えるわけでもなく、一定サイズを超えるとおバカっぽい成金感が強く出てくるのが面白い所です。 |
3-3-1-2. 異なるサイズの粒金を使ったハイジュエリー
『古代アンフォラ』 ターコイズ&ゴールド ピアス イギリス 1860-1870年頃 SOLD |
『La Dame pourpre』 アーリー・ヴィクトリアン アメジスト 一文字リング イギリス 1840〜1850年頃 ¥950,000-(税込10%) |
シェルカメオ ブローチ&ペンダント イギリス 1830年頃 SOLD |
サイズが異なる粒金を使うと、デザインに動的な流れが生じます。黄金ならではの格調高い雰囲気もありつつ、規則正しい静的なデザインの時よりも軽やかさが感じられるようになります。 |
特にこの宝物は、粒金のセンスが抜群です。 中央のパーツのサイズ・グラデーションの粒金もダイナミックな躍動感を感じますが、アンフォラ上下の粒金や、撚り線の終点の粒金の配置が見事です。 異なる粒金を、センス良く配置しています。 考古学スタイル・ジュエリーの高級品だからこそ、粒金へのこだわりも別格なのです。 |
3-3-1-3. 粒金装飾によるプラスアルファ
ジョージアンの美意識の高い宝物にも、好んで粒金が施されたものが見られます。この宝物は粒金がなくてもデザイン的には成立しますが、あるのとないので雰囲気が全く異なります。 |
ジョージアン ピンクトパーズ&クリソライト ブローチ イギリス 1800年頃 SOLD |
この宝物も同様です。華やかな宝石や、細工として分かりやすい彫金に目が行きがちですが、粒金へのこだわりは並々ならぬものです。 粒金は目立たないので主役になることは殆どありませんが、雰囲気の華を添えることができる能力は随一で、あるのとないのでは別物と言えるのです。 |
『真心』 オーダーメイドのロケット・ペンダント イギリス 1880年頃 SOLD |
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この宝物も私のお気に入りの1つで、アメジストのクロスの上下左右に存在感のある粒金が装飾されています。 なくてもデザイン的には成立しますが、ここまでグッとくる雰囲気は持ちえなかったでしょう。 |
他者からは見えないロケットの内側にまで、ゴールドに優美な彫金が施されています。他人に自慢して自己顕示欲を満たすのではなく、自分自身の心を満たすためにここまでできる人の宝物です。そのような傑出した美意識を持つ人物の大切なオーダー品だからこそ、プラスアルファの粒金装飾があって然りなのだと感じます♪ |
3-3-2. 驚きの粒金の使い方
20世紀に入りプラチナの時代となると、粒金はほぼ見られなくなります。19世紀中であっても20世紀に近づくと、エトラスカン・スタイルのジュエリーを除いて粒金は目にする機会が殆どなくなります。 |
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そのような中、緩急を付けた大小の粒金装飾のさりげない配置に嬉しくなります♪ 特に驚いたのが、3つの小さなオパールと、メインのオパールを粒金1つで連結していることです。こんな細工は、他のジュエリーでも見たことがありません!! |
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粒金で連結しようなんて、普通は考えもしません!! 極めて稀少価値の高いオパールを使っていますから、絶対に落ちないように蝋付する自信がなければできない技でもあります。 |
デザインが先ではなく、作者は粒金の腕によほど自信があり、それを示すため敢えてこのデザインにしたと感じます。第一級の職人としての誇りを感じる細工です!♪ |
他の部分の大小の粒金も、フレームのサイドに正確に蝋付されています。 |
『天女の舞』 オパール 扇ブローチ イギリス 1900〜1910年頃 SOLD |
年代やオパールに加えて、神技の粒金、あっと驚く膨らんだ曲線ナイフエッジのアイデアなどの共通により、作者はこの扇の宝物と同じ人物だろう感じます。 |
宝石の魅力が非常に強い宝物ですが、優れたデザインとそれを実現させた作者の技術あってこそです。扇の宝物同様、感覚的に日本人の琴線に触れる美しさをこの宝物には感じます。 |
一体どのような女性が使っていたのでしょうね・・♪ |
ハンドメイド・ロングチェーン
61.3cmもあるロング・チェーンは、1つ1つのコマがしっかりと蝋付されたハンドメイドです。通常よりコマが小さく、同じ長さでもより多くの数を連結する必要があります。その分だけ繊細な動きができ、高密度で放たれるチェーンの黄金の輝きも美しいです♪ |
引輪はバネを使用する消耗品である都合上、ヴィンテージに取り替えられています。チェーンは短くすることも可能ですが、コンディションの良いハンドメイド・チェーン自体が非常に貴重ですし、これだけの長さのネックレスは滅多にありません。着け映えする長さですので、このままお使いいただくのがベストだと思います。 |
裏側
裏側もスッキリとした良い作りです。裏側すらも変化に富むオパールです♪ |
着用イメージ
←↑等倍 |
個人差はありますが、胸あたりに収まる長さです。ペンダントは肌ではなく衣服の上にくるので、お召し物の色を反映した色彩が楽しめます。黒だと、青みがハッキリと出ます。 |
白背景は赤を感じる瞬間が多いですが、紫色やロイヤルブルーなどの一瞬一瞬の色彩も本当に綺麗です。暗い場所でも美しい遊色が出てくるので、薄暗いレストランやバーなどでも着け映えします。オパールという宝石の真価に納得できる、夢のように美しい宝物です♪♪ |